~三人称視点~
黒ウサギと十六夜は蒼奇とレティシアが光に飲まれるのを黙ってみているしかなかった。
だが、光が消えると、そこには蒼奇の石像しか横たわっていなかった。
そこへ翼の生えた空駆ける靴を装着した騎士が押し寄せてきた。
「おい!吸血鬼がいないぞ!?すぐに捜せ!」
「例の〝ノーネーム〟と石化させた奴はどうする!?」
「邪魔するようなら斬り捨てろ!石像は放っておけ!吸血鬼が最優先だ!」
騎士たちはレティシアを捜しているがその姿は見えない。
「絶対に見つけるんだ!取引が台無しになるぞ!!」
「そんなことになれば我ら〝ペルセウス〟の居場所が・・・!」
「相手は箱庭の外の一国規模のコミュニティだぞ!奪われでもしたとなれば・・・!」
「箱庭の外ですって!?」
黒ウサギは男たちの言葉に声を上げる。
「一体どういうことです!彼女達ヴァンパイアは―――――〝箱庭の騎士〟は箱庭の中でしか太陽の光を浴びられないのですよ!?それを外に連れだすなんて・・・・・・!」
「部外者は黙っていろ!それよりも、もし匿っているなら容、赦はし、な・・・」
男の言葉が途中で止まり、剣を構える。中にはその体を震わせているものもいた。
不思議に思った黒ウサギは男たちの見ている方向へと目をやる。
目を向けた先には、多くの幻獣や魔獣。
蒼奇の召喚獣と思しきモノたちがその目に怒りを宿し、佇んでいた。
中には、
「な、なんだこいつらは!?」
「くそっ!ルイオス様に報告する!撤退するぞ!!」
そう言い残し、男たちは姿を消した。
そして、程なくして幻獣たちも次々と姿を霞のように薄くなり消えていった。
「い、十六夜さん。黒ウサギはどうすれば良いのでしょう・・・?」
しかし、十六夜は黒ウサギの言葉には答えず、蒼奇の石像の方を見ている。黒ウサギもつられてその方向を見る。
「おおそうきよ、しんでしまうとはなさけない!」
「「・・・」」
そちらにはレティシアを抱きかかえたままの蒼奇が自身の石像にむかって話しかけていた。
――――――――――――――――――
~蒼奇視点~
石にされた。
なんてことはなく、普通に大丈夫でした☆
「さてと。やっほー、これからどうするの?」
「「・・・」」
「ん?どうしたの。なにか反応sゴペェ!!」
二人の反応がないので話しかけていると、十六夜、そして黒ウサギまでもが突然殴ってくる。
なので、とっさにレティシアを放す。
「いや、なんで!?」
「生きてんな」
「生きてますね・・・」
「幽霊じゃありません!それに僕は死なないよ!」
「・・・どういうタネだ?」
「単純だよ。すごい速さで分身作ってー影に隠れてーエキストラの皆さんに熱演してもらっただけー。いやーバレなくてよかったよー」
本当にバレなくてよかった。まあ、かなり細工してるから、わかったらすごいよ。いまだに教え子たちにもバレてない方法だからね、これは。
ああ、それとエキストラで出てくれた幻獣たちにはお礼をあげないとね!
「そ、そんな単純な・・・」
「・・・あっそ。とりあえず他の奴らとお前の石像を連れて、白夜叉のところ行くぞ」
「・・・ああ、なるほど。じゃあ僕は擬態してついていくよ。レティシアは・・・影の中に入っててくれる?」
「あ、ああ。わかった」
「石像は僕の召喚獣に持たせるよ。それと耀はまだ安静にさせないとさすがにだめだよ」
「ああ、任せた。なら、俺は黒ウサギと一緒に御チビと飛鳥を連れてくる」
さて、擬態するのは・・・アゲハチョウでいいかな。
そう思いアゲハへと〝擬態〟を使って変化するが、全体的にブルーベリー色になる。
『やっぱりこうなるのかー』
性質なのかな、これ。まあ、あとは力持ちの〝鬼〟の【
「お久しぶりです、ボス」
『もー毎回いうけどボスはやめて』
「すいやせん」
そうして出てきたのは道着を着た筋骨隆々の二メートルほどの巨漢。
『この姿の僕は【青鬼】と呼ぶこと。今回は特に気を付けて』
「へい。青鬼・・・さん」
『んー、まあ及第点かな』
そのようなことを話していると三人がやってくる。
「わっ!?誰ですか、その人!?」
『みんな来たね。この人は鬼の鬼一だよ。僕の石像を運んでくれる』
「よろしくお願いしやす」
「は、はい」
「あら、蒼奇君は随分とかわいらしい姿になったのね」
『ありがとう。でもこの姿のときは青鬼って呼んでほしいかな。・・・ところでジン君は?』
「看病に残るってよ。じゃあ、行くか」
・・・一応、
―――――――――――――――――――――――――――
「うわお、ウサギじゃん!実物初めて見た!噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!つーかミニスカにガーターソックスって随分エロい!ねーねー君、ウチのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」
あ、だめだこいつ。一瞬でわかった。外道臭しかしない。
着いてすんなり通されるとへんな奴がいた。店員さんも早く帰ってほしくて僕らを通したよね、絶対。
「残念だけど、この美脚は私たちのものよ」
『そうだ!僕らが独占している!』
「そうですそうです! 黒ウサギの脚は、って何を言っているのですか飛鳥さん、青鬼さん!」
「そうだぜお嬢様に青鬼。この美脚は俺のものだ」
『なん・・・だと・・・?』
「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃい!」
「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で買おう!!」
「売・り・ま・せ・ん!いい加減にしないと黒ウサギも怒りますよ!!」
『「わざとだから気にすんな」』
スパパァーンと、黒ウサギのハリセンがうなる。
が、忘れてない?今の僕は―――――
『へぶぅ!!』
―――――アゲハチョウだってこと。
僕はハリセンの威力で吹っ飛び、畳に叩き付けられる。
「あっ!?あ、青鬼さん申し訳ありません!」
『ブ、ブルータス、お前もか・・・ガクッ』
「青鬼さん!?」
『・・・ん?なに?』
「・・・」
『ちょ!?無言で羽を引っ張んないで!?痛い痛い痛い!!』
最近黒ウサギも僕の扱いが酷くない!?
僕の必死の抗議が伝わったのか放してくれる。
はぁ、はぁ・・・からかいすぎたかな・・・?この姿であまりからかうと本当に痛い目をみるね・・・。
「あっははははは! え、何? “ノーネーム”って芸人コミュニティなの? そうなら纏めて“ペルセウス”に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるからね。生涯面倒見るよ? 勿論、その美脚は僕のベッドで毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」
「お断りでございます。黒ウサギは礼節を知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありませんよ」
・・・え?
「へえ? 俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」
『趣味じゃないの?』
「ち、違います! これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しにすると言われて嫌々・・・」
『「白夜叉」』
「なんだおんしら」
僕は飛んで白夜叉の肩にとまる。
「超グッジョブ」
『ナイスです』
「うむ」
ビシッ!と親指を立てる二人。ああ、こういうときってすごい不便!人に戻りたい!
『まぁ、そろそろ本題に入ろうか』
「うむ、そうじゃな。だが、ここではなんだ、客間へ移ろうかの」
というわけで鬼一、もう少しお願いします。
「―――――ペルセウスが私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけましたでしょうか?」
「う、うむ。ペルセウスの所有物・ヴァンパイアが身勝手にノーネームの敷地に踏み込んで荒らした事―――――」
うん、いい感じに話が進んでるね。あとはこのルイオスとやらの対応だけが気になるけど・・・。
「―――――仲介をお願いしたくて参りました。もし〝ペルセウス〟が拒むようであれば〝主催者権限〟の名の下に」
「いやだ」
『「・・・はい?」』
(・・・今、こいつは・・・ナンテイッタ・・・?主人を石のままニしてオクつもリカ・・・!)
・・・ッ!?青鬼、落ち着け!?・・・くそ、マズイ!意識を飲まれっ・・・!!
(少し、主人は、ネムッテイテクダサイ)
――――――――――――――――――――――――――――――
~三人称視点~
「―――――んて冗談じゃ―――――それに――――――――――たって証拠が―――」
「こちらで拘束――――――に話を―――」
「駄目だね―――――逃げ出した―――――それに口裏を―――――――――限らない―――――元お仲間さん?」
(モウ、イイ。シャベルナ、オマエ)
「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した理由はお前達だろ?」
『割り込むようですまない』
「・・・なに?話の途中なんだけど」
『そちらが石化した我らの主人について、どうするつもりか?』
「はあ?そんなの巻き込まれたそっちの責任でしょ?石化される方が悪い」
(アア、ダマレ)
『黙れ』
「が、あぁ・・・!?」
虚空から異形の腕が現れ、ルイオスの首をつかむ。
『我々はあまり気の長いほうではない。主人のことをバカにするのならなおさらな』
「な、ぁ・・・が・・・!」
『次からは気を付けろ、ガキ』
その言葉が吐かれると腕がルイオスを放す。
「ゴホッ!ゲホッゲホッ!?」
『さて、今一度、問い直そう』
青鬼の周りが黒く澱み、その中には多くの異形が見てとれた。
『我らの主人について、どうするつもりだ・・・!!』
「やめんか!!」
白夜叉から怒声が飛び、青鬼を止めようと動く。
『黙れっ!!やめるつもりなどはない!!この者に答えさせるまではっっっ!!!!』
澱みから鎖が伸び、ルイオス以外を拘束する。
「「「「・・・っ!?」」」」
『さあ!!答えろ!!!我らが貴様を殺す前に!!!!!』
その言葉にルイオスは顔を恐怖によって青白くし、震えている。
「ひっ・・・!ア、〝アルゴールの魔王〟ッ・・・!!」
ルイオスが自身が隷属させている星霊を呼ぶために、首のチョーカーを外し、掲げる。
すると、チョーカーの装飾が強弱をつけ、光り始める。
「ハ、ハハハ!!これでお前は終わりだ!!」
『無駄な足掻きを・・・飲み込め、【暴食】』
青鬼がつぶやく。すると、光が弱くなっていき、最後には消える。
「ハハハ、ハハ・・・は?」
『貴様の答えは・・・それで決まったのか?』
澱みの中から異形が一人、歩み出る。その手には太刀が握られていた。
『では、死ね』
そういって、自室茫然としているルイオスの首めがけて太刀が振られる。
だが――――――――
「はい、ストップ」
――――――――――一人の男の声によって、止められた。
「本体の意識を沈めて、なにを好き勝手やっていやがる」
『・・・いえ、この者が主人のことを・・・』
「それでも主人の意思を無視してんだろうが。お前はしばらく反省していろ、【強制送還】」
その言葉で異形、四人を拘束していた鎖も消え失せる。
ただ、蒼奇が擬態している蝶は残り、青鬼の意識だけが消え失せたようだった。
そして、【暴食】が飲み込んだ〝アルゴールの魔王〟も元に戻す。
「・・・おんしは分身か」
「そうだよ、白夜叉。本体、大丈夫かい?」
『・・・うん。頭と思しきものが痛いけど、平気』
「他の四人も平気?」
「・・・ああ、大丈夫だぜ」
「平気よ」
「黒ウサギも大丈夫です・・・」
「私も問題ないの」
蒼奇の分身が五人を心配し声をかけると全員問題ないと返事をする。
『・・・それよりも随分と遅かったね?』
「・・・・・・・・・タイミングを見計らってました☆」
『そこは本体の身を案じて、早く止めようよ!?』
「サーセン。次から気を付けやーす」
『・・・やっぱ僕だよな。・・・おい、そこの三人、〝蒼奇だから仕方ない〟みたいな感じでため息吐くな。・・・はぁ、まあそれはそれとして、とってこれた?』
「もち。だって、僕だぜ?」
『でかした!さすが僕っ!』
そして、蒼奇と蝶はルイオスに向き直り――――――――――――――――――――
『「さて、ルイオス君。ゲームを開催していただこうか?」』
―――――――――――――――――目の前に紅と蒼の二つの宝玉を転がした。
次の投稿は週末辺りに予定。
遅れたら申し訳ありません。