では第一話をどうぞ。
百舌鳥の家はまぁまぁデカイと言っても過言ではない。
400㎡の鉄筋コンクリート製の3階建ての一軒家で、広いガレージを併設し屋上にはヘリポートが設けられており、この住宅地ではかなり目立つ。
これは百舌鳥が生活費以外余り給料を使わなかった事と、空き家だったために安く手に入ったのと、仕事上緊急招集が掛かった時に必要だと思って設けた結果である。
例えばヘリポートは、緊急招集で出撃するときに部下がヘリで百舌鳥を迎えに来るときに使用することが多い。
「うわつ…、本当に改装してあるぜ…」
家に入ってすぐ百舌鳥は驚いた。
地下階が新たに出来て広い浴場とプールが設けられ、物置同然だった3階に訓練生用の部屋が設けられている。
「ま、悪ぃ改装ではないわな」
百舌鳥はそう呟いた
百舌鳥の居間。
「ほい、お茶とお茶菓子だ」
百舌鳥は訓練生にお茶を出し、お茶菓子としてクッキーを出した。
自分で淹れるほどの珈琲党である百舌鳥はもちろん自分でブレンドしたブラックコーヒーである。
「ほんじゃあ自己紹介といくか。さっきも言ったが、俺は百舌鳥隼人。よろしくな」
「ヴァイパーです。よろしくお願いしますね」
ヴァイパーと名乗る、見た目はラミア族の少女は緑色のセミロングで、少女らしい風貌を持つ眼鏡をかけた子だ。全身の七割を構成する蛇の部分も緑色である。
外見だけの判断だが、意外と真面目そうだ。
ラミア族は毒術に長けているらしいので、衛生兵として教育するのが適任だろうか?
「…ジェルフォーだ、よろしく頼む。ご主人」
彼女は分類すればハーピー族のラプター種だそうだ。
ラプター種とは要を言えば猛禽類で、体躯も普通とは違いかなり発達している。
ジェルフォー(仏語で白隼の意)名前の通り、髪も羽根も白い。
無口のクールビューティーと言った感じだ。
使うとしたら斥候が妥当な線だろう。
「我が名はマスタング・サジタリオ・ガントレット。よろしくお願いする。我が主」
金髪をポニーテールにまとめたケンタウロス族のこの少女は、喋り方からわかる通りの武人で、(模造ではあるが)武器も所持している。
母親は「弓神」と呼ばれるほどらしく、マスタングも弓術が得意だそうだ。
基本的に教育の必要性は感じないが、メニューを組むとしたら射撃兵又は突撃兵といった所だろうか。
「ムリヤ・ローレライです。よろしくお願いしますね、旦那様」
人魚族のこの少女はピンク色の髪で清楚そうな見た目、纏う服はいわゆる甘ロリだ。
下半身が魚型なので、陸上では車椅子を頼りにせざるを得ない。
もし隊員として使うならば、水上・水中戦のみとなるだろう。
何故かお嬢様というか王女様のような雰囲気を感じるのだが、気のせいだろうか?
「あら、自己紹介がまだだったわね。ブラックウィドウ・スプーキーよ。よろしく」
アラクネ族のこの女の子は、この面子で一番大人びている。
外見上の特徴は黒いセミロングで、蜘蛛らしく目が8つあり人間のような足の他に蜘蛛のような胴体の部分に8本の足の合計10本ある。
服装は白く妖艶な最低限の個所を隠すのみの服なので、目のやりどころに困る。
この訓練生たちは一癖も二癖もありそうだ。
そして呼び方はどうだろうか。
マスタングの「主」はもう仕方ないとして、ムリヤの「旦那様」やジェルフォーの「ご主人」はどうなのだろうか。
スプーキーは何も言っていないが雰囲気的には「ハニー」と呼んでもおかしくない。
百舌鳥は世間体を気にする質ではないが、誤解を招きそうだ。
「だ…。ダーリン…」
百舌鳥は聞きなれない言葉にふと我に返った。
「す…すいません…。部屋が…」
ヴァイパーの顔がだんだん青くなっていく。
「へ?あっ!部屋の温度が低すぎたか!?」
慌てて百舌鳥はエアコンのスイッチを入れ、ヴァイパーに毛布を掛けた。
砂漠や極寒の地の環境に慣れすぎたせいか、基本部屋の温度を気にしない。
エアコンは備え付けてはあるが、冷房や暖房をつけることは滅多に無かった。
「済まないな。君が変温動物だってことを失念してた」
「いえ、いいんです…。それに…」
「それに?」
「い、いえ、何でもありません!」
ヴァイパーは顔を赤らめてそっぽを向いた。
「そうだ。長旅に疲れただろうから、今日はここでお開きにしてお風呂に入って早めに睡眠を取ったらどうだ?」
「そうですね、今日はそうさせていただきます」
彼女たちは居間を出て風呂場へ行った。
「ふう…」
百舌鳥は自分のソファに深く座り込む。
「しっかし、なーんか変な気がしたな。M.O.Nの訓練生というよりか普通の留学生のような気がするが…」
首を傾げつつ珈琲を飲んでいると携帯が鳴る。
自称世界一の発明家ことマッドサイエンティスト&メカニックの宮原進からだった。
「おう、宮原。なんか用か?」
『新しく着任された、百舌鳥隼人教官様に新たなお届け物でーっす。玄関までどうぞ』
「了解、すぐに向かうぜ」
百舌鳥は電話を切ると、すぐに玄関へ走っていった。
「お久しぶりです」
「おう、宮原」
玄関を出ると、宮原の背後にトレーラーが停車していた。
全長はトータル20mでトラクター、トレーラー共にガチガチの装甲に固められ、トラクターには連装砲塔が、トレーラー部のコンテナには左右にそれぞれ1、2、3、4と番号が振られている。
「で、その装甲トラックが届けもんか」
「いえ、このM13Rb 漁火もそうですが、本当の届け物はこっちです」
コンテナーの1と書かれた部分のボタンを押した。
すると、1と書かれた部分が開き、2m強のパワードスーツが姿を現した。
色は砂漠戦用なのか全般的にデザートピンクで、頭部や胸部はダークブラウンになっている。
「で、これは?」
「PSM-01m ジェスターです。パックを換装することによって様々な形態をとる事が出来ます」
「成程、それでジェスター(Jester:道化師の意)ってわけか。で?一般兵が運用できないからお蔵入りした代物かな?」
こいつの場合、絶対に個人に渡す=お蔵入りしたものと決まっている。
「そうですよ」
宮原はややむくれた。
「お前のことだし、トラクターにAIを積んでるんだろ」
『はい、私のことはkitとお呼びしてください』
今度のAIは割とまともな様だ。
「はいはい、じゃあ謹んで貰い受けますかね」
「ありがとうございます。じゃあ僕は帰りますね」
「じゃあな」
百舌鳥は宮原が歩いて帰っていくのを確認すると、ガレージにトレーラーを入れた。
その頃、百舌鳥家の大浴場では訓練生(?)5人が体を休めていた。
種族こそ違うが彼女らの体はそれなりに発達しており、ケンタウロス以外は胸の差はそれほどない。
「言っておくけど、ダーリンは誰にも盗らせないからねっ!」
ヴァイパーがフンスと誇らしげに言った。
「ふっ、ご主人の前で猫を被るなんてしたたかな蛇ね。私に勝てるわけないのに」
「何ですってぇ!?」
ジェルフォーがせせら笑い、ヴァイパーが喰ってかかる。
「…ふん、笑わせる。主を娶るのはこの我だ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あらあ?ハニーは私が絡め取るって相場が決まってるのよ」
「はぁ!?」
百舌鳥をめぐる女同士の争いで、風呂場は喧騒に包まれていた。
N.A.I.A.D陸戦隊を纏めるエリート兵、百舌鳥隼人の知らないところで水面下の攻防は始まっていた。
2日に一回のペースでの投稿を目指したい…のは山々ですが、大学も始まりますので少しペースが遅くなるかもしれません。
その点はご了承ください。