最近遅くてすいませんm(_ _)m
過去編 4
真由美が完全に寝てしまったのを見て、貴将がクスッと笑う。
「そのリボン、『あの時』からずっと付けていてくれてるんだね。俺は嬉しいよ、真由美。…そろそろ寝るか…おやすみ…」
そう言い、貴将も目を閉じる。そして彼は夢の世界へと飛び立って行った。
二〇九二年八月十一日。沖縄戦にて、戦略級魔法師が『二人』誕生した。片方は軍の人間が見守る前での魔法の行使。しかしもう一人は違った。彼は自らの力を見せつけるかのように、誰も知らない場所から魔法を発動させ、大亜連合本国を攻撃した。その魔法師はその後誰も知らない闇に姿を消し、行方を知るのは数名だけとなった。
二〇九二年八月四日。沖縄・那覇空港では、ある二つの家族が行動を共にしていた。四葉家と七草家。十師族の頂点に立つ二つの家が沖縄の地に足を運んだ理由。それは、
「真由美!海だぜ!海水浴しようぜ!」
旅行である。騒ぐ子供たちがまず目に付けたのは、青と緑色の海だった。貴将、真由美、香澄、泉美、深雪、達也の順で窓に張り付く。達也は張り付いていないが。
「こらこら、周りの人に迷惑だろう?」
今日は七草家の長男次男と真由美達の母親は来ていない。そのため、弘一が真由美達を連れて来たのだ。また、四葉家は真夜、深夜、貴将、達也、深雪、穂波(本人は先に行くと言っていたが深夜に引き止められた)だった。見るものが見れば、これから世界を取りに行くのか?と勘違いされそうなメンバーである。
「じゃあ弘一さん、恩納の瀬良垣別荘に着いたら、まず海に行ってもいいですか?」
騒がないかわりに、と貴将が交換条件を出す。
「分かったわ。行っていいけど、達也、貴方もきちんと遊ぶのよ」
達也の後ろに歩いてゆき、深夜が達也の肩を持つ。
「はい。分かりました、お母様」
機械的な動作で達也が答える。
「じゃあお母様、早く行きましょう。真由美、深雪、香澄、泉美、行こうぜ」
それとは逆に、貴将が、海が楽しみ!という心の声を露わにして、真夜に話しかけながら皆を誘導する。そしてそれからすぐ、貴将達を載せたバスは空港を出たのだった。
別荘は平家で広かった。しかも家が二つもある。この事を真夜に聞くと、片方は大人用で、もう片方は子供たち用との事だった。
「じゃあ海に行こー!」
真由美達に水着に着替えさせ、貴将が号令をかける。子供たちのリーダー(大人任命)は真由美なのだが、実質的には貴将がリーダーだった(参謀は達也!と貴将が言っていた)。その貴将は、一足先に着替えて、海に行く許可を貰ってきていた。
「「おぉー!」」
女の子組みが返事する。達也は貴将の背後で腕を後ろに組みながら立っていた。
海に行ってから貴将達がまずした事は、ビーチパラソルを立てる事だった。それらをした後にすぐ、海に入る貴将と真由美。それを追って、香澄達が入る。しかし深雪はそれを追わなかった。理由は、達也がビーチパラソルの下でタブレットを使い、電子書籍を読んでいたからである。
「達也お兄様、一緒に海に入りましょう。お母様にも言われたでしょう?」
そんな事を言い、深雪が達也の腕に抱きつく。そんな妹に動じず、達也がタブレットの電源を切る。
「まあ深雪がそういうなら仕方がないな…」
パアッと顔を明るくした深雪の頭を撫で、達也が立ち上がる。そんな達也の様子に気付いたのか、貴将が声をかける。
「おっ、達也が漸くやる気を出したか。んじゃあ達也、てめえちょっとこっち来い。あの島まで勝負だ」
貴将が指を指すのは、ある程度の距離にある島であった。
「…いいだろう」
結果から言うと、達也が勝った。
「く、そ…どん、な、身体の、作、りしてんだ、よ…」
息絶え絶えに貴将がいう。それに対して達也は、少し息が切れているだけだった。
「ああ、腹減った…。飯食いに行くか」
回復したのか、貴将がガバッと立ち上がり言う。因みに昼食は穂波が作ってくれた。
「きーくん、真由美さん、あと香澄ちゃんと泉美ちゃんも。あなた達はこれから正装に着替えてね。今日は貢さんが主催するパーティがあるから」
その言葉に貴将は顔を顰める。自分はまだまだ遊ぶ予定だったのに、パーティに招待された所為で遊べず、さらに
「あの達也を過小評価する分家の犬っころが主催者なのですか?」
招待主が嫌いであれば尚更であろう。顔を顰め、かなり酷い言葉を吐いた貴将を宥める様に真夜がいう。
「まあでも、貴方は次期当主になる予定なのですから、我慢なさい」
だが貢が分家の犬っころである事は否定しない様だ。因みに、達也と深雪は参加はするがそこまで重要な客として扱われていないので、そこまで厳しいものは求められない。
「では叔母上、俺と深雪はまた海に行ってきます」
そこで、達也と深雪は海に行ってしまった。そして、貴将が黒いスーツに、真由美が深紅のドレス、香澄が黄色いドレス、泉美が水色のドレスを着る事にした時、達也と深雪は帰ってきた。貴将達は着替えの為に知らされなかったが、達也と深雪は第二世代の軍人に絡まれていたそうだ。知っていたらその軍人は只じゃ済まなかっただろう。
場所と時間が変わり、ここはパーティ会場。貴将は黒羽の当主と話をしていた。真由美は深雪、香澄、泉美と共に文弥と亜夜子と会話していた。
「ところで、達也兄さんはどこに居るのですか?」
文弥が真由美に質問する。それに答えたのは深雪だった。
「お兄様は、立場上仕方なく外を見回っています。ですがそろそろ戻られる時間かと…。あっ、お兄様っ」
矛盾しているが、小さく叫ぶ達也。それを見て、文弥と亜夜子が駆け寄る。
「お久しぶりです!達也兄さん!」
「文弥、あまりはしゃがないの。お久しぶりです。達也お兄様」
「ああ、久しぶり。文弥。それに亜夜子も」
そんな二人に達也が僅かに口角を持ち上げ、返事をする。そんな文弥達を見てか、貢が貴将と一緒に寄ってくる。
「こらこら、二人とも。達也さんも仕事をしなければならないんだ。あんまり迷惑をかけてはいけないよ」
文弥達が達也と話すの快く思わないのが丸わかりな言動に、貴将の雰囲気が少しだけ傾く。表情は完璧に微笑んでいるが。そこに真由美達が歩いてきた。
「もう、貴将くん。どうして私より達也くんを優先するの?」
嫉妬しているようだ。
「ああ、済まないね、真由美。えっと、貢さん、ご存知とは思いますが、右から僕の婚約者、七草真由美さん、香澄、泉美です」
そんな真由美を見て、見るものが見れば軽薄とわかる笑みが本物の笑みに変わる。そして貴将は貢に真由美達紹介する。
「ご紹介に預かりました、七草真由美です。以後、お見知り置きを」
「七草香澄です」
「七草泉美です」
きっちりとお辞儀をする真由美達を見て、貢が微笑む。
「四葉の分家、黒羽家当主、黒羽貢です。きっと真由美さんはこれからも四葉家の事で会う事になりそうですし、お願いしますね」
真由美さん、と貢が下の名前で呼んだ事に対してだろうか、貴将が一瞬眉をピクリと吊り上げる。そして雰囲気は急激に傾いた。尤も、貢が下の名前で呼んだ事は仕方がない事なのだが。
「はい、よろしくお願いします。貴将くん、あっちにとても美味しそうな食べ物があるんだけど、一緒に食べに行きましょう?」
貴将の機嫌が傾いた事を敏感に感じ取った真由美が貴将を誘う。
「ああ、そうしようか。深雪、達也、一緒に行こうか」
「はい、貴将お兄様」
「分かりました、次期当主筆頭」
達也の次期当主筆頭、という呼び名に僅かに顔を顰める貴将。が、しかし、それが仕方ない事だと知っている為、何も言わないまま真由美と腕を組み、達也と深雪を引き連れてその場を去るのであった。