書けない……。
ので、こちらを投稿。
すっごい精神状況出てるとは思いますが、ご容赦を。
j月 l日 晴れ時々瓦礫
爆破テロなう。
ギルドに街壁内環状トロッコ敷設計画の微修正の申告しにいったら、結構な規模の爆破テロっぽいのに巻き込まれますた。
裏路地が爆心地っぽいけど、飛んできた瓦礫で頭が潰れて腕がもげかけてたっぽい。
まぁ、体力が残り3になってた代わりに瞬間的に再生してたらしいし、その瞬間を目撃したのもクリスだけみたい。
こんな調子でこれからも人間であれるのか。 流石にちょっと不安になったなぁ。
でも一緒にいたクリスが、自分の陰にいたおかげで軽い打撲ですんだのは本当によかった。
それだけが救いだね。
今は自宅で、事情聴取を代わりに受けてくれているクリスがくるのを待っているところだ。
目の前で知り合いが頭パーンして、瞬間的に再生するなんてのを見せてしまったクリスにこそ休息は必要だと思うんだが、どうにも彼女には強くいえない。
なんというか本当に心配してくれて、気遣ってくれるんだよね。
人間らしい彼女にこうも人間扱いされるのは逆に申し訳なくなるけど、でも嬉しいことでもある。
複雑な気分だ。
追記
クリスは夕方頃にきたが、今日は疲れたのでまた明日くるそうだ。
それと寝る前に気づいたのだが、インベントリに常備している『木』がなくなっていた。
それ以外はそのままだし、最後にインベントリを開いた朝自宅を出る直前にはまだあったから、どこで消えたのかは不明。
明日補給しておこうと思う。
j月 m日 晴れ
家屋の倒壊3件、損壊5件。 裏路地の地面にクレーター。
死者最低3名、重軽傷者20名超。
以上が今回の事件での被害だそうだ。
朝一で教えにきてくれたクリスもだいぶまいってしまっているようだが、今朝起きてから自分が気づいた仮説を説明、簡易的に検証した結果、さらに顔色が真っ青になってしまった。
爆心地近くにいたと思われる冒険者(ミンチより酷くて蘇生不能。 かろうじて無事だった冒険者カードで判断したそうな)の職業は盗賊。
そして盗賊のスキルであるスティールの能力は、『対象の所持品をランダムで一つ奪う』。 ちなみに財布などが対象になった場合、中身ごとになる。
なお狙った物が奪えるか、大切な物が奪われないかは対象と行使者の幸運値が関係する。
クリスにインベントリ内に一つだけ残した『木の棒』をスティールしてもらった結果、成功している。
検証し忘れていた、スタックしたアイテムをそのまま出したらどうなるかを試した結果。 『たいまつ』二つをスタックして、深い穴に放り込んだところ盛大に爆発した。
おそらくスタックしたアイテムが同時に、同一の場所で実体化しようとした際に重なって実体化してしまい、とんでもない密度と高圧力になり押しのけあって大爆発といったところか。
そして昨日インベントリから消失していた『木』、約15個。 スタックして一つに纏めてあった。
後はお察しという奴だ。
この件が事実だとすれば、『チェスト』や『かまど』等のインベントリを備えた道具類はアイテムを大量に内包している以上、壊れた場合の被害が想像もできない規模になりかねない。
もちろん自分が死亡した場合も同様の惨状が懸念されるため、この手の道具類や自分自身も、可能な限り人のいる場所からは離れたところに移動させるべきだろう。
第一、そもそも自分はレベルアップによるステータスの強化ができない上に素の身体能力も地球での少し鍛えた人間程度。
クラフターとしての能力で常人より死ににくくはなっているが、所詮は死に戻り前提ゲームのプレイヤーキャラクターの能力。 決して過信はできない。
それに自分はマイクラでも直接戦闘をおこなうなら鎧で防御をあげて、アイテムでバフかけて、強い剣で被弾上等の殴り合いだったからなぁ。
反射神経とかが絶望的でアクション関係は苦手だったからね。 アクションゲームは好きだったけど。
基本的に有利な地形やトラップを造って、安全な場所から殴るか自動で敵を殺してアイテムを回収する施設を造るかだったから。
安全確保のために諸々を移動させなきゃだし、その前にまだまだ検証してないことは多そうだし。
明日は大親方にそのことを伝えて暇をもらってから、作業に入らないとね。
エリス教会の礼拝堂。 そこに並ぶ椅子の一つに腰掛け、クリスはまた頭を抱えていた。
理由は気にかけている相手の頭が目の前で柘榴のように弾け、時間を巻き戻すように瞬時に直った光景を目の当たりにしたことではなく。 その結果判明した致命的な現実についてである。
現在の彼は『人らしくある』ことを第一に行動している。 つまり、『自身が人ではなくなっていることを自覚している』のである。
実際彼の存在は現在『人に能力を付与している』のではなく、『元人だったモノが能力の作用により人として再現されている』といった方が近い状態。
それ故に積極的に善良な人々と交流させることで、彼の人間性を取り戻させていく予定だったところに今回の事態である。
極一部の心ない者達の、何気ない行動一つで大惨事を発生させる可能性を内包した彼は、善良な人々から離れざるを得ないだろう。
おまけにやらかした盗賊はアクシズ教徒であり。 アクシズ教徒に過剰な対応をしてしまった彼に嫌がらせをしようとしていた可能性が高い。
今後も同じような事態を招かないようにするためにも、速急の対策が必要だろう。
彼も自発的に対策に協力してくれるようだし、そこはまぁいい。
最大にして最悪の問題は。
「(なんでっ、今! ここに!! 先輩がきてるんですかぁー!!??)」
転生者であるカズマ少年が転生特典としてアクアを指名し、結果ここに降臨()する事になったらしい。
今まで遭遇していなかったのは二人を会わせるのは危険とカズマ少年がそれとなく遠ざけていたからだが、今回のアクシズ教徒の自爆行為がきっかけでアクアが暴走を始めそうになったため、ダクネスのすすめでエリス教徒であるクリスに相談しにきたのだった。
とりあえず今回の顛末の詳細をある程度ぼかして説明し、アクアの押さえを続けてもらっているがやはり一時しのぎになるだろう。
「あぁもう、なんでこうなるのか……」
なにをやろうとしても次々と状況が悪化し、かといって一朝一夕に解決できる手段は存在しないため地道に取り組んでいくしかない。
そもそもが天界規定に抵触しかねない存在である彼を消去しようとする動きを、その状況が天界の一員であるアクアの作り出したことであるというところから説得して静観にまで持って行ったのはほかならぬエリスである。
天界の汚点となった彼を、ただ消去して存在しなかったことにはできないと行動したのは後悔していないし、するつもりもないと胸を張っていえる。
ただ、こうして彼についての問題に向き合っていると自分のいたらなさを痛感させられ続けるのが苦しいのだ。
そして彼にとって一番大切な、心のケアについて自身にできることがあまりに少ないことが悲しいのだ。
エリスとして今彼にできることは、信仰の象徴として人へと導くことだけ。
クリスとしてできることは彼が人の社会にとけ込めるよう、橋渡しとフォローをすることだけ。
どちらも様々なしがらみや事情で制限がある以上、劇的な効果をもたらす行動ができないのだ。
さらに言うなら、彼は時限爆弾でもある。
彼を構築する存在そのものと化した『アクアへの憎悪』は、すさまじい殺戮衝動や破壊衝動として現在進行形で膨れ上がり続けている。
これまではモンスター狩りや建築などで増加を穏やかにできていたが、そうもいかなくなってしまった以上発散できずに急速に膨れ上がるのは確実。
限界を超えたときに彼がどんな行動にでるかはわからない。 だが、よい方向には確実にならないだろう。
さらにいうならこの世界は、精霊などの人の強い想念の影響を受ける存在が多く存在している。
特に負の感情を糧とする悪魔にとっては格好の餌になってしまうだろう。
むしろ煽り立て、争乱の種とする可能性が非常に高い。
「あぁ……本当に、本当にもうどうすれば……」
一人全てを知る彼女は頭を抱え、痛む腹に手を当てるのだった。