仕返しとして、ガジル君には服の表裏を一生間違え続ける呪いをかけておきました。
「……っはぁ、はぁっ……さっさと、あいつを、出しやがれぇっ!!」
「うっ、るせぇ!……はっ、はぁ……んな奴しらねえって、言ってんだろうがァ!!」
そこに所属する俺と同じ、
話を聞いてたころから気に食わねえと思っていたが、本当にこいつとは馬が合わねえだろうってことが、今わかった。
「そんなにあいつを出したくねえってか?ふざけんなよ!俺の目的は妖精の尻尾でも、ましてやてめえでもねえんだよ!!
「お前が誰の話をしてんのかわかんねえっつってんだよ!
「だぁかぁらァ!俺の目的はあの金髪だって言ってんだよ!!さっさと出しやがれ!!」
「ルーシィは渡さねえ!」
「ハートフィリアなんざいるか!!」
「金髪って言ったじゃねえか!」
「だあああああああああもう!てめぇじゃ話にならねえ!てめえのとこのマスター連れてこい!!」
「お前らがルーシィを一度拐ったのはミラから聞いてんだよ!……あ、さては、お前今度はじっちゃんを拐うつもりか!?」
「あんな禿げたじいさんなんざいるかボケェ!!」
全く会話にならない。なんなんだこいつは!
そんな募る苛立ちを拳に込めて振るう。
こんなやつ相手に無駄に体力や魔力を消耗していると考えると余計に腹立たしい。
だが奴はもうボロボロだ。俺も少しばっか負傷しちまったが、こんな程度どうってことはねえ。
仕方ない、方針を変えよう。さっさとこいつをぶちのめして別の奴等から聞き出す。その方が何倍も早い。
だから、とっとと……。
「クタバレ火竜!」
距離を取り、やつの攻撃範囲から逃れると、その場で大きく息を吸い込み肺へと空気を送り込む。
それは体内で魔力へと変換され、強力なエネルギーとなる。
「鉄竜の──」
それをすぐに察したのか、すばしっこい火竜も俺と同じように息を吸い込み、溜めの動作を行った。
「火竜の──」
ギャラリーがいない。それはつまり、互いが遠慮なく全力をぶつけ合うことができるということ。
滅竜魔導士が、ぶつかり合えるということ。
「「──
同時に放ったブレスがぶつかった。
片や熱の塊を放射し相手を焼ききらんとする。
片や鋭利な鉄片の渦で相手を切り刻まんとする。
互いのその力はどちらも竜を殺すための魔法。
人間……人智を遥かに超越した伝説の生き物を殺すための魔法。その二つのぶつかり合った結果は当然、凄まじいものだった。
ギルドの一室だった場所は開放的なまでに倒壊し、大空を見上げることができる。
──あぁ、気に食わねえ。
「……へっ、そんなもんかよ、鉄竜」
ぶつかり合ったブレスは、俺の威力が勝った。
押し負けたまま、俺のそのブレスが直撃した。
身体中を鉄片に裂かれ、血を滴らせながらも未だ立ち上がる男。その姿は誰がどう見ても重症だ。
俺に敵いもしねえ、こんなやつに時間をかけるのが勿体ねえんだ。だから、いい加減……。
大人しく沈め。
「鉄竜棍!!」
腕を鉄のように硬化させ、銀色の
ブレスを直接に受けた余韻のせいで、少しフラついた火竜の腹を横から凪ぎ払う。
壁に叩きつけられ、地面を転がり、血を吐きながらのたうち回る。
……無様な姿だ。我ながら、遠慮なんてない攻撃を見舞った。
だが、それでも尚、火竜は立ち上がった。
「……助かったぜ、鉄竜。ちょうど痒かった場所を掻いてくれてよぉ……」
足を震わせながらも、血を流しながらも、息を切らしながらも。だが、その鋭い目付きだけは絶えず俺を睨み付けていた。その瞳の奥には、鬱陶しいくらいに熱そうな炎が
「……なんなんだ、てめえ」
なんなんだ、こいつは。
「鉄竜剣!!」
足を剣へと変貌させ、その凶器の足で蹴りを放つ。それを受け止めようとした火竜は、当然疲れきった体では耐えきれずに腕から血を散らして吹き飛ぶ。
「もう諦めろよ、火竜。てめえじゃ俺に勝てねえ。さっきのブレスで勝敗がわかりきってんだろ。只でさえトト丸とやり合った後みてえだし、尚更だ」
諦めろよ。と、そうもう一度促す。
エレメント4と戦闘済み。しかもトト丸との相性も悪く本来のコンディションじゃない。普通なら、そんな連戦で俺と戦える余力すらねえはずだ。いくら滅竜魔導士っつっても限界がある。
なんなんだ?馬鹿は体力の限界にすら気がつけねえのか?
「……うるせぇよ」
そう呻くように、立ち上がる。
「あ?」
「うるせぇよ!!仲間を傷つけられたんだ、ぶっ飛ばさねえと気が済まねえんだよ!!」
両腕に炎を纏わせ、覇気の消えない眼光で俺を睨めつける。
本当に気に食わねえ男だ、こいつは。
仲間が傷つけられたからだ?そーかよ、そいつは
仲間の為に無茶をするってのは、イマイチ理解できねえな。その仲間ってのは、そんなに価値のあるもんなのかねえ。
「お前にとってよ、仲間ってのはなんだ?」
何気ないその問いに、火竜は何の迷いもためらいもなく、叫んだ。
「家族だ!」
家族、ねぇ。
「それは命を張る価値があんのか?」
「当たり前だ!!」
「……そーかい」
やっぱ、理解できねえや。
昔っからこうやって力や暴力で生き抜いてきた俺には、そうそう理解できることじゃない。
仲間ってのは、親の威光で威張り腐るどうしようもないヤツもいれば、偽善的な行動で誰かを助けようとするアホだっている。だからって気にかけることもないし、積極的に関わろうとも思わなかった。
ようするに仲間ってのは俺にとって、結局他人でしかない。ただ同じギルドに所属して、同じ名を語ってるメンバーというだけ。それに対して命を張るってのは……よく、わからねえ。
「はぁーあ。俺はんなことチマチマ考えるタイプじゃねえんだがな。どうにもあれ以来、らしくなくていけねえ」
「はぁ?なに言ってやがんだ」
「そうさな……」
そうだ。細かいことを考えたところで、何が変わるわけでもありゃあしねえ。
俺は、俺の思ったままに、やりたいことをやるだけだ。
だから。
「俺には、
細かいことなんて、後でいい。
後で考えりゃあいい。今は、この生け簀かねえ野郎をブッ飛ばすのが、何より優先だ。
「そうだろ、火竜!!」
「上等だ!!」
互いの魔力が溢れる。
まるで感情に左右されるように、体の奥に貯蔵していた魔力が溢れだす。
いくぞ、取って置きだ
「滅竜奥義──」
「滅竜奥義──」
否定したいところだが、どこまでも、気が合うところが無駄に腹立たしいんだよ。……まぁ、気が合うんじゃなくて、互いに高ぶった結果だと思いたい。
けど、悪くない。互いに最高をぶつけ合えるのなら、その結果にも納得が行くってもんだ。てめえも、そうだろ。負けたことに言い訳なんて出来ねえからな。
勝負だ、
◇◇◇
「おーおー、もう色んなところでドッカンドッカンと。皆元気だなおい」
人形ロボットと化したギルドへ近寄ってみると、そこいら中からドンドンガンガンと凄い音がする。
なんかフェアリーテイルのメンバーたちは大量の黒い影みたいなのと戦ってるし。ロボットの内側からも凄いドンドコ聞こえるし。
え?外のは手伝わないのかって?
無理無理。だって影だよ?倒されてもすぐ再生するようなやつらをどうやって倒すのさ、そんな超能力みたいな力俺にはありませんよ。俺は脳みそ筋肉略して脳筋の方の人種だし。
とりあえず、未だに踏ん張っているマスターから助けるとしようか。
「『MODE:オオナズチ』」
古龍種の中で最も燃費のいいのが、
皮膚の色を変えて擬態し、周囲に溶け込む能力だ。普通なら、え?それ弱くね?となるかもしれない。ダガシカァシッ!(裏声
オオナズチの擬態は度が過ぎている。
溶け込むだけだが、それは雨や人混みなど、動くものを背景にしても見破ることができない。最早擬態ではなく、透明化のレベルまで達している。すごい。
大丈夫。決して悪用なんてしてませんよ、ええ。この能力で女湯を覗いたことなんてありませんよ、ええ。興奮の余りに能力を維持できずバレてブッ飛ばされたことなんてないですよ、ええ。追い討ちとばかりに、覗いた先に王族がお忍びで来てて投獄されたなんてこともありませんでしたよ、ええ。
……あれは、いい思い出だった。
あの時のナイスバデーを思い出しているだけで、こんなにも豊かな笑みが自然と溢れる。おっと涎が。
投獄で済ませてくるなんて優しい。だって監獄って俺の嫌いな海と違って地面あるし。地面があれば当然掘って出られるし。
……チャンスがあったら、もう一回女湯覗きやろう。
完全に女の敵そのものの決意を新たに、俺は
今、俺は取っ組み合っているフェアリーテイルのマスターとロボットを、横から見ている形だ。
「『MODE:ガノトトス』」
体質を水竜のものへと変え、湖に顔を突っ込んで水を体内へと摂り込む。
渦でも出来るんじゃないかというくらいに水を吸い込んでから、顔を上げる。
口で汲み上げた水を体内で圧縮させ、それをブレスとして、ロボットの腕へと吐き出した。
まるでウォーターカッターのように、圧縮された水のブレスは、意図も容易くロボットの腕を切断して見せた。
「……っはぁ、しんど!同時発動は本当に疲れるわ」
擬態しながらのブレスは本当に疲れる。五〇メートル走を全力で走ったような感覚。
まぁぶっちゃけそこまで疲れるわけでもないが、あれだ。準備運動もなにも無しに急に走ったから余計疲れる、みたいな?
いやー、にしてもよかったよかった。フェアリーテイルのマスターに当たらなくて。当たってたら謝罪じゃすまないからな、「てへぺろんっ☆」とか可愛らしく謝っても確実に殴り倒されるだろうし。
……おっと、マスターが、こっち周辺を警戒してるみたいだな。
バレて面倒事になる前に、とっとと中に入るか。
ロボットもすでにズタボロで入れそうな場所が一杯あったので、なるべく高くジャンプして上に近そうな所から入り込む。
さて、入ったはいいがどこに行けばいいんだ?
んー。つーか、俺は何をすればいいんだろうか。なんかギルド同士の小競り合いみたいだけど、大将でも討ち取ればいいのかな?
悩みながらも、とりあえず上いくかー。と適当に上へと登っていく。
このギルドの大将ってどんなんだろうか。
そういえばあれだよな、このギルドって昨日説教してやったとこのギルドだよな?なんかギルドマークに見覚えあるし。
頭に思い浮かぶのは、俺のしおからを食いやがった凶悪な顔つきのアイツ。あー、なんか思い出したらイライラしてきた。あの野郎ふざけやがって……。げきおこだよ畜生!
廊下を歩いていると、人の気配のする部屋らしきものが見えた。そこへと向かう。
まぁあんな、悪人面は置いておいて、それはそれとしてだ。
「悲しい、悲しい」と連呼して喧しかった(俺の方が悲しかったわ。お前以上に悲嘆に暮れてたわアホんだら)なんとかリア……えーとポリア?サリア?あー、モリアでいいや。
モリアとか名乗ってた大男や、あんな凶悪な顔つきの鉄を食うやつがいるギルドだ。恐らく大将も、相当顔つきの悪くてガタイのでかくて、岩とか人間とか食うような、それこそ魔王みたいなやつなんだろう。笑い方はたぶん、バゴアバゴアだ。
「……なんか会いたく無くなってきたな」
普通に怖いわそんなやつ。やだよ、まだ死にたくない。せめて死ぬ前に卒業させてよ、童tげふんげふん。
部屋に入ると、そこは中々に豪華な場所だった。
そして部屋の真ん中で二人の人間が構えながら向き合っている。
俺の角度から顔が見えるのは、なんか紫のピエロっぽい服装で髭はやしたおっさん。
うん、まぁ少なくともこんな中ボスの取り巻きみたいな見た目じゃ魔王とかありえんわな。精々取り巻きAってところだな。良くて妨害専門の遊撃キャラ。まぁ、端的に言うと雑魚キャラだな(あんま意味変わってないけど)。
にしても、なんだそのダッサイ服装は。ピエロ意識してるんならもっと不気味なくらいにしろよ。ケフカ見習えよケフカ。なんでそんな中途半端なんだよ。んで気になってたんだけどその靴の先にくっついてるフワフワはなんに使うんだよ。謎だよ。なんでフワフワなんだよ。フワフワしてる意味あんのかよ。なんだ?フワフワだと笑いがとれるのか?フワフワしてると面白いのか?……あえて言おう、カスであると!フワフワしてても面白くもなんともないんだよ!ただ気にはなるけども!
はぁー全く、大物になりたいならまず見た目だけでもよくしないと、威厳が出ないぞ?……と、相手は年上のおっさんだが忠告しておこう。
まずは見た目だけでも、自分磨きを
「ふわふわりー♪ふわふわるー♪」
「誰だ!」
あ、バレた。
素通りしようとしただけなのに、おっさんに気づかれてしまった。なぜだ。
んん?よく見てみたらおっさんと向き合ってるのあれジェラールだ。
ジェラールも困惑したように辺りを見回してる。つーか、なんでそんなボロボロなのお前。服もやぶけてるし。さっきまで威勢よく乗り込んでたじゃん。勢い余って転んだのかよ。
後に彼は、「転んだだけで服がやぶけるかーい!」と突っ込みがあれば完璧だった、と語った。
そんなボケは良いとしてだ。
「
ピエロ
俺は、そんな男の真後ろへとワンステップで急接近した。
「背後から不意打ちとか、お前それでも男かよ!」
チョップと共に、自分のその言葉が盛大なブーメランとなって俺に突き刺さる。本日
ちなみに取り巻きAは床と一体化した。白目を剥いて鼻水を垂らしながら、みっともない顔で気絶している。
酷い!誰がこんなことを!(正義感
我ながらやりたい放題であった。
まぁ、相手が人間である以上、そこまで切羽詰まるような事態にはそうそうならないだろうし。ただし女性には手を上げられないのでそれは除く。
「……嘘だろ……。そこに、いるのか?」
ジェラールは、俺のいる大体の位置へと視線をさ迷わせながらも、驚愕の表情でそう問いかけた。
「なぁ、その声は、師匠なんだろ?……そこにいるんだろ?出てきてくれないか」
声だけでよくわかったな。つーか、よく俺の声なんて覚えてるなぁ。
……にしても、師匠ねぇ。別に俺はお前の師匠じゃないんだけど。
ジェラールと初めて会ってから数日、フィオーレに送り届ける旅をした。一週間程度だが。そういえばあの時、俺はこいつに名前を名乗っていないのだ。
なんというか、名乗るタイミングがなくて名乗れなかった。その後も気を逃し続けて、なんか余計に名乗りにくくなって、結局俺の名前を知らないに至る。
だからまぁ、師匠って呼び方をするのは仕方ない……のかな。
けど、そんなとこカグラちゃんにでも目撃されてみろ、どんな目に遭うか。考えただけでもおっかないわ。
まー、そうだな。子供の成長をこうして見れたんだ。俺もいつまでも隠れてるってのも、変な話だよな。
元気な報告ができるなら、互いに顔を遭わせて笑顔で話せるのが一番だ。
擬態を解き、ジェラールの前に姿を見せた。
「……お久しぶりです」
「おう、でかくなったな」
本当に大きくなりやがって。ぴーぴー泣いてたガキンチョがもうこんなんなったのか。早いもんだ。
「師匠は、全く変わらないな。あの時のまんまだ」
「そうか?んー、八年くらい経ってんだろ?老けてねえか?俺」
「これっぽっちも変わってないよ」
「まじでかやめろよ嬉しい。お前も、豆粒みたいだったくせに、随分な色男になったじゃん。ジェラールくん」
「はいっ」
うむうむ、元気で何より。
感無量である。と目頭が熱くなってきたところで、ジェラールが尤もなことを聞いてきた。
「なぜ師匠がここに?」
「なぜってお前、そりゃー……」
なんでだっけ。
あ、そうだそうだ飯の恩を返すために手伝いにきたんだ。忘れてない、忘れてないよ。
決して、しおからの鬱憤晴らしに来たわけじゃないよー。
まぁそれはそれとして、
「魔王を倒しに来たんだよ俺は」
「魔王?」
「そうそう。でもここにはいなさそうだな」
いやまぁ、ないだろうけどな、こんな髭のおっさんじゃ。取り巻きAじゃ。
若干面倒に思えてきた。
あ、そういえば「その師匠って呼び方をやめろ」と切り出そうとしたその時だった。かなりの早さでこちらへ近づく匂いに気がついた。
むむっ!この
フェアリーテイルのメンバーかな?もしメンバーだったら俺がいても混乱させるだけだろうし、もし敵だったら俺には女の子は殴れないからジェラールに任せる。
だから俺は一旦退散するとするかね。
「またな、ジェラール」
ジェラールが何か言っているが、俺はそれを無視して擬態化し、そのまま走り去った。
あ、結局名乗りそびれてしまった。
まぁいいか。もう会えないってわけでもないんだし。
とりあえず、魔王を探さねば。
ジョゼはあのダサい衣装のまま戦おうとしていたようです。人外チョップが炸裂してもしかたないですね。反省して頂きたい。
ジョゼへの当りが厳しいのは、作者の愛ゆえなのだ。だからしかたない。愛ゆえに!!