モンスターイミテーション   作:花火師

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※ギルドメンバー加入の順番違うよ!


乖離

「それじゃ、こいつをよろしく頼むよ」

 

ジェラールの背中を押して、ここフェアリーテイルのギルドマスターである小さいおっさん、マカロフさんに任せることにした。

 

「マカロフさん。ここはロブじいさんがいたギルドですよね?」

 

ジェラールの唐突な言葉にギルドマスターは驚いたように声を上げた。

 

「ロブじいさんが昔ここにいたって教えてくれたんだ。俺も、ここに置いてください」

 

「そうかロブが……。あいつは、元気なのか?」

 

「……わかりません」

 

ギルドマスターの問いかけに、ジェラールは下を向きながら、まるであの時の自分を悔いるかのように呟いた。

 

こんなお子様にあんな狂ったやつらをどうにかしろってのが無理な話だ。

そして更に言うならもう二十歳過ぎになってるというのに大したことを何もできなかった俺自身が恥ずかしいって話だ。

あぁ恥ずかしっ!

まぁ、人質がいるって言うなら無理に手出しはできないし、あの時は仕方なくジェラールに従ったけど。

 

「……そうか」

 

ギルドマスターはなんとなく、そのじいさんの顛末を悟ったのだろう。

フェアリーテイルの紋章を背中に印してたじいさん。恐らく彼がロブだろう。

確かに俺は彼を助けている。だが、死んだか生きてるのか、俺にもわからん。

確かに助けはしたが、そのあと別の子供たちに任せてしまったから。

 

「俺のいた場所やロブじいさんのこと。俺自身、よくわかってないんです」

 

でも、とマスターを真剣な眼差しで見つめる。

 

「どうしてもやらなくちゃならないことがあるんです。でも、力がなきゃできない。だから、フェアリーテイルに俺を加えて下さい!!」

 

その目にはあの少女が映っているような気がした。

よほど大切なんだろう。

 

子供というには余りにも大きな覚悟を決めたような雰囲気のそんなジェラールを前に、「ふーむ」と悩む素振りを見せるマスター。

そりゃ厄介事を背負った子供を嬉々として引き取るわけないよな。なんて俺の考えを他所に、マスターはよかろうと頭を縦に振った。

……どうやらここのマスターはかなりの人格者のようだ。

まさかこの鬼畜度天元突破な世界にこんな人がいるだなんて意外だ。

 

「あ……ありがとうございます!!」

 

「うむ。皆の者!そういう訳じゃ!」

 

マスターが手を叩いて注目を集める。

だが、静まり返ったのも一瞬。暖かい歓迎の声が要所要所から飛ぶ。しかし、その中に、コップを倒すような小さな音が響いた。

小さなそれに、誰かが誰かを小突く。その波が波紋のように広がると、ギルド内は一斉に喧騒に包まれた。

 

そこら中で殴り合い、蹴り合い、物を投げ、机がひっくり返る。

 

集団心理を見てるようだ。

流石の俺も少し引き気味である。賑やかで何やら楽しそうな雰囲気だから、まぁ悪いことではないんだろうけど。

 

「おっと」

 

ジェラールの額目掛けて飛んできた流れ弾の酒瓶をギリギリでキャッチする。

あぶねえな。

 

「あ、ありがとう」

 

腰が引けているジェラールを軽く叩いて活を入れてやる。

しっかし賑やかな場所だな。元気があって何より。

 

何より凄いのは、その中にジェラールと年の近そうな子供まで混じって乱闘していることだ。

桜髪の少年が炎を纏わせて暴れ回り、黒髪の少年がそこら中を氷まみれにしている。

なんだここ。サイヤ人の育成施設か何かか?

 

遂には本格的に魔法を使って暴れ出すやつらが出てきた。すると、さっきまで隣にいた小さいおっちゃんはいなくなり、代わりにそこには巨大なおっちゃんが怖そうな雰囲気で佇んでいた。

 

……間違いない。ここサイヤ人育生所だ。大猿化できるやつがいる。こいつが大元締めか。流石ギルドマスター。

バナナの差し入れで喜ぶかな。

 

「静まれい!!馬鹿共おおおおおおおおおおおおお!!」

 

その怒号に、ギルドそのものが大きく揺れた気がした。

なんつー迫力。流石サイヤ人。ギルドのメンバーも怒られた子供のように全員固まっている。俺は関係ない、みたいな顔してる。いくつだよお前ら。 

ついでにおっちゃんもかなりうるさい。

ジェラールも耳を塞いでしゃがみこんでいる。

 

「今魔法を使ったやつぅ!出てこんかい!ゲンコツじゃぁ!!」

 

ゲンコツ。シンプルで素晴らしい。けどあの図体でゲンコツされたら死ぬ。確実に死ぬ。人力煎餅の出来上がりだ。

 

「……おい、グレイ。早く名乗り出ろよ」

 

「はぁ?てめーが行けよつり目」

 

ボソボソと小さい声で言い合っている二人の子供。さっき俺がピックアップしていた炎と氷の二人だ。

仲の悪そうな二人だな。やっぱ炎と氷で相性が悪いからか?

 

「てめえら二人共だ!!」

 

ズゴン、とおよそゲンコツで出るような音ではないものを響かせた。

木製の床を突き破って下半身を埋められた二人は、そのまま白目を向いて気絶している。

 

おい、マスター。あれ、大丈夫か?死んでねえか?

マスターよ、ジェラールがビビってんぞ。

あ、ちなみに俺もビビってるよ。

 

「ま、まぁまぁ、落ち着けよマスター」

 

「んんぅ?おぉ、すまんのぅ」

 

俺がそうひと声をかけただけで落ち着いてくれた。うん、話をちゃんと聞いてくれるタイプでよかった。

 

「アホ共は置いといて」

 

そう続けながらも、マスターは大猿化をやめて小さく戻った。

なるほど、巨大化できる魔法か。面白いな。

 

「今日から我らがフェアリーテイルの仲間となった、ジェラールだ!」

 

ジェラールの背中を押してやると、一度に視線が集まった。

緊張した面持ちながらも、胸を張って、ジェラールは全員を見回す。

 

「ジェラール・フェルナンデスです!よろしく!!」

 

歓声。

今度は全員の歓声によってギルドが震えた。

やれ酒を持ってこいだの、やれ踊れだの、やれ喧嘩しろだの、やれ賭けろだのと殆ど全員が騒ぎ立てる。

ジェラールはいつの間にか復活していた桜髪の少年に引っ張られて子供たちの中へと入って行った。

 

うんうん、子供は元気が一番だね。

カウンター席に座ってそれを眺めていると、女性からジョッキを差し出された。

ほぉ、酒とな。久しぶりに飲むなぁ。

……あれだ。趣向品自体、もう何年も手をつけてない。正確にはこの世界に来てからかな。

 

ここに来る前の生活は……ぶっちゃけよく覚えてない。覚えてるものといえば名前と、あと雑学やらあっちの世界の知識とか。そんなもんだ。親の名前も、顔も覚えちゃいない。

思い出せない。

 

「お前さんは、うちにゃ入らんのかい?」

 

マスターから唐突にそんな質問をされた。

 

「ん?」

 

フェアリーテイルに?俺が?

 

「俺は遠慮しとくよ。残念ながらここに来たのも、そういう用があったからってわけじゃないんだ。ただ、あいつが行きたいって言うんでね」

 

顎でもみくちゃにされているジェラールを指すと、ワインを一口煽る。

うっま。酒うっま。

 

「そうか。まぁ、飯でも食っていけぇ。うちの仲間になったガキを、ここまで連れてきてくれた恩人ってことでな」

 

「そりゃありがたい。喜んでご相伴に預かろう」

 

とか冷静を装いならが言いつつも、内心では狂喜乱舞だったりする。最後に食ったのは人面魚か。ようやく人が食べれる物を食べれるのかぁ、ありがたい。それだけでもここに来た甲斐があるってもんだ。

 

「おぉぉぉお」

 

出されたステーキを見て、俺は大いに興奮していた。

 

フォークで肉を抑え、ナイフでひと切れ裂く。中から溢れ出す肉汁に、溜まった涎を飲み下し喉を鳴らす。

 

「い、いただきます」

 

切り取った肉を、一口放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

ぇ……。

 

 

 

 

エェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェクスタァァァァァァァァァァァァァァァスィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!

 

 

 

 

「はぁぁぁ~」

 

「おーい。どうしたんじゃー?そんな今にも昇天しそうな顔で微笑みおって」

 

「……生きてて、良かったよ。俺」

 

「喜んでるようで何よりじゃな」

 

はぁーーーーー。

 

感激の濁流が両の目から溢れだす。

俺、もう、ここに、住む。

 

「何じゃ、突然泣き出しおって。きぃもちわるいのぅ」

 

ああぁぁぁあっ!

ポテトに塩がかかってるぅ!!うんまぁああい!!

え?なにこれ!?肉にソースぅ!?ちょ!スゴい!え!?なにこれ!?うま!!

ちょっ!ちょっこれ調味料!?ああああぁぁぁあ!!

俺、もう今日死んでもいいや!!

 

「いやな、まともな食事をするの、二年ぶりなんだ。そりゃ泣けてもくるよ」

 

一瞬で完食したステーキに、ご馳走さま、と手を合わせる。

本当に久しぶりの食事でしたありがとうございます。味付けされたものなんて何年振りか。果物や香辛料を使った料理だなんてもう本当に感激です。雨霰ですわ。

このご恩は一生忘れませんとも。

 

「二年ぶりって……。どんな生活じゃ。仙人でも目指しとるんかぁ?」

 

んな訳なかろう。誰が仙人だよ。どちらかと言うとそれあんただろ、いきなりおっきくなるし。

……あー、そうだ。飯のお陰ですっかり忘れてたけど聞くことがあったんだ。

 

「なぁ、ここに……」

 

いや待て、メイビスたちの場所を聞きたい訳だが、幼女を名指しとなると変質者として見られるかもしれないな。……仕方ない。

 

「ユーリってやつここにいるか?」

 

なんとなく、一番印象的だった変態ガチホモ金髪の名前を出してみると、ギルドマスターの顔が途端に険しくなった。

 

「ユーリ?うちにゃそんなやつはいないぞ」

 

「あれ?んじゃプレヒトとかウォーロッドとか、メイビスもいないのか?」

 

おや?ここに所属してるんじゃないのか。

マスターの顔が更に厳しくなると、カウンターへ体を向けた。そのマスターの表情が他のやつらに見られないようにするためだろう。今の顔つきはさっきの垢抜けたものとは打って変わり、真剣そのものだった。

 

「お前さん。なにもんだ?なぜあの方々のことを知っておる」

 

「なにもん?なにもんっつってもなぁ。あいつらの……」

 

あいつらの?うーん。そこまで仲良くなったわけじゃないけど……。

まぁ飯を貰って決闘(笑)までした仲な訳だし……うむ。

 

「友人かな」

 

うん、正しい友人の線引きなんてないし、まぁ友人として認めてやろうではないか。かっかっかー。

 

なぜか黙りこんでしまったマスター。

……なんだろう。なんか空気が悪いな。別にあいつらを知らないっていう反応でもないし。というか知ってるみたいだし……。

……なに?この空気、俺のせい?ちょっと軽めのフォロー入れとく?

 

「中でもユーリなんてよ、俺に勝負しろーなんて突っかかってきてさ。あの時のは驚いたぜHAHAHAH」

 

……どうだ?

ちらっと顔色を窺うが、マスター、動じず。

おおう。なんだこの反応。全くわからない。怒ってるのか?

 

「そうかい。確認させてもらうが、あんたの名前は『トージ』。なんだな?」

 

黙っていたマスターがようやく口を開いた。

おや?名前を言った覚えはないが……。あいつらから聞いてたのか?

 

「そうだけど……。まぁ細かいことはどうでもいいんだ。あいつらは元気にしてるか?」

 

「初代ギルドマスター。メイビス」

 

気軽に聞いてみると、ギルドマスターは、重々しい口調でそうメイビスの名を呼んだ。

 

「は?」

 

突然何を言い出すんだ?

 

「プレヒト・ゲイボルグ。ウォーロッド・シーケン。ユーリ・ドレアー。彼らは……」

 

マスターは酒を一口で飲み干すと、言う。

 

 

 

「このワシが三代目を努めるここ、フェアリーテイルの創立メンバーじゃ」

 

……は?どういうことだ?ってことは、あいつらはあの時すでにギルドに所属していた?

……いやいや待て待てだったら前提が可笑しくなる。創立メンバーなんだとして、今が三代目だと?創立メンバーがあんな若いなんてありえるのか?

 

「そして初代ギルドマスター。メイビス・ヴァーミリオンは」

 

 

 

一〇〇年前に死んでおる。

 

 

 

……なんだと?

 

あの子が一〇〇年も前に死んでる?あり得ない。だって二年前に俺は、確かにあの子に会ったんだ。

他の野郎三人とも、確かに会った。

 

あり得ない。

 

 

あ、そうか。

 

 

気づいてしまった。つまり……。

 

 

 

 

あいつら幽霊だったのかァァァアアアアアアアア!?

マジで!?マジものだったの!?モノホンだったの!?ウッソォォォオオオオオオオン!!

 

 

はぁ。

 

…………なるほど。なるほどなるほど。なんとなく察したよ。

そういえば精霊界にいた時、精霊王が言ってたっけな。あの時は、大したことはないだろー、なんて軽く聞き流していたけど。もっとよく聞いとくべきだった。

『精霊界と人間界の、時間の流れは違うのだ』とかなんとか。

 

ようするに俺は。一〇〇年単位で一人時間旅行をしてたってことか。浦島太郎って訳だ。笑えねえ。

……じゃあ、恐らく他のやつらも死んでるのかな。ゼレフも……。

 

せっかく出来た友達だったのに……。

 

 

はぁ。クッソ。

 

……となると、関わった人誰も生きてないのか。

 

「それを踏まえてもう一度聞くが。お前さん。なにもんじゃ」

 

今度の旅の目的は、墓参りかなぁ。

なんか、一人取り残された気分だ。憂鬱だよ。

 

「俺は、ただの一般人だよ。旅人だ」

 

俺もワインを飲み干して、机にうずくまる。

かぁー!……本当にもう。なんなんだこの世界は。俺にどれだけの仕打ちをすれば気が済むんだ。

人生ハードモードもいいところだ。本当に。

……たははっ、神様ってやつは、とことん俺に厳しいね。俺がいったい何をしたってんだ。やっぱ鬼畜だ。鬼畜だよこの世界。

 

「そうかぁ。とりあえず、お前さんが『トージ』だってんならぁ、文句言ってやらにゃあなぁ」

 

「文句だぁ?」

 

「あぁ、そうだ」

 

マスターはワインを更に大きなジョッキで受けとると、それをぐいっと飲み干す。

 

「ユーリ・ドレアーは、ワシの親父なんじゃよ」

 

「ブハッ。本当かよ。似てねぇププッ」

 

「そこ笑うとこじゃないわぁい!ったく。お前さんが雷の魔法で親父を感化させたせいで、ワシにまでとばっちりが来たんじゃよ。やれ雷だぁそれ雷だぁと」

 

「あー、そういえば、あれを見せたあと凄く興奮してたしな」

 

「全く!」

 

「そう怒んなよ。血圧が上がるぜ。『坊主』」

 

「ボウッ……ぐぬぬ。否定できんところがなんとも言えん。というか、なんで一〇〇年前の人間が生きとるんじゃ!まずそこが可笑しいじゃろ!」

 

「だははー、企業秘密だよ」

 

「しかし、そうなると、お前さんもフェアリーテイル創立に関わっとったのか?」

 

「あー、いや。そこまで関わってはいないな。俺があいつらと会ったのはこのギルドを作る前のことだろうな。たぶん」

 

「そうかぃ」

 

「おいおい、大丈夫かよ。そんな一気にいって。ぶっ倒れるぞ」

 

「酒はぁ!飲んでもぉ、飲まれるな!!」

 

「なんだよ、もうだいぶ回ってるんじゃねえのか?」

 

「ぬかせぇ!それと今更口調を改めるつもりはないぞぉ!白々しい空気になるのは目に見えてるんでのぉ!」

 

「構わないよ。……どちらかっていうと俺の方が年下だし」

 

「なんじゃとぉ?よー聞こえんわ!もっと声を張らんかぁ!!」

 

「はいはい。酔っぱらいの相手は辛いね」

 

「酔っとらーーん!お前さんも飲まんかホォレエエ!!」

 

「おう!」

 

「そんじゃあジョッキを掲げいぃ!」

 

「はいよ」

 

 

「「乾杯!」」

 

 

 

そっかぁ。もう。誰もいないんだな。

 

一〇〇年、ね。

 

 

……一人か。

 

 

 

──わらえる

 

 




名前:天貝刀児
愛称:トージ
好きなもの:美味しいもの 友達
嫌いなもの:黒い竜
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