転校先はアンツィオです!   作:ベランス

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この話を書き始めるまでアンチョビってあのピザとかに乗ってる黒くて丸いあれだと思ってたけどオリーブの実だあれ
また一つ賢くなった、ガルパンは頭脳にもいいぞ
あとがきは本編とそんなに関係しないので見なくていいです


04

 チャイムが鳴ると同時に一気に騒がしくなる教室で、席に座ったままみほは几帳面に教科書をまとめていく。きょろきょろと周りを見ると、殆どのクラスメートは無造作にカバンに放り込み急かされるように席を立っていく。みほはそれに釣られ、少し慌てた様子でまとめた教科書をカバンに詰め、筆記用具を放り込んだ。

 

 

「みほー、今日ヒマ?」

 

「私らこれから買い物行くんだけどさ、みほも行かない?」

 

「ふぇっ?」

 

 

 帰り支度が済んだところで声がかけられ、みほは間抜けな声とともに顔を上げた。その先にいたのは赤みがかった癖毛の少女と茶髪を襟足で一つにまとめた少女だった。二人とも昨日一緒にお菓子を食べたクラスメートであり、みほの新しい友人である。

 

 友人に放課後遊びに誘われるなんてみほにとって久しぶりのことだった。みほは一瞬花が咲いたような笑みを浮かべ、そしてそれはすぐに萎れてしまった。

 

 

「えっと、その」

 

 

 友人に遊びに誘われるなんて本当に久々だった。ましてそれを断らなければならない経験なんて、みほの記憶には残ってすらいなかった。この誘われて嬉しい気持ちを彼女たちに伝えつつ、不快に思わせないように断るには何と言うべきなのか。みほは最善の言葉を求めたが、元々口下手なきらいのある彼女には上手い言葉が浮かばなかった。

 

 

「残念だったな二人とも、今日は先約があるんだ」

 

 

 言いよどんだせいで不思議そうにする友人たちに焦り始めたみほ。そんな彼女を救ったのは、教室のロッカーに荷物を取りに行っていたペパロニだった。みほの肩に片手を乗せ挑発的な笑みを浮かべるペパロニに、クラスメートは残念そうに口を尖らせた。

 

 

「ちぇー、今日もペパロニに先を越されたかぁ」

 

「じゃあみほ、ペパロニの屋台やるんだ。ふーん、ならちょっと寄ってみようか」

 

「あ、いいね! あれ、でも今日ってペパロニの屋台休みの日じゃなかったっけ?」

 

「おう、今日は戦車道の日さ!」

 

「は?」

 

「ペパロニって何でそんなバカなの?」

 

 

 胸を張って言うペパロニにクラスメートの冷たい視線が突き刺さる。彼女たちはみほが戦車道を嫌って転校してきたのだと知っているのだ、ペパロニのせいで。つい昨日思慮に欠けた質問でみほの心の傷に触れたばかりなのに、懲りた様子のないペパロニに対する反応としては当然のものだった。

 

 一方あんまりな批評を受けるペパロニは納得がいかない。確かに昨日は不躾な質問をしてしまったが、そのことを彼女は十分に反省していたし、その後は寧ろ気を遣ってみほに接していたつもりだ。そもそも私はバカじゃない。

 

 

 

「ち、ちげーっての。失礼なやつらだぜ。なぁみほ」

 

「え? あー、えっと。そうだね」

 

「なんだよその反応!?」

 

 

 何とも不本意な級友たちの反応にペパロニは助けを請うようにみほへと同意を求めた。急に話を振られたみほは少し慌ててしまった。心配してくれる友人たちへの感謝とペパロニの擁護、その二つが同時に喉を通り出ようとして一瞬言葉に詰まってしまった。

 

 別の意味で言葉につかえたように聞こえ、ペパロニを除くクラスメートは声を上げて笑った。

 

 

「私から見学をお願いしたの。アンツィオの戦車道は私が知ってる戦車道と全然違って、とっても楽しそうだったから」

 

「あー。まー黒森峰と比べたらねー」

 

「うちの戦車道チョー弱いし」

 

 

 周りの勘違いに気づき慌てて弁明しペパロニを宥めた後に、みほは自分から戦車道部の見学を申し出たのだと説明した。クラスメートはみほの言葉に二重に納得し、ペパロニの眼前で何の遠慮もなくアンツィオ戦車道部を評する。彼女たちにはペパロニに対しては親しき仲の礼儀さえないのだ。

 

 みほはそのはっきりした寸評にペパロニが怒るのではと心配したが、当の本人ははんっ、と小馬鹿にするように鼻で笑った。

 

 

「おめーらなんっもわかってねぇなぁ。確かに去年のうちらは強くはなかったかも知れねーぜ? でもな、今年はついに待望の新兵器がーっと。おっと、こりゃ機密だった。うっかり漏らしちまうとこだったわー」

 

「えー、ちょっと何よ新兵器って」

 

「へ、おめーらにゃあ教えてやらねぇよ。今年ドゥーチェが優勝旗振り回す様見て吠え面かくんだな! 行こうぜみほ」

 

「あ、うん」

 

 

 言いたい事を言い切ったペパロニはほくそ笑み、みほの手を引いて教室の入り口に歩いていく。引きずられるように後に続くみほはクラスメートたちに振り返って小さく手を振る。

 

 

「アンナさん、エリデさん、ごめんなさい。でも誘ってくれて嬉しかった! また明日!」

 

「アドマーニ、みほ。ペパロニがまた何かバカなこと言ったら教えてね」

 

「チャオ。また明日~」

 

 

 クラスメートも笑ってみほに手を振り返した。ペパロニはもったいぶった言い回しで彼女らが悔しがることを期待していたが、そんな様子は全くなかった。今年は優勝するぞと言われても冗談にしか聞こえない。それだけアンツィオ戦車道部の弱さは知れ渡っているのだ。

 

 

 

 

 ペパロニに連れられてみほが向かっているのはコロッセオである。昨日の学校案内でも回った円形闘技場は、観光客にも人気だというのが頷ける威容を誇るものだった。しかしローマンコンクリートの風情と圧巻の広さにそのときみほは感嘆したものの、戦車を乗り回すと考えるとさすがに手狭に思えた。

 

 

「まーそうなんだけど、今日はCVの訓練だから。CVならたくさんあるしさ、一年どもを走らせるには都合がいいんだ」

 

 

 そんなみほの疑問に何でもないようにペパロニは答えた。アンツィオの戦力は現在豆戦車のCVと自走砲のセモヴェンテ。セモヴェンテも参加する訓練ではアンツィオ高校の校舎がある学園艦中枢から離れた演習場を使うそうだが、そうでない場合は近場のコロッセオを使うらしい。

 

 CVの大きさならコロッセオでも走り回るに十分だし、近くて便利。それにコロッセオで駆け回ると古代ローマの勇壮な戦車競技を彷彿とさせてCVがすごくかっこよく見える。合理的な理由がそこにはあった。

 

 

 

 

 

「遅いぞお前たち!」

 

 

 コロッセオに入場するための通用口、薄暗い階段を登った先に逆光に照らされて仁王立ちで待つアンチョビがみほたちに声をかけた。その怒声、というには弾んだ声色を受けてペパロニは笑った。

 

 

「アンチョビ姉さんがはえーんすよ。見学がいるからって張り切って寝れなかったんでしょ? だから大きくなれないんですよ」

 

「小さくないって言ってるだろ! 張り切ってもいない、いつも通りだ!」

 

 

 ペパロニの軽口に肩をいからせてアンチョビはみほたちの傍に下りて来た。わいわいと言い合う二人の声が通用口に木霊する。

 

 アンチョビはみほより年上で身長もほとんど変わらない。だがペパロニにからかわれむきになって声を荒げる姿は、凛々しさより可愛らしさが先に立つ。みほは階段の数段上でじゃれ合う二人の姿を、こんな隊長と副隊長の関係もあるのかと興味深そうに見つめていた。

 

 

「おほん。よく来たな西住、いやみほ。歓迎するぞ。我がアンツィオ戦車隊の勇姿、存分に見ていくといい」

 

「はい、よろしくお願いしますアンチョビさん」

 

「うん。……うちの子もこのくらい礼儀正しければなぁ」

 

「何か言いました姉さん?」

 

「いや何でもない、行くぞ!」

 

 

 姿勢を正してお辞儀するみほの姿にアンチョビはペパロニを横目に思わずため息をついた。アンツィオの総帥なのにどうにも軽んじられている気がしないでもない今日この頃、礼に始まり礼に終わるという戦車道に相応しいみほの態度は新鮮に感じられた。

 

 きょとんとするペパロニに首を振り、アンチョビは気を取り直して階段を登る。みほたちはアンチョビに促され、長い階段を登りきり競技場を一望する観客席に出た。

 

 

「ぃよーし、カルパッチョ! 開門だ!」

 

 

 片手を腰に当てたアンチョビが通信機に向かって指示を出すと、地鳴りのような音を上げて競技場両端にある巨大な門が開く。

 

 

「全車整列!」

 

 

 かつて命知らずの剣闘士たちや恐ろしい猛獣がくぐって来たものを模した門から次々にCVが飛び出すような勢いで入場する。その勢いで一部は横滑りする激しい動きをしていたが、それでもアンチョビの指示通り18輌のCVは三つに分かれて横陣に並んでいく。6輌ずつが向かい合って円形競技場の端に並び終えた頃、自動化されたコロッセオのギミックを操作するコントロール室にいたカルパッチョが三人の元にやってきた。

 

 

「こんにちは、みほさん」

 

「カルパッチョさん、こんにちは」

 

 

 カルパッチョの挨拶にみほは頭を下げて応えた。そんなみほの様子にカルパッチョはにこやかな笑みを浮かべ、アンチョビの傍まで歩いていく。

 

 

「ドゥーチェ。CV18輌、総員36名、準備整いました」

 

「よろしい」

 

 

 カルパッチョの報告を受け、競技場に綺麗に並ぶCVを見遣るアンチョビは満足げに頷いて答えた。

 

 

「アンチョビさん、いったいどんな訓練を行うんですか?」

 

「ふふん、コロッセオでやることと言ったら決まってるだろう?」

 

 

 小型の戦車とは言え雰囲気のあるコロッセオで悠然と居並ぶ様は中々壮観で、みほは感嘆の声を上げた。だが強力なドイツ戦車に囲まれて生きてきたみほには豆戦車で行う訓練がどんなものか想像できず、アンチョビに問いかけた。アンチョビは胸を張り、威風堂々とした様でそれに答える。

 

 

「勇猛な我が戦車たちによるグラディアートルだ!」

 

「要するに単なるフラッグ戦形式の模擬戦です」

 

「カルパッチョ……」

 

「同校の生徒にかっこつけてもしょうがありませんよ」

 

 

 アンチョビの答えを要約するカルパッチョは続けてみほに対して説明を補完する。

 

 この訓練に参加する車両は通常よりも装甲値が低く設定されており、CVの装備する機銃弾でも撃破されるようになっている。敵対車両を上手くかわして相手フラッグ車を叩く。最後まで残ったフラッグ車のグループが勝利、という単純なルールで行われる模擬戦である。

 

 

「普段はもっと基礎的な練習が多いんですけどね。みほさんがいらっしゃるということで急遽ドゥーチェがこの形式に変更したんです」

 

「それは、なんだか申し訳ないです」

 

「いいんですよ。ドゥーチェもみんなも楽しそうですから」

 

「こらカルパッチョ! 余計なことを言うな! 全く……お前たち、準備はいいな!」

 

 

 みほとカルパッチョの雑談に声を荒げるアンチョビは、気を取り直して通信機に向かって声をかける。通信機の向こうからはCVの乗員たちの威勢のいい声が返ってくる。

 

 

「よし! いいかお前たち、今回の勝利チームには特別に褒賞を用意してある。このアンチョビ特製イワシの塩漬けだ!」

 

『え、あー。わーい、やったー』

 

 

 その反応に満足げに頷いたアンチョビは、さらに隊員の士気を高めるべく景気付けを行う。転入したての者にチームのかっこいい所を見せたいという総帥としての見栄があった。アンツィオ生は食べ物で釣るのが一番、ということでアンチョビ自慢の一品を賞品に提示したが、返ってくる反応にさっきの威勢はなかった。

 

 

「おい、なんだその気のない返事は。美味しいだろアンチョビ」

 

『だってドゥーチェのアンチョビって味薄いんですよね』

 

『美味しいんですけど、挟んだり和えたりしたら物足りないっつーか』

 

『どっちかっていうと肉がいいっす』

 

「研究を重ねてやっと完成した減塩アンチョビだぞ!? くっ、わかった。先月作った秘蔵のプロシュットを出そうじゃないか。そろそろ食べ頃だし」

 

 

 今度の反応は上々だった。一層増した隊員たちの気勢を浴びるアンチョビだったが、試行錯誤を繰り返して作り上げた一品が不評だったことに、その名前もあって自分が否定されたような気がしてがっくりと肩を落とした。

 

 

「大丈夫っすよ姉さん。塩漬け食品の味を損なわず減塩に成功した姉さんの偉業、みんなその凄さはわかってます」

 

「ペパロニ」

 

「確かに味薄いっすけど、その分塩足して調味すればいいですしね」

 

「それじゃ意味ないだろー!」

 

「あ、そのまま食う分にはすげー美味いっすよ!」

 

 

 とどめを刺そうとしてきたペパロニに言い返そうとするアンチョビだったが、ちらりと後ろのみほを見て再び気を取り直す。せっかくの見学者にこれ以上情けない姿は見せられない。アンチョビはフンと鼻を鳴らすと前に向き直り二人の副隊長に指示を飛ばす。

 

 

「まぁいい。ペパロニ、カルパッチョ、訓練開始だ」

 

「わかりました。カルネ、ペッシェ、ヴェルドゥーレ、各チーム戦闘準備」

 

「今日はドゥーチェだけでなく見学者も来ている。無様を晒すな、アンツィオの機動力を見せ付けろ」

 

 

 瞬間、ペパロニとカルパッチョの纏う雰囲気が切り替わる。眼下の競技場を睥睨し、そこに広がる全ての車両に意識が向かう。みほたちから向かって左手前のチームカルネ、右側のペッシェ、向かい側のヴェルドゥーレ。それぞれのチーム車両からも目に見えない緊張感が発せられている。先ほどまでのギャップの大きさもあって、みほは我知らず息を飲んだ。

 

 シンと静まり返ったコロッセオで、通信機を口元に当てアンチョビは鞭を振り上げた。

 

 

「アバンティ!」

 

 

 アンチョビの号令を合図に競技場内のCVたちが猛然と気炎を上げる。搭載されるのは軽量のエンジンでも、18輌揃えば空気を震わせる圧力をみほに感じさせた。

 

 カルネ、ペッシェと呼ばれたチームはフラッグ車を中央に置いた縦隊で直進、競技場中央に突進する。ヴェルドゥーレはフラッグ車を最後尾に置いて円周に沿って右方に回る。

 

 そのうちカルネ隊、ペッシェ隊の先頭車両が中央部で激突する。ぶつかる、とみほが思った瞬間ペッシェ隊の先頭と続く2輌が左に逸れて回避、その後車両を一瞬で反転させカルネ隊の後続に食らいつく。

 

 フラッグ車を含むカルネ隊の後続3輌は車体を反転、速度を殺さず後進しながらペッシェ隊の迎撃を開始する。カルネ隊の先行車両は右方に離脱したペッシェ隊のフラッグ車の追撃を行う動きを見せたがすぐに中断し、自チームフラッグ車の救援に向かう。

 

 カルネ隊フラッグ車を追うペッシェ隊が護衛の1輌を走行不能にしたとき、カルネ隊の残る2輌は10時の方向に離脱を図る。ペッシェ隊はこれを追撃、さらに先行していた3輌が救援と合流するカルネ隊の頭を抑える形で挟撃に持ち込んだ。

 

 

「すごい」

 

 

 盛大に土煙を上げて駆け回るCVたちを見ながら、みほは素直にそう思った。超信地旋回ができないCVで走行中に180度の急旋回をすることもそうだが、その後スムーズに後進に移る彼女たちの技術は想像を絶するものだった。快速戦車の名に恥じない試合運びはみほの知るブリッツクリークとはまた違う、アンツィオの電撃的なドクトリンである。

 

 

「ふふん、そうだろうそうだろう。我がアンツィオの走行技術は強豪校にも劣らない。じゃない優っている! ……しかしあんまり練習させてあげれてないのに、何であの子たちあんなに上手いんだろうな?」

 

 

 みほが零した呟きにアンチョビは嬉しそうに胸を張った。心情はどうであれみほは高校戦車道を代表する雄である黒森峰の元副隊長だ。そんなみほが高評価を下したのだから、これはもうアンツィオは全国レベルということだろう。

 

 自分でも信じられないくらいに上手く戦車を操る後輩たちをアンチョビは誇らしさとほんの少しの疑わしさを以って見つめた。ペパロニは後輩たちが休みの日も戦車を乗り回していることをちゃんと秘密にしているのだ。

 

 

「けど」

 

 

 嬉しそうにするアンチョビと、通信機に向かって後輩たちに指導の声を上げるペパロニとカルパッチョ、そんな彼女たちの様子はみほの目に映っていなかった。

 

 決して馬鹿にするつもりなどないが、みほは昨日一昨日のアンチョビたちの愉快な様子からアンツィオ戦車道部がもっとお気楽な集団だと思っていた。だからこそ見学の申し出も気負わず切り出せた、ということもある。だが実際彼女たちの練習を目の当たりにして、その考えが間違いだったとみほは実感していた。

 

 アンツィオ戦車道部の操縦技量は、アンチョビの言う通り黒森峰の精鋭にも匹敵するだろう。確かに全国大会に出場しても恥じないレベルだ。だからこそみほには彼女たちが勝利には至らない、その弱点が浮き彫りになって見えていた。

 

 

「指揮者が前しか向いてない」

 

「ん?」

 

「周囲の状況確認が出来てないんだ。迂回したチームに気づいてない」

 

 

 眼下の光景に集中し、一年生たちに指導する今後の課題を洗い出そうとしていたアンチョビは、傍らで呟かれた声に顔を上げた。声を発したみほに目をやるが、続けられた呟きに再び競技場に視線を落とす。

 

 

「んん?」

 

 

 ペッシェ隊フラッグ車に乗る隊長は車体から身を乗り出している。これは視界の狭い戦車で周囲の状況を把握し的確に指示を出すためだったが、彼女は声を張り上げ腕を振り回し、追い込んだカルネ隊フラッグ車に視線を固定してしまっていた。

 

 

「あ! ああ、最後まで気を抜くなっていつも言ってるのに」

 

 

 目の前に迫った好機に逸り、もう一つのチームの存在が頭から抜け落ちているカルネ隊。そこへ競技場を迂回していたヴェルドゥーレ隊が歪な凸型陣形で襲い掛かった。横合いから銃撃を浴びせられ、慌てたカルネ隊の隊長は指示が出せず車列が乱れ始めた。

 

 

「隊長車からの指揮が甘い。いや、単に連携に慣れていないのかも」

 

「うぐ」

 

「射線がまばら。目標を統一出来てない、あれじゃあ」

 

 

 隙を窺い二チームが争う横合いから絶好のタイミングで殴りかかったヴェルドゥーレ。獲物を視界に納め、隊員たちは勝機に逸る。ある車両はカルネの、また別の車両はペッシェのフラッグ車に射撃を開始する。だが、また他の車両は先にフラッグ車を丸裸にしようと護衛車両に車体を向けている。ヴェルドゥーレ隊の隊長はカルネ隊のフラッグ車を指差し声を上げているが、まるで統率は取れていなかった。

 

 

「そこは練習不足がしっかり出てるんだよなぁ。はぁ……」

 

 

 ただでさえ精度の低い機関銃、それも行進間射撃とあってバラバラに撃ち出された銃弾は一輌さえ撃破するに至らない。折角の機会に戦果を上げられないままヴェルドゥーレ隊は二チームの車両群をバラバラに避けながら通過してしまった。

 

 混乱するペッシェとヴェルドゥーレ両隊、その機を逃さず追撃を受けていたカルネ隊は一斉に反転。反撃を受ける危険性が低い状況だからか、カルネ隊は隊長の指示に従いペッシェ隊フラッグ車に攻撃を集中する。

 

 

「確かに個々の士気と技量は高いけど豆戦車じゃ攻勢は難しい、か。打撃力が足りない。ここにセモヴェンテを加えても正面からじゃあ……」

 

 

 軽快で頼りない音を発して撃ち出されるCVの機銃弾。装甲値を低く設定されているにも関わらず、それは壁になった護衛車1輌を大破させただけだった。

 

 その後は各車両が入り乱れ、戦車戦と言うより一昔前の戦闘機の巴戦のような様相を呈する展開となっていった。各車の車長が身を乗り出して叫びながらの大乱闘。華やかで騒がしくアンツィオの人間なら手を叩いて喜びそうな試合だったが、それを見るアンチョビの肩は下がり表情は暗かった。

 

 

「そうだよな、CVが主力じゃ厳しいよな。やっぱりノリと勢いじゃあ試合に勝てないのかな……」

 

「みほだったらこの戦力でどう戦う?」

 

 

 ペパロニの問いかけに、みほは顎に手を添えてしばし黙考する。そして競技場の様子から視線を外さないままみほは答える。

 

 

「そうだね。CVは偵察とかく乱に徹底してセモヴェンテを援護、かな。セモヴェンテは自走砲だけど単なる待ち伏せより積極的に攻勢に使うべきだと思う。セモヴェンテと連携することでCVの存在も相手にとって脅威になるはず。各車の連携と判断力が重要になるけど、この機動性と車体の小ささなら上手く行くかも知れない。CVが得た相手チームの位置情報をセモヴェンテと共有、ルートを予測してこちらの位置が悟られないよう注意しながら……あ」

 

 

 自己の世界に埋没していたみほは、そこで視線に気づきハッと我に返った。周りを見るとアンチョビたち三人がジッとみほに顔を向けてその言葉に聞き入っているではないか。みほは自分が何を言っていたのか思い出し、自分の口を慌てて両手で封じた。

 

 

「積極的な攻勢、と言うと具体的にどう動くのでしょうか?」

 

「うんうん、CVよりマシとはいえセモヴェンテの装甲も厚くはない。そう無理は出来ないぞ」

 

「CVは試合じゃ妙に打たれ強いっすからね、もしかするとCV以下かも知れないっすよ」

 

 

 あまりにも失礼なことを口走ってしまったと顔を青くさせるみほだったが、周りの三人は興味津々と言った様子で話の続きを促してくる。みほにとっては全くの失言だったが、アンチョビたちの求めに応じて躊躇いがちに思索の続きを言葉にする。

 

 

「その、単に相手の行動を待って待ち伏せるんじゃなくって、常に移動しながらCVの目で先回りし続けるんです。本来CVの武装では相手にとって、えっと、その……」

 

「8mm機銃では警戒もされない、ということですね」

 

「気にせず続けてくれみほ、CVでは敵の脅威になり得ないということは我々が一番知っている」

 

「いや、流石に気にしますよ……。姉さん、うちらのことそんな風に思ってたんすか」

 

「バカ、武装の話だペパロニ。CV隊の機動力はアンツィオの要だろ、そんな顔をするんじゃない」

 

「みほさん、続けてもらえますか」

 

 

 無意識に口走っていた内容でみほが最も無礼だと思ったのはCVのくだりである。この戦車が主力であると誇らしげに話していた面々の前で、CVでは勝てないと断言してしまったのだ。再び口にすることは憚れるもので、実際に凹んでしまったペパロニにみほは動揺を隠せなかった。

 

 もっともペパロニがショックを受けたのはCVの話題そのものではなく、敬愛するドゥーチェに自分の率いるCV隊が頼りにならないと思われていると勘違いしたからで、カルパッチョはペパロニを慰めるアンチョビを横目に続きを促してくる。

 

 

「は、はい。カルパッチョさんの言うとおり、CVの武装では履帯の破壊も狙えません。いくら攻撃を仕掛けても、……相手は、無視を決め込むこともできます。そうなれば陽動もままなりません。ですが十分な効力射を持つセモヴェンテを先導する役割をCVに持たせれば」

 

 

 そこでみほは一旦言葉を切った。ペパロニたちの反応を恐れて口ごもった、というわけではない。戦車道から逃げ出してここまでやってきた自分が、どうして戦車道部の人たちに戦術を説いているのだろうかと自問したかったからだ。

 

 みほは自分が周りに流されやすい性格だと知っている。黒森峰で副隊長を任じられたとき、そんな大役自分には無理だと断りたかった。しかし周囲の期待から、西住流の家元の娘、多大な実績を上げている西住まほ隊長の妹、そうやって自分に向く視線から逃げられなかった。そうして黒森峰女学園戦車道チームの副隊長を務め、全ての期待を裏切って、逃げ出したのだ。

 

 今の自分はそれを繰り返そうとしているんじゃないのか。期待されるままに語り、失望されて、そしてこの場所も失ってしまうんじゃないだろうか。

 

 かつてと今では状況の重みが違う。だがみほにとっては同じだ。

 

 みほにとって本当のトラウマは戦車道そのものではない。みほにとって最大の心の傷は西住の名を持つというだけで西住流の体現を期待されること、そして自分は絶対にそれを裏切ってしまうということ。それは西住みほが戦車道に関わる以上絶対に避けられないものだ。

 

 そう思っていた。しかし、みほの心には昨日のアンチョビとペパロニの何気ない会話が今も残響し続けている。みほは、ただ友達にアドバイスするだけじゃないか、と、自然にそう思えた。

 

 

「そうすれば相手もCVを意識せざるを得ません。CVの姿がある限りセモヴェンテの伏撃を警戒する。見えない脅威を排除するために陽動のCVに反応する。私たちは戦場の主導権をCVの目と足で握るんです。これは高い機動力を持つアンツィオでしか採れないドクトリンです」

 

 

 咄嗟に思いついたことで、問題点はいくらでもあるだろう。上手く行く保障も自信もない。だが西住流の教えとは関係ない自分の経験から考えたアドバイス、それが少しでも友人の助けになるのなら。みほは言いよどむことなくそう言い切った。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「あ、あの……」

 

 

 しかし、何の反応もないと流石に不安も湧いてくる。やはり滅茶苦茶な考えだっただろうか。改めて思えば、試合が行われる会場の地形で左右される不確実な作戦だ。それにセモヴェンテの砲撃後、退避経路を予測されてしまうと各個撃破される危険性もある。ただでさえ乏しい火力を分散させることも常識的に考えて愚策だ。

 

 何で私はこんなバカなこと言ったんだろう。しかもきっとドヤ顔をしていたに違いない。恥ずかしい、なかったことにできないかな。

 

 

「や、やっぱり今のは聞かなかったことに」

 

「すげー!!」

 

 

 沈黙に耐えかねたみほが発言の取り消しを請おうとしたとき、興奮を露わにしたペパロニがコブシを握って叫んだ。鼻息も荒く、みほの肩を叩きながら彼女の作戦を褒め称える。

 

 

「すげーぜみほ! アンツィオの機動力は日本、いや世界一だ! 絶対上手く行くって! でしょうドゥーチェ、カルパッチョ!」

 

「そうね。CVで偵察し、セモヴェンテで撃破が私たちの基本戦術だったけれど……CV自身を脅威と認識させる、か。試してみる価値は十分にあると思うわ」

 

「うむ、特にCVで戦場の主導権を握るというのが気に入った!」

 

「ですよね! すげーかっけぇっす!」

 

 

 みほの不安とは裏腹に、アンツィオ戦車道部の面々の反応はこの上なく良かった。

 

 対するみほはそんな上々な反応に焦りが生まれる。さっきの瞬間に今の考えの穴はいくつも浮かんでしまっている。そんな欠陥だらけの作戦をこうも好意的に受け取られて、みほはまるで詐欺を働いているような罪悪感に襲われてしまう。

 

 

「ま、待ってください! 今の作戦は咄嗟に思いついたもので、上手く行く保障なんてありません。それに私はアンツィオのチームをよく知らない部外者です、そんな私の考えた作戦を採用するなんて」

 

「確かにもっと煮詰め直すべき点はありますが、でも私たちにはみほさんの考え、光明に思えました。恥ずかしい話ですが私たちだけではこのまま行き詰っていたかも知れません」

 

「そうだぞみほ、もっと自信を持て。このアンツィオのドゥーチェ、アンチョビがお前の作戦を認めてるんだからな!」

 

 

 みほは慌てて自分の作戦を否定したが、カルパッチョは苦笑いと共に首を振った。アンツィオは戦力に乏しく戦術の選択は限られ、彼女たちは小細工と言っていい奇策を弄するしかなかった。

 

 カルパッチョはそのことを情けなくも思ったが、彼女たちにとってそれ以上にみほの語ったアンツィオでしかやれないドクトリンという言葉は魅力的なものだった。

 

 特にアンツィオを導く責任を背負うアンチョビの喜びようは一入だった。カルパッチョの言うように行き詰まり始めた現状、例え穴があろうともみほの提示した新たな方針はまさに光明だったのだ。

 

 

「で、だな。そのぅ、だな?」

 

 

 一頻り喜びを表現したアンチョビはぴたりと動きを止め、みほに向かって言いづらそうに口ごもる。今、彼女の頭には一つの欲が再燃していた。

 

 戦車道に明るい人材が欲しい、という切実な願いにみほは完璧に合致している。アンツィオを導くドゥーチェとしては是非に彼女の力を貸して欲しい。一方でアンチョビ個人としては、みほの心情を(おもんばか)って協力して欲しいと口に出せずにいた。

 

 

「いやいや、ほんとすげーってみほ。咄嗟に思いついたって、よく一回練習見ただけでそんなの思いついたな。うちらもさー、マカロニ作戦とか色々考えてはいたんだけどさぁ」

 

「でもペパロニさん、本当にあの作戦は実現できるかなんて全然わからなくて」

 

「大丈夫だって! アンチョビ姉さんとカルパッチョが上手いこと考えてくれるさ。でさみほ、これからも暇があったら見学しに来ねぇ? うちらだけじゃ見えないこともみほならまた気づけるかも知れないし」

 

「お、おいペパロニ」

 

 

 アンチョビが言いよどんだことをペパロニはあっさりと言ってのけた。アンチョビはみほを傷つける焦りと後輩にそれを言わせた情けなさからペパロニに呼びかけたが、ペパロニはあっけらかんとした様子だった。

 

 

「姉さんも思いますよね? うちらとみほの知恵が合わされば百人力だって」

 

「ま、まぁそりゃあ私だってそう思わないでもない。でもな」

 

「みほもさ、別に戦車が嫌いってわけじゃないんだろ?」

 

「え、そうなの?」

 

 

 ペパロニに言葉を振られ、どうなのかな、とみほは自問した。今度は答えはすぐに出た。もし戦車自体を嫌っているなら、ペパロニたちを見て楽しそうだなんて思わないだろう。

 

 

「そう、なのかも」

 

「だよなー! じゃあさ、今度練習が休みの日CVでかっ飛ばそうぜ。校外を全力で走ると気持ち良いんだ。やっぱ戦車は風を感じなきゃ駄目っすよね姉さん」

 

「そうだなー、晴れた日に戦車から身を乗り出して疾走すると爽やかな風が……ってこら! 練習ない日は戦車に乗るなっていつも言ってるだろ! じゃなかった、みほ!」

 

 

 みほの答えに喜ぶペパロニ。自分が好きなものを友人も好きでいるというのは嬉しいことだ。アンチョビもペパロニに釣られて笑いながら話すが、本題を思い出してみほに向き直った。

 

 

「不躾な願いなんだが。その、だな。嫌なら全然断ってくれてもいいんだぞ? 強要なんかしないし、嫌ならホント、全然」

 

「ドゥーチェ」

 

「わかってる! 急かすなカルパッチョ! おほん、もしみほさえ良ければ今後も我がアンツィオ戦車道部に知恵を貸してくれないだろうか。ペパロニの言うとおり暇なときだけで構わない。ただ今日みたいに私たちの練習を見て、何か気づいた事があったら教えて欲しいんだ」

 

 

 真剣な表情のアンチョビにみほは思わず姿勢を正すが、告げられたのは何とも軽い要望だった。こうも気を遣われると断るのも心苦しい。何よりみほも昨日今日とアンチョビたちの姿を見ていて、力になりたいと思うようになっていた。

 

 

「大して役には立ちませんよ」

 

「そんなことはない。それにそれを決めるのは私たちだ」

 

「本当にたまにしか来ないかもしれません」

 

「それでもいいさ。たまにでも人が増えれば楽しいだろ?」

 

 

 アンチョビの本心からの答えにみほは小さく笑った。戦車に関わるペパロニたちが楽しそうに見えたのは、きっとこの人が隊長をやってるからというのもあるんだろうなと思った。

 

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

「本当か!?」

 

「でも本当に大したことは言えませんよ?」

 

「構わん構わん! よーし」

 

 

 みほがぺこりと頭を下げてアンチョビの願いを聞き入れると、アンチョビは大げさに喜んで見せた。ちょうどそのとき競技場内で最後まで残っていたCVから白旗が揚がった。フラッグ戦形式のはずがいつの間にか殲滅戦の様相に変わっていた競技場に縁から身を乗り出し、アンチョビは通信機に向かって告げる。

 

 

「諸君! 訓練ご苦労だった! 約束通りペッシェ隊のメンバーには褒賞を与えよう」

 

『姉さん、うちらカルネですよ?』

 

「フラッグ戦だって言っただろ! お前たちのフラッグ車は最初にやられただろ。まぁいい。さぁお前たち、宴の準備だ!」

 

 

 通信機を通さなくてもわかる歓声がコロッセオに響く。一年生たちは機敏な動きで大破判定の解除を待たず自車両を押して片付けていく。アンチョビはそのまま通信機に向かって指示を出し、カルパッチョは小走りでコントロール室に向かっていった。

 

 

「え、ええ? 宴?」

 

 

 突然の展開について行けず混乱するみほの背を、ペパロニはグイグイと競技場に続く通用階段に押していく。

 

 

「元々みほの歓迎会を予定してたのさ。転入生歓迎会だな」

 

「あれ本気だったの!?」

 

「知ってんの? なら話は早い、主役なんだからさっさと行こうぜ」

 

「転入生歓迎って、戦車道部は関係ないんじゃ」

 

「騒ぐネタがありゃ騒がなきゃ損だろ? それにみほのアドバイザー就任記念も追加だし、こりゃ盛大になるなー。急げ急げ!」

 

「ちょ、ちょっと、そんなに押さないで」

 

 

 ウキウキした様子を隠そうともしないペパロニに押されながらみほは階段を降りて行く。その先の競技場から届く楽しげな喧騒が通用階段に反響し始める。さっき訓練を終えたばかりなのに一年生たちはすでに宴会の準備に取り掛かっているのだ。未だアンツィオの流儀に慣れきっていないみほは、彼女たちの機動力に圧倒されていた。




番外編01 +おまけ

「だからこの請求書はどういうつもりかと聞いているんだ」
「ですからレストアにかかった費用の一部を生徒会に負担してもらいたいんですよ。一応学校の備品じゃないですか、これ」
「お前たちが勝手にやったことだろう」
「やだなー、善意も含まれてますよ。私たちの趣味が混じってることも否定しないんで、一部だけ請求してるんですよ」
「混じりっ気なしの趣味だろうが!」

喧々諤々と言い争う二人の少女、一方その後ろでは全く正反対ののほほんとした空気が流れていた。

「いやー、まさかうちに戦車が残ってたなんてねー」
「記録上では20年前までは戦車道をやってたみたいですね。取りやめた際に使用していた車両はほとんど売却したようですけど」
「じゃあこれは売れ残りってやつか。侘しいね」

干し芋を齧る小柄な少女、大洗女子学園生徒会長角谷杏はそう言って寄りかかっていた戦車を見上げた。それは自動車部が発見して勝手にレストア、その費用を生徒会に請求してくるまでその存在さえ把握していなかったものだ。

「で、小山。こいつら何て戦車なわけ?」
「はい。今会長が寄りかかっているのが89式中戦車甲型。そっちにあるのが38(t)ですね」
「ふーん」

副会長小山柚子に気のない返事を返し、杏はそっと戦車に手を添えた。冷たい鉄のひやりとした感触が、遥か昔の戦争に使われたそれが今確かに存在していると主張していた。
にひひ、と悪戯を思いついた子供のように杏が笑う。それを見た柚子は、また何かろくでもないことを思いついたんじゃ、と戦慄した。

「おーい、かーしまー」
「大体貴様ら自動車部はっ、は、はい。お呼びでしょうか会長」

杏は生徒会広報の河嶋桃に声をかけた。いくら声を荒げても動じない自動車部の部長に感情を爆発させようとしたところを、敬愛する会長に呼ばれ心を落ち着けるように片メガネの位置を直しながら杏の元に歩み寄った。

「この戦車だけどさー」
「はっ。今回の件、自動車部の独断でありやはり学園の予算を修理費用に充てるというのは――」
「うちもやろっか、戦車」
「は?」

自動車部が戦車のレストア代を生徒会に請求した件に関する自身の見解を述べようとしていた桃は杏の発したいつものような突飛な提案に、いつもそうするように間抜けな声で答えた。



おまけ

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