人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

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戦果&祭事

「それで?なんでこんなことになっていやがるんだ?」

「うむ。それはの―――」

 

 いま、蒼奇の目の前には体中ボロボロの白夜叉がいる。

 白夜叉が言うには十六夜の戦果である隷属させた蛇神こと白雪姫による大規模な水源施設の開拓を行おうということらしい。先ほど黒ウサギたちが着ていた着物もどきはその施設の正装らしい。

 

「・・・なるほどな。上からの施しではなく俺達のコミュニティを知らしめると同時に競争心の向上ってことか。・・・ありがとう。よくわかったよ」

「うむ。そういうことだ」

 

 蒼奇の口調が元に戻りそこにいる全員が安堵の息を吐く。

 

「・・・それで、私を痛めつけたそこの娘は何者だの?」

「僕の教え子の実力No.2の御明玲那だよ。まだ大きな力に振り回されてるような子供だよ」

「よろし、く」

 

 白夜叉が玲那のことを聞いてくる。

 

「ふむ、そうか。ところで―――」

「玲那を貸し出すつもりは一切ないよ。力が暴走したら箱庭が消える可能性すらあるからね」

「・・・そ、そうか!ならば仕方ないの!」

 

 白夜叉が蒼奇の言葉を信じたのかどうかは分からないが納得した。

 そこで蒼奇は本題を切り出す。

 

「それで、十六夜は何をもらう約束でこの依頼を受けたんだい?」

「そう急かすでないわ。それにこれからわかることだ。・・・では、ジン=ラッセル。これをおんしに預けるぞ」

 

 そういって白夜叉はジンに一枚の羊皮紙を渡す。

 ジンはその文面に目を通すとあまりの衝撃で硬直してしまう。

 黒ウサギもジンの後ろから確認するが彼女も同様に固まってしまう。

 どうやら渡された羊皮紙は外門の利権証のようだった。外門の外装を広報に使用することやその外門の〝境界門〟の使用料の八十%が入ってきたり、無償で使用できることを許可する代物だ。

 

「なるほど、ね。これはさすがに僕の負けかな」

「あ?今回はお前は不参加だろ?」

「そう。今回は留守番だよ。畑の世話もあるしね。でも、もしも参加していたらの話だよ。誇っていいことだよ。この僕に負けだと思わせたんだから」

「・・・ハッ!そうかよ」

「じゃあ僕は商談に行くよ。君らは先にコミュニティに帰ってていいよ。玲那も今回は着いてこないで先に帰ってね」

 

 蒼奇は立ち上がり店につながる障子に向かう。

 しかし、座敷の後ろの方にいる飛鳥と耀に声をかける。

 

「二人もすぐに追いつけるよ。伸びしろはどっちもあるから、そう悲観しなくてもいい」

 

 蒼奇は二人の返答を待たずに商談のために女性店員の下へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、いたいた。今は平気かい?」

 

 蒼奇は店の中を見ると奥の方に女性店員の姿を見つける。

 

「はい。早速ですが商談に入りましょう。まず、エリクサーなどの薬の件ですが―――」

「さっき見せてくれた書類に書いてある一千個でいいの?もう少し買ってくれるならちょっとは割り引くけど」

「どれぐらいですか?」

「んー、もう二百か三百ぐらい?」

「では、五百追加でこれくらいで―――――」

 

 蒼奇と女性店員の商談は順調に進み、無事に終わる。

 

「それで・・・あの薬がなくなってしまったのでいただきたいのですが・・・」

「・・・用法はちゃんと守って使ってよ?えっと。はい、これ」

 

 女性店員に以前渡した三つの薬の瓶を新しく渡す。

 

「ありがとうございます」

「うん。こちらこそいい契約ができたよ。これからよろしくね。じゃあ、仕事頑張って」

 

 そういって蒼奇はエリクサーなどの薬の売り上げのお金をしまって出ていく。

 

 

 

 

 

 

 その夜〝ノーネーム〟では小さな宴が開かれ、料理を堪能した蒼奇は自室に戻り、のんびりしていた。

 もちろん傍にはペスト、物陰に玲那がいるが。

 

「・・・収穫祭、どうしようか?」

「あら?行かないの?」

 

 蒼奇の思わず漏れた独り言にペストが反応する。

 

「正直、植物の種を買うっていっても大半のものはあるからね」

「・・・普通に出店なんかもあるのだから、そっちの方を楽しんだら?」

「・・・・・・そうしようか。二人も来るんでしょ?といってもオープニングセレモニーからだけど」

「「ええ/う、ん」」

 

 蒼奇は二人の返事を聞いて満足したのか目を瞑り寝る態勢に入る。

 

「寝るのかしら?」

「寝る。なんか疲れたし。じゃあ、おやすみ」

 

 そういった蒼奇の意識は沈んでいく。

 

 

 

 ベッドに入ってくる二つの暖かいぬくもりを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。十六夜は出発直前だというのに本拠の前に現れなかった。

 どうやら、昨夜入浴中にヘッドホンがなくなり夜通し探していまだに見つからず探しているようだ。

 本拠の前には飛鳥と黒ウサギ、ジンが待っていた。

 

「・・・あ、来ましたよ!」

 

 ジンが声を上げる。しかし十六夜の頭にはヘッドホンではなくヘアバンドが載せてあった。さらに言うならその手には蒼奇の襟首をつかみ本人を引き摺っていた。

 それに驚いた黒ウサギは尋ねる。

 

「ど、どうしたんですそれ」

「頭の上に何かないと髪が落ち着かなくてな。それと蒼奇は気にするな。それより話がある」

 

 十六夜が道を開けると後ろから、トランク鞄をを引く耀と三毛猫が前に出た。

 流れを見る限り、十六夜は本拠に残ってヘッドホンを探すつもりで自分の代わりに耀を連れていけとのことらしい。

 耀は驚き、瞬きをしてから十六夜を見上げていたが―――ふっと、小さな華が咲いたような微笑みで十六夜に礼を言う。

 その後も少し話しをしていた二人に黒ウサギが尋ねる。

 

「あ、あの。それで蒼奇さんは何のために・・・?」

「荷物持ちと財布だ」

「アッハイ」

「・・・どうして・・・なんで、僕が・・・」

 

 蒼奇はただ単に影に荷物やらをしまうために連れて行けということらしい。

 

 こうして五人と一匹は本拠を後にした。

 

 

 

 

 

 

 何事もなく〝境界門〟を通って七七五九一七五外門〝アンダーウッドの大瀑布〟フィル・ボルグの丘陵に着いた一行。

 

「わ、・・・・・・!」

「きゃ・・・・・・!」

「・・・水樹って、あんなになるのか・・・」

 

 冷たい風に悲鳴を上げる耀と飛鳥の二人。蒼奇は目の前の光景に珍しく驚いていた。

 遠目からでも確認できる巨大な水樹。

 巨躯の水樹から溢れた水は幹を通して都市へと落ちて水晶の水路を通過し、街中を駆け廻る。

 それを見た耀は今まで出したことが無い様な歓声を上げて飛鳥の袖を引く。

 飛鳥は水路の水晶を見て何かを思ってるようだったが耀がすぐに声をかける。

 

「飛鳥、上!」

 

 えっ、と今度は上を見上げる飛鳥。それにつられて蒼奇も上に目を向ける。

 遥か空の上には何十羽という角の生えた鳥が飛んでいた。

 耀が熱っぽい視線を向ける中、蒼奇は鋭い視線を鳥の群れに向ける。

 

「角が生えた鳥・・・しかも鹿の角だ」

「ああ。ペリュドンだ。耀、間違ってもあれとは友達になるな。僕でもあんなのを取り込んだらどうなるかはわからない」

「・・・?どういうこと?」

「あれは人を食うために殺すんじゃなくて、人を殺すために殺す殺人種だ。ペリュドンはアトランティス大陸に生息していたとされる怪鳥で、人を殺せば自身の影を取り戻せるとされている。だが一度、影を取り戻したら消えるまでは人を襲わないはずだ。まあそれでも、危険なのには変わりないが」

 

 蒼奇が鋭い口調で説明をする。するとそこにいた全員が驚いて蒼奇の方を見る。

 

「・・・随分と詳しいのね?」

「こんなんでも僕は魔術師の端くれだよ?それに召喚術であんなのは召喚も契約もしたくないから一通り調べてるんだよ。耀も気を付けてね。あれのギフトがどんなのかは僕も把握してないし、不用意にやると下手したら殺人衝動なんかをもらいかねないから」

「うん。わかった」

 

 耀が返事をするとその場に旋風が駆ける。

 すると現れたのは〝サウザンドアイズ〟のグリフォンだった。

 

『友よ、待っていたぞ』

(・・・おお。本当にわかる。さすがジョンが作った代物だ)

 

 蒼奇は旋風が駆けた時に影の中からジョンが作った補聴器型翻訳機を装着してグリフォンの言葉を理解する。

 

「久しぶり」

『ああ。此度の祭典で行われるバザーには〝サウザンドアイズ〟も参加するらしい。それで私も護衛の戦車を引いてきたのだ』

 

 そういう彼の背中には鋼の鞍と手綱が装備されていた。

 

『〝箱庭の貴族〟と友の友よ。そちらも久しいな』

「YES!お久しぶりです!」

「お、お久しぶり・・・でいいのかしら」

「た、たぶん」

「幻獣の言葉がわからない。そんなお困りの二人には僕の教え子作・翻訳補聴器をさしあげよう!」

 

 青い猫型ロボットが道具を出すときの明るい音が鳴るかのような感じで二人分の補聴器を出す。

 

「・・・便利ね」

「・・・まさか、これを売ったりなどは・・・?」

「安心して、非売品だから。さすがにこんな規格外な代物を広げるほど馬鹿じゃないよ」

 

 ジンが不安そうな声で売っていないかと蒼奇に聞くが、すぐに否定した。

 

『ここから街までは距離がある。南側は東や北と違い道中も気をつけねばならん。良ければ、私の背で送って行こう』

「本当でございますか!?」

「・・・本物ね、これ」

「そうですね・・・」

 

 黒ウサギは喜びの声を上げ、飛鳥とジンは蒼奇からもらった翻訳機の効果に驚く。

 

「ありがとう。良かったら名前を聞いていい?」

『ああ。私は騎手より〝グリー〟と呼ばれているから、そのように呼んでほしい』

「うん。私も耀でいい。それでこっちが飛鳥とジン、蒼奇」

『分かった。友は耀。友の友は飛鳥とジン、蒼奇だな』

「ええ、よろしくグリー」

「よろしくお願いします」

『・・・む?わかるのか?』

「蒼奇君がくれたこの翻訳機のおかげよ」

 

 飛鳥が耳にはめている翻訳機を指す。

 

『友の友はすごいものを持っているのだな・・・』

「いや、ただのもらいものだよ。それよりもペリュドンは放っておいていいのかい?」

『・・・なに?奴らが近づいているのか?』

「そうだね。君さえ良ければ、追い返すか討伐するかしておくけど?」

『・・・いや、しかし』

「グリーはみんなを送ってよ。二人と一匹追加で」

 

 蒼奇は影の中からペストと玲那、ネロを取り出してグリーに乗せる。

 

「みんなを安全に運んでくれれば、僕はそれでいいよ。気配さえ追えば合流できるし」

『・・・では、追い返してくれ。もし警告に従わないようならその時は殺して構わない』

「わかったよ。じゃあみんなは先に行ってて」

 

 そういってみんなから離れた蒼奇は次の瞬間、強く光りだしそれがおさまるとそこには、

 

 

 象を乗せれるほどの巨躯。

 

 

 見たこともないほどの綺麗な羽毛が生えた翼。

 

 

 その存在はとても強く大きく感じるものだった。

 

 

「CUOOOOOOOooooooooooo!!!!!」

 

 そして鳥になった蒼奇は一鳴きすると空へと力強く飛び立っていく。

 

「い、今のは・・・?」

『まさかっ、今のはシムルグなのか!?』

「う、ん。そうだ、よ」

「シムルグ?」

 

 グリーの驚愕した声に玲那が肯定し、耀が今の言葉に対して疑問を抱く。

 

『・・・そうだ。シムルグとは鳥の王とも呼ばれる霊鳥だ。あのきれいな羽毛には治癒の力があり、寿命も長く不死鳥という話もあるほどの幻獣だ』

「蒼奇、の友達。昔、から、一緒、らしい」

「そんなにすごいんだ・・・!」

 

 耀の目が再び熱を帯びた視線を飛ばす。

 

『・・・あれほどの存在なら心配は不要だな。街へ行こう』

 

 グリーの一言でシムルグをずっと見つめていた全員は街へ向けて移動をはじめた。

 

 

 




次は土日のどちらかだと思います!
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