モンスターイミテーション   作:花火師

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時間飛びます。
主人公ウザいです。頑張って付いてきて!(クロックアップ)。多少の変な場所は目を瞑ってください!許してクレメンス!


仮初めの自由

「……はぁ」

 

漂う。

俺は只々漂う。

本当にさぁ、なんなんだろうね。俺は余程運勢が悪いのかな。特に悪いことをした覚えなんてないんだけど。神様に恨まれるような覚えもないんだけど。

水難の相でも出てるのかな。それとも誰かに呪いでもかけられてるのか?

 

にしても……。

 

「……なんで、また海なのよ」

 

プカプカと、俺はいつかのように再び海を漂っていた。

はぁ。海での遭難かぁ。でも久しぶりな気がするな。あれからどれくらい経ったっけ。

二年?三年?よく覚えてないけど。恐らくそれくらいは経ってるな。

 

あー。まぁ、今回はあのクソ竜が原因って訳じゃないからいいんだけど……。

いや、だがそれだと怒りのぶつける場所がないな。それはそれで何とも言えない。

話すと長くなるので割愛するが、まぁゼレフと研究をしてて色々あったのだ(意味深ではない)。

捌いた人面魚を口に運びながら愚痴を溢す。

 

「うん、不味い」

 

相も変わらず魚は不味い。この不細工な魚は相も変わらず不味い。何度でも言おう本当に不味い。

だが、食えなくはない。

 

……いや、食えたもんじゃないよ?実際、こんなゴムみたいな食感の苦い魚なんて食えたもんじゃない。だって、まるでゴムタイヤを食っているような食感だもの。つらたん。

けど、食えればいいじゃないか。俺の中ではそんな価値観がすでに生まれ始めている。

……以前遭難したあの時。あの時の俺は青かった。食えるだけいいじゃないか。

餓死間近をキープの状態で精霊界と長期間殺り合えば、流石に価値観も変わるさ。

 

結局は仲良くなれたからいいんだけどさ。

確かに辛くはあるが、食えるだけありがたいじゃありませんか。

そんなことを感慨深くも思いながら波に揺られていると、ふと、波の間に間に一つの建物が見えた。

巨大な搭のような建造物だ。明らかに人工物だろう。

 

 

「……まじか」

 

なぜだろう。凄くありがたい筈なのに素直に喜べない。普通なら喜ぶべきなのに喜べない。

だって、俺が遭難している最中にいいことなんて一度もなかったもの。

救いの手?ハッ。

地獄に仏?ハッ。

蜘蛛の糸?昇りましょう。てめえらこれは俺の糸だッ!誰の了承を得て昇っとんのじゃ我ェ!!キエエエエエエ!!

みたいな?

 

むしろ泣きっ面に蜂。

カウンターパンチにデンプシーロル!

もしくは、魔王が相討ち覚悟でようやく倒した勇者が、皆の心がとか気持ちがとかほざきながら立ち上がって、魔王につかの間のぬか喜びさせた挙げ句勇者だけかっこよく最後を飾って勝利とヒロインを持っていくあれみたいな!……あやべ、魔王が可哀想過ぎで泣けてきた。

みたいな!そんな感じなんだよいつも!

 

落ち着け。ステイ俺。

ふぅ。いや。いいや!これはきっと運命だ!俺が今まで耐えきったことへのご褒美なんだ!そうに違いない!

 

あれだけの人工物だ、誰かしらいるだろうし、無闇に能力で変形して近づいて警戒心をもたれても困るので、泳いでどうにかその搭へとたどり着いた。

遠目に見えていただけあって、その距離は中々に中々だった。ちかれた。

 

岩肌に両手をついて体を海面から持ち上げる。

服が吸い込んだ水をザバアッと吐き出す。

 

り、陸地……。

よ、ようやく地面だ。

あぁぁぁぁ。地面のありがたさがよくわかるよ。

地面だぁあぁあぁい好き。もう俺地面と結婚する。止めてくれるなお袋。

やっぱり海嫌い。

 

その場で仰向けになると、途端に眠気が襲ってくる。

あー、そういやー、最後に寝たのはいつだったっけ。記憶をだどるのも億劫だ。

 

強烈な眠気。

俺はそのまま睡魔に負け、落ちるように意識を失ってしまった。

 

 

◇◇◇

 

 

どうして、こんなことになったんだ。

 

間違っている……。間違っている間違っている!間違っている!!間違っている!!

 

「エルザ!!エルザァ!!」

 

長い廊下を走りながら、自責の念が押し寄せる。

エルザが拷問室へと連れていかれた。

片目を潰され、心身共に危険な状態であるにも関わらず。

こんな筈じゃなかった。俺が連れていかれるべきだったのに。俺がもっと、しっかりしていれば。

 

「貴様!ここで何をしている!」

 

目先の部屋から出てきた警備に見つかってしまった。だが、今はそんなことはどうでもいい。あとでどうとでもする。

 

今は、エルザを!

 

「うるさい!!」

 

長い間の労働によって鍛え上げられた体を使う。警備の剣を奪い取り、柄で後頭部を思いっきり殴打した。

膝から崩れ落ちた警備を横目で確認すると再び走り出す。

 

その物音を聞き付けたのか、次から次へと警備兵が出てくるが、魔法を使えるものはいなかったようでどうにか切り抜けることに成功した。

もし魔法を使われていたら俺なんてすぐにやられていただろう。運がいい。

警備兵たちとの戦闘で消耗した体にむち打ち、根気で走る。

拷問室が見えてきた。

 

もう少しだ!!

そう思って走る速度を更に早めようとしたその時だった。

 

 

目の前の廊下が吹き飛んだ。

 

 

「え?」

 

目と鼻の先で吹き飛んだ。パラパラと砕け散った廊下の一分が粉になって風に舞う。

搭の中部にあたるここからはとても高い景色と、海の地平線まで見えた。

久しぶりに見たそんな景色の中で、異様な人物が空に浮いていた。否、飛んでいた。

 

両手に二人の子供を抱えて、背中から赤い翼を生やし、深紅の瞳で吹き飛んだ廊下の先を睨んでいた。

 

「年寄りやガキに手ぇ上げるようなクズは消えろ」

 

その悠然とした姿に自然と足がすくみ、震え出す体を両手で必死に抑える。

 

なんだあれは。

 

なんなんだ。

 

とてつもなく恐ろしい。

その姿に、自分の中の本能が恐怖している。その眼に、身体中の筋肉が強張る。彼からは、まるでなにか覇気のようなものを感じる。

 

獲物を狩るような眼。

 

狩人のような眼。

 

 

「ん?」

 

その男は俺の存在に気がつくと、途端にその迫力が薄れていった。

 

「お、いい所に」

 

翼をはためかせ、後ずさる俺の前に着地すると、両手に抱えた子供を下ろした。

確認するような余裕はなかったが、どうやら抱えられていた二人は気絶しているようだ。

それに、同じく奴隷として飼われていた仲間だ。何度か見た覚えがある。

 

「こいつらを頼む。下でなにやら皆ではしゃいでるみたいだから、そっちを手伝ってくる」

 

そう俺に言ったのだろうが、その目はすでに下へ向いていた。

 

はしゃいでる?つまり、反乱ということか?どういうことだ……。

わけがわからない。だが、今この人を行かせてはいけない。エルザを助けなくちゃ。

相手は魔法を使う。俺じゃあ敵わないなんてことはわかっている。だから!

 

「なぁ!あんた、魔導士か!?この先の拷問室で女の子が捕まってるんだ!頼む!助けてくれ!!」

 

「なに?女の子を拷問だぁ?」

 

顔をしかめるその男は、途切れた廊下の先を睨む。

そしてそのまま俺へ目線を移すと、見定めるように数秒間遠慮のない視線を向けられた。

 

「そうか」

 

ガクッと、頭に衝撃が来た。

いや、衝撃といっても大したものではなかったが、ここにくるまでで体力に限界が近づいていた俺は少しよろめいた。

視線を上げると、男は俺の頭に手を乗せていた。そして髪をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる。

 

「後ろでノびてるやつらもお前がやったんだろ?」

 

その問いかけに、俺は頭を縦に振った。

 

「ちっさいのに、よく頑張ったな。女の子一人救うのに全力をかける。それでこそ男だ」

 

とても優しく、見るものを安心させるような笑顔で。

その言葉に、自然と涙が溢れ落ちる。

 

「おいおい、泣くなよ情けない。男だろ?」

 

笑いながらも撫でる力を強め、そう言われた。

そうだ。俺は男だ!こんなところで泣いているわけにはいかない!

服で涙を拭う。

 

「よし、じゃあ、ほれ」

 

そういって二人の子供を抱き抱えると、しゃがんで背中を向けた。

掴まれ、ということだろう。

赤い翼はいつの間にかなくなっていたが、いちいち気にしている暇もなかった俺は、そのまま首に手を回してしがみつく。

 

「いくぞ、噛むから口を開くなよ?」

 

その忠告をした直後、男がなにかを呟いた。

 

突然、景色が後ろへと流れていった。

がむしゃらにしがみついていた俺を、男は手を回して支えてくれているようだ。それがなければ俺はこの速度に振り落とされていることだろう。

 

一息もつかない間に拷問室の前までたどり着くと、背中から下ろしてもらった。

あまりの緩急の激しさに視界がぐらつき、両手を地面についてしまう。

それでもどうにか立ち上がった俺に、男は警備たちが持っていた剣を握らせてくれた。

 

「俺はここで待ってる。お姫様を救ってこい、ヒーロー」

 

「え?でも、俺じゃどうにもできない」

 

「だははは!そこはほら、その子、どうせ初恋の子とかそんなんだろ?その必死なサマ見てりゃわかるわ。だったらお前、そこは自分の手で助けるのがベストだろ」

 

そんで落とす勢いでイケェ!!と、楽しそうに腕組む。

その言葉に、俺の顔が赤くなるのを自覚できた。

 

「そ、そんなんじゃないって!」

 

でも中には拷問官がいるはず、どうすれば。

そんな不安が顔に出ていたらしい。男は俺の肩にポンっと手を置くと自信に溢れた表情で言った。

 

「不安か。なら秘策を教えてやる。もし相手が男だった場合……」

 

「場合……?」

 

なぜか真に迫った声色にごくりと唾を飲む。

 

「股間を蹴りあげろ」

 

「…………え?」

 

股間(キンタマ)を蹴りあげろ」

 

違う。分かりやすく言って欲しかった訳じゃない。

だって…………え??

あまりにもシンプルな攻略法に頭の中でハテナが渦巻いた。

いやまぁ、確かに出来るのならそれでいいのかもしれないけど。

 

「じゃあ、相手が女だったら?」

 

「…………」

 

なにも考えていなかったのか、目を少し見開いて目玉が泳いだ。

 

「女だったら……」

 

「だったら?」

 

「蹴りあげろ!」

 

気持ちのいい笑顔と共にサムズアップを送られた。そんなので本当に大丈夫だろうか。

外で張ってるから危なそうだったら大声だせ、駆けつけてやるよ、と更なる不安にかられる俺の背中を押してくれた。

 

「……わかった」

 

いつの間に拾ってきていたのか、監守のショートソードを押し付けられた。渋々と受け取りその言葉に従うことにした。

こうなった原因は俺にある。だから俺がカタをつけたい。どうにかしてもらうのはどうにからなかった時だ。何もせず頼るだけだなんて。そんなのエルザに誇れない。そんなの“格好悪い”じゃないか!

心の中で男に頭を下げると拷問室の中へと飛び込んだ。

 

 

 

部屋は赤く染まっていた。

 

 

「遅かったね、ジェラール」

 

 

 

その少女の髪と同じ、緋色で染まっていた。

 

四肢の切り裂かれた幹部たちの体が部屋中にばらまかれ、真っ赤な血がそこらに飛散している。

 

 

「……エ……ルザ」

 

少女は、怪しく笑う。

 

「ジェラール。自由はここにあったんだ。本当の自由は、ここに」

 

 

何を言ってるんだ……。

 

その目に、俺は写っていなかった。

見えないなにかを見ていた。そして、真っ黒な狂気に満ち満ちていた。

 

「ジェラール。こいつらが憎いでしょ?あなたにも見える筈よ。ゼレフ(・・・)が!」

 

「……ゼレフ?」

 

困惑する俺に、エルザはため息を吐くと、まるで、飼い主が奴隷を見るような嘲りの目で見下した。

長い間俺たちが晒され続けたような、見下しの目で。

 

「そう、あなたにも見えないのね」

 

「エルザ!そんなことはどうでもいい!早くここから出よう!」

 

「外に出て何をするっていうの?」

 

「自由になるんだ!」

 

「だから言ってるでしょ?自由はここにあるんだよ、ジェラール」

 

どうしたんだよエルザ……。なんでそんなことを言うんだよ。

 

「ここには自由なんてない!あるのは飼い主と奴隷!硬い寝床とカビたパンだけだ!」

 

俺の言葉に、エルザは今まで見たこともないような酷い笑顔で笑い声を上げた。

 

「ジェラール、外に自由なんてないんだよ。だってここにあるんだから」

 

「だから、何を言ってるんだ!どうしたんだよエルザ!」

 

笑いを止めると、冷めた目でエルザは俺へと手の平を向けた。

 

 

「うるさい」

 

 

寒気を感じたその時には既に遅かった。

 

見えない力で壁へ叩きつけられ、肺の中の空気が物理的に押し出される。勢いよく壁へとぶつけられたせいか、脳がぐわんと大きく揺れたような感覚を味わった。

一瞬遠退いた意識の外で短剣が落ちる音がうっすらと認識できた。

 

「…エル……ザ。どうして……」

 

「ジェラール。あなたは拒むんだね、自由を。本当に馬鹿」

 

無垢な笑顔だ。だが、それだけだ。中身のない笑顔。

そして、とてつもなく冷たい。

 

「じゃあ、ジェラールはもういらない」

 

……え?

 

「でも、仲間のよしみで逃がしてあげる。素敵な名前も貰ったしね」

 

なんで……。

 

「スカーレットって名前。結構気に入ってるの」

 

……エルザ。

 

「ねぇ、ジェラール」

 

エルザは足元に転がっている幹部の胴体に足を乗せると、まるで小石を弄るような感覚で、仰向けにうつ伏せに何度も転がす。

 

「あなたは追放で済ませてあげるよ。但し、もうここには戻ってこないで。それと、楽園の搭に関することを誰かに話すのも禁止する」

 

「……エルザ」

 

「仮初めの自由を堪能するといいよ」

 

なんだよ。なんなんだ!もう何がどうなってるんだ!!

 

「でも、誰かに話したりしたら。とりあえず……そうね、ショウ辺りでも殺そうかな」

 

「エルザ……」

 

「戻ってくるようなら、仲のよかった皆をあなたの前でバラバラに裂くから。ああ、今なにかしようとしても無駄だよ。もう人質は取ってあるから」

 

「エルザ!!」

 

 

更に強く壁へ押し付けられ、強制的に話せなくなる。

 

なんで……なんでそうなるんだよ!エルザ!!

なんでお前がそうなった!なにがお前をそうさせた!!

 

「エ……ルザァアア!!」

 

どうにか力を振り絞り、腹の底から声を上げる。

エルザはそんな俺を見て嬉しそうに笑う。

 

「アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

嬉しそうに、楽しそうに。笑う。

 

エルザッ……!!

 

 

「はい、キーック」

 

間の抜けた声と共に、石造りの扉が砕け散った。

 

瓦礫を踏みしめ、そこから入ってきたのはもちろん、先程の男だった。俺の叫び声とエルザの笑い声を聞き付けて入ってきたのだろう。

 

男が現れたせいなのかエルザの魔法が緩み、俺はようやく地面に足を着くことができた。

男は入ってくるなり、怪訝な顔つきで真っ赤な部屋を見回す。そして、エルザを見て、死体を見て、俺を見た。

 

「……よくわからん状況だけど、おい少年。あの子を助けに来たんだよな?」

 

「あぁ」

 

エルザは邪魔者を見るかのように男を睨むと、さっきと同じように手をかざした。

まずい!

 

赤い斑点模様が浮かび上がり、周辺の光が屈折しているのか、そこが歪んで見える。これに俺もやられたのか。

 

「ふーむ」

 

だが、男は特に反応することはなかった。

 

「あ、あれ?」

 

どういうことだ。俺は吹き飛ばされたのに。

疑問に首をかしげていると、彼は軽く手を振るった。

その瞬間、パリィンと甲高い音と共に歪みと赤い斑点が砕け散った。

 

「よくわかんねーけど、錯乱してんのか?お子様にはオネンネして貰おう」

 

この人がエルザを眠らせたとしても、絶対に今の俺じゃ人質に取られた仲間たちを助けることはできない。

 

「ダメだ!エルザに手を出さないでくれ!」

 

「あん?……はいはい。じゃあどうする?」

 

……わからない。俺は、いったいどうすれば!

 

「ジェラール。あなたはここから出ていって」

 

エルザは俺を睨んで再度そう警告する。

 

「その気味の悪い男を連れてね。わかってるんでしょ?もうショウたちは私の手に落ちてる」

 

何かすれば殺す。そうエルザはそう言っているのだ。

 

エルザは可笑しくなってしまい、ショウたちも人質に取られた。

……俺に……俺にどうしろっていうんだ!!

 

「ジェラール。皆を守りたいんでしょ?なら、どうすればいいかわかってるんじゃない?」

 

追い討ちをかけるように、エルザは俺へ微笑んだ。

 

 

「……」

 

 

選択肢なんて、ないんだ。

 

 

「……わかった。いつか……」

 

いつかお前を、皆を、俺は助ける。正気に戻して見せる。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「フェアリーテイルって言ったっけ?」

 

「あぁ。俺はそこへ行くよ」

 

「そっか」

 

 

 

楽園の搭とか言う頭の可笑しな集団が大勢いたところから、俺に着いてきた少年ジェラール。

 

鞭で叩かれて、出血が酷かった子供二人。俺が拾ったあの二人は意識を取り戻しはしたが、どうやらあの搭から出られないらしい。

エルザとかいうあの赤い少女。恐らく彼女が支配しているのだろう。

 

何があったのかは、部外者MAXな俺には全く理解できないが、ジェラールが俺に対して頭を下げた。

 

手を出さないで欲しい、仲間を守りたいのだと。

 

泣きながらそんなことを言われると、流石に手は出せず、ノコノコと俺はこいつを連れて逃げ出したわけだ。

 

……それにあの子の根はそこまで非道ではないのだろう。

だって、ボートくれたんだぜ?なに?天使?天使なの?女神なの?生身で海に放り出されたことしか経験のない俺にとっては天の恵だよほんと。

……この礼はいつか返す。

 

「……」

 

空気が気まずくなり、静かに嗚咽を漏らしてるジェラールの頭を荒く撫でる。

 

「……なんだよ。また、情けないとでも言うのかよ」

 

「いんや。今は我慢する必要なんてねえだろ。泣けるうちに沢山泣いとけ。んで、頑張る時に頑張れ。そんだけだ」

 

頑張る時に泣いてても仕方ないしな。

 

一時間ほど、声を上げて泣いたジェラール。

てっきり泣き疲れて寝てしまうものとばかり思っていたが、ジェラールはこれからの方針を俺へと告げた。

 

「ロブじいさんが言ってたんだ。フェアリーテイルって魔導士ギルドがあるって。俺はそこへ言って、強くなりながら、エルザたちを助ける手がかりを探す」

 

お子様のくせに、見た目に反してしっかりしてやがるよ。

たぶん俺よりしっかりしてる。

 

「へー。頑張れよ」

 

「……やっぱり、弟子にはしてくれないのか?」

 

「はっはっはー、俺はそんな器じゃねえよ。どこにでもいる一般人だ」

 

「一般人はあんなところに単騎特攻なんて仕掛けないと思うんだけど」

 

「そりゃお前、あれは警備であって戦うための兵士ってわけでもないんだろ?ならそれくらい出来るさ。つっても、少し腕に自信がある程度だからな。鼻高々になれるようなレベルじゃないのさ」

 

「少なくとも、空飛んで建物をぶっ壊すような人を一般人とは言わない」

 

ありゃー、参ったね。

実際問題、俺はそこまで強い訳じゃない……てことはないか。

 

ちょっと前まで精霊界と戦争染みたことをしてた身だ。流石に自分を雑魚と下卑まではしないし、するべきでもないんだろう。

けど、弟子を持つような器じゃないのは本当だし。それにどうやりゃあ強くなれるかなんてわからない。

極端な話、強くなりたいなら、闘う。闘うことで強くなれる。それくらいしか俺には浮かばない。事実、俺がそうだった訳だし。

 

「とりあえず、フェアリーテイルとやらにまでは送ってやるよ。確か、フィオーレ王国だったか?」

 

「うん。マグノリアにあるんだ」

 

マグノリアね。

 

……マグノリア?どこかで聞いた名前だ。

マグノリア……マグノリア、マグノリア。…………マグノリア?

 

 

「あ、メイビスの」

 

思い出した。メイビスたちがいたのは確かマグノリアの近くの森だったか。

魔法を学んでた三人組もいたっけ。元気かなぁ。

 

ちょうどいい、様子見も兼ねて行ってみるか。

ジェラール曰く、中々強いギルドらしいし、魔法を使えるあいつらなら所属しているかもしれない。いなかったらまぁ、またゼレフとどこかで会った時にでも聞けばいいか。

 

少し、楽しみになってきた。

 

さぁ行くぞ!目指すはマグノリア!フェアリーテイル!メイビスたんの所へ!

 

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