少年は妖怪の山の川で休憩をしていた。
その時にある少女と会う。
その少女は少年の友人で覚り妖怪である古明地こいしである。
こいしは少年に自分の悲しみを語る。
そして少年は何を思うのか、さて。

1 / 1
本日より初めて投稿させていただきます。
もしよろしければ感想などをお願いします。
それではどうぞ最後までお読みください。


閉じた恋の瞳の涙

 少年は山の中を歩いていた。最近山の中でできた神社に挨拶するためであった。本来ならこの山、「妖怪の山」は自分たち人間は立ち入り禁止であるが、今回は神社に挨拶することをあらかじめ伝えていたので哨戒天狗の案内付きで山の中に入ることをゆるされた。

「すみません、少し休んでも良いですか?」

いくら哨戒天狗がそばにいてくれるからとはいえ、山の中を数時間歩いている。やはり人間と妖怪の差があった。少年は息が上がり汗が滝のように流れていた。一方、哨戒天狗は息が上がっておらず、むしろ平然としていた。しかし、少年の表情を見た哨戒天狗は驚いた様子で少年を近くの川に連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい!普段はこの山に人が来なくて、私も普段のペースで歩いていたので

、貴方の状態に気づけませんでした!」

山を案内してくれた哨戒天狗の少女、犬走 椛(いぬばしり もみじ)は申し訳なさそうな表情で謝った。

「いえ、いいんです。山の中を歩くときはこういうことも覚悟していましたので、それに人間でも休めばまた歩くことができますので大丈夫です。」

少年がそう言うと、椛はすぐに表情が明るくなった。

「わかりました!では私はしばらく他の妖怪が来ないように向こうで見張りをして来ますね!」

椛は元気良くさっき通ってきた場所に向かっていった。少年は椛が向かっていった先をしばらく眺めてから川から水を汲み、飲みながら川を眺めていた。すると、川の水面から人影が写っていた。そこで、顔を上げて辺りを見渡していると川の向こう岸に一人の少女が暗い顔をして体育座りの状態で川を眺めていた。その少女は薄緑の髪で肩まで届く長さであり、黄色のリボンを付けた黒い帽子をかぶっていて、服装の上は黄色を基調に緑の線が入っており、黒いフリルが付いた服装で、下は緑を基調にしたスカートを履いている。また左胸を中心に浮いている球体からひもみたいなものが伸びていてそれが体の周りに巻き付いている、といった容姿の少女である。少年はその少女を知っていた。その少女とは以前から友達だったからだ。

「・・・こいしちゃん?」

 少年は少女、こいしに声を掛けた。いや、掛けずにはいられなかった。こいしは心を閉ざしていながらもいつも明るく振る舞っていた。しかし、今回はその明るさが全く無く、むしろその逆で暗くて今にも泣きそうであったからだ。

「あ・・・、りゅうくん・・・?」

「どうしたのさ、そんな暗い顔してさ。」

 少年、竜希(りゅうき)に声を掛けられた少女、こいしは少し驚いた様子で竜希を見る。竜希はこいしの元に歩み寄り、どうしたのかと言葉を投げかけた。こいしはその言葉にしばらく俯いていたが口を開いた。 

「この前ね、この山で少し変わった人間に会って弾幕勝負をしたの。最初は私の無意識に敵うはずがないと思っていたんだけど、結局は負けちゃったの。でも、それ以来私やお姉ちゃんが住んでいる地霊殿にも遊びに来て色んな話をしてくれるの。そのおかげであんなに引きこもりがちだったお姉ちゃんが元気になって今でもその人たちと話をすると、とても楽しそうだったの」

こいしはとても楽しそうに話をしてくれた。確かに、あの時の異変で少しずつではあるが地上と地底は交流を図るようになった。地底を管理している地霊殿もそのまた一つである。しかし、楽しそうに話していたこいしの表情が暗くなっていった。

「でもね、私はちがうの・・・。お姉ちゃんはみんなと仲良くなってきているけど、私は何も変わらず一人なの。」

「・・・?それってどういうことなのさ?」

 姉はみんなと仲良くしてるのに自分だけは一人、ということは一体どういうことかわからなかった。こいしだけが仲間はずれにされているのかと頭をよぎった。だが次にこいしが発した言葉は竜希のそんな予想を裏切った。

「・・・私もね、本当はお姉ちゃんと同じように心を読むことができるんだけど、私たち覚り妖怪は心を読むことで嫌われることを知ったの・・・。だから、心を読む能力で嫌われるくらいならこんな能力なんかいらない、むしろみんなに愛されるような存在になりたいって、そう思って心を閉ざして能力を封印し、そしてこの無意識を操る能力を手に入れたの。最初は自由気ままにフラフラしてて楽しかったよ?でもね・・・、あの変わった人間に会って負けて、その人間が

お姉ちゃんたちと話をしている時に・・・気づいたの・・・。」

 こいしの声色に嗚咽が走り、眼から涙が溢れてきた。これまで話を聞いていた竜希はこいしの言いたいことが分かった。だから竜希はこう言った。

「その能力を手に入れたと引き換えに、周りから嫌われる所か好かれることもなくなってしまったんだね・・・。」

 竜希は正直、このようなことを言うのは辛く感じていた。だが耐えられなかった。みんなから好かれ愛されたかったこの少女の取った選択は、結局は少女が望んだ結果にならずもはや誰にも相手にされなくなるという結末に至ったということに、耐えられなかった。

「・・・っ!うん・・・そうなの。正直・・・この能力を手にしてから思ってたの。私は・・・わたしは、ただ・・・嫌われ、たく、なかったのに、みんなに、愛されたかった、だけなのにっ!誰にも相手にして欲しく、なかった、わけでもないのにっ!こんな、はずじゃ、なかったのに・・・っ!」

 こいしの眼から涙が流れ、顔を濡らす。竜希はそんなこいしの隣に座り、こいしの肩を抱いた。

「そうなんだ・・・。寂しかったんだね・・・、辛かったんだね・・・。いくら心を閉ざしていても、やっぱりひとりぼっちは辛いんだね・・・。」

「うん・・・、寂しいよぉ・・・。」

「寂しいんだね・・・。でもねこいしちゃん、こいしちゃんは決してひとりぼっちじゃないんだ・・・。」

「え・・・?」

 こいしはわからないといった表情で顔を上げて、竜希を見る。竜希は笑顔でこう言った。

「だって、僕たちは友達なんだし今こうして僕に気持ちを伝えているじゃないか。それって、僕に心を開いているってことじゃないかな?それに、さとりちゃん、君のお姉ちゃんも君のことを心配しているんだ。実際、僕のところにこいしちゃんはどこなのかって手紙を送ってくるからね。」

そう言って、竜希は懐から手紙を出してこいしに見せる。

「でも、たとえそうだとしても私の第三の眼は閉じたままだよ・・・?」

こいしは第三の眼を見る。心を閉ざして以来、ずっと固く閉じたままだった。しかし、こいしは今の第三の眼が変化していることに気づかなかった。その変化は、些細なものだった。しかし竜希はその変化に気づいていた。

「それでもさ・・・、眼は閉じているけど瞼から涙が出ているよ?」

「あっ・・・。」

 こいしは言われて気づいた。第三の眼は閉じていることに変わりはなかったが瞼から透明の液体が流れていた。竜希の言うとおり、まぎれもなく、涙だった。覚り妖怪にとって第三の眼は心を読む能力の源であり覚り妖怪の証でもある。それと同時に覚り妖怪の心つまり、本心を表しているのである。

「心が・・・泣いているんだ。これは君の心が悲しんでるんだよ、こいしちゃん。」

「・・・・・・・・。」

「だからこいしちゃん、無理しなくてもいいんだよ?ここには僕とこいしちゃん以外いないからさ・・・。」

「・・・っ!?」

 竜希はこいしの体を抱きしめる。優しく、強く抱きしめる。この言葉が、この行動が、こいしの感情をあふれさせた。

「・・・ひっく・・・うええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!」

 こいしは泣いた。今まで溜めていたものを出すように泣いた。竜希はこいしが泣き止むまでずっと抱き留めていた。ひとりじゃない、たったそれだけの言葉を表すかのように。

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫、こいしちゃん?」

「・・・うん、ありがとう・・・。それとごめんね?服、汚れちゃったから。」

あれから数十分経って落ち着いたこいしは少し頬を赤らめながら竜希に感謝し、竜希の服を涙で濡らしたことを謝る。

「大丈夫だよ、すぐに乾くと思うから。」

「そうなんだ・・・。じゃあ、私お姉ちゃんのところに帰るね。お姉ちゃんに私の気持ちを、伝えようって思うんだ。」

こいしはそう言って立ち上がり、足を進めようとする。

「そうなんだね。帰ってあげるといいよ。さとりちゃんも君に会いたがっているからね。」

 竜希はこいしを止めず、そのまま見送ることにした。もう心配することはなくなったからだ。こいしの第三の眼はいまだに閉じたままだが、それでもこいしは自分の心と向き合うことができると思ったからだ。

「うん!今日は本当にありがとう、りゅうくん!」

 こいしは明るい笑顔でそう言い、その場を去った。こいしを見送ってから竜希は立ち上がって川を後にして椛と合流する。

「もう休憩は良いのですか、竜希さん?」

「はい、もう大丈夫です。それよりも、神社に向かいましょう。」

 竜希は言って、椛と一緒に山の中にある神社に足を進める。こいしにまた会えることを願いながら。

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。