申し訳ありませんでした。
では、少し短めの第五話をどうぞ。
ラクネラの事件が一件落着して数日後の早朝。
日本平和維持軍、インヴィンシブル基地内の司令室。
「やっと家に帰れますね…」
「百舌鳥もご苦労さんだったな」
「いやぁ、久々の任務で疲れましたわ。大條の旦那」
百舌鳥は初任務が終わった数時間後に、ベルギーで開催された首脳会談の護衛に出発しなければならなくなった。
久しぶりの仕事だったことと、テロリストへの対処のためにかなりの体力を消費した。
「そういえば、訓練生たちは大丈夫なのか?」
「はい、訓練生たちの訓練メニューは組んでおきましたし、食事は用意してありますんで。まぁ、帰ったらお世話を要求されるんでしょうがねぇ」
「何気に大変だな。教官の仕事も」
本当に急な仕事だったため数日分の彼女らの食事を作り、訓練生には訓練メニューと留守番中の注意事項を手短に伝えた。
臨時でガントレットに訓練生長を任せたが、大丈夫だったのだろうか?
「ではおいとましますわ、大條の旦那」
「おう、じゃあな」
朝9時、百舌鳥宅。
「はぁ…。ガントレット、臨時訓練生長の仕事お疲れさん」
「主殿こそ、お疲れ様です」
百舌鳥はソファーに腰かけ、珈琲で一息入れていた。
何せ家に帰るなり、ヴァイパーやジェルフォーに飛びつかれ、そして予想通り、訓練生たちにお世話を要求されたのである。
要を言えば毛づくろいとか水浴びとかだ。
百舌鳥は金は掛かるが食事や飲み物で済む人間の訓練生の方が楽だと思った。
「そういやぁさ、ガントレット。なんでお前さんはいつも甲冑を付けてるんだ?ここの中ぐらい外したらどうなんだ?」
なぜこのタイミングで聞いたかというと、百舌鳥は一度もガントレットの甲冑姿以外を見ていない。
ふとそんなことを思い出して聞いてみたくなったのだ。
「騎士としての誇りがある以上、甲冑は外せません」
「お前の親友は外していただろ」
彼女の親友というセントレアは、この前会った時には甲冑なんて付けていなかった。
あいつも騎士と名乗っていたはずだ。
「彼女とは種族が違いますので…」
「は?だってケンタウロスと…」
「えっとですね、一口にケンタウロスといっても色々な種類があるのです」
「ラミアにもいろんな種類が居るんですよ」
習慣の長風呂を終えたヴァイパーがいつの間にか上がってきていた。
「へ?ヴァイパー、お前もただのラミアじゃないの?」
「あ、やっぱり?」
一時間後。
「浅学とは言え、済まなかったなぁ…」
「いえいえ」
「分かりづらい部分ですから…」
百舌鳥はヴァイパーとガントレットに説明してもらった。
ヴァイパーは正確にはラミアではなくメリュジーヌというラミアの亜種だった。
ケツァルコアトルやドラゴニュートのようなドラゴン系の性質も混ざっているそうだ。
水蛇のような性質もあり、水辺を好むらしい。
百舌鳥は家の近くに湧水がわく泉があったのは救いだと思った。
「てか俺は一度もお前の背中の羽根を見たことがないんだが」
「羽根とは言っても滑空しかできないので普段は折り畳んでいるんです」
「それは進化した…というのか…、どうなんだろうな」
ヴァイパーは背中の羽根を展開した。
確かに立派なドラゴン系の羽根ではあるが、滑空ならまだしも飛行には向いていない小ささだった。
ガントレットは体格が普通のケンタウロスより発達している重量種らしい。
ケンタウロスにはさらに競走馬種という種類もいるそうだ。
百舌鳥はセントレアのような種類をライトタイプ、ガントレットのような種類をヘビータイプ、競走馬種をレースタイプと呼ぶことにした。
「成程、君はヘビータイプか」
「解ってもらったのは良いですけど、ヘビーってなんか気持ちが複雑になります…」
ガントレットは騎士とは言えどもやはり女の子。
ヘビーとか、ペザンテとか、シュヴェアーとか、ぺサドタとか、「重い」という単語は苦手なのかもしれない。
「というか、種族違うのによくセントレアと仲良くなれたなぁ」
「基本的な差はありませんから」
「しかしまぁ種別が違うだけで何が変わるんだ?」
「普通のケンタウロスは重装鎧を装着し、槍を主武装とした突撃兵です。一方我々は軽装の鎧を装着し剣で戦い、競走馬種は伝令として活躍するのです」
「しかし、ならなんでお前は剣じゃなくて長弓やクロスボウの方が得意なんだ?」
彼女はどちらかといえば格闘よりも射撃の方が得意なのだ。
とは言っても格闘も悪くはないのだが…。
「そ…それはですね、か…家庭の事情といいますか…」
「家庭の事情?」
「私とセレアは特に気にはしてないんですが、親同士はライバルみたいな感じで…」
「あー、なるほどなぁ…」
ガントレットの説明によれば、『槍神』と呼ばれるセントレアの母親と『弓神』と呼ばれるガントレットの母親は長年試合で優勝を争う関係だったそうだ。
総合的に言えばセントレアの母親の方が強く、ガントレットの母親は『永遠の二番手』と呼ばれている。
親同士の仲が悪くなるのは必然と言えるだろう。
「成程、自分の得意な弓術の方を娘に教えるのは必然という訳だな」
「そういえば、主殿は何がお得意なんですか?」
「俺か?そうだなぁ…格闘と射撃どっちかって言われると、どっちでもないんだよな。乗り物は上手く操れるが」
「そうなんですか。あ…あの、もっと主殿のk」
「ご主人、もう少し毛づくろいを…」
ガントレットが何かを言っている最中にジェルフォーが割り込んできた。
「え?まだやるのか?」
「ちょっと待ってよ、わたしだって…」
「旦那様、いい悲恋物の映画を見つけたんです!一緒に見ませんか?」
「おいおい、俺は一人なんだぜ?順番だ順番」
自分の事で揉める訓練生を止めつつ、何か幸せな気分になった百舌鳥であった。
今回は少し短くなってしまいました。
投稿ペースは一週間に一回のペースを目指したいのは山々なのですが、他作品との折り合いもありますので、2,3週間に一回となるかもしれません。
気長にお待ちください。