人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

30 / 68
秘密&度胸

 蒼奇はレティシアの過去を要所だけ取り簡潔に話した。

 戦争を仕掛けようとしたのはレティシアのいる〝階層支配者〟制度賛成派ではなく反対派の連中だということ。そして同族殺しもその連中が太陽の主権を用いて大天幕を開放したこと。大天幕の開放は吸血鬼の純血、つまりレティシアの家族だけを殺すためにしたものだということやその結果彼女は復讐と〝階層支配者〟制度を残すために自身の名にすべての泥を被ったことも。

 蒼奇は自身が()()()()ものを嘘偽りなく話した。

 

「これが魔王ドラキュラの誕生秘話の真相ってところだ」

「・・・そうでしたか」

「レティシア様にそんな過去が・・・。で、ですが蒼奇さんはなぜそのことを知っておられるんですか?箱庭に以前いらっしゃったことでも・・・?」

「いや、この身体では初めてだ」

「・・・待て。この身体だと?どういうことだよ?」

 

 蒼奇の言葉に全員が首を傾げ、今まで黙っていた十六夜までもが口を開き尋ねる。

 

「俺は館野蒼奇だ」

「・・・?それはここにいる人なら誰でも知っているわよ?」

「急かすなよ、飛鳥。・・・この身体は、これさえも『館野蒼奇の分身体』だ。生み出されたのは千年以上前だ。起動させられたのは五百年ほど前になる。この身体が動き出す前にもこの身体と同じギフト、同じ姿の『館野蒼奇』が多くいて弟子の多くは俺ではない『館野蒼奇』の弟子だ」

 

 蒼奇が発した言葉にその場に居るすべての人物が驚いた。

 

「ど、どういうことですか!?まさか今まで僕たちを騙して―――」

「だから急かすなと言っているだろうに。これからすべて、とまではいかないがある程度なら話すさ」

 

 蒼奇はそういうと一息おいて話し始めた。

 

「俺のこの身体は本体である『館野蒼奇』が限りなく本物に近づけて作り出したうえ、全世界に『そこにいる者が本物の館野蒼奇である』と思い込まさせた身体だ。俺の本体が生み出し、そして俺が生み出した分身は数多の世界のいたるところに存在させている」

「そんなことが可能なのか?」

「可能だ。現に本体が『本体と思い込ませた分体』である俺の下に召喚の封書が届き、今ここにいるからな。しかし俺は本体である蒼奇のギフトの一部、それも召喚術と組み合わせたら強力なものしか貸し与えられていない。世界のバランスを壊し過ぎないようにな。そのため他の分身体も一部制約が存在する」

「本物は一体どこにいるのかしら?」

「それは俺さえも分からない。唯一わかっているのは、生きているということだけ。だが、館野蒼奇が生を歩み、見てきたものの記憶は俺にもある。今回のレティシアの件もその一部だ」

「・・・つまり、貴方の本体は一時期箱庭にいたということですか?」

「・・・そうだな。それについては肯定しよう。俺の本体は箱庭を見ていた。その関連で手を出したこともある」

「て、手を出したって、一体何をしたのでございますか?」

「・・・今回の関連でいうと、レティシアの家族やその派閥の者たちの保護だ。これはレティシアが魔王となったすぐ後に話して彼女自身も了解済みだ」

『『『・・・はっ?』』』

「本体もさすがに不憫だと感じたようでな、思わず手を出してしまったようだ。今は本体が創った世界で平和に暮らしている。とはいえ、本体はその時は名乗ってもいないし、記憶操作でうまく隠したから『館野蒼奇』が恩人だとは気づいていないだろう。お前らもレティシアには話すなよ?」

 

 突然の暴露に蒼奇以外の全員が唖然とする。そのまましばらくは時間が止まったように固まった。

 しかし蒼奇は心の中で嘘を織り交ぜて話したことを鵜呑みにしたことを確信して次の言葉を発する。

 

「それと固まっているところ悪いが、俺はこのゲームのクリア方法もすべて理解している。しかしそれについては話すつもりも必要すらもない。そうだろう十六夜?」

「・・・はっ、随分なサプライズを用意してくれたもんだな・・・!」

「お前の育て親ほどじゃないさ」

 

 二人は獰猛な笑みで睨み合い、視線で牽制しあう。そしてお互いに折れて視線を少し長い瞬きで視線を遮り、再び互いを見る。

 

「さて、()はどうすればいい?巨龍の相手?それとも空の城に単身で突っ込んだ方がいいのかな?」

「はっ!言ってろ。お前は巨龍だけ押さえとけ。あとは俺らだけでやってやるさ」

「・・・くははっ、その意気だよ。・・・ああそれと十六夜」

「なんだ?」

「君が選ぶのは、無残なデッドエンドかい?それとも、幸福なハッピーエンドかい?」

「・・・安心しとけよ。んなもん当に決まってる」

「そうかい?それなら作戦立案は任せたよ。僕の力を借りたくなったら、いつでも言ってよ」

 

 そう言って蒼奇は席を立ち、玲那やペストをおいて会議場を後にした。

 

 

 

 

 

 会議場を後にした蒼奇は〝アンダーウッド〟の医療施設に足を運び、治療のために忙しなく動いていた。そしてそこに近づいてくる四つの気配を察知する。

 

「ここね!蒼奇君!!」

「マスター!!」

「蒼、奇」

「・・・助けてください、蒼奇さん」

 

 蒼奇を見つけ出して声をかけてきたのは飛鳥、ペスト、玲那そしてジンの四人だった。

 

「・・・なんで此処が・・・!?・・・ハッ!ま、まさか、玲那の蒼奇レーダー!?」

「その通りよ!そして早速で悪いけれど、私を指導して頂戴!」

 

 飛鳥は蒼奇に声を掛けるとすぐにそんなことを言った。

 

「・・・前にも言ったけど僕はあまり手を出したくないんだけど・・・。もしかして十六夜に何か言われた?」

「・・・っ!」

 

 蒼奇の言葉を聞いた飛鳥は顔を強張らせた。その反応を見ただけで察した蒼奇は次の言葉を察する。

 

「前回した以上の指導はしたくないよ。飛鳥は今回は十六夜の指示通り大人しくしているべきだよ」

「けれどッ!?」

 

 飛鳥の言葉が途中で切れる。その理由は蒼奇が一瞬で飛鳥の後ろに回り、首に剣を突きつけていたのだから。

 

「自身のギフトの全容もわからず、且つ今の僕の動きにも対応どころか反応すらできてない。そんな君が前線に立つ?ガキが笑わせるな!!」

「・・・ッ!?」

 

 蒼奇の言葉が荒々しくなり飛鳥を叱責する。

 

「・・・それでも私はレティシアを、春日部さんを、仲間を助けるために何かをしたいのよ!」

 

 自身の決意を声に出して首元にある剣を掴み、一気に蒼奇の方へ振り向く飛鳥。そして、剣を掴んでいないほうの手を振り上げて、全力で振り抜いた。

 パシンッ!と軽い音が響いた。

 その手は蒼奇の頬に当たった音ではなく、当たる前に蒼奇の手によって飛鳥の手が受け止められた音だった。

 

「くっ・・・!」

「・・・・・・・・・ハア。お前みたいな心意気だけは立派な奴は苦手なんだがな・・・。仕方ない。今回は僕が折れよう。指導をしてあげる」

「・・・・・・本当、かしら?」

「そんなに疑わなくても本当だよ。だからとりあえず手の治療をして、人の少ない地下に行こうか」

 

 蒼奇は手にできた傷の痛みに耐えている飛鳥にエリクサーを渡し、〝アンダーウッド地下大空洞〟にある地下水門へと向かった。

 

 




次話も一週間以内にあげられるように頑張ります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。