モンスターイミテーション   作:花火師

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年号がああ!!また年号が変わってるーー!!(鬼並感)

ごめんなさいお久しぶりです。そして二回分のあけましておめでとうございます(横着)

言ったよね!アイルビーバックって!(言ってない)
皆もう忘れてるだろうけど、ただいまです。
またそのうち失踪します(犯行予告)


心に闇を

あつい陽射し。

 

さざ波の音。舞う水飛沫。響くカモメの声。飛び交う怒号と拳。吹き飛んでくナツ。錐揉みで落ちるグレイ。まさしく夏の海。

 

俺たちはとあるリゾート施設へと遊びに来ていた。俺が聖十になったということで、マスターマカロフがチケットをプレゼントしてくれたのだ。

 

カグラや新入りのガジル。病み上がりだが、気晴らしにレビィやジェットとドロイたちを誘おうとも思ったのだが、マスターがしばらくの間、ギルド一厄介なナツを隔離したいというので、仕方なくこいつらを連れてきた次第だ(ナツがいると、作った物も人手もダメにするから邪魔だそうだ。つまり、厄介払いも兼ねているということだ)。

ルーシィとグレイは、共にチームを組むことが多いためか立候補するメンバーを押し退けてノリノリで着いてきた。

 

……バカンス。それはいいのだが、正直俺は乗り気にはなれなかった。

聖十になったあの日のことが、未だ頭から離れてくれない。どうしても考え込んでしまい、結果、鬱々とした気持ちになってしまう。

 

「ジェラールどうしたの?ずっと難しい顔して」

 

ナツとグレイ、二人の泥仕合を背景に、いつのまにか近くにいたルーシィが俺の顔を覗き込む。

シンプルな青の水着は、彼女のスタイルの良さをこれでもかと見せつけるようで、とても魅力的だった。

 

そんな彼女の唐突な問いに驚かされつつも、口をついたのは誤魔化しの言葉。

 

「……いや、なんでもないよ」

 

「なんでもないってことはないでしょ?ずっと何か考え込んでるじゃない」

 

どうやら隠してもバレてしまってるらしい。彼女はよく見ている。精霊魔導士故の関係を築くための察しの良さなのか。それとも彼女自身の察知的な能力なのか。

いや、たぶんナツもグレイもなんとなく察してはいるんだろう。ただ、何も言い出さないだけで。

なんだかんだであいつらは、ただの馬鹿に見えて中々に察しのいいやつらだ。

 

「だはははは!グレイのパンツ取ったぜー!」

 

「俺だっててめえのパンツ剥いでやったぜ!」

 

「ん?それ俺のじゃねーぞ。……おい、それ監視員のパンツじゃねーか?」

 

「なに?あ、本当だ。監視員パンツはいてねえ。とんだ変態だな」

 

「てめえが言うな」

 

「んだとコラァ!」

 

「やるかコラァ!」

 

「パンツを返しなさーい!」

 

訂正。ただの馬鹿だ。

 

「それで、何があったの?」

 

ルーシィは賢明にも、すでにあの二人を止めるということを諦めたらしい。そう俺に続きを問いかけた。

 

「評議院に行ってからだよね?なんだか様子が可笑しいの。もしかして、あいつらの後始末とか賠償金とか押し付けられた?」

 

あいつら、と言いながらナツとグレイを指差す。

 

「いや、そうじゃない」

 

そうじゃない。

 

 

「……ただ、懐かしい顔を見てな。少し感傷的になってるだけだ」

 

 

数日前。

評議院に出向いた日。果たそうとしていた願いの一端に触れるような出来事だった。

悪い意味ではなく、俺からすれば前進したことだというのに、俺は未だにその日の事が頭の中で渦を巻いていた。

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、ジェラール」

 

「お前……」

 

その顔は半分程鉄で覆われ、片目には黒く大きな眼帯。大きく屈強な肉体は、役員が多いこの場において、明らかに異質な存在だった。

一度会えば中々忘れないほどの巨漢に圧倒されるも、それでも彼の面影には、確かに見覚えがあった。

その立ち姿に、記憶が鮮明に蘇る。フラッシュバックするのは、苦悩と苦痛と苦しみと、そして友の記憶。

 

「シモン……なぜここに」

 

楽園の塔に囚われていた俺の仲間だった男。かつて、エルザを監守たちから守ろうとして重症を負っていたのが、彼への最後の記憶だ。

……よかった、生きていた。あんな場所に置き去りにしたこと。俺の責任は誰よりも自負している。だからこそ、彼らを救うために生きてきた。

だが、喜ぶべきことでも、それより先に疑問が心を占めた。

どういうことだ。いったいなぜここにシモンがいる。

 

喜び、罪悪感、疑問。一気に押し寄せた感情と思考を処理しきれず呆然としていた俺を、シモンはからかうように小さく笑った。

 

「かつての仲間と数年ぶりの再会だというのに、それが一言目に言うことか?それとも、海へ遊びに行くことで頭が一杯か?ジェラール」

 

「あ……い、いや待てシモン。エルザは?ショウやミリアーナやウォーリーはどうしたんだ!一緒なのか!?」

 

次に思い浮かんだのは、彼らの無事だ。生きているのか。いや、そもそもエルザはあの後どうなったのか。

もしかして、エルザは正気に戻って、皆を連れて楽園の塔から脱出したのだろうか。今ごろどこかで皆と一緒に元気で暮らしているのだろうか。

 

そんな希望が見えた。

 

「いや、違う」

 

「……なに?」

 

希望は、陰る。

 

「違うだと?」

 

希望は──

 

「俺は、一人で無様に逃げ出したんだ。ジェラール」

 

あっさりと、いとも簡単に砕かれた。

 

「逃げ……出したって……」

 

……いったい、なに(だれ)からだ。

 

考えたくなかった。今まで目を逸らしていたことだった。俺は、そうあって欲しくないと心の底から願い、そうであるはずがないと思い込もうとしていた。

それは叶わなかった。……ただの、くだらない現実逃避に過ぎなかった。

事実というものは決して消えることも無くなることもない。それはどれだけ時間が経ったところで、どれだけ顔を背けたところで、どれだけ楽観的に過ごしてたって、変わることはなく、逃げられるものでもないらしい。

 

「エルザからだよ。彼女はあの塔で力に物をいわせ、かつてより酷い扱いで俺たちを使った(・・・)

 

「使った、だと……」

 

シモンは、そこに悲しみの色すら滲ませずに、淡々と、まるでもう終わったことであるかのように、無関心に言う。

すでに、見えていた筈だったかつてのシモンの面影はない。まるで、シモンであるはずなのにシモンではないようだった。

 

「大勢死んだよ。ショウやミリアーナたちはどうなったかわからないが。俺は、皆を置いて一人で逃げ出した。殺される前にな」

 

そんな言葉を聞くのが早いか、俺はシモンに掴みかかり、彼を強引に壁へと叩きつけた。

感情が爆発した。我慢ができなかった。激情に、俺は勝てなかった。

 

「あいつらを置いて逃げたのか!皆を見放して、一人で!!」

 

激昂した俺を、シモンは見下す。

そこにいたシモンは、昔とは比べ物にならないほどに冷めた目で、俺を見ていた。友ではなく、赤の他人へ向けるような目だ。

 

「ジェラール。よくそんなことが言えるな。一人で逃げたのか、なんて」

 

「っ!!」

 

それは!!

 

……それは、言われて当たり前の言葉だ。

仕方なかった。どうしようもなかった。そんな言葉で俺が喚き散らしたところで言い訳にすらならない。

そうだ。その通りだ。俺は彼らを見捨てて一人で逃げたんだ。自分を棚にあげて、まるでシモンが悪いように言える筈がない。全くもってお門違いだ。

 

醜い。今の俺は、とてつもなく醜い。

わかっている。俺はとんでもないほどの、クソ野郎だ。

 

「だが……!」

 

納得がいくはずがない。出来るはずがない。こいつは、そんなことが出来るような男ではなかった。

誰よりも仲間思いで、誰かのために自分の命を張れるような、そんな男だった。

だから今でもそんな武骨な鉄で顔の傷を覆い、眼帯までしているんだ。エルザや仲間を庇った勲章を掲げてるんだ。そうだろう?シモン。

 

「納得がいかないか?」

 

シモンは胸ぐらを掴んでいた俺の手を掴み返し、邪魔だと言わんばかりに押し返した。

襟元を直しながらも、シモンはつまらなそうに俺を一瞥し、鼻を鳴らして歩き出す。

 

「納得がいかないことだらけだよな。だがそれが世界だ。俺はもう受け入れた」

 

なんだよそれ……。受け入れたって……。

 

「受け入れて、俺の道を進むことを決めた」

 

背を向けて歩き出した。その背中にはなにもなかった。躊躇(ためら)いも迷いも、怒りも悲しみも、なにも感じられなかった。

 

あぁそれと、とシモンは振り返った。

意気消沈、とでもいうのか。全てを受け止めきれずに茫然自失としていた俺に、またしても、興味無さげに、敬意も称賛も感じられない声色で言った。

 

「お前も聖十の一員だ。おめでとう。せいぜい頑張れ。フェアリーテイルの妖精皇子(懐中電灯)

 

 

 

 

 

「評議員、か」

 

まさかシモンが評議院の一員だったなんて。そんなこと、つゆほども知らなかった。

 

そんな出来事があったのが、評議院に行った日のことだ。

あの後聖十授与の祝辞を貰ったが、正直シモンやエルザたちのことで頭が一杯でよく覚えていない。覚えてるのは、同行していたマスターマカロフに心配されながら連れられて帰ってきたということくらいだ。

マスターは事態が起きたときにいなかったため、何かあったのか、と帰り際に心配するような声をかけられた……ような気がする。

 

まぁとにもかくにも、シモンが生きていた。それは喜ぶべきことだ。悲嘆すべきことじゃない。

目標の達成に一歩近づいた。そう考えるほうが余程建設的だ。

 

「よくわからないけど、悪いことじゃないんでしょ?なにか害があったとか……」

 

ルーシィは考え込んだままの俺に気を使ってくれる。

 

「……あぁ、そうだな。何も悪いことじゃない」

 

ふぅ、とひとつ息を大きく吐き出す。

 

そうだ、いつまでも鬱々と考えていても仕方がない。それに、今回は旅行に来たんだ。せっかくマスターが気遣って奮発してくれた訳だし、楽しまなくては。今更になるが、これ以上ルーシィに心配をかけるのも忍びない。

 

「すまん。切り替える」

 

自分の両の頬を叩いて立ち上がる。だが、いくら切り替えようと心がけても、数年間かけて思い悩んでいた事態への悩みはそう晴れることはなかった。

……難しいものだ。

 

少しでも動いて紛らわせようと、パラソルから出れば、今の俺とは正反対であるかのように目映(まばゆ)い陽射しがさんさんと降り注ぐ。

 

「パンツ返せつり目!」

 

「やーい変態変態!」

 

パンツを片手に走り回る馬鹿と、それを産まれたままの姿で追いかける変態。

取り返したパンツを履きながら迷惑そうにしている監視員と、巻き込まれないようにと距離を置く他のお客さんたち。

子供に指を指され、母親がそれを連れて去っていく姿まである。

 

元凶の炎の滅竜魔導士と氷の造形魔導士は、炎天下の元で砂浜を焼き上げ、氷漬けにしながら走り回っていた。

 

……まったく。有名リゾート地の修繕費、なんて話になったら笑えたものじゃない。

 

ルーシィから距離をとり、地面の硬い場所まで移動すると、周囲に巻き込んでしまいそうな人や物がないことを確認。

俺の行動に首を傾げるルーシィを横目に、俺の足元で天体の魔法陣が灯る。

 

誰も悲鳴をあげる暇も許さないほどの速度で海に向けて疾走。勢いのままに遠慮なく顔面を鷲掴みにし、あまりの速さに海面でバウンドする二人を数百メートル引きずった。

 

「人様に迷惑をかけるな」

 

ようやく停止し、両腕を持ち上げてそう静かに呟けば、返ってくるのは鈍いふたつのうめき声。

 

「「……ぁい」」

 

馬鹿共め。

 

なんて……これは思考停止なんだろう。

心の奥底で、言葉に出来ない感情が渦巻いている気がした。

 

 

◇◇◇

 

 

「エルザ様?どうかなさいましたか?」

 

地面にまで届くほどの長髪の男が、恐る恐る私を見上げた。その目には明らかな恐怖と困惑が映っていた。

 

まぁそれも仕方のないことなのかもしれない。なにせ、金で雇った闇ギルドとはいえ、一番最初に私が上であることを、この私が直々に叩き込み、その上に私情の一切を捨てさせて非道な悪事に使ってきた駒だ。

そして私がこいつらの前で感情的な表情を見せたのは恐らくこれが初めてときた、困惑しても仕方あるまい。

 

「なんでもない」

 

「……はぁ」

 

つまらない男だ。醜いその姿と共に、いっそここで斬り捨ててしまっても構わないか……?

いや、それでは何も面白くない。替えなどいくらでもいるが、今こいつを斬るのはなんだかつまらん。

 

「……ただ、少し懐かしい顔を見てな。感傷的になってるだけだ」

 

「懐かしい顔、ですか?」

 

オウム返ししか出来ないのかこの男は。

まったく実につまらない、腹のたつ男だ。本当に殺してしまおうか。

 

「ひっ……あっ、あの、エルザ様?」

 

怒気を含んだ目で睨めつけるだけで震え上がる小物に、ため息が漏れる。

……なにが髑髏会の特別遊撃部隊だ。なにが伝説になるであろう闇ギルドだ。下らない。ただの雑魚の集まりじゃないか。

かつての建設者の生き残りから闇ギルドの人脈を伝って手練れを集めたつもりが、とんだ外れ(くじ)だ。馬鹿馬鹿しい。

 

目の前のこいつは髪の毛を振り乱して無様に騒ぎ立てるしか脳のない畜生以下の虫。

一人は敵を飲み込むとかいう自滅極まりない魔法を使い、そして敵の魔法を猿真似をするというだけの阿呆。

 

唯一といっていいのか、剣士であるあの女だけは良い剣筋をしている。いや、むしろあいつなら一人でも闇ギルドを存続できるだろう。

こんな馬鹿たちと置いておくのは勿体無いくらいだ。

 

そう言えば前に、シモンが持ってきた心理学の本で読んだな。

ノミは、その体とは比べられないほどにとてつもなく高くジャンプする能力がある。ノミにはそんなジャンプ力がある。が、小さな箱を被せるとその箱の高さ目一杯までしか飛べなくなると。それは蓋を外した後も同じであり、それが生涯の限界となる。

だが、高く飛べる別の個体と共に過ごさせれば、再び自分の能力を取り戻し、高く飛べるようになるらしい。らしいが、さて……。あの女にそれほど手塩にかける価値があるか否か。

 

……ないな。なんなら、やつらの目の前で私が直接息の根を停めてやるのも一興かもしれない。

 

全ては、ゼレフ復活のため。

だが、折角の復活祭ならば余興も必要だろう。

……喜べ、お前たち雑魚にも使い道はある。

 

「ん、ミリアーナか」

 

魔水晶が反応し、そこに映ったのはミリアーナ。

彼女の虎のような目が水晶(ラクリマ)越しにこちらを射抜(いぬ)く。中々の圧力だ。

やはり自分の育てかたに間違いはなかったことを再確認し、笑みが溢れる。

 

「報告を待っていた。それで、奴等はどうだった?」

 

ジェラール・フェルナンデス。

かつての馴染み。私に名を送ってくれた恩人だ。

もちろん彼を招待したのは私だ。ジェラールが聖十になったという情報を仕入れ、直ぐ様フェアリーテイルのマスターへここへのチケットが渡るよう手配した。

まぁ、これは私の案ではなくウルティアの悪知恵だが。

だが、実にいい提案だった。私の恩人に、ゼレフ復活の場へと立ち会わせてやることができる訳だ。

 

なに、ジェラール。礼はいらない。私とお前の仲だからな。

 

「エルちゃん、怖い顔してるよ」

 

「おっと、すまない。つい楽しみでな」

 

「うん。それでジェラールなんだけど……」

 

つい先程、カジノではしゃいでいたところを襲撃させたばかりだ。

裏切り者のジェラールは大層人気で、三人ともかなり乗り気だったようだが……。

 

「ごめんなさい。ジェラールには逃げられた」

 

「そうか」

 

特に、想定外ということはない。なにせ、あのジェラールだ。昔から二手三手先を読むようなやつだ。一筋縄ではいくまい。

 

でも、とミリアーナは続ける。

 

「同じギルドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)を捕まえたよ。うるさいピンク色のお兄さんと上半身裸の変態お兄さん」

 

うるさいピンク色と上半身裸の変態?

上半身裸という語感と共に並べられると、ピンク色という言葉にすら下劣なイメージしか沸かないが……。それはピンクな脳内の男ということか?……トチ狂って変態ばかりのギルドに入ったということか?あのジェラールが……?

 

…………ま……まぁいいだろう。

 

とりあえず、やつの身内を捕まえたというのならそれは確実に餌になる。

 

いくらジェラールといえど、仲間を見捨てたりはしまい。

逃げられた、とミリアーナが言っていた。ということは、こちらへ手を出してこなかったわけだ。それが更なる信憑性を見せてくれた。つまり、まだミリアーナやその他を仲間だと思ってくれているのだな、あの男は。

まったく、相も変わらず馬鹿な男だ。頭は回るくせに感情論で動く。実に愚かだ。

 

「よくやったミリアーナ。それでは、追いやすいように形跡を残しながら戻れ。くれぐれも、捕虜たちは逃がすなよ」

 

「うん。わかったよ、エルちゃん」

 

さてさて、いよいよだ。

楽園の塔(Rシステム)の完成。黒魔導士ゼレフの復活。かつての友人との再開と共に、世界の改新を迎えようじゃないか。

 

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