蒼奇は気配を頼りに玲那とペストを探し始める。
「・・・?なんで二人が一緒に?」
するとどういうわけか二人の気配は同じ場所から感じ取れて一緒にいることが分かった。
「・・・行けば分かるか。それじゃ、久々のしまさん!カモン!」
『・・・・・・。・・・・・・・・・』
「あっ、いや、その、ごめんなさい・・・。なかなか活躍できる場面がなかったから呼べなくて・・・ホントすみません・・・」
『・・・』
「許してくれてありがとう・・・。じゃあ、二人の傍に転移をお願いするよ」
しばらく呼んでもらえなかったしまっちゃうおじさんは不機嫌で召喚されて蒼奇へ愚痴と文句をこぼしたようだった。
そんなしまっちゃうおじさんに蒼奇が恐る恐る謝ると嫌々ながらも許してくれたらしい。
そしてしまっちゃうおじさんに二人の傍へ送ってもらうとそこには―――――
「「・・・・・・ッ!!」」
「おっふ・・・」
―――――お互いを鋭く睨み合う玲那とペストの姿が蒼奇の目に映った。
「・・・あ、あの一体何が」
「この女が私のことを狙って攻撃してきたのよ!!」
「ちが、う。貴女が私の射線、に入ってきた、だけ」
「嘘よ!あれは絶対に狙ってたわ!!」
「・・・偶、然」
「だったらどうして動いてない私に攻撃が来るのよ!?」
「・・・引、力」
「ないわよ!そんなもの!!」
二人が蒼奇の声を皮切りに互いに自分の主張を言い始める。
(あっ、これ収拾つかない奴だわ)
一瞬で理解した蒼奇は行動に移る。
「面倒だから二人とも寝てろ」
「「・・・!?」」
ドゴンッ!!という音が二つ鳴る。もちろんペストと玲那の頭から発せられた音だ。
蒼奇に殴られた二人は当然気絶して、影に仕舞われる。
「これでよし・・・。さて、飛鳥たちのところに行くかな」
〝アンダーウッドの地下都市〟宿舎残骸前。
「っと」
「蒼奇君!あなたも手伝いなさい!」
「ん?」
蒼奇が飛鳥の声に反応してそっちに意識を向けると飛鳥が気を失っている耀を運ぶ姿が見えた。
「何があったんだい?」
「木が落ちてきて春日部さんの頭に直撃したのよ。それよりもこれを見なさい」
そういって飛鳥が差し出してきたのは炎のエンブレム。
おそらく十六夜のヘッドホンの一部だろう。
「ああ。やっぱりこれの安否が気になったんだ」
「やっぱりって・・・知ってたのかしら?」
「知ってたよ。僕と召喚獣がその気になれば簡単だしね」
「・・・犯人は春日部さんかしら?」
「それは本人に聞きなよ。とりあえず耀を救護施設的なところが設けられているみたいだから、そこに運ぼうか。それと飛鳥も怪我してるみたいだし、エリクサーを渡しておくよ。耀の頭にもかけといてくれる?運び終わったら僕はジンと黒ウサギの方へ様子を見に行くから」
「え、ええっと、わかったわ」
飛鳥は蒼奇から次々出される言葉に押されながらも了解する。
「それじゃあ施設前に転移するよ」
蒼奇はそういって二人と施設に転移する。
「よし。飛鳥。ここからは一人でも平気かい?」
「ええ。ありがとう。助かったわ」
「それじゃあ、あとはよろしく」
蒼奇はそういって転移で飛鳥の下を離れてジンと黒ウサギの下へ移動する。
「やっほー、二人とも」
「「蒼奇さん!」」
「うん。蒼奇さんですよー。・・・それで、どういう状況?」
蒼奇が転移した先には二人の他にもサラやジャック、アーシャがいた。
そこで蒼奇は今回の襲撃の詳しい話を聞いた。
今現在南側には〝階層支配者〟が存在しないこと。
以前の〝階層支配者〟は先月、〝黒死斑の魔王〟と同時期に現れた魔王に討たれたこと。
今回の襲撃者の巨人たちは十年前の魔王の襲撃の復讐であり、〝階層支配者〟が討たれた後から暴れ始めたこと。
そして―――――
「・・・これがバロールの瞳?」
「ああ。今回の巨人族の狙いだ」
―――――巨人族がバロールの瞳を狙っていることも。
「それでどうするの、これ?」
「それなんだが、これを扱える者を探していたのだが・・・貴方は使えるのか?」
「使えるけど、僕は僕でやることがあるから・・・」
「そうか・・・」
「でも、代わりにペストを貸し出すよ」
蒼奇はそういって影から気絶しているペストを出してジンに渡す。
「はい、ジン君。精々こき使ってあげてよ」
「は、はい。わかりました」
「うん。頑張って。・・・さて、サラ?」
「ん?何だ?」
蒼奇はサラへ向き直り、話を切りだす。
「僕と、取引しない?」
「・・・なんだと?」
「ここにエリクサーが三千個ほどあるんだけど、これを買う気はないかい?」
「蒼奇さん!?こんな非常時に何を!?」
「これは取引だよ、黒ウサギ。僕はこれらを彼女の言い値で売る。ただそれだけだよ」
「しかし―――!」
「いいだろう」
「サラ様!?」
蒼奇が黒ウサギと口論しているとサラが割り込み、取引を了承する。
そして一枚の紙を差し出してくる。
「この値でいいだろうか?」
「・・・うん。取引成立だよ」
蒼奇は紙に目を通すと、一つ頷いて受け入れる。
「じゃあ、エリクサーは此処に置いておくよ。追加で欲しいなら言っくれたら売るから」
「ああ。感謝する」
「いいよ別に。じゃあ二人とも、次の襲撃まで瓦礫の撤去作業を手伝いに行こうか」
「えっ!?あっ!ちょ、ちょっとお待ちくださいませ蒼奇さん!それではサラ様、また後でなので御座いますよ!」
「こ、これで失礼させてもらいます!」
サラに一言言って、去っていく蒼奇に追随する二人。
「そ、蒼奇さん?一体いくらで買い取ってもらえたのですか?」
「えっ?そんなこと聞きたいの?うわー、黒ウサギってばがめついなー」
「そんなことはありません!そうではなくあまり大きな額を負担させては復興が―――」
「問題ないよ。ほらこれ。さっきの取引書」
蒼奇はしつこく責めてくる黒ウサギに先ほどサラから渡された一枚の紙を手渡す。
「えっ?・・・な、なんですかこれ?なんで白紙なんですか?」
「だって、金銭はもらってないからね」
「い、一体どういう・・・」
「なるほど。蒼奇さんが売ったのは恩ですか」
「そうだよ。信頼といってもあながち間違いではないよ。大分リーダーらしくなってきたね、ジン君」
先ほどの取引、蒼奇とサラは一切の金銭の売買は行っていない。
彼らは関係を売買していたのだ。
蒼奇はエリクサーただで売った。
サラはエリクサーをただで買う代わりに蒼奇に、というよりは〝ノーネーム〟に借りをつくったのだ。
つまり蒼奇は〝アンダーウッド〟に〝ノーネーム〟として金銭の代わりに恩を売ったのだ。
「ヤホホ!そういうことでしたか!」
「やあジャック。いつも通り元気そうだね」
「ええ。それが私の取り柄ですから!」
「それもそうか。・・・じゃあ僕は外で見張りでもしてるよ。みんなは飛鳥と耀に合流でもしててよ」
「おや?少しお話したいこともあったのですが・・・」
「まだまだ収穫祭は長いんだから、話す機会はたくさんあるよ。それに耀たちのゲームについては僕は見てたからよく知っているよ」
「そうでしたか。では、お二人に話すことにしましょうか」
「そうそう、そうしてあげてよ。それじゃあまた後で」
蒼奇は三人の下を離れて大樹の外へ向かう。
『・・・よかった、の?』
「なにをだい?」
『・・・二人のゲーム、の話、させちゃっ、て。戦果、ごまかし、たんで、しょ?』
「ああそれか。・・・さあ?僕は知らないよ」
『・・・なら―――』
「でも、いい方向に転んでくれると思ったからね。ただの勘だけどさ」
『・・・そう』
「じゃあ張り切って見張ろうか」
蒼奇は影の中の玲那と話しながら、大樹の見張り台へと向かう。
蒼奇が見張り台に着く。
あんな襲撃があったため、当然のように何人かの見張りがいた。
「見張り、お疲れ様です。手伝いに来ました」
「む?それはありがたいが・・・どこの所属だ?」
見張りの一人が警戒しながら聞いてくる。
「ジン=ラッセルの〝ノーネーム〟で通じる?」
「・・・!そうか。北側で魔王を倒した・・・。それは心強い。歓迎しよう」
見張りの人にも手伝いを正式に認められ、そこに残る蒼奇。
そして蒼奇が見張りに加わって数十分後。
蒼奇の探知に多くの気配が引っかかった。
「・・・来たか」
「なに?」
見張りの一人が蒼奇の漏らした声に反応するが、次の瞬間琴線を弾く音が聞こえ、蒼奇以外が気を失って倒れる。
「っ!?ちっ!精神干渉系のギフトか!?」
急に他の人たちが倒れたことに驚く蒼奇だが、すぐに精神干渉によるものだと見当をつけて切り替える。
蒼奇はしまっちゃうおじさんを呼び出して近くにあった鐘を鳴らさせ、〝アンダーウッド〟全体に緊急事態を知らせる。
しまっちゃうおじさんが鐘を鳴らしたのを確認すると外へと飛び出して応戦しようとする。
「玲那。影から出て、〝アンダーウッド〟の人たちを守れ」
「・・・わか、った」
蒼奇の影から玲那が出てきて、後方へ向かう。
それを確認すると青鬼を影の中に百体呼び出し、同化する。
「・・・さて、僕だけが楽しむのはまずいかな?んーそうだなぁ・・・あ、巨人つながりでいこうか。おいで、アースさん」
そしてそこに現れたのは襲撃者の巨人族の三倍はあるかというような巨体の【巨神・アース】。
「それとおまけでJ!カモン!」
さらに追加で現れたのは玉ねぎ頭の白スーツに身を包んだ紳士【黒太陽の申し子・J】。
「あとは、
最後に現れたのは一つ目の球体の八本足の奇妙な黒い生命体。それが二十体。
「んー?訓練ってことで戦闘用最弱のブルーニトロたち!」
羽毛を持った人型の生物【グルメ貴族・ブルーニトロ】。それが八人出現する。
「さあみんな。・・・楽しもうか!!」
そうして蒼奇と召喚獣たちは巨人族の大軍に向かって駆け始めた。
次話も一週間以内に投稿します!(予定)