モンスターイミテーション   作:花火師

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一寸先は純白

「…………師、匠………?」

 

時が停まったその中で、俺の脳みそだけは嫌にフル回転していた。アドレナリンがドバドバである。アドレナリンのナイアガラである。

 

待て。待て待て。

待てい待てい!!(江戸っ子)

 

なんでこんなところにカグラちゃんがいるんだ。

なんでってまぁそりゃあこの子の正規ギルドが仕事として来ちゃったからですよねー。流石の俺でもそれくらいは考えればわかる。

いつもながら帯刀しているカグラちゃんを前に、この状況で「やだグウゼンン~」などとIK○○バリに指を振ってられる程図太くはない。指ごとぶった斬られかねん。

あれ、明らかに闇ギルド討ちに来てるんじゃん。

あれ?明らかに俺も討たれちゃうじゃん。

 

おわた。

 

トージの奇妙な冒険、これにて

 

 

 

 

 

完!!

 

 

 

 

 

 

…………しかしあれだな。近くで見るとなおのこと可愛いな。

まぁ俺にとっては身内的な存在だ。だが身内贔屓(びいき)を抜いても普通に可愛い。超べっぴん。デラべっぴん(雑誌)。

……これで。これでSMの気質さえ無ければっ!媚びへつらうのに!もとい、アタックしまくるのに!

くっ。俺がノーマルなばかりに眺めるだけで留めておくことしか出来ないこのツラさ。世界はいつだって無情だ。

俺が、Mだったなら……っ!Mだったのなら!!

俺の……俺のうさぎドロップ計画。もとい光源氏計画がこんなところで頓挫してしまうだなんて……。

 

血の涙!!

 

 

というか、おや?

気持ちの悪い冗談は置いといて……今の俺、六魔のお面してるんだけど……。

念の為にと髪も染めてるんだけど……。

 

…………なんで俺だってバレてんの?

 

 

愛ゆえに?

 

愛ゆえになのか!?

 

 

 

なら仕方ない(清々流転)

 

 

 

と、とにかくこの場から逃げるか?

……いや、だめだ。

森の中で美少女とキャッキャウフフ男女逆の追いかけっこなんてしてたら、絶対にブレインに遊んでると思われかねない。仕事放って女の子と遊んでると勘違いされかねない。

減給待ったなし!それはイヤァ!らめぇ!

 

せ、せや!

骨格と声を変えて誤魔化そう!(天才)

あと喋りに強すぎる癖つけよ!(アホ)

 

そして刹那的な思考回路は途切れ、世界が動き出す。

少しずつ、違和感の感じ取りにくいレベルで徐々に骨格をブランゴ(歪んだ猿型)へ。そしてクルペッコの声帯を模倣することでその声を別のモノヘ変える。

誰の声って?もろちん、折角だから良い声にしよう。

こんな事もあろうと、どんな声を出したいのかはもう決めているのだ。皆大好きあのキャラである。

どんなキャラなのかは声を大には言えないんだけどね。ふふふ、世の中には著作権というものがありますからね。

具体的には藍染惣様みたいな声にします(直球)。

 

ということで、第一声。んんっと声慣らしをして、数秒の変声期を乗り越えた台詞を披露。

 

「師匠とは誰のことだね。ン僕っイケメンヌッ!」

 

「…………」

 

わーい。いい声でイケメンって言うとシュールでおもしろーい(現実逃避)。

 

あ、刀の柄に手を載せた。

しなやかな指先で柄を握り、親指で鞘を弾いて慣れた手付きで鯉口を切る。抜刀態勢だ。

 

「……我ながら不覚だ。師と六魔を見間違えるなど」

 

刀を背負ってた可愛らしい時代とは打って変わって、随分と様になったものだ。気迫も十分。あんなに小さかったのになぁ。やっぱ子供の成長って早いな。

 

しかし感慨に浸る俺を余所(よそ)に、カグラちゃんはこちらへ斬りかかってくることはなかった。

てっきり逡巡(しゅんじゅん)なく俺の素っ首跳ねに掛かってくるかと思ったんだけど……と頭を傾げる。

そんな俺を置いて、当のカグラちゃんは何やら百面相している。

難しい顔で全身を力ませたと思えば、プスーっと力が抜けたように脱力して時たまへにゃりと表情を崩す。ハッとして自分を戒めるように頭を振っては眉間にシワを寄せて難しい顔を繰り返している。

 

……なにをしてるんだろう。この子は。

 

「き、きさ……きさ…………ま!あ。いや、おま。お、おま…………え?」

 

果たして何が納得いかないのか、ブツブツと一人よくわからない事を呟いている。

 

「……違う。えっと。あな、た?あなた。そう!貴方(あなた)!貴方。……アナタ、か……なぜだ顔が熱い………」

 

俺の困惑した視線に気が付いたのか、頬に手を当てていたカグラちゃんはこっちまでびっくりするほどの咳払いをした。

 

「んん"っ!!!これは一体なんの……なんの魔法だ。イヤに心を乱される上に、私の体が言うことを聞かない。か、刀を抜こうとしても抜けない……わ」

 

なんでそんな少し赤くなりながらキョドってんのさ。いや、キョドってるのか?なんか落ち着かない様子だけども。どうしよう。状況が全くわからない。

一応、俺は今六魔(セイス)な訳で……。別に貴様でいいと思うんですが。斬りかかって来ても不思議はないんですが。

カグラちゃんは俺の立ち位置も汚い私欲も知らない訳ですしおすし。むしろ知ってもドSのカグラちゃんなら喜んで斬りかかってきそう。

 

ハッ!(閃き)

もしかしてカグラちゃん人見知りになっちゃったのか(閃きカグラ)!

確かにわかるぞ。幼い頃は怖いもの知らずで誰彼構わず迷惑をかけたり、昆虫をつついたりするもんだ。でも身心共に成長するにつれて他人が怖くなったり虫やらが嫌いになったりするもんだ。

いいんだ。いいんだカグラちゃん。それも成長さ(暖かい目)。

嫌いなものがある。苦手なものがあるってのは大事なことだ。好きなものだけじゃあ、人並みの嫌悪感を抱けない。痛みや恐怖に共感する能力が欠け落ちてしまう。

好きと嫌いがあって人間は育っていくのさ(劇場版ドラえもんの目)。

魔法のせいにしたっていい。誰かのせいにしたっていい。なんなら俺のせいにしたっていい。いつかそんな自分と向き合える日が来るさ!

 

くっ。子供の成長に目からコンタクトがっ!

ぼく裸眼なんですけどね。

 

「イケ、メぇーン」

 

溢れそうな涙を堪え、俺はそう返すので精一杯だった。

胸が、おっぱいなのです。

 

あ、いっぱいなのです。

 

 

 

 

と、そんな時。

 

 

 

 

「カグラさん、お待ちを。私はその男に用があるのです。今の言葉、とても聞き捨てならない」

 

 

そんなとてつもなく良い声がどこからともなく聞こえた。

 

茂みの向こうである。暗がりの中から響いたその低音で渋味のある声に、俺は意識を引かれた。

そう、その声はまるで、さっきまで真似て遊んでいた藍染惣様の声そっくりだった。

 

茂みの奥にいる。こちらへ迫る葉を踏む音。

果たしてどんなハンサムが出てくるのだろうか。まさかこんなところで藍染惣様本人の御登場じゃあるまいな。物真似してたら舞台奥から本人登場パターンじゃないよな。だったら即刻全身全霊、全速力で逃げるぞ俺は。

勝てないぞ。絶対勝てないぞ。OSR(オサレ)値で言ったら俺滅茶苦茶ド底辺なんだぞ。

フツメンだし。今着けてるお面も格好よくないし。服もちょっと豪華な仕事服(ローブ)着てるだけだし。

なんなら今骨格が歪んだ姿勢の悪い(ブランゴ)おっさんだし(致命傷)。

 

どうしようかと悩む俺。そんな俺の前に、ついにその男が姿を現した。

 

「この私を前にイケメンを名乗るなど笑止千万」

 

盛りに盛られ、セットされたホストのような茶の髪。

 

「夢は寝て見るものだというのを」

 

パリッとした真っ白なスーツに身を包み。

 

「教えてあげる必要がありそうだ」

 

やはり一線を画するような色気のある声。

 

「メェーン。貴女もそう思うでしょう。カグラさん」

 

 

とんでもないブ男が、そこには居た。

 

 

それではご想像下さい。

 

足元から始まる舐めるようなカメラアングル。

その短い足はすぐに映し終わり、ぽっこりとしたお腹がドーン。かと思いきや既に青ヒゲのケツアゴが顔を覗かせ、次に来るのはデカイ鼻と小さな瞳。油ギッシュな顔の中心に寄りまくってるパーツの数々。低身長でありながら、それを誤魔化すかのようなモリモリの髪型。生まれてくる時に神様は福笑いでもしていたのかと言いたい。

はいそして全体図がバーン。何頭身?三頭身?二?

 

正直いって、言葉を失った。

ここまでの衝撃は久しぶりである。今は亡き『しおから』をどっかの変なやつにムシャムシャされていた時以来の衝撃である。

いや、まぁ。なにが衝撃って……。

 

「イケメン代表、一夜・ヴァンダレン・寿。ここに見参」

 

全部だよ(全部だよ)。

 

六魔将軍(オラシオンセイス)と言えど、イケメンの地位を君に譲るわけにはいかないのさ」

 

こいつ馬鹿だ(ブーメラン)

 

「ハンサムはこの世にただ一人でいい」

 

こいつアホだ(共鳴)

 

「世の女性を虜にする私の魅力に、勝てるかな?」

 

こいつヤバイ(敏感肌)

 

俺が喋ることを忘れて呆けてしまうほどに、その男のインパクトは凄かった。もはやリジェクトダイアルである。

 

んんん。いやしかし、不細工をイジルというのは流石に性格が悪いよな。イカンイカン。割りと長いこと見て歩いたこの世界は顔面偏差値が高水準なもんだから、ちょっとばかり虚を突かれたというか、驚いてしまった。

 

「私の美の前に平伏すがいい。六魔将軍(オラシオンセイス)!」

 

うんうん。

そうだよな。全部神様のイタズラだ。別に不細工はなりたくてなるもんじゃない。

彼が今を強く生きているのならそれでいいじゃないか。自分を肯定して生きていけるのならいいじゃないか。誰が文句を言おうが、彼は彼だ。

大切なのは顔の良し悪しではない。人の善し悪しだ。顔がイケメンだからとかじゃない。心がイケメンであればそれでいいんだ。

正規ギルドの一員として闇ギルドと戦いに来た。それだけで立派な話じゃないか。

 

尊敬するよ。言っちゃあ悪いが、その顔だ。過酷な人生だっただろう。それを乗り越えたアンタは立派な男だ。そして立派な大人だ。

 

メンッ(ではっ)!私と踊る前に、君の名を聞いておこう。君はヒビキの情報網にはなかった。何者だね」

 

「あぁ。まぁ知らなくて当然だ。新参だよ俺は。コードネームは『ノイズ(耳障り)』。目付きの悪い陰湿毒男に、うるせえからって名付けられた。よろしくな」

 

メェーーン(なるほど)。では正々堂々よろしく願おう。しかし現実は厳しい。数分後に君は、白目を剥いていることだろう」

 

「おうおう、お手柔らかに頼むぜ」

 

ランゴスタ辺りでいっかな。

チクッと麻痺毒入れて転がして置こう。

 

……いや。よく考えたら不味いかもしれん。

あんまり模倣見せびらかすとカグラちゃんに俺だとバレかねない。小型モンスターやレウスやナルガ、飛竜等のベターな模倣はアウトだ。ぐぬぬぬ。

見せたのが何年も前だから、何を見せたのか覚えてないし。うーむ、ここは普段使わないマニアックなヤツじゃないとダメだよな……。

 

考え込む俺を前に、小さいおっさんは胸を張った。

 

メーン(では)マイハニー(・・・・・)カグラさん。貴女は下がっていてください。ここは貴女の(・・・)一夜が引き受けましょう」

 

 

 

…………………………ん?

 

 

 

「……そう、だな。どうやら私はやつの魔法に犯されているようだ。なぜなのか刀が抜けない。敵意を抱くことも出来ない。気を付けろ、恐ろしい精神魔法の使い手と見た」

 

愛しき(・・・)カグラさん。お任せを。私のパルファム(香り)の前に精神魔法など遊戯に等しい!私の雄姿をっ、ンしかとその麗しき瞳に!」

 

 

…………なぁなぁ不細工。

 

 

てめえ今なんつった。

 

 

俺のカグラちゃんに、てめえその臭そうな汚ねえ口でなんつった。

俺が僅ながら共に過ごして、成長を見守った目に入れても痛くない可愛い可愛いカグラちゃんに、今、なんつった。このテカテカ鼻デカチビハニワ。

 

「マイハニー!見ていてください!」

 

 

………………誰が。

 

 

 

 

………………誰が。

 

 

 

「『MODE:ブラキディオス』」

 

 

 

 

…………てめえのマイハニーだと?

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「一夜ッ!!」

 

射撃魔法の的にされた案山子(かかし)の様に、一夜は黒焦げになりながら落ちてきた。

頭から地面へ衝突しそうになるところを滑っ込みで割って入り、どうにか受け止める。

 

まったく、この身長で重たい男だ。もう少し絞れないものか。

 

正直気は進まない。が嫌々と文句を言っていられる状況でもないだろう。

無駄にハーブの香りのする生暖かいぬるっとした口臭に鳥肌を立てながらも、一夜の口許に手を当ててどうにかまだ息があることを確認した。

よかった。これで死んでいたら青い天馬(ブルーペガサス)に顔向けができない。

 

こんな事は初めてだ。剣士である私が、まるで紙芝居でも見ているような感覚だった。

気がついた時には、一瞬一瞬がコマ送りのように一夜が上空に吹き飛ばされていた。右から左へ、左から右へ。上へ下へと、容赦のない暴力。ビリヤードの玉のようだったと言ってもいい。

この焦げ痕を見るに、殴ると同時に魔法を使っているのだろう。六魔の攻撃した箇所が爆発を引き起こし、それが容赦なく一夜を叩きのめしたのだ。

香りの魔法など使う猶予も与えられず、S級(一流)魔導士に相当する一夜が呆気なく負けた。

 

空から降りてきた六魔の男。奴が着地し、こちらを見た。仮面の隙間から窺える瞳は強烈な憤怒に染まっている。

いったい何にそれほど憤っている。私と出会した際は、本当に闇ギルドなのかと疑うほどに穏やかだったというのに。

 

「カ……。少女よ。その男をこちらへ寄越せ」

 

勝てるだろうか。この男に。

ダメだまるでビジョンが浮かばない。あの速さ。ジェラールの最高速よりも爆発的に速い。

いやそれ以前に。この男へ刀を向けることを私の体が拒否するのだ。刀を抜こうにも抜けない。殴りかかろうにも殴れない。頭と体が一致しない。

この男を見ると、不思議と心が安らぐのだ。私の大切な人だと本能が喜び叫んでいるのだ。恐らく精神に干渉する魔法を行使されたと考えられる。

なんと悪辣で卑劣な魔法か。

 

私は手放そうとしてしまう一夜を強く掴み、揺らぐ自分の心に鞭を打った。

 

「渡せない。この男は、お前には渡せないっ!」

 

「ッ───!!」

 

男はその瞳を更なる怒りに染め上げて頭をかきむしった。

その圧倒的な怒気に当てられ、ビクつく体を抑える。しかし視線は外さない。こんな恐ろしい男から目をそらしてはいけない。

 

「ああああぁあああッッ!!!『猛り、爆ぜろッ!!』クソがぁあああああああああああああああああああああああーーーーーーッッ!!!!」

 

怒りを込めた拳は私たちにではなく、まるで検討違いの方向へと放たれた。

その拳から噴出された少量の黄色い粘液が、男の発生させた風によって飛散する。

 

次の瞬間、森が扇形に消し飛んだ。

 

焼け焦げるのではなく、衝撃で木々が千切れ、地面だったものが抉れてクレーターになる。大樹だったものなど跡形もなく、景色そのものが塗り替えられた。

 

「はぁっ…………はぁ、はぁッ」

 

息も絶え絶えだ。

その男は、力量も雰囲気も圧倒的な筈なのに。それなのに私たちを前に息も絶え絶えに、今にも死んでしまいそうな声で呻きながら膝をついた。

 

「なぁ。チビハニワ。てめえにわかるか。大事なもんが奪われる悲しみが」

 

一夜は答えない。答えられる筈などない。意識などとうにないのだから。

だがそれでも、仮面の六魔は絞り出すような怨嗟の声で呟く。

 

「あぁ。そうだろうな。大事だからこそ認めてやらなきゃならねえんだろうな。でもよ、そんな強く握った手を見せられちまったら、俺にはどうしようもできねえ」

 

まるで子供のように、誰かを奪われた人間のように。その小さな姿は、まるで泣いているようにも見えた。

 

「わかってんだよ!!散々他人に丸投げしておいて、なにを今さら保護者ヅラしてんだってことはな!!」

 

誰に向けているのか。何に向けているのかわからない号哭。なぜか、胸が傷んだ。

思わず伸ばそうとした手を反対の手が掴まえる。

 

「頭じゃわかってんだよ。でも心が頷かねえんだ。大事だからこそ呑み込めねえんだ。いや流石にこれは呑み込めねえでしょうよ。ごめんホントに……ホントマジ無理かぇりたぃ」

 

どれだけ経ったろう。

男は呆然自失としたまま、そうやって空を見上げていた。

ふと、私に視線を向けた。反射的に体が跳ねる。立ち上がる姿を前に刀を握ろうとして、その右手を左手が抑えた。体が言うことを聞かないのだ。どれだけ斬ろうとしても「やめろ」と頑なに拒むのだ。

 

「……なぁ、嘘だと言ってくれ。せめて。せめてそんなんじゃなく他の奴に」

 

こちらへゆっくりと歩み寄る姿に、喉がなる。

ここで一夜を殺させる訳にはいかない。嫌いな男とは言えど今は仲間だ。おいそれと差し出すことなどあり得ない。

刀も抜けない。なにも出来ない。今の私は自分の無力を嘆くことしか出来ない。

私はせめてもの抵抗と、虫の息である一夜を強く握る。

すると男の足が止まった。

 

「……一夜くん、と言ったね」

 

気絶しているのは知っているだろうに、重苦しい声でそう語りかけた。

 

「…………認めてやってもいい。だがせめて頭丸めてダイエットしてから出直したまえ……っ。うぅつれえ……これがNTRか。娘が嫁に行っちゃった時の気持ぢっ!」

 

最後まで何を言っているのかまるで分からなかった。

六魔の男はシクシクと泣き出し、フラフラとした覚束ない足取りで私たちとは反対の方向へと歩いて行ってしまった。

何かの罠かと構えるも、戻ってくる様子はない。魔法や魔力の気配すらないのだ。ただ違和感と謎だけを残して、男は去って行ってしまった。

 

まるで嵐が去った後である。

私は安堵と、出所のわからない喪失感と罪悪感に苛まれながら大きな息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男が向かったその更に奥。

光を呑み込むような、ドス黒い柱が不吉な音と共に天へ昇っていくのが見えた

 

私に予測など出来ない所で、饗宴は始まる。

 

輝くの鱗を纏った狂気の化け物(モンスター)

 

後に聞く名は天廻龍(シャガルマガラ)

 

その純白が振り撒かれるまで後少し。

 

 

ニルヴァーナ。そして天廻龍。

 

 

 

 

善悪が、廻る。

 

 




共に回れや光と影よ
常世に廻れや光と影よ

シトナ村 伝承より抜粋
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