モンスターイミテーション   作:花火師

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日常回。今回は雷神衆の晩酌に密着しました。話は進みませんので悪しからずん。
すみません。今回は出来が微妙です!ボツにしようか悩んだ結果の投稿ですので……
本当に申し訳ない(メタルマン)


番外 雷神衆の晩酌

「ったくよ。ジェラールの野郎、手を結んだ直後に旅行だと?どういう了見だよ。祝いだなんだと聖十(せいてん)の称号程度で浮かれやがって。ッチ、せっかく暴れられると思ってテンション上がってたのによ、出鼻挫くんじゃねえよあの野郎」

 

まだ仮酒場のままのフェアリーテイルの地下。

日も暮れてマスターもメンバーたちもすでに帰り、昼の喧騒とはまるで別世界のように静まり返ったギルド。

俺は誰に言うでもなく、そんな愚痴を溢しつつエールを煽る。飲み干すとジョッキを置き、背もたれに体重を預けて足を組んだ。

そんな俺に、雷神衆の三人は微かに笑っている。

 

「んだよ。俺の顔がそんなにオモシれえか?なんならてめえらを俺より愉快な顔にしてやろうか?あぁん?」

 

放電してみせると、慌てたように三人はそれぞれ弁明を始めた。

一通り聞き終えた後で、それを聞いてなかったかのように追い討ちで驚かせてやれば、面白い程に焦る。それが見ていて楽しかったから今回は許してやった。

 

「で?なんだよ、言いたいことがあんなら言え」

 

そう促せば、代表としてフリードが口を開く。

 

「いや、ラクサスは最近凄くイライラしていたみたいだから、心配してたんだ。けど、昨日ジェラールと話してから元気になったな、と思って。安心していただけだ」

 

「……そーかよ」

 

なんだよ、そんなことか。

まぁ、そうだな。唯一の親友……っつったらなんか薄っぺらいかもしれないが、実際アイツ程気の会うやつはいないしな。

昔っから、チームを組むならコイツだ、と思っていたほどだ。

 

 

マスターの孫として、周囲から敬遠され、誰も俺の努力を欠片も認めてくれなかった。誰一人として、俺を見てくれなかった。

 

『出来て当たり前、マスターの孫なんだから』『なんで出来ないんだ、マスターの孫なのに』『マスターの孫だから努力をしてないのに強くてずるい』『マスターの孫だから』『孫だから』『孫だから』『孫だから』『孫だから』『孫だから』と。

そんな妄言ばっか吐く大人たちに囲まれていた頃、愚かにも俺は、高慢ちきな事件を起こした。

 

そんな事件を自分の意思で行った俺を、全力で叱ってくれたのがジェラールだった。

『間違っている』『一からやり直せ』『マスターの孫ってだけで、お前はマスターじゃないだろ』『他人の評価しか気にしてないのか、小さい男だな』『悪さをしたって、お前自身をを証明できる訳じゃない』『お前の相手をしてるより、ナツと殴りあった方が有意義だな』とか。そんなことを言われた記憶ばかりだ。

 

当然、当時の俺もアイツの遠慮のないダメだしや説教に我慢できずガチの喧嘩となった(最後のナツ以下発言には本気で激怒して、反面本気で落ち込んだ)。

ジェラールと全力で殴り合いに殴りあった結果、俺は勝てなかった。……負けたのだ。見事に。善戦はしたつもりだ。だが結局ジェラールには勝てなかった。お陰で、俺は自分の小ささを思い知った。

 

こんなにも俺は小さかったのか。こんなのも俺は弱かったのか。こんなにも俺は馬鹿だったのか、と。色々と考えさせられた。

 

今じゃあいつとは互角に渡り合えるが……正確なところ、また戦ったらどうだろうな……。また全力をぶつけたい。あいつは、人間としても俺の目標であり、理解者であり、大事な仲間だ。

 

あの喧嘩以来、俺たちは仲良くなり、俺も周りの声を気にしなくなった。今思えば、あの喧嘩でギルドの建物をぶっ飛ばしかけ、マスターに叱られてから互いに愚痴を言い合ったのが悪友としての始まりだったのかもしれない。

 

昔は何度か一緒に仕事にも行った。だがまぁ、なんやかんやあって、今じゃ雷神衆なんてものまで出来て、互いに大所帯を嫌って組んではいない。

……俺としては、また一緒に仕事に行きたいが、中々予定が合わないから、まぁそれは仕方ない。

今回も、なんやかんや予定がずれちまった訳だし。

 

にしても、そんなあいつもついに聖十か……。はっ、まぁすぐに追い付くさ。それに、そんな称号なんざ気にしたってしかたねえ。あんなもん余計に面倒くさいしがらみが増えるだけだろうし。それに、今あいつに抜かれたとて、更にそれを追い越すのも時間の問題だ。なんたって俺は、ジジイをブッ飛ばすんだからな。

 

「……そうだ、そのことでお前らにもちっと話があるんだ。聞け」

 

そう切り出すと、三人とも身を乗り出す勢いで食いついた。

 

「当然だ。俺たち雷神衆、ラクサスの話とあれば聞くのが道理」

 

「そうよ、何でも言ってちょうだいよ」

 

「そーだぜェ、ラクサス。あ、もしかしてジェラールとクエスト行きたいとかそういうやつかぁ?んなら俺たちは大人しく待ってるぜ?ラクサスは昔から仲がいいもんなァ、デキてるって言われも不思議は」

 

訳のわからないことを言い始めたビックスローに、慌てふためく二人の制止も間に合わせず、ヤツの頭を鷲掴んで壁に埋め込んだ。

そして振り返り、静かに残りの二人を睨み付ける。

 

「コイツを後でハルジオンの海に沈めておけ。なんなら俺がやる」

 

千切れんばかりの勢いで首を縦に振る二人に、俺は再び椅子に腰かけた。

 

「……あー、ラクサス?そのー。たぶんビックスローも、冗談で言っただけよ?だから、ね?許してあげて?」

 

「あ、あぁ。アイツの悪いところだ。俺が思いっきり叱っておく、だから俺からも頼む」

 

どうにか助けようとしてるのが犇々(ひしひし)と伝わる。ビックスローのフォローを始めた二人に、俺はアホらしくなった。

代わりに、まだ手をつけてなかったビックスローの分のエールを奪い取り、喉へと流し込んだ。

 

「今回はコイツで許してやるよ。だがいいか、次その手の冗談でもジョークでも言ってみろ、翌日の朝日は拝めないと思うんだな」

 

言っとくが!と区切り、たっぷり間を置いてからジョッキを叩きつけるようにテーブルに置いた。

 

「……俺のはジョークじゃねえからな」

 

「「り、了解」」

 

とりあえず平謝りしてきたエバーグリーンに酒を取りに行かせ、土下座しようとしていたフリードには壁に上半身の埋まったビックスローを引っこ抜きに行かせた。

 

ほんとに、からかうなら相手を選べよタコ共。そりゃ本気で沈めるつもりはないが。

 

……にしても、どうしたもんか。ジェラールはナツ、ハッピー、グレイと、あと新人のルーシィとか言う金髪女を連れて旅行に行っちまったし。

仕事をしようにも、前回ミスって俺の雷でハルジオンの大型漁船を海のド真ん中でぶっ壊しちまったせいで、雷神衆の活動が一時禁止されちまったし(以前ナツがあそこで大暴れした前科もあり、その責任も含めてということで、その全てが俺たちに回ってきた。まぁ仕置きとしてナツの降参を無視してサンドバッグの如く、三〇発程殴ってやったが)。

 

『ぎゃあああああああああ!ぐおっポォッ!!俺が、俺が悪かったぶぅ!ふっ!許してラクしゃあっ!すぅぶっ!あああ!昼飯吐きそう!吐きそうぼおっ!!』『ダメだよラクサス!流石のナツも死んじゃうよ!あ、ほらナツが腹部を集中的に殴られて凄い顔してる!』『ざまあみやがれ。これでナツも、ちったあ落ち着くんじゃねえ』『おぼろぉおぉぉおぉおぉおおおお!!』『うぎゃあああああああ!こんのクソつり目!ふざけんな俺のズボンに汚ねえもんぶっかけやがって!!』『まっで、まっでラクサスっ。吐いてる。俺今吐いてるからぎゃあああああああっ!』

 

脳内でナツとその他の悲鳴が甦る。あれのお陰で多少はスカッとしたから良しとしてやろう。またすぐ似たような事になりそだがな。ナツだし。

さて、どうやって暇を潰したもんか。

 

『ゲームについては俺も旅行中に考えておく。帰ってきたらまとめた案を話すから、お前も適当に考えていてくれ』

 

と、ジェラールが旅立つ前に言っていたそんな言葉をふと思い出した。

 

……案。……案ねぇ。俺としちゃあ、ジジイを叩き落とすのは段階を踏んでからするべきだと思っている。いきなりメインディッシュってのはつまらない。

……そうだな、前座として、フェアリーテイル最強の魔導士を決めるってのはどうだろう。フリードの術式を使ってそうせざろう得ない状況へ落とし込む。

どうだ、我ながら悪くない案だ。どう誘い込むかはジェラールと話して決めるか。あいつの方が戦略は得意だしな。

俺が考案したところで、あのメチャクチャな馬鹿どもにルールやら規則やらそのものをぶっ壊されかねない。

 

考え込んでいると、フリードが死にかけのビックスローを引き摺り、どうにか椅子に座らせた。

しばらくグロッキーになっていたが、頭をさすりながらようやく顔を上げた。

 

「はぁ……。ビックスロー、まずはラクサスに謝る必要があるんじゃないのか?」

 

「……お、おう。すまねぇラクサス。ちっとふざけ過ぎた。気を付けるぜ」

 

「そうしろ」

 

酒奪って壁に埋めてと、結構強めにやり返したんだ。もうこれ以上の仕返はやり過ぎだしな。

つっても、ビックスローもやられる瞬間に、魔法で壁にマネキンのクッションを挟んでたからダメージの軽減は出来てるだろうけどな。雷神衆ならばそれくらいできなければ。

 

「けど、今のは正直死んだと思ったぜ。こう……視線がいつのまにか壁に接近してく最中に、あ、これ死んだと思ったぜいや冗談抜きでよ」

 

「安心しろ、次は確実に殺す」

 

「やめてくれ冗談に聞こえねえんだってラクサスっ!」

 

悲鳴じみた声を出して焦るビックスローに、つい我慢できず笑い声を上げる。

いやー、やっぱ弄り甲斐があって面白いな。

 

「フェアリーテイルの中でも割りと常識人っぽいお前は、やっぱ弄り易いよ、ククッハハッ」

 

「なんかヘコむべきなのか喜ぶべきなのかわからねえ評価だな、それ」

 

「よかったじゃないかビックスロー!ラクサスも嬉しそうだぞ!」

 

なんとも言えない表情のビックスローの背中を、フリードが叩いて嬉しそうにしている。

 

「お待たせ、持ってきたわよ。はい、エール。ラクサスのと、一応ビックスローのもね。……あら、ビックスロー、壁から出てこれたのね。よかったわ……」

 

「エバ……うぅっ!なんかお前が天使に見えてきたぜ」

 

泣き出しそうになるビックスローに、エバが追い討ちをかける。

 

「……ラクサスに殺人罪がかけられなくて」

 

「そっちの心配かよ!ベクトル違うだろォ!? ベ ク ト ルぅ!!」

 

怒涛の勢いで食って掛かるビックスローを押し退け、今度はフリードが納得いかないとエバへと怒鳴った。

 

「エバ!ラクサスがそんなヘマするわけないだろう!ちゃんと加減してビックスローをめり込ませたに決まってるじゃないか!罪になるからな!」

 

「なんで!?なんでお前ら突然そんな俺に冷たいの!?なんかした!?」

 

「アッハッハッハハハッ」

 

「なんでラクサスは大爆笑してんだよ!?俺か!?これ俺が笑われてんのか!?スゲー納得いかないんだけど!」

 

 

……やっぱ、ジェラールと悪友やんのも良いけど、こいつらとつるむのも良いもんだ。

 

興奮気味のビックスローをどうにか落ち着かせ、とりあえず全員でエールを飲みながら落ち着く。

暴れまわるのはフェアリーテイルの十八番だが、今は置いておこう。暴れるのは昼だけでいい。俺も、せめて夜くらいは静かにしていたい。

 

「でだ、てめえらに話したいことがあるって言ったよな?」

 

そう前置きすれば、三人は姿勢を正して真面目くさった表情になった。

 

「そんなかたくなんな。こっから話すのは、俺たちの休日をどう過ごすか、だ」

 

「なんだ、そんなことかよ」

 

と、ビックスローは安心したように肩を下ろした。エバもフリードもどこか緊張していた面持ちを緩めた。

……そんな身構える必要もないだろうに。

 

「ラクサス、あなたが楽しそうにしてると、毎度良くないことが起こるもの。主に、アタシたちにね」

 

「俺としてはラクサスが楽しければ苦労なんて何のそのだがな。だが、確かにラクサスが楽しそうな時は大抵荒事だ。その辺はナツに似ていると言っても……いや何でもないから睨まないでくれ」

 

「それはともかくとしてよ、なんだよ。休日の過ごし方なんてわざわざ変な切り出し方して。俺たちでなんかやんのか?」

 

エバ、フリード、ビックスローと口を開く。

フリードも後で殴ろうかと思案することはとりあえず良しとしよう。今はな。

 

「なーに。ちょっとした大会だ」

 

「嫌な予感しかしないんだけど……」

 

エバが何やら察しのか、先ほどの安心した表情はどこへやら、再び身構えた。そんな構えるほどのことでもないだろうに、大袈裟なやつだ。

まぁ、つっても、やることは本当に簡単だがな。

 

「簡単だ。ちょっとした革命だからな」

 

まだ大まかにしか決まってはいないが、まずはこいつらと話し合って案を上げておくべきだからな。

ジェラールが帰ってくるのが楽しみだ。

 

 

「新人との交流も深められるいい機会になるといいナァ……」

 

俺は、自覚できるほどに顔を歪めて笑った。それに三人は、引き吊ったように苦笑いを浮かべていた。

 

 

「今から楽しみだ」

 

そうさな、暫定的に名付けるのならば──

 

 

 

バトル・オブ・フェアリーテイル、だ。

 




ビックスロー「でぅえきてるrrrrrrrrrrrrぅ」
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