hunter×hunter~クラピカの大冒険~ 作:しんていしめー
「ここが僕の家だよ」
喚くジャイアンを後にし、密集する住宅街を歩いていたのび太が立ち止まる。のび太いわく頼りになる友達、ドラえもんなる人物とコンタクトをとるにはまずは自宅に寄り説明の出来ないある方法を行わなければならないと言う。とりあえず、自宅にいけばわかる。と、顔いっぱい?マークを全面に出すクラピカにのび太は道中、語った。
「さぁ、入ってよ」
クラピカの目前には、THE・普通の民間。もう特徴のないのが特徴です。ってな風の木造二階建て一軒家が家々に挟まれるように建っていた。特に真新しい感じはしないが、そこまで古くはない様子だ。
「すまない。お邪魔させて貰う」
玄関に入る二人。玄関もその先の廊下、すべてが普通。
「コラのび太っ‼」
と、廊下からプリプリ怒りを露にした1人の女性が姿を表した。にげる。しかし、まわりをかこまれてしまった。そんな感じの絶望がのび太に襲う。
「宿題もしないで遊びにばかり行って!しかも、なんですかこのテストの点数わ!」
「うわぁ!ママ、勝手に僕の部屋に入ったの!?」
ママがのび太につきだすように見せたのは、一枚の紙切れだった。○よりレ点や×の多い、上隅に赤く10点と手書きされた紙。のび太が母に見つからないように必死で隠した算数のテストであった。
「ひどいよママっ!あれほど部屋には入らないでって言ったのに!」
「今はそんな事どうでも良いのですっ!学生でありながらこの体たらく!もっと精進しなさい!」
「それでも頑張ったんだよぅ……」
昔はもっと酷かった。何をしても毎回0点であった。学友逹から知能障害だとも笑われたが、気にせずヘラヘラとしていた。しかし、のび太は努力をし始める。今はいない友人をがっかりさせないため、少しずつでもいい。変わろうとのび太はペンをとり机に向かったのだ。歯を食い縛り、眠気が襲うと自分にビンタし励んだ勉強。そんなのび太が文字通り血を流しながら掴んだ努力の結晶。それが母の持つテストの点数であった。毎回0から10。それは凄いことじゃないか。
「あんな机にへばりついて勉強したのにこの点数とはどういう事ですか!しかも頬からは血を流して……。一体全体なんにをすればあんな……って、あら?」
ママがのび太の背後にいるイケメンに気付き、説教の言葉を止める。
「のび太。そちらはどなたかしらぁ///」
ママが頬を赤らめながらのび太に言った。心無しか表情はうっとりとし、明らかにメスの顔だった。説教の話を反らすチャンスだと思い、のび太はあざとくクラピカを自己紹介をした。
「そうだよそうだ!こちらクラピカさん!さっき空き地で友達になったんだ。ちょっと困っているみたいだから助けてあげようと思うんだ。いいよね、ママ?」
初対面の背広姿の外国人と友人になってきたらさすがに母も卒倒する……「あらぁそうなのぉ///」しませんでた!
「私はクラピカ。邪魔をする。それと、息子さんのお力を借りる事になってすまない」
「オホホホホっ。全然いいのですのよ。そこの愚息ならいくらでもお使いになってオホホホっ///」
「ママったら酷いやっ!いこうクラピカ」
無理やり母をはね除け階段を上がったのび太とクラピカ。階下からは、「ごゆっくりなさってねクラピカさん//」と母の声が聞こえた。
「おかしなママだなぁ。ゴメンねクラピカ。ママが変な感じで」
「愉快な母上であるな。のび太が羨ましい」
「羨ましくあるもんかっ!うっとおしいだけだよ!」
「いや、羨ましい限りだ。私にはうっとおしがる母も…」
「ーーさあ、僕の部屋だよ」
ふと一抹の影がさすクラピカの言葉をのび太が遮った。
六畳半くらいの部屋は、やはりTHE・普通であった。
畳に二人は腰を落ち着かせる。
「信じられないかもしれないけど、ドラえもんに会うにはまず未来にタイムトラベルしなきゃならないんだ」
「タイムトラベル?」
開口、のび太はとんでもないことをクラピカに言った。
「そこの机の引き出しにタイムマシーンがあるんだ」
指さすは何のへんてつもないコクヨの勉強。とてもタイムマシーンが入るとは思えない。が、そもそもタイムマシーンの大きさがどんなものかがわからないクラピカだ。試しに引き出しを開けてみる。
「これは……」
引き出しの中の光景に言葉を失うクラピカ。なんと説明すればいいだろうか。そこには無限の空間が漂っており、一つの機会、乗り物のような物体が浮かんでいたからだ。
「あの浮かんでいる機械がタイムマシーンだよ。あれで未来き行ってドラえもんに会いに行く」
「疑問はたくさんあるのだが、まず、未来といってもそれは100年後、10年後、はたまた1分先と色々あるだろう?そのドラえもん氏がどのくらい先にいるかはわからないが、どうやって……そこらへんを……こう……」
あまりにも規格外な物事に、どう言葉にしていいかわからないクラピカ。のび太は答える。
「僕もよくわからないけど、行きたい時代をあの機械にセットすれば目的地に自動で向かってくれるんだ。とりあえず乗った方が早いかも」
ごたくはいいから早く乗れ。作者の執力ではタイムマシーンどう書き進めていいかわからんからから早く乗れ。
「了解した。取り敢えず乗ってみることにしよう」
引き出しに足をかけ、空間に身をのり出すクラピカ。うまくタイムマシーンに着地すると、足場が少し揺れた。
「落ちないよう気をつけてね」
のび太が後に続く。
(タイムマシーンとは、思ってたよりも質素な感じなのだな…)
二畳くらいの四角い鉄板の上部に操作盤と思わしき機械が積んでいるだけで、エンジンや車輪のようなものは見当たらない。もっと大型でガチガチとしたメカっぽいのを想像していたクラピカは、少し拍子抜けをしたのであった。
「さてドラえもんがいる時代は……こうして…」
操作盤をたどたどしくいじるのび太。あまり操作には慣れていないらしい。
「思ったよりも乗り心地は悪くはないな。少し揺れるが、あのハンター試験の船よりは全然マシというものだ」
試験の始まり。あの船でレオリオ、ゴンと出会い様々な試練を乗り越えてきた。いまごろ皆はどうしているだろう。
「うーん、思ったより操作が複雑だなぁ…。ドラえもんはあんな簡単にやってたのに。おっと、これじゃ過去に飛んじゃう。調整しないと…」
「?このタイムマシーンは過去にも行けるか?」
ふとした疑問に、のび太が手を止めずあたりまえかのように答える。
「もちろんさ、どんな時代だって行けるよ。ここをこうしてっと…、よし。出来た!」
過去にいける。どんな時代だっていける。のび太のその言葉に、クラピカはある考えが脳裏から離れずにいた。
過去にいけるなら、あの復讐の始まり。我が同胞を根こそぎ無に返したあの惨殺を止められるのでわないか!?
消えた温もり。消えた親友や家族。代わりにあるのは血にまみれた景色。蹂躙された同胞の瞳が、無念だとクラピカに憎悪を添える。やり直せるなら何が何でもやり直したい。この命が尽き果てようとも…。
クラピカの瞳が赤く染まる……。
「クラピカ?どうしたの…?」
クラピカのただよらぬ雰囲気に気付くのび太。血を塗ったような瞳がのび太をとらた瞬間、悪寒がのび太の全身を貫いた。
「ク、クラピカ?どうしちゃったのさ…」
震える身体を押さえきれない。殺気という概念を本能でのび太は感じとっていた。
「のび太…。私にタイムマシーンを委ねさせて貰おう」
「…え?どういうこと?」
「事の元凶…。過去に戻り我が同胞を救う」
「そんなの駄目だよ…!歴史を勝手に変えてはいけないんだ…。タイムパトロールに捕まっちゃうよ…!」
「タイムパトロールとやらがよくわからないが、それでも私は変えねばならない」
「捕まったら、もう一生檻の中かもしれないんだよ!?」
「かまわない」
「駄目だよそんな!自分を捨ててまで…」
クラピカの殺気が鋭く尖る。
「黙れ……!私は…、私はっ……!」
ーーー命を賭ける。
「うわぁ!待って、ちょっ……」
「すまない……、のび太」
「うわぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!」
時空へ放り出されるのび太。空間は底無しなのか、あっと言う間にのび太の断末魔はクラピカの耳には届かなくなった。静寂がタイムマシーンを包む。
「……のび太、君の事は忘れない。我が復讐の糧の一部としよう。幻影旅団待っているがいい……!」
時空間に亡き友人に祈りを捧げるクラピカ。忘れない、君の優しさ。君の勇気……。
「ーーーって、何っ!?」
「死んだと思ったかいゲスピカさんよぉ……!」
クラピカの足に。足に何が時空へ引きずりこまんとしていた。目を見開くクラピカ。足には亡者の手ががっちりと掴まれていたからだ。
「の、のび太……!貴様、死んだはずじゃ…!」
「落ちた時に咄嗟にタイムマシーンの縁をつかんだのよぉ…!そして今はお前の足を掴んでいる…!このままもろとも引きずり落としてやるぜぇ‼」
汚い笑みを浮かべるのび太。そして、絶望に染まるクラピカの顔。
「や、やめるがいいっ!謝るからっ……」
「うるせぇ、俺の純情を弄びやがって……!」
「ゴメン、本当にゴメン!この通りっ」
してやったりと、のび太の汚い笑みが凶悪に歪む。
「堕ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「ぬぅぅぅわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「ハハハハハハハハハハハハッ!」
堕ちる断末魔と、饗宴の笑い声。
儚く揺れるタイムマシーンだけが、時空間に浮かんでいた……。