これから先、ノープランなんだよなぁ。
k月 t日 晴れ
今日は珍しい、というよりとんでもない出会いがあった。
なんと自分以外の転生者である。
名前は『佐藤和真』。 ここではカズマと呼ばれているし、そう呼んでほしいということだった。
なんでもアレに転生させられたらしいが、その際人生否定に人格否定までされたそうだ。
やはり殺さないと。
だがアレに与えられた力では、奴を殺せないと考えるしかないだろう。
この世界で新しく自分だけの力を手に入れるしかない。
だが調べれば調べるほど、神を殺すとされている力は神に与えられているか、神と敵対する悪魔と契約するかの2択しかないようだ。
それにこの世界で一般的なレベルとスキルというシステムは神によって運営されているのだろうし、レベルを上げて強力なスキルをとろうとも神を相手にすれば剥奪されてしまう可能性が高い。
やはり悪魔との契約を視野に入れるべきか。
しかしエリス様の教えでは悪魔はこの世界より廃すべき存在だ。
人の感情を糧にするというところから、精神生命体的ななにかではないかと推測できる。
敵対する理由も、糧にする感情を喚起するためにする行動が原因だと思われる。
絶望や怒り、嫉妬に憎悪。 負の感情を喚起させようとしてくるのなら、まぁ妥当か。
怒りや憎悪ならそこらの人間にそうそう負けるつもりはないし、それらを求めるとされている悪魔のなかで神殺しに力を貸してくれそうな悪魔を探すくらいはしてもいいだろう。
追記
教会に石を投げ込んできたのがいたので、『石』を投げ返してやったらクリスに怒られた。
『目には目を、歯には歯を』。
本来やりすぎな報復を戒める言葉であるが、逆に言えば同じことまでならやり返してもいいのだ。
こればかりはクリスの注意であっても聞き入れることはできない。
『一罰百戒』。
次があればもう二度と、しようとも考えつくこともないように、見せしめをする所存である。
もちろん、エリス教の評判を落とさないように注意するが。
「もう二度としない! だから出してくれ、もういやだ、くらいよ、せまいよ、こわいよぅ……!!」
「それで?」
「もうエリス教に手を出したりしない! 石を投げたりしない! タチションも落書きもしないっ、真面目に働くからっ!」
「そうなんだ、で?」
「アクシズ教のみんなにもいうから! おれがちゃんとさせないから! だがらだじでぇぇえええ!!」
「ふぅん、で?」
「ああぁぁあぁあぁああああぁあああぁぁ……!!」
「「「「(うわぁ……)」」」」
人通りの多い道端にて。
積み上げられた、一人では持ち上げることも困難な大きさの石レンガの中から響くくぐもった声に対し。
まるで興味のない相手に対する生返事を返しながら、石レンガに腰掛けてなにやら本に書き込んでいる青年の姿があった。
ちょうど人一人が収まるサイズに積み上げられた石レンガの側面には、『私はエリス教会に石を投げてステンドグラスを割りました』と書かれた看板が張り付けられている。
その光景を遠巻きに眺める人だかりに紛れつつ、カズマは思う。
「(よかった……、昨日誤魔化せて本当によかった……!)」
と。