シムルグとなった蒼奇はペリュドンを追い返すべく群れの前へと飛び塞がる。
『もし、これ以上先へ進むつもりなら容赦はしないよ?』
『『『GYAa!GYAAAaaaaa!!』』』
しかしペリュドンたちはその言葉を無視して蒼奇へ襲い掛かる。
『・・・それでも進むというわけかい?・・・なら、死んでもらうしかないね』
蒼奇が翼を大きく後ろにしならせ、勢いよく前へはばたかせる。
『『『GIiiッ!?』』』
するとその巨体ゆえに強烈な風を生み、刃のようになり飛んでいく。それがペリュドンたちの身体を斬り刻み、掻き消えていく。中には避けた個体もいたが連続して放たれてくる風の刃に避けきれず、斬られて絶命していく。
『・・・これで最後かな』
そして蒼奇は倒したペリュドンを落ちる前に影の中へ収納する。
「これって討伐報酬とか出るかな?もしくは食べることとか・・・どうせ鳥だし食べれるか」
そんなことを考えながら〝ノーネーム〟一行の気配を探り、そちらへと向かう。
蒼奇は皆の姿を視認するとできるだけ風を起こさないように近くに降り立つ。
「わっ!?」
「ヤホッ!?」
〝ウィル・オ・ウィスプ〟の二人。アーシャとジャックがシムルグとなっている蒼奇の姿を見て驚き、声を上げる。
『あれ?君らも来ていたんだ?』
「あん?その声・・・」
「蒼奇さんですか?」
『そうだよ。ここに近づいてきていたペリュドンの群れを倒してきたんだ。・・・それと、耀?せめてひと声かけてからモフろうか?ペストもね?』
耀とペストはシムルグのままの蒼奇の胸に顔をうずめてその感触を堪能していた。
「・・・ふかふか・・・!」
「・・・ベッドにしたい心地よさね・・・」
『ヤダこの子たち、聞いちゃいないわ・・・。あ、そうだ。ジャック、ペリュドンって食べられる?』
「ええ、可能ですよ。主に串焼きなどですね」
『そう。ありがとう』
「いえいえ、その程度ならば。・・・そういえば、あなたは〝ヒッポカンプの騎手〟に出場はするのですか?」
『・・・ヒッポカンプの騎手?そのゲームはヒッポカンプ限定なのかい?』
「いえ。水上を駆けれる生物なら何でも構わなかったはずです」
『・・・え?条件ゆる過ぎない?それなら僕、麒麟やらケートスやらスレイプニルを引っ張ってくるけど・・・』
「「やめてください」」
ジャックと黒ウサギが声を揃えて蒼奇を止める。
『まあ、そうなるよね。・・・さて耀にペスト。そろそろ戻りたいから放して』
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
『・・・少しなら幻獣を見せてあげられるけど?』
「・・・ッ!?」
耀はその言葉を聞くとすごい勢いで蒼奇を放す。しかしペストは放してはくれなかった。
『ペストはあとでかまってあげるから放して』
「・・・・・・」
ペストはそれを聞き渋渋ながら放してくれた。
蒼奇は放したのを確認するとシムルグの身体を輝かせて元の人の姿へと戻り、ペストとネロを肩車する。
「うん。ありがとう」
「蒼奇、早く見せて!」
「あーはいはい。といっても誰にしようか・・・あ、あの子なら平気か」
思い立った蒼奇は召喚術で一匹の召喚獣を呼ぶ。
呼び出された生物を見た耀と他のメンバーは思わず固まってしまう。
「・・・・・・・・・・・・なにこれ?」
「ああ。この子はね―――――
蒼奇が召喚した幻獣の姿は全身がヌルヌルしており、真っ黒い太い胴体から生える四本の脚。
―――――ウナ〇イヌだよ」
「別のにして!」
「だよね。知ってた」
耀は即座に変更を申し立てた。
そう力強く言われた蒼奇はすぐにウナギ〇ヌを送還してすぐに別の召喚獣を呼び出す。
そして、そこに現れたのは黄色の体毛に覆われた大きめのウサギのような生物。しかしその額からは六十センチほどの角が生えていた。
耀は今度はすぐにその生物を抱き上げて蒼奇に聞く。
「この子は?」
「アルミラージだよ。インド洋付近の島に生息してる聖獣。一応肉食だけどそこらへんは調教済みだから安全」
「・・・肉食なの?」
「そうだよ。角で相手を刺し殺して食べるんだ。だからその分、身体能力は高いんだ」
耀は蒼奇の説明を聞いて一瞬驚いた表情をするが、すぐに安心してアルミラージを撫でる。
「名前はあるの?」
「リム。良ければ呼んであげてよ。この名前、結構気に入ってるみたいだから」
「うん」
「それでこれからどうするの?」
蒼奇の疑問にジンが答える。
「ジャックさんが〝主催者〟にご挨拶へ行くらしいのでそれに同行しようかと」
「そう?じゃあ先に荷物を置きに行こうか」
「そうですね。では少しだけ待っていてください」
ジャックは陽気に笑って承諾して、アーシャとともに外で待った。
荷物を置いた一同はジャックとアーシャに連れられ地下都市を登り、収穫祭本陣営まで足を運ぶ。
螺旋状に掘り進められた〝アンダーウッド〟の都市を登っていく。
収穫祭ということだけあってか多くの出店が開かれていた。
「あ、黒ウサギ。あの出店で売ってる〝白牛の焼きたてチーズ〟って、」
「駄目ですよ。食べ歩きは―――」
「だが残念。もう遅いのだよ黒ウサギ」
「え?」
「美味しいね」
「い、いつの間に買ったんですか!!?」
「蒼奇がくれた」
「蒼奇さん!?」
耀がありもしない事実を言って蒼奇に責任を押し付けようとする。しかし蒼奇も負けじと事実を言う。
「冤罪だよ!?僕はあげてない!耀はもうすでにそれを持って食べていたから仕方なく代金を払っただけなんですが!?本当にごめんなさい!」
「やっぱり耀さんじゃないですか!?」
そう。耀は出店から品物を持ってきて勝手に食べていたのだ。それをたまたま見た蒼奇が品物の代金を店主に謝りながら払っていたのだ。
そんな黒ウサギのツッコミを気にしないで次々とチーズに手を伸ばす耀。
それのせいで焼きたてのチーズの薫りが辺りへ広がる。
そして耀の横で物欲しそうに見つめる飛鳥とアーシャ。
耀はそれに気が付くと包み紙を近づけて二人に聞く。
「・・・・・・匂う?」
「匂う!?」
「匂う!!?匂うって聞かれた!?普通は『食べる?』って聞くはずだろ!!」
「まあ、空っぽだしね」
「空っぽ!?」
「残り香かよ!!?」
「とりあえず落ち着きなよ、二人とも」
蒼奇が耀に怒る二人をなだめようと声をかける。
「これが落ち着いていられるわけないでしょう!?」
「そうだそうだ!!」
蒼奇になだめられるがそれだけでは怒りが治められない二人。
そこで蒼奇はあるものを取り出す。
「まあまあ。はいこれ、二人の分」
「「は・・・?」」
「ん?いらないの?」
「「・・・ありがたくいただきます」」
「うん、よろしい。ほら玲那とペストにネロ、黒ウサギの分も」
蒼奇は耀の代わりにを代金を払うついでにみんなの分もちゃっかり買っていたので、皆に品物を渡してまわる。
「はい。ジン君も。一応里桜の分も渡しとくよ。ほらジャックも」
「ありがとうございます」
「ええ。ありがとうございます」
「蒼奇。私のは?」
「いや、耀はさっき食べたばかりでしょうに・・・。いや、そんな泣きそうな目で見られても困るんだけど・・・?と、とりあえず〝主催者〟に会った後ならなんでも奢ってあげるから・・・」
「約束だよ?」
「なっ・・・う、嘘泣き、だと・・・!?」
蒼奇は先ほど食べ終わったばかりの耀に涙目で品物をねだられて仕方なくあとで食べ歩きに付き合うという約束をするとすぐに涙が消え、笑顔になる。
その後もたわいない会話をして進んでいく。網目模様の根を上がりようやく地表に出る。
「それにしても、高いね」
「・・・うん。黒ウサギ。この樹って高さはどれくらいあるの?」
「〝アンダーウッド〟の水樹は全長500mと聞きますよ」
「そんなにあるんだ。それなら神木でもそこそこ大きい部類だね。それにこれほどのものがいまだに本来の機能通りに機能していることには驚きだよ」
「はい。そうでございますね。ですが、黒ウサギたちが向かうのは中ほどの位置でございますよ」
黒ウサギの言葉を聞いた耀は面倒そうな表情をして、
「・・・飛んで行っていい?」
「春日部さん、いくらなんでも自由すぎるわ」
「そうだね、さすがにやめてよ?それにこういう広い場所なら、ちゃんとした移動手段があると思うよ」
「ヤホホ!お気持ちはわかりますが、蒼奇さんの言うとおり本陣まではエレベーターがありますから、時間はかかりません」
エレベーター?と一同が首を傾げる。
しかしジャックはそれを意に介さずに歩みを進める。
そして太い幹まで来ると、ジャックは木造のボックスに乗り、手招きをする。全員が乗り込むとジャックが木製のボックスに備え付けられたベルを二回鳴らすように促す。ベルを二回鳴らすと乗っているボックスとつながった空箱に、大量の水が注がれる。
「水が・・・なるほど。これは重し式のエレベーターかい?」
「ヤホホ!そうですよ。反対の空箱に注水して引き上げているのです」
「水が豊富なこの地域ならではのものだね。それに動力がない分、何かを気にする必要もないしね」
そしてエレベーターは上昇していき、ものの数分で本陣へと移動した。
今回はここまでです・・・。
次も一週間以内だと思います!