M.O.N隊員育成事情   作:NAIADs

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第四話「初任務とその顛末」

ある夜、百舌鳥宅。

「お帰りなさいませ、旦那様」

「ハァ、ハァ、ハァ…」

「ゼェー、ゼェー、ゼェー…」

「よし、本日の訓練終了。お疲れさん、じゃあ風呂にすっか」

12時間近くかけた山岳訓練(ムリヤは不参加にして留守番にしたが)を終え帰ってきた訓練生達はもう息も絶え絶えと言わんばかりに息を荒げていた。

一方百舌鳥は息一つ荒げず、鳴ってきた電話を余裕で取る程であった。

「もしもし」

『あ、百舌鳥さんでしょうか?メロウヌです』

「ああ、ハイハイ。ムリヤのお姉様ですな。如何様で?」

『あの、ちょっとこっちまで来てくださいまし』

「は?」

「あの、映画監督の加瀬木とおっしゃられる方が来て…」

「ふんふん、撮影と称して怪しい行動ねぇ…。分かった、今すぐ行く」

百舌鳥は電話を切った。

「旦那様、お出かけですか?」

「ああ、ムリヤ。ちょっくら来留主の元へ行ってくるぜ、留守番頼む」

「分かりました、旦那様」

あとはムリヤに任せ、愛車に乗り込んで来留主の元へ向かう百舌鳥であった。

 

数分後、来留主宅

そっと玄関に近づき、ドアに耳を当てる。

『俺の財産…おめぇらにこれに触れる権利はねぇんだよ!』

『監督っ!…っけ!?』

「まずいな…」

ドアをピッキングして中に入った。

「卵はスーパーでセール中だよ!」

その瞬間、来留主に殴られた誰かが吹っ飛んでくる。

思わず足が出てしまい蹴り飛ばしてしまった。

「あ…ヤベッ、変なの蹴っちまった」

百舌鳥は事態に気付き、頭をかく。

「あれ?百舌鳥さん?」

「おう、犯人はどこだ?こいつ以外に」

恰好は悪いが、最悪の事態を防ぐ事が出来てよかったと安堵する百舌鳥であった。

 

数分後。

「こいつらで全員か?」

「ええ、ありがとうございます」

3人を縛り上げた百舌鳥は、来留主達と会話していた。

「墨須に連絡は取ったが、俺の上司の人脈でこいつらをテロリスト用の刑務所やシベリアに送れるぞ…。どうする?」

「いや、そこまでは流石に…」

「さて、彼女はそうは思って無いようだがねぇ…」

というより、殺気しか立っていないような気がするが…

「あ、お茶でもどうです?」

「おお、頂こうか…」

百舌鳥は来留主に促せられるままキッチンへ向かっていった。

この時、来留主達は気が付かなかった。

自称映画監督と名乗る男がこっそり脱出したことを。

これが始まりに過ぎなかったことも…。

 

翌日、午後7時。

通常訓練を終えた百舌鳥のもとに、一本の電話が掛かってきた。

「はぁ?あの自称監督からSOS?」

『ええ、MONがその倉庫に突入するんだけど、念のために貴方たちにも出てもらえるかしら?』

「了解した。30分ほどでそちらに着く」

『わかったわ』

百舌鳥は携帯電話を切った。

「よし、お前ら。仕事だ」

「「「了解!」」」

「…………わかったわ」

スプーキーの様子が変なような気がするが、百舌鳥は訓練生を現場に連れていくことにした。

 

30分後。

目標の2km前で漁火を止め、訓練生を待機させた。

百舌鳥は漁火の1と書いてあるコンテナの前に立つと、コンテナが展開しジェスターが姿を現す。

ジェスターを装着すると、すぐにシステムが起動してモニターに情報が表示された。

パワードスーツはいわば人間の機能を外側から補完及び強化するものと言っていい。

逆に体の内部、つまり体を機械で改造するのがサイボーグである。

ジェスターの場合、対NBC兵器や対Gスーツを兼ねているのだ。

菊花とこの前もらった30mm狙撃電磁加速砲を携えて現場に向かう。

内部機構に存在するの人工筋肉のおかげで、8kg以上もある狙撃砲があるにも関わらず時速30kmでの走行や500m近い跳躍が可能となった。

高性能なレーダーとセンサーで周囲の状況がつぶさにわかるようになっている。

その代わり内臓バッテリーが1時間しか持たないという難点があるが。

「ジェルフォー、隊員たちの様子は?」

『…まもなく突入する』

ジェルフォーは夜目も効くので、偵察に送っている。

「よし、正規隊員のお手並み拝見」

百舌鳥は漁火に寄りかかって待機を始めた。

 

結果はさんざんと言っていいだろう。

突入組のティオニシアとゾンビーナはブービートラップに引っかかって転倒、ゾンビーナはティオニシアに押しつぶされてバラバラになり、現在ヴァイパーとスプーキーによる治療を受けている。

マナコは対象への狙撃でかすめた程度で終わった。(これは夜間にスターライトスコープなしでマズルフラッシュが酷くなるサイレンサーを付けたにしてはよく出来ている方だ)

まぁこちらも事態に気付くのが遅かったのだが…

気付いてガントレットやジェルフォーを向かわせた時には逃げられてしまっていた。

「全く…、ティオニシアとゾンビーナをJPFの基礎訓練に叩き込んでやりてぇ…」

ブービートラップにも全く警戒せずに突入するとは…。

後で探査してみると、侵入警戒用の糸や、トラップ用の糸が確認された。

ただ転ばせるだけの糸だからよかったものの、爆弾がつながっていたらと思うと冷や汗が出る。

「………………………」

さっきからスプーキーの様子がおかしい。

糸を見る目が、何か家族を思うような目になっている。

「・・・?スプーキー、どうかしたのか?」

「いえ、何でもないわ」

「ならいいが、心配事があるなら今すぐ言えよ」

「ええ…」

…同じアラクネ族と考えれば、家族若しくは友人という可能性があるな。

スプーキーには悪いが、次の作戦時にはメンバーから外そう

撤収作業をしながら、そう考える百舌鳥であった。

 

ただし、時は無情にもその時間を与えなかった。

「はぁ!?今度は来留主がさらわれたぁ?」

『ええ。多分、あの映画監督を拘束した犯人と同一犯とみて間違いないわね』

2時間後、撤収作業を終え帰ってきた矢先、墨須から連絡を受けた。

「…わかった、俺たちも出撃してみる」

『よろしく』

「よし、お前ら出動だ!」

「「「はい!!」」」

百舌鳥は訓練生たちを呼びかけ、出動準備を急いだ。

この時はもちろんスプーキーを現場から外そうと思っていたことなぞ頭から吹き飛んでしまっていた。

 

一時間も経たないうちに、警察無線を傍受したJPF所属の偵察機が古い倉庫街に存在するある廃倉庫から熱源を探知したと連絡が入った。

現場付近に到着すると、ジェルフォーを放った。

「ジェルフォー、目標は視認できるか?」

『…多分あれだと思う。視認した』

「了解、戻ってくれ」

『…了解した』

「墨須、来留主をジェルフォーが視認した」

『了解したわ。展開させる』

「こっちも展開する。キット、後は頼む」

『了解、ヴュルガー』

ヴュルガーとはドイツ語で百舌鳥のことで、彼(?)なりのジョークである。

宮原製の人工知能は妙に性格が人臭いのが多い。

「今回のような作戦はどういう装備がいいと思う?」

『PSM-01m-Gをお勧めします。2番コンテナの前にお立ち下さい』

「了解」

百舌鳥は2番コンテナの前に立った。

するとジェスターの上から新たなユニットが装着される。

変わった部分といえば、肩部が大型化した事と背部にガトリング砲の砲身が見えるぐらいだが…。

「で?陸戦にふさわしいとは到底思えないんだが」

『デフォームと言っていただければすぐにわかります』

「はぁ?で…デフォーム」

半信半疑で百舌鳥はその言葉を口にしたが、その瞬間変化が起こった。

背部のパーツが頭部に移動し、両手の部分が瞬時に足のようなパーツに変り足の部分も4足歩行に適した形態となった。

「成程、4足歩行形態に変形することで陸戦能力を高めるパーツか。使わせてもらおう」

百舌鳥は4足歩行形態のまま現場に向かった。

 

現場の倉庫に着いてみると、最初は緊迫した空気だったもののだんだん内部から笑い声が聞こえ、そしてスプーキーの表情がだんだん怖い顔になっていった。

「ちょっと行ってきてもいいかしら?」

スプーキーの声がいつも以上に低い。

「は?んな事許可出来るわk」

「黙って。これは家族の問題なの」

「お、おう…」

止めようとしたらものすごい剣幕で睨み付けられ、了承するほかはなかった。

スプーキーはスタスタと倉庫の中に入っていった。

『…ね、姉さん!?』

『え?』

『どうも、初めましてって言いたいところだけど、今はこの子と話があるから出て行ってもらえるかしら?』

『は、はい』

倉庫から来留主が出てきた。

ジェスターを解除した百舌鳥の元へ来る。

「よう、無事だったか」

「はい、で、さっきの方は?」

「えっとな、あいつはブラックウィドウ・スプーキー。この前は行かなかったがあいつも訓練生だ」

「で、何が始まるんですかね?」

「さぁな、俺も知らん」

 

『全く…、母様から音信不通だから探してくれと言われてきてみれば…。他人に悪さしてたなんてね』

『ね、姉さん。これには事情g』

『お黙りなさい、ラクネラ・アラクネラ。これはお仕置きが必要よねぇ…?』

『え…ちょっと待って…。止めて…それだけは…』

「あれ、止めなくていいんですか?」

心配そうな顔で来留主が聞いてきた。

「他種族間だし」

「家族の問題らしいから」

「「他種族間交流法的には問題なし!」」

珍しく、墨須と百舌鳥の声がハモった。

『じゃぁ行くわよ…』

『ぴぎゃぁぁぁああああああ!!』

静謐な夜空にふさわしくない悲鳴が響き渡った。

 

数分後、倉庫内。

「ステイ先の選択を誤り、その後のケアを怠ったことを」

「いや別n」

「いえ、何も言わなかったこいつも馬鹿です」

「おいおい、こいつって…」

倉庫内に居るのは攫った本人のラクネラとその姉のスプーキー、攫われた来留主とコーディネイターの墨須と百舌鳥の計5人が居た。

スプーキーがさっきからラクネラを睨み付け、妹の言葉に口をはさんでいる。

「でももうちょっと誠意g」

「……………………」

「わ、私も行くところがないので住めるような家とアラクネ族に嫌悪を抱かない家主の家が…勿論姉さんの居ないところで」

スプーキーが般若の形相になっているので、ラクネラはかなりおびえていた。

「成程、改装済みとなるとご希望に合う場所は限られますが…。一つ、ご所望に合う場所があります」

「僕のところですね」

「まぁ、そうなるだろうな」

「じゃあ妹のことをよろしく頼むわね、来留主君。でも何かあった時はいつでも言ってちょうだい。いつでも〆るから」

「ははは…」

こうして、ラクネラ・アラクネラは来留主公人の元へステイすることになった。

 

帰り道。

百舌鳥は漁火を先に帰らせて訓練生たちと歩いて帰ることにした。

「今回はよくやってくれた。初の任務にしては上出来だったぞ」

「今回は悪かったわね、家族の問題に付き合わせちゃって」

「何、あれしきのことぐらい問題ないって」

「何なら、貴方のことをハニーって呼んでもいいわよね?」

「ちょっ…まぁいいか」

「スプーキーがいいならじゃあ私もだぁりんって呼んでもいい?」

「ヴァイパー、お前もかよ。まぁいいか」

「ふっ…」

「……くすっ」

百舌鳥達の笑いは、家に戻るまで絶えなかった。

 

一方、百舌鳥宅では…。

「旦那さまー、早く帰ってきてくださいませ~。でも…帰ってこない恋人を待つという展開も…、良いですわぁ~」

悲恋のサスペンスドラマを見つつ、悲恋妄想に浸るムリヤなのであった。

 

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