緊急を知らせる鐘が〝アンダーウッド〟に鳴り響き、耀たちは急いで樹の根の外へと向かった。
そこで外へ出た耀たちが見たのは―――――
「なに、これ・・・?」
―――――圧倒的蹂躙だった。
襲撃者の巨人族の三倍は身の丈のある巨神・アースが腕を振る度に巨人族が吹き飛び、潰れていく。
黒い太陽から発せられる熱と炎によって巨人が焼死していく。
顔に黒い何かを張り付けている巨人が味方であるはずの巨人を虐殺していく。
羽毛を持つ人型の生物が巨人の腕や首を喰い千切る。
そしてその召喚獣たちの主である蒼奇は巨人の足を持って振り回して、武器の代わりにして殺戮していく。
全員がそれぞれの戦線を維持して巨人族の侵攻を食い止めていた。
「・・・伝、言」
「わっ!」
そんな光景を見ていた耀たちの横に、突然玲那が現れて話しかける。
「で、伝言?」
「・・・うん。『巨人は何とかしておく。だからさっさと竪琴の方を何とかしろ』・・・って、言って、た」
「・・・わかりました。僕に考えがありますので、それを実行しましょう。そのためには耀さん、貴女の力が必要です」
「・・・それは、・・・ううん、何でもない。作戦を教えて」
蒼奇は巨人族の進行を必死、でもないがとりあえず食い止めていた。
「弱すぎだよー。ほら!もっと熱くなれよ!もっと必死になれよ!」
向かってくる巨人を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す。
そして戦線の奥の方から蒼奇にまで聞こえてくる叫び声が聞こえた。
「何処に行ったの、あのクソ女あああああああッぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
玲那に対するペストの罵倒が響き渡った。
「・・・ふっ、ははははは!!こんな時にそんなことをっ!?いくら片手間で相手できるからって玲那への恨み言をっ!?ひ、ひはははははは!!!」
そんな叫びを聞いた蒼奇は戦場の真っただ中で腹を抱えて笑い出す。
「「「オオオオオオオォォォォォォォォォ!!!」」」
「はぁーはぁー・・・あ、そういえば戦場だったね。・・・ていっ」
蒼奇が腕を振る度に十体以上の巨人族が吹き飛び、倒れ伏していく。
そのまま少し遊んでいると琴線を弾く音が聞こえて、濃霧が一帯を包み込み視界を奪っていく。
「おーやっとか。みんな戻っていいよー。・・・さて、うまくやりなよ、耀」
濃霧を確認すると召喚獣たちを送還して、聞こえるはずはないが耀に一言声援を送った。
耀の活躍により巨人族に勝利した翌日。
蒼奇は耀たちに付いていかずに自身に割り当てられた部屋にいた。
ある女性二人が喧嘩を始めないかビクビク怯えながら。
「「・・・・・・」」
「そこ。睨み合わないで仲良くしろ」
「無理ね/・・・無、理」
「はあ・・・」
二人の緩衝材兼仲裁役として蒼奇はここに残っているのだ。
そんな時間を過ごしていると、部屋の扉がコンコンとノックされる。
「・・・は~い、開いてますよ~」
「・・・お邪魔します」
「お邪魔するわ」
入ってきたのは耀と飛鳥の二人だった。
「「・・・」」
「それで何の御用?」
「えっと、その前にあの二人は?」
「ああ。・・・寝てろ」
蒼奇は何時しかのように二人を殴って気絶させて、影の中に引きずり込む。
「もういいよ」
「・・・・・・それで用件なんだけれど」
突然のことに少しの間茫然とした二人だったが、いち早く飛鳥が直って話を切りだす。
「・・・これ、直せない?」
耀が差し出したのは十六夜のヘッドホンの一部である炎のエンブレムだった。
「あれ?代わりの物を召喚してもらったんじゃないの?」
「・・・それが、」
「それが凄く可愛いものが召喚されたのよ!」
耀の言葉を遮って飛鳥が興奮気味に話す。
「可愛いもの?・・・ああ、そうか。あのヘッドホンってネコ耳仕様だったか」
「・・・!知ってるの?」
「一応ね。十六夜のやつも元々は出る仕様だとは思うけどね。そうか、耀の世界はそういう世界なんだ」
「結局、直せるのかしら?」
「直せるよ。少し貸して」
耀から炎のエンブレムを受け取る。
「えーと、【
蒼奇がそう言うと炎のエンブレムが少しずつ姿を元のヘッドホンに戻っていく。
「はい、直ったよ」
「・・・ありがとう」
「でも、十六夜にちゃんと謝るんだよ」
元に戻したヘッドホンを耀に渡す。
しかし、渡したときに誤ってスライド横のボタンを押してしまう。
すると、カシャン!と音をたててネコ耳が生えた。
「「・・・・・・」」
「あ、あれ?戻し過ぎちゃった、かな?」
二人が蒼奇のことを何をしたと言いたげな目で睨んでくる。
「そ、それより用件はこれだけ?」
「「・・・」」
「・・・?」
「私たちのギフトについて少し指導してほしいのだけれど・・・」
「・・・いい?」
「・・・むぅ。どうしようか。出来ればそこらへんは自分で気づいてほしいんだけど・・・」
「・・・さっきフェイスさんから人間の領域を大きく逸脱した代物って言われた意味だけでも教えて」
「・・・っ!」
耀の質問に蒼奇が少し動揺した。
「「・・・・・・・・・」」
「・・・・・はあ・・・。それについては肯定しておくよ。本来なら回収して人の手の届かないところに保管するべきものだとは考えてる。でも耀には必要だし、君なら大丈夫だとも考えてる」
二人の視線に観念した蒼奇はそんなことを口からこぼした。
「・・・じゃあ、」
「これだけは言っておくよ。そのギフトの本当の力を知ったとしても、心は強く持ってね。そのギフト、〝生命の系統樹〟は耀にとっては害になることはないだろうから」
「・・・わかった」
「私には何もないのかしら?」
それまで黙っていた飛鳥が口を開く。
「そうだねー。とりあえず、どこまで理解してる?」
「・・・正直、分からないわ」
「まあ、そうだよね。でも飛鳥のギフトは三人の中でも特異なギフトだ。そのうえ状況が充実すれば伸びしろは無限にあると言っても過言ではないんだ」
「「・・・!?」」
蒼奇の話に対して驚愕する二人。
「ど、どういうことなの!?」
「そのまんまの意味だよ。飛鳥のギフト〝威光〟は能力の幅が広すぎるんだ。人が持つには大きすぎる力だ。それに僕らは『威光』と名の付くギフトを一度目にしているけど、覚えてる?」
その言葉に二人は自身の記憶を探り始める。
「・・・ゴーゴンの威光?」
「あっ」
「正解。あれは与える側の恩恵だ。それと同じように飛鳥の〝威光〟も与える側のギフトだ」
「でも、それがどう私のギフトにつながるのかしら?」
「飛鳥の命令する力はほんの一部でしかないってことだよ。・・・そうだね。おまけだ。〝白銀の十字剣〟を貸して」
「えっ?いいけれど・・・」
飛鳥から十字剣を受け取った蒼奇はその剣にいくつかのギフトを付与する。
「はい。いくつかのギフトを付与しておいたよ」
「・・・何のギフトかは、」
「秘密。でも、すぐにわかるよ。だから、戦闘ではいつも帯剣しておいてね?」
「・・・わかったわ」
「・・・・・・・・・」
「ん?耀。どうかした?」
「・・・・・・・・・蒼奇が、ちゃんと先生らしいことしてる・・・!?」
「いや、育てるって言ったからには多少はするよ。だから、そんなに戦慄したような表情にまでならなくても・・・」
「すこし信じられないわね」
「うん」
「・・・ああもう!講義は終わり!ほら、さっさと帰って帰って!」
「ちょ、ちょっと!?」
「わわっ・・・!」
蒼奇は二人を入り口に追いやって外へ放り出す。
「ふぅ。やっと一人になれたか」
『・・・私、は?』
「別に玲那ならいいよ。ペストは?」
『まだ気絶、中。ふ、ふふ』
玲那は蒼奇に特別扱いされたことに嬉しく思って笑い声をこぼす。
「・・・?笑ってるけどどうかした?」
『何でもな、い』
「・・・そう。まだ今回の騒動は続く可能性がある・・・鏡夜みたいに仕掛けてくる可能性もだ。あえて未然には防がない。三人の成長のためにも。だから玲那、場合によっては力を借りるよ」
『・・・う、ん』
その空間には蒼奇の声しか響かないが、彼にはちゃんと玲那の声が届いていた。
「それにしても・・・」
『・・・?どうか、した?』
「つまんなかったなぁ・・・あの巨人族たちは」
最後の最後に戦闘に対する愚痴をこぼすのだった。
次回は週末にあげられると思われます・・・。