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過去編:番外
貴将と達也、二人が産まれてから数ヶ月が経ったある日。深夜は元造に呼び出されていた。
広い和室の中、白い短髪の男ーー元造が着物を着て待っていた。顔には、髪の生え際から左目を通り顎にかけて大きな傷があり、少々肌蹴た着物から見える肌には無数の傷跡がある。全て、崑崙方院で負ったモノである。
「深夜。今日呼び出したのは達也についてだ」
単刀直入に。前置きもなく。元造が告げる。
達也、という言葉で、深夜の顔が緩慢な動きで、だがしかし確実に上がっていく。
「お父様も、達也を用無しと蔑み、殺せと?」
その顔に表情は宿ってなかった。敢えて言うのであれば、無表情という表情というところか。
そんな深夜の口から出た言葉に元造が頭を振る。
「違う。深夜、今ならまだ。精密検査が行われていない今ならまだ、達也に魔法を宿らせ、四葉の皆からの評価を改める事が出来る。その事について話をするために呼んだ」
言葉の意味を理解しだして、少しずつ、深夜の顔に表情が戻る。
「ど、どうやってですかっ!?」
完全に戻ったと思った瞬間、深夜は縋り付く様に元造の元に走り寄った。
「…深夜。覚悟はあるか?」
だが、元造は喜ぶ様な動作は見せなかった。それよりも我慢している風に見える。
しかしそれを無視して、深夜が言う。
「はいっ!達也が蔑まれないのであればっ!それだけでいいのですっ!」
間髪を入れない深夜の答えに、苦虫を噛み潰した様な表情で元造が言う。
「ならば。深夜、達也に人造魔法師実験を施行しろ」
「なっ!ですがアレはまだ未完成でっ!」
「分かっている。だがもうじき精密検査が行われる。それまでがタイムリミットだ」
つまり。魔法が使えない達也の感情を消し、精密検査までに一般的な魔法を使える様にせねばならないという事である。
かなりの時間悩んだ末、深夜は頷いた。
「…………分かりました。施行は一週間後で、いいですか」
元造の着物から手を離し、俯いて深夜は去っていった。
一週間後。〇歳の達也に人造魔法師実験が施行され、達也からある感情二つを残して消えた。結果は良好。だが、全ての感情を消した場合より魔法は上手く扱えなかった。しかし、その二つの感情分だけ、深夜の体調は傾かなかった。
偶然と必然。偶然達也に残った感情は、特定の人間一人に対する愛情。深夜が、元造がリミッターとして故意に残した、または残させた感情は、兄妹愛であった。
特定の人間一人に対する愛情。この感情が表に出るのは、二年生のある日の事であった。