それでもOKという方はどうぞ。
そう遠くない未来。
政府は人類以外の種族の情報統制を解除し、同時に他種族との交流促進を図る「他種族間交流法」を施行した。
この方により他種族との交流促進が図られ、特にトラブルもなく受け入れられていた。
しかし、「人間が他の種族を傷つけてはいけない」という条項を悪用した他種族の犯罪が相次いでいた。
これに対して設立されたのが、他種族で構成された特殊部隊MON(Monster Of a Newlow)である。
しかし、深刻な問題が新たに顕在した。
それは隊員の錬度不足と指揮官の不在である。
そこで他種族間交流法保安局は、ある人物を出向させることにした。
とある同人ショップ前。
休日は同人の人々で賑わう店は今は分厚いカーテンに覆われ、その前では防盾を持った警察官が壁を作っている。
駐車場にはテントが張られ、パトカーや救急車など物々しい車両が停車していた。
その中に、一台のジープが止められている。
ドアにはJPFと書かれ、所属を示す部分はN.I.Dと記されていた。
車内にいるのは、軍服を着た日本人の20代後半の男性。
少し長めの栗色のパーマが包む、軍服に似合わぬ洒脱そうな顔で煙草をふかしている。
車内に設置されている無線機が鳴り、男はマイクを取った。
『状況は?』
「まだ人質取って立てこもっとります。どっかの馬鹿が出した斥候が殺られたらしい」
『犯人は?』
「ターゲットはオーク新境地なんたらとかいう奴らが六人、武器はソ連か中国のカラシニコフ。多分中国製の可能性が高いでしょうなぁ」
『で、奴らの要求は?』
「エロ漫画の主役をなんやらかんやら…と、馬鹿みたいな要求でぃ」
『で、地元警察の対応は』
「新法律のせいで何にもやれてませんぜ。あの新法律は犯罪者の対応がなくていけねぇ」
『ちょっと待ってろ、もうすぐ到着する。陸戦隊はまだ動かすなよ』
「へいへい、待ってますぜ。大條の旦那」
男は通信機を切ると、他の隊員が駆け寄ってきた。
「大條司令はなんと?」
「おうよ、突入はもう少しお預けだとよ。ま、見物といこうやぁ」
「了解しました、百舌鳥隼人隊長」
隊員は敬礼をすると、持ち場に戻っていった。
この男の名は百舌鳥隼人。
日本のPMC日本平和維持軍の最精鋭部隊N.A.I.A.D艦隊に所属する陸戦隊の隊長である。
29歳のやや江戸っ子で、元自衛隊の特殊部隊に所属していた。
彼は大條とノイマンの同期でもある。
腕を頭の後ろで組んでシートに座ると、現場に動きがあった。
どうやら保安局が動き出したらしい。
「さて、どう動くかねぇ?」
「隊長ぉー!MOSが動き始めました!」
「あいよ、じゃ俺らも準備するかねぇ」
「了解!」
そういうと、百舌鳥はゴーグルをはめて、荷台にある武器を取った。
小さい盾が付いた銃本体に沿うように剣が折れ曲がるようについている。
これは「菊花」という、宮原進が作ったライフルと両刃の剣を組み合わせた武器だ。
「さぁて、お手並み拝見といこうか」
百舌鳥はジープを降りて、現場を眺め始めた。
現場ではカーテンが開き、犯人6人(?)が女子高生らしき人質を盾にしていた。
リーダー格が女の子をなめようとした瞬間…
同人ショップのガラスに弾痕が刻まれ、リーダー格のカラシニコフが粉々に吹き飛んだ。
その後も次々と犯人たちの武器が吹き飛んでいく。
「ふーん、2kmから対物ライフルで狙撃ってとこか。うちの副司令ほどじゃないが腕がいいな」
百舌鳥がつまらなそうに呟く。
そうこうしているうちに身長2m以上の鎧武者っぽいのががショップの壁を破壊して中に突入した。
「おいおい、強硬手段に出やがったぜ」
さっきの鎧武者が明けた穴から、次々と人質が出て来る。
「どうします?」
「よし、人質の元に行ってやれ」
「了解!」
陸戦隊の隊員たちは次々と人質たちのもとへ駆け寄り、保護していく。
現場では死んだと思っていた女性の斥候が起き上がり、二丁持ちのサブマシンガンをぶっ放して犯人二人を倒した。
「おっ、防弾ベストでもつけてたのか?しかし人質も居るのに撃つとは、とんだトリガーハッピーな嬢ちゃんだな」
斥候は後ろから来た犯人に捕らえられるも、自分の体越しに犯人を撃ち抜いて行動不能にさせた。
「おいおい、自分の体を撃ち抜きやがったぜ」
百舌鳥は驚愕した。
仲間が全員やられながらも、諦めの悪いリーダー格は人質の女子高生の顔を掴み、細い首をへし折ろうとしている。
「さてと、こっからは俺の出番だぜ」
百舌鳥は現場へ向かって駆け出していく。
命令無視に当たりそうだが、女の子の命が危ういのだ。多分大丈夫だろう。
しかし、その駆け出しはストップすることとなった。
捕らわれていた女の子が豚の鼻っ先を蹴り上げ、変身したのだ。
「おっと、向こうの隊員だったのか」
…俺の出番はなしか。
少しゆっくりめに歩いて現場に向かう。
現場に着くと、隊長らしい黒いスーツに身を包んだ女が拳銃を構えていた。
驚いたことに隊員は全員女性だった。
あの鎧武者と見間違えていた奴も長身の一本の角が生えた女だった。
もう一人、対物ライフルを持った単眼の女性というか女の子もいた
これが、対他種族用特殊部隊MONって奴か…。
「大人しく投降なさい。それともポークソテーになりたいかしら?」
「でまぁ、俺はN.A.I.A.Dの陸戦隊の百舌鳥だ」
出遅れた感が半端ない気がするが、菊花の銃口を構える。
「と…特務機動艦隊が出てきた!?ともかくっ!投降しなさい」
犯人のオークはプヒヒと不気味な笑い声をあげ…
「わかったブ!投降するブ!完敗ブよ!」
…投降した。
犯人は手を上げているが、へらへら笑って反省の色を見せていない。
百舌鳥は怒りを感じて握り拳をゆっくり挙げた。
「おっと。こうやって投降したからにはもう僕に暴力は振えないブ。まぁペナルティは強制送還といった所ブ~?故郷に帰るまでエスコートw…」
「ああ、暴力は振るえねぇぜ。だがな…」
そういうと、百舌鳥はゆっくりと手を下した。
その瞬間弾丸がガラスを突き破り、犯人とMON隊員たちの間に大きな穴を穿った。
「ぷ…ブギ…」
犯人はビビってヘナヘナと座り込んだ。
「当てないようにすれば問題ないのだよ。じゃ、後は任せた」
「ええ、ありがとう」
何故か部屋の空気が5度は下がった気がした。
何かぞっとした百舌鳥はそのまま店を出る。
さっさと歩く百舌鳥の後に、MONの隊員たちが出て来た。
あのサングラスをかけた女隊長(?)以外。
いや、サングラスをかけた奴はいるが、中身が違う。
その後、銃撃音とオークの悲痛な悲鳴が響いたが、百舌鳥は気にしないことにした。
20分後。
現場は撤収作業が進み、警察車両はほとんどいなくなっていた。
「私は他種族間交流コーディネイターの墨須よ。よろしく」
「おお、済まねぇ。俺は百舌鳥隼人。日本警備維持軍特務第一機動艦隊陸戦隊隊長だ」
陸戦隊はいわゆる海兵隊のようなものである。
だがN.A.I.A.D艦隊唯一の陸上部隊なので、出番は比較的多い。
今回は地元警察の依頼を受けて展開していたのだが、全く意味がなかった。
「おっと、旦那方のご到着だ」
ヘリの音を聞きつけてテントの外に出る。
轟音を上げてヘリが一機着陸し、日本人とドイツ人の軍人が出てきた。
「百舌鳥、勝手に出るなって言ったろう?」
やや渋面と言った表情で大條は百舌鳥の頭を小突いた。
大條は両手持ちしたソードオフのSPAS12、ノイマンはいつものレールガンとは違う謎の巨大な武器を肩に背負っていた。
「おお、大條司令。こっちの隊員だと気付かずに少女を救出しようとしたんですわ。で、彼女らが対他種族特殊部隊M.O.Nと他種族間コーディネイターの墨須さんです」
「俺は大條透。N.A.I.A.D艦隊の司令官だ。こっちはノイマン・ジュペー」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、有名な指揮官とあえて光栄だわ」
スミスと大條は握手を交わした。
「ふーん、なかなかいろいろありそうな部隊だな」
「そういえば、さっきノイマン副司令何キロ先から狙撃したんですか?」
「いつも通り10kmからヘリでね。宮原さんが作っちゃったこの76mm電磁加速砲で」
ノイマンは背中にしょっている武器を見せる。
「………」
M.O.S隊員のマナコとかいう単眼の隊員が文字通り目を伏せたので、百舌鳥は少し慌てた。
「マナコとか言ったか?えっとな、10kmという数字は電磁加速砲だから可能な話だからな?50口径のスナイパーライフルで普通は最高2.5kmだから。ノンスコープで2km撃ってあの命中率はすごいんだぜ?」
「僕は最新のスコープとコンピュータで射撃を可能にしていますからね」
普通の人間であればそんな長距離狙撃はスコープと測距手が要るのだ。
「でも撃ってみたいぜ、そのライフル」
ゾンビーナと名乗る少女がノイマンの武器に興味を示す。
「止めとけ。多分撃ったらあんたの手は明後日まで吹っ飛んでいくぞ」
「と言うか、76mmってあいつ阿呆を通り越して馬鹿だろ」
前作った30mm電磁加速狙撃砲も馬鹿馬鹿しい代物だったが、76mmなんて現代駆逐艦の艦砲レベルのサイズなのだ。
それを示すように、二つに折り込まれた銃のパーツを両肩に背負う形となっている。
「ちなみに組み立てたら何メートルで重量は何キロあるんですか?」
「8mで40kg前後。最近は重い物も最近は慣れてきたんだよね」
当のノイマン副司令は笑っているが、相当の苦労をしているとわかる。
「聞きたいことがあるのだけど」
墨須が話に入ってきた。
「百舌鳥くん、貴方から見てこの子たちはどう?」
「そうですなぁ…」
百舌鳥は真剣にものを言う時や、本音が出ると江戸っ子訛りが消える。
「生ける屍の隊長、鬼人の護衛担当、単眼族の狙撃手、影人による潜入及び攪乱…。人選は良いですがね、作戦はマズイでしょうな」
躊躇いの無い百舌鳥の意見にMON隊員は肩を落とした。
「あくまで個人的な意見ですがね、今回は成功したとはいえこんなんじゃ、次も成功するとは思えませんや」
「そう…。ありがとう…」
墨須はそう言うと後ろを向いた。
「おい、帰るぞ百舌鳥。報告書が俺たちを待ってる」
「了解。じゃ、ここでおさらば」
「ではまた」
三人はテントを後にした。
「いやー、はっきり言ってやるなよ。俺もそう思ったけどな」
「旦那、仕方ないじゃあないですか。あのまま慢心させて戦場に出られる方がよっぽど怖いことでさぁ」
「まぁ生兵法は大怪我の基って言いますからねぇ」
大條とノイマン、それと百舌鳥はそれぞれヘリとジープに乗り込みインヴィンシブル基地へ帰っていった。
この時、三人は一切気付いていなかった。
現場のテントの中で、墨須が口角を上げて最大限の黒い笑みを浮かべ、MONの隊員達を震え上がらせていたことを…。
翌朝、インヴィンシブル基地の司令部。
朝ご飯を終えた百舌鳥は、大條から呼び出された。
「で、お呼び出しとは如何様ですか?大條の旦那」
「お前宛に本部から辞令だ」
百舌鳥は一枚の封筒を渡された。
中身を開いてみると、『軍事顧問として他種族間交流法保安局へ出向せよ』と書いてあった。
しかも、今日。
「はぁ!?」
百舌鳥は絶句した。
「…取り消せないんですかい?」
「理事会命令なので無理。まぁ一時的な話だし、今はこっちも暇だしなぁ」
「…あいよ、どこへでも行ってやりますよ」
「よろしくな」
百舌鳥は部屋を後にした。
「へっ、寄る意味なんてあるめぇ。そのまま帰ってやらぁ」
百舌鳥は辞令書をびりびりと破く。
そして駐車場に行くと、ジープを走らせ自宅へ向かっていった。
「なっ…」
百舌鳥は絶句していた。
自宅の前に、昨日会った墨須がMOSの隊員と一緒に居たのだ。
昨日会った隊員以外にも、見慣れぬ隊員が居た。
「予想はしてたけど、せっかくの軍事顧問が初日から欠席とは困った人ね…?」
墨須はにっこりとほほ笑んだ。
ただし目は笑っておらず、身体から吹き出すオーラは淀んでいる。
正直言うと、百舌鳥はその微笑に震え上がりそうになった。
「あ、そうそう。さっき決まった話なんだけど、今日からこの子たちをこの家にホームステイさせるから」
墨須が見慣れぬ隊員の方を指さした。
ラミアとハーピー族、ケンタウロスとアラクネ族、そしてマーメイドの五人である。
マーメイドは車いすに座っていた。
「そんないきなり!?住居の準備が居るんじゃぁないかい!?」
「貴方の住居はとうの昔に改造済みよ」
「何ィ!?嘘だろ…」
「じゃあ頼むわね。私ここで帰るから」
「ちょっ…おい!」
墨須は百舌鳥が制止するのにも構わず、自分の愛車で帰っていった。
百舌鳥は隊員たちの方に振り向いた。
「よろしく!」
「よろしくねっ!」
「よろしくお願いする」
「よろしく…」
「よ…、よろしくお願いします…」
「おぅ、俺は百舌鳥隼人だ。今日からよろしく!」
こうして、N.A.I.A.Dの陸戦隊隊長の百舌鳥隼人とモンスター娘隊員達の生活が始まった。
いかがでしたでしょうか。
3作品抱えていますので、投稿スピードは遅くなります。
第一話は気長にお待ちください。