One slash man   作:蝿声

5 / 6
うおおお、5、5キター!なんか鬼武者っぽい敵だな。ネロ……老けたなあ。誰だこの女。キリエは?あれ、右腕おかしくね?おかしかったのがおかしくなってね?まあストーリーで語られるんだろうけど、いきなり個性を捨てるとは思い切ったなあ。あ、アクションはちゃんと踏襲してんだな。いやあ、ネロ老けたなあ。こんなにネロが老けてたら流石のダンテも出ない……ダンテ!?え、ダンテ!?これダンテ!?

大体こんな感じで書いた


第5話

 とある大陸の沿岸部に存在する城塞都市フォルトゥナ――悪魔であるスパーダを神と崇める魔剣教団が中心となる異教の地において、教団の重要な祭事である魔剣祭が開かれていた。そんな日にもかかわらず、教団騎士としての任務を言い渡された男――ネロは、早々に任務を終えて祭りが行われている大歌劇場へと続く路地を駆けていた。

 その道中を遮るように、不格好な人型の麻袋の中で群体を成す悪魔、スケアクロウが何体も現れる。ネロはそれらを一瞥しても足を緩めることなく悪魔の群れの中へと飛び込んだ。悪魔は手や足に備わっている巨大な刃、あるいは体全体を使って飛び掛かるようにネロに襲い掛かる。ネロはそれらをいとも容易く避けるばかりか、ギプスに包まれ首から吊るした右腕を使うことなく左腕一本で次々に悪魔を屠っていく。悪魔を殴り、蹴り、ぶん回し、千切り、潰し、奪った刃で裂き、時に踏み台にしながら群がる悪魔を蹴散らしていった。

 

 やがて現れた悪魔が尽きかけたころ、目まぐるしく移り変わるネロの視界に不意に一つの建物の屋上から眩い光が差し込んだ。思わず目をつぶり、隙を晒したネロに残り少ない悪魔がここぞとばかりに一斉に襲い掛かる。しかしネロは目をつぶったまま迫りくる悪魔の位置を把握し、手に持つ刃を振るい一閃の下、全ての悪魔を切り伏せた。

 静かになった路地の真ん中で、ネロは眩い光が発生した方向を警戒しながら目を向ける。しかしそこは光を反射するようなものは何もない、ただの変哲もない建物の屋上があるばかり。ネロは訝しみつつも大歌劇場へと再び駆け出す。不穏の光よりも祭事を優先した。

 別にネロが信仰に厚い信徒というわけではない、むしろその逆といっていい。彼が急ぐ理由はただ一つ――祭事の歌姫を務める姉のような幼馴染の歌を聞き逃さないためである。

 

 

- Give me more power! - Give me more power! - Give me more power! -

 

 

「応援を呼んでくる! 死ぬなよ!」

「期待せずに待つさ」

 

 大歌劇場で突如として起きた惨劇――祈りをささげる信徒たちの前で、壇上の教皇が乱入してきた男によって弑されたのだ。歌姫――キリエの歌を聞き、不器用ながらもプレゼントを渡しおえたネロが、さて帰るかと式中にもかかわらず席を立ったそのとき、天井のステンドグラスを割って赤いコートの禿げた男が現れた。彼はステンドグラスの破片からきらめく七色の光をその頭で増幅し、周囲の人間の視界を奪いながら壇上に降り立つと、教皇へと銃を突きつけその額を撃ち抜いた。

 そこからは阿鼻叫喚の惨劇だった。逃げ惑う市民を尻目に男を討伐しようとした教団騎士だったが、男は途轍もない力を持っており、迫りくる騎士達を巨大な両手剣でもって次々と切り捨てていった。さながら先ほど悪魔たちを相手にしていたネロのような立ち回りだったが、男のそれはさらに洗練されているように感じられた。

 やがて立ち向かう騎士たちが居なくなったころ、ついに男の凶刃が非戦闘員――歌姫のキリエに向くかと思われたその瞬間、ネロが動き出す。男の顔面にドロップキックをかましキリエから引き離すと、勢いをそのままに大歌劇場に建てられた神――スパーダの像の腕の上に立つ。反対側の腕に男がたち、互いが手に持つ銃でけん制しあったところで、騎士団長から“生きろ”との命令を受ける。その命令に皮肉気に返すと――ネロのほうから銃を放ち、戦端が開かれた。

 

 

- Give me more power! - Give me more power! - Give me more hair! -

 

 

「まだ遊び足りないか? 来いよ、遊んでやる」

「タフだな……なら徹底的に殴ってやる」

「そりゃあ楽しみだ」

 

 戦いの中でネロは人生の中で一、二を争う焦燥感に駆られていた。そのもう一つの事柄が一月前の事件だというのだから、最近の自分はずいぶんついていないと思う。銃も剣も、目の前の男に届くことはなくネロばかりが傷を増やしていく。辛うじて手応えを感じられたのは、異形と化した右腕による攻撃だけだ。

一月前、悪魔に襲われていたキリエを庇い傷を負ったときから変質してしまった悪魔のような右腕。これによる攻撃だけが、赤の男に喰らいつくことが出来る。しかしそれだけでは勝つことはできない。ネロは激情を抑えるかのように歯を食いしばりながら、左手でしか扱っていなかった剣を右手に持ち替えた。

 

 ネロはもともと両利きと言っていいほど両の手の扱いに精通した騎士だった。しかし、右腕が変質してからというもの、剣も銃も左手のみで扱うようにしていた。それは、露見を恐れて右腕をギプスで包んでいたからという理由もあるが、最もの理由は右腕の力に器物が耐えられないからだ。

 生来膂力が強いネロは、通常支給される騎士剣――カリバーンでは物足りず、技術部に無理を言って魔改造した専用の剣――レッドクイーンを使う。しかし、そのレッドクイーンは一月前キリエを守るために変質した腕で振るった際に腕の力に耐えられず壊れてしまい、現在修理中だ。故に今使っている剣は男によって倒された騎士たち落としていったカリバーンである。

 

「Blast!」

「ぐっ!」

 

 ネロの右腕からすればあまりにも脆い剣を、全力で男に対して振り下ろす。当然のことながら容易く避けられたそれは、今までにない効果を生み出す。カリバーンが地面に叩きつけられると刀身が粉々に砕け散り、男の顔を襲う。と、同時に衝撃が床一面を走り、床に散らばっていたカリバーンが大きく跳ね上がった。

 手近で飛び跳ねた剣をネロはまたしても右腕でつかみ、横薙ぎに払う。先の剣の破片に気を取られていた男は反応が一瞬遅れるも、自身の持つ剣でネロの剣を受ける――同時に砕けるカリバーンと巻き起こる旋風。旋風は跳ね上がっていた他のカリバーンを巻き込みその配置を動かす。ネロに向かって飛んできた一本を器用に右腕でつかみ、振るい、砕き、またつかみ……。

 

「Damn it!」

 

 それでも男には届かない。飛び散る破片に少しだけ傷つきながらも、ネロの攻勢を危なげなく躱している。幾本ものカリバーンの攻撃を防いでいる彼の剣はひびが入ることもなく、ついに最後のカリバーンが砕け散るまで受け切った。

 悔しさで表情を歪ませるネロ、一瞬の意識の隙をついた男がネロを蹴り飛ばすと同時に手に持つ剣を飛んでいくネロに向けて投げつける。

 

「ガハッ!」

 

 スパーダの像に叩きつけられたネロの腹を剣が貫き像へ縫い付ける。視界が暗くなり、薄れゆく意識の中、ネロが最後に見たものは顔を払う赤の男の後ろ姿と、自分の腹を貫いた剣の柄の先端についた髑髏が笑う瞬間だった。

 

 

- Give me more power! - Give me more hair! - Give me more h...power! -

 

 

 ネロの体から青い魔力が迸る。背を向けていた赤の男が思わず振り向いた先で見たものは、異形の右腕でつかんだ剣が、右腕に吸い込まれるように消えていく瞬間だった。

 

「フォースエッジが……」

 

 像に縫い付けていた剣が消えたことでネロは重力に従い落ちていく。地面に落ちるとともに膝と手をつき蹲るような姿勢になったネロだが、体から迸っていた青い魔力が収束するようにネロの背後で蠢き、吸収されたフォースエッジを携えた一体の魔人を形作る。その魔人に引っ張られるように立ち上がったネロは、赤く光る瞳で目の前の男をにらみつける。

 

「あの日から俺の腕はこうなった。魂が叫ぶ……力、もっと力を!」

「!」

 

 魔人が手に持つフォースエッジを振るう。高速で振るわれたフォースエッジは使い手の意思をくみ取り、魔力を乗せた斬撃を飛ばす。男はそれを避けることもできず体で受けると、勢いをそのままに大歌劇場の壁へと叩きつけられ、崩落した瓦礫に埋もれた。しかしネロには一矢報いたといった感慨もなく、自分の体から湧き上がる謎の……否、悪魔の力に戸惑っている。

 混乱のうちに高まった魔力は解かれ、背の魔人が霧散する。残されたのは傷の癒えた体と、体の内に嫌でも自覚してしまう悪魔の力だった。

 

「は……ははっ、ははは……。はぁ……」

 

 思わず膝をつき、笑うしかないといった様子のネロの正面で、瓦礫が吹き飛び中から赤の男が姿を現す。ネロも反応しようとするも、思うように体が動かない。そんなネロの様を見た男は、攻撃するでもなく気軽な調子でネロに歩み寄り声をかける。

 

「なかなかやるな。少しばかりお前の力を甘く見てた」

「人間じゃない……」

「お互い様だろ……俺も、お前も、そしてあいつらも」

 

 男の示す方向には倒れていた教団騎士。しかしその顔は人のものとはかけ離れたものだった。

 

「お前は少し違うみたいだがな。……いい言葉を教えてやる。“悪魔は泣かない”覚えときな」

 

 ネロが異形の教団騎士へと視線を向けている間に、赤の男は天井の割れたステンドクラスの淵へと腰かけていた。

 

「どういう意味だ」

「そのうち分かるさ。俺は……仕事で忙しいんでね。アバヨ、坊や」

 

 嵐のように現れた男が去っていくと同時に、多くの教団騎士が大歌劇場へと駆け込んでくる。とっさに右腕を隠しながらも、ネロの視線は男が去っていった天井へと向けられ続けていた。




なお続かない模様
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