四葉の双璧   作:狂った道化師

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昨日の地震でスマホ落として書き溜めデータが消えた、、、(´;ω;`)


過去編第6話

四葉の双璧:過去編 6

 

死の世界。こう聞くと、貴方は何を思い浮かべるだろうか。とあるラノベに出てくる『何もない、真っ黒な世界』だろうか。いや、あれは些か行き過ぎで、微生物位は生きている世界だろうか。

 

大亜連合本国のある戦艦が日本侵略の為に移動する時に使われた港町。ここは様々な物、人が居り、かなり賑わっていた。た、が付く事が示すのは、過去の話であるという事である。つまるところ、そこはもう賑やかでない。ではその港町はどうなってしまったのか。その港町での事の初めは、艦隊に乗って往った人間が飛ばされてきた事である。

 

辺りには、血が飛び散っていた。誰の血かというと、空から落ちてきた軍隊の人間の血である。ついでに、人間はまだ降ってきている。彼方此方に血の池が出来、一般人の悲鳴が飛び交う中。異変は起きた。

 

「なぜ…なぜ死体が消えたんだ!?」

 

一般人の内の一人が叫ぶ。彼が何を見て叫んだのか。それは死体が赤い霧となり、どこかへ消えた、という事情を見て叫んだのだった。次々と死体は霧に変わり、それらの霧はある一点に集まる。そして遂に、

 

「おいっ!お前、手が霧にっ!」

 

生きている人間でさえも、霧に変わっていく。ここまでくれば、人間は恐怖で逆に動けなくなる。

 

数分後。港町に居た全ての生物が消えた。それこそ、人間も、猿も、木々も、草も、虫も、微生物も。後に残ったのは、人工の物と、無色無臭透明の元は海であったろう液体と、そして土と、赤い、生命の樹を模したのであろう樹木に見えない事もないオブジェクトだけであった。

 

真相を知るのはたった数人。なぜならこの出来事は魔法によるものであった上に、生存者は居ないのだから。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

艦隊が消滅したという報告を受けた後、真夜は貴将を探しに外に出た。彼が暴れたのであれば、軍隊は全滅。これは確認する必要がないものである。

 

「…真由美…俺は、怖いだろう?」

 

真夜が貴将を見つけた時、彼は真由美に後ろから抱かれていた。貴将は俯きながら喋りかける。

 

「いいや、怖くないわ。だって深夜様が傷付けられたのでしょう?確かに殺すのはダメだった。…かもしれない。けど、けどね。貴将くんは結果的に私達も助けてくれたじゃない。それだけでもう、怖くないわ」

 

ダメだった、のところで、貴将の纏うオーラが一気に落ち込んだモノになり、真由美が慌てて訂正する。その様子を見ながら、これであれば二人一緒に説明してもいいだろう、と考えた。

 

「あらあら、きーくんは真由美さんに慰めてもらってばかりね。それに…その様子だとまだ気付いていないみたいね。貴将、貴方について話があります。真由美さんも一緒について来なさい」

 

突然現れて、突然命令し、突然行ってしまう。そんな真夜の言葉を聞き、貴将がフラリと立ち上がる。その様子を見て、真由美が慌てて支える。

 

やって来たのは基地、ではなく四葉系列のホテルの最上階。

 

「貴将、貴方は今回鉄の嵐を作り出しましたね?なにか疑問はありませんか?」

 

真夜がにっこりと笑い、貴将を見つめながら問いかける。その問いを聞き、真由美が目を見開く。

 

「あら、真由美さんは気付いたみたいね。じゃあ先の質問の答え合わせといきましょうか」

 

ここで一息いれる。

 

「貴将、貴方は鉄の嵐で、異常な程の群体制御能力を発揮し、またその際の魔法でも、鉄の嵐、重力制御、物理障壁などの、かなりの魔法をマルチ・キャストしていたわ。これが問題の答え。そしてこれから出る疑問。それはーー」

 

貴将は、漸く理解した。

 

真由美はその疑問を感じ、また答えをある程度予感しながら、待つ。

 

「貴将、貴方の出生よ」

 

穂波が紅茶を持って来たので、会話は一度そこで止まった。真夜が、紅茶を飲み終わるまで休憩ね、と言って部屋を出て行ったので、真由美は貴将に問うた。

 

「ねえ、貴将くんはどこまで知ってるの?」

 

「…俺が母上から聞かされていたのは、俺が母上の遺伝子を用いた調整体であるという事だけだ。…これは知った時に真由美に言っておくべきだったな。すまなかった。許してくれ」

 

「いいのよ。だって貴将くんは今話してくれたもの」

 

だから。

 

「貴将くんは謝らなくいいのよ」

 

頭を下げた貴将を見つめ、少し微笑んで真由美が言う。

 

そこで、真夜が部屋に戻ってくる。

 

「…貴将、貴方に隠していてごめんなさい。今から全てを話すわ」

 

「全ての始まりはあの日。四葉が『触れてはならない者たち』と呼ばれる理由となった日。あの日、深夜は私に精神干渉魔法を使い、『経験』を『知識』に変えてしまったわ。けどね、姉さんは一つだけ。一つだけ『経験』を残してくれたの。それは、弘一さんを愛したという経験。それがあの日から前の私の経験。」

 

ねえ、と一言置く。

 

「貴将。貴方はね。貴方は、私と弘一さんの婚約があったという事実を表す為に作られた、私と弘一さんの遺伝子を使った調整体なの」

 

ああ。そういう事か。と貴将は納得する。

 

「…それで、固有魔法を持ちながら、あそこまでの群体制御能力持ち、尚且つ魔法の同時展開が強力なのですね…」

 

真夜から受け継いだ、四の遺伝子。弘一から受け継いだ、三と七の遺伝子。それらを受け継いだからこそああなったのだ、と納得したのだ。と、そこで真由美が口を挟む。

 

「真夜、様。それで、は、私、と貴将くん、は、血の、繋がりがある、と…?」

 

自分の婚約が破棄されるのではないかと思ったのか、真由美がガタガタ震えながら真夜に問う。その様子を見て、クスリと笑い、真夜が言った。

 

「いいえ。遺伝子が受け継がれているとはいえ、貴将は“完璧な”『調整体』よ。それに、私の子供は、幸せにすると決めたの。だから、貴将と真由美さんの婚約は、双方合意の上でなければ破棄されないわ」

 

いつの間に聞いていたのか、納得するだけの世界から戻ってきた貴将が、真由美と一緒にパアッと顔を輝かせる。

と、真夜の表情が真剣なモノに変わる。

 

「でもね、貴将。今回貴方はやりすぎよ。よって、母親として、また四葉家当主として命令します。今、本邸の方で、貴方専用の施設を作ってあります。そこで軟禁されなさい。あ、あと。真由美さんとは一ヶ月に一度しか会えないので」

 

ガーン!という表情浮かべる貴将と真由美を置いて、クスッと笑って、真夜は部屋から出て行った。

 

「だから今の内に話しておきなさい。今日の真夜中に本邸に帰りますからね」

 

そう残して。

 

「なあ。真由美は、俺があんな怪物みたいな力を持っていても、俺を愛していてくれるのか?」

 

ホテルの最上階の部屋で会話があった。

 

「ええ、勿論。私はいつまでも、貴将くんを愛するわ」

 

薄暗い部屋の中、間髪入れずに真由美が答える。

 

「…ああ。ありがとう。本当にありがとう。…真由美、実はプレゼントがあるんだ。最終日に渡す予定だったけど、こんな事になってしまったから…今渡すね」

 

初日から肌身離さず持っていたのか、貴将が内ポケットから、百年以上前からずっと続くブランドのロゴが入った小さな紙袋を渡す。

 

「はい。そろそろその髪飾りも古くなって来たでしょ?それに、髪も長いし…だからリボン」

 

真由美が袋を開けると、白と黒のリボンがあった。それをぎゅっと握りしめ、いう。

 

「ありがとう、貴将くん。愛してるわ」

 

自然に二人が互いに近づく。

 

「俺もだ」

 

影が、重なる。

 

二〇九二年八月十三日。沖縄戦から二日後。旧長野県と旧山梨県の境目。ここには名前がない。だが建物はある。その中で二番目に大きい建物の前に車は止まった。車から出て来たのは貴将と真夜。運転席には葉山が座っていた。

 

「貴将、貴方にはこれから精神的に強靭になるまで、もしくは真由美さんからの救助要請、四葉の人間に危機が訪れた時以外はここにいてもらいます」

 

開口一言目に貴将が眉を少しだけ顰める。

 

「ここは実験施設の筈でずが…」

 

そう。この建物は実験施設。厳密にいうと、この建物だけでなく地下にも広がっていて、主要な部分は地下に埋まっているのだが。

 

「ええ。そうです。その更に下です」

 

事もなげに真夜がいう。

はあ、とため息を吐き、貴将がいう。

 

「また環境破壊ですか…」

 

「黙らっしゃい。大亜連合がある港町の生態系が消滅したと発表してたわ。貴方でしょ、どうせ。その所為でこんな物まで作らせて…。全く、どの口が言うのよ」

 

呆れた様に真夜が言う。

 

「まあいいわ。入るわよ」

 

因みに。この施設の更に下の貴将専用軟禁所の事は、貴将、真夜、元造、葉山、弘一、真由美しか知らない。その為、一口に入る、と言っても、それ専用の入り口がある。

 

「…消防法…」

 

いつぞやの達也が言わんとした事と同じ事を貴将がいう。

 

「急造なのだから我慢なさい」

 

我慢するしないではなく、明らかに法律違反である階段を降り、かなり下った先にその施設は有った。

 

「…『ナルヴィ』、ですか…さしずめ、俺はロキってところですかね」

 

ゲンナリした顔で貴将が言ったが、施設の名前は『ナルヴィ』。北欧神話おいて、悪神ロキが神々の怒りを買い、ラグナロクまで閉じ込められたとされる場所(息子の腹の中)である。

 

「ええ。政府に『ロキ』と呼ばれてるそうよ、貴方。まあ、表面上に性格を鑑みれば丁度いいわね」

 

「………。で、来たる時まで此処で修行でもして待っておけ、と。そういう事ですね」

 

苦い顔で貴将が言う。

 

「ええ。格闘技と剣術は、お父様が四葉直伝のモノを。魔法の訓練は専用の部屋で、九島先生が。勉学に励みたいのであれば、そこの部屋に入ればいいわ」

 

ドヤ顔で、施設の紹介を行う真夜。それを聞きながら、顔面を蒼白にしながら、貴将が問う。

 

「…お母様。俺の部屋は?」

 

「………………………………………あっ」

 

唖然。貴将は正に唖然とした。

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