〝アンダーウッド地下大空洞〟大樹の地下水門。
蒼奇は先に到着しており、飛鳥たちが来るのを待っていた。少しすると飛鳥たちが来た。
「やあ、来たね」
「ええ。私から頼んだことを投げ出さないわよ。それで、何をするのかしら?」
飛鳥にそう聞かれた蒼奇は影から一本の木剣を取り出す。
そして、言い放つ。
「時間もないしこういう場合はとことん実戦形式の戦闘を経験した方がいいんだ。だから飛鳥にはこれから僕と何でもありの模擬戦をしてもらう。とは言っても僕はちゃんと加減するし、傷をつけるつもりはないから寸止めする。でも飛鳥は殺すつもりで来なよ。ディーンを使ってもいいし、十字剣を使ってもいい」
「・・・本当に死なないのよね?」
「うん。これでも僕は教え子を殺したことはないんだ。それと戦闘中も指導するからちゃんと聞いてね?」
「・・・わかったわ」
「よし!それじゃあディーンを出すなり準備してよ」
そう言われた飛鳥はギフトカードからディーンを出して肩に乗る。
「いいわ」
「・・・そう?じゃあペスト。合図をお願い」
「なんで私が・・・。じゃあ、はじめ!」
開始の声が響いた瞬間、蒼奇は姿を消す。
「えっ!?ど、どこに―――」
「指導その一」
姿を消した蒼奇は飛鳥の背後に浮いており、首に木剣を添えながら声をかける。
「僕の指導は必ず実行しましょう。十字剣を使うつもりはなくても、戦いでは常時帯剣するように言ったはずだよ」
「・・・そ、そうだったわね」
背後に突然現れた蒼奇に冷や汗を垂らしながら返事をする飛鳥。そして仕切り直すために蒼奇は二人の正面に戻る。その間、飛鳥は言われた通りに十字剣を取り出して右手に持つ。
「それじゃあ、仕切り直しだ。ペスト」
「・・・ええ。・・・はじめ!」
蒼奇は今度も姿を消して背後に回って剣を横薙ぎに振る。しかし、飛鳥は彼女の身体能力ではありえない速さで反応してその攻撃を防ぐ。
それを見た蒼奇は薄く笑みを浮かべた。
「うそっ!?」
「・・・えっ?」
ペストが驚き、防いだ飛鳥自身も驚きと疑問が混じったような声を上げる。
「指導、というよりはネタばらし。それが僕が十字剣に付与したギフトの一つ、〝
「・・・そう」
「それともう一つがっ!」
「えっ?ちょ、ちょっと!?」
飛鳥が驚きの声を上げる。その理由は再び自身の身体が勝手に動き出したからだ。
「な、なんなのこれ!?」
「それが二つ目の〝
飛鳥はディーンの肩の上で落ちない絶妙な動きで蒼奇に攻撃するが、ひらりひらりと避けられてしまう。
それから飛鳥は困惑しながらも蒼奇に言われた通りに十字剣を手放す。すると十字剣が浮き上がりすごい勢いの剣戟で蒼奇を攻撃し始める。
「えっ?・・・えっ?」
飛鳥は突然の出来事に理解が追い付かず十字剣と自身の手を交互に見ている。
「困惑してる場合じゃないって。飛鳥のギフトは自身の所持してるギフトの効果を把握して把握して使いこなさないといけないんだから」
「え、ええ」
「うん。それじゃあ次は十字剣とディーンにギフトを使って指示を出すんだ。内容はなんでもいい。僕を攻撃しろでもいいし殺せでもいい」
「・・・じゃ、じゃあ。剣とディーン!
飛鳥のその言葉に十字剣は速度を増して剣戟を繰り出す。対してディーンは正面から蒼奇へと突進していく。
「そう、それでいい。でも少し説明する時間を作ろうかな?」
すると十字剣は弾き飛ばされ、ディーンは投げられて背中を水面に叩き付けられる。その衝撃で大樹が激しく揺れ、水が大波となって周りにいた人たちに降りかかる。飛鳥はもちろんのことジンやペスト、玲那も体を水で濡らす。
「さて、飛鳥は今の戦闘で自身のギフトについてどう感じたかな?」
「・・・先に言うべきことがあるんじゃないかしら?」
「おいおい。戦闘中に、しかも相手に向かって『水がかかってしまったので謝ってください』なんて言うつもりなのかい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうね。私がギフトを使って命令したとき、その、ディーンはよくわからなかったけれど、剣の方は勢いが増したような気がするわ」
自身の怒りを飲み込むためと納得させるための間を作ってから、蒼奇の最初の質問に答える飛鳥。
「・・・うん。及第点としようか。飛鳥の言う通りギフトによってあの十字剣とディーンは強化されたんだ」
「・・・そう。状況というのは私の所持ギフトのことだったのね」
「おお!そこを理解できたんだ!言った通り飛鳥は自身が制御できるギフトを多く持てば持つほど強くなれるんだ。この際ギフトの強弱は関係なくギフトの数がものを言うんだ。でも弱すぎるギフトは強化に耐えられず急激に寿命が縮むから、そこらへんは消耗品と考えて複数個持っていた方ががいいかな」
「・・・そう。それなら、今回は十六夜君の判断が正しいのね・・・」
飛鳥は覇気のない声でそう言って十字剣とディーンを回収する。
「そうだね。僕がさっき言った通り、今回は大人しくして指示に従うべきだね。でも〝ウィル・オ・ウィスプ〟とも良好な関係を結べたから、多少ギフトを優遇してもらえばいいさ」
「・・・ええ、そうね」
「また今度、機会があるよ。・・・って、十六夜?どうかし」
「手が滑ったあああああああああッ!!!」
十六夜が手に持っていたバケツで水を飛ばしてくる。その水はそこにいたジンとペストと玲那にまったく濡れていない蒼奇にまでかかって、そして一部は上方にある主賓室に向かっていき黒ウサギ、は素早く避けてその後ろにいたサラにかかってしまう。
「・・・・・・おい。なぜ僕までやられるんだ?」
「ついでだ!!」
「・・・・・・・・・玲那。飛鳥とペストを連れて風呂に行け。ジンもだ。いいな?」
「・・・う、ん。わかっ、た」
「は、はい」
蒼奇は十六夜を睨みながら玲那とジンにそういった。そして四人が去ったのを確認すると、
「おっとおおおおっ!!!ギフトが滑ったああああああッ!!!」
「なっ!?テメエ!!それはやり過ぎだろうが!!?それにギフトが滑ったってなんだ!?」
「ただの暴発(故意)に決まってんだろうがッ!!」
「ふざけんな!!」
蒼奇は仕返しとしてギフトで水を操って龍を生み出して十六夜へ突撃させる。その後もバケツやギフトを盛大に用いた水かけ合戦は続いた結果、二人で仲良く?風呂に入ることになった。
「・・・蒼奇。テメエ、アレは反則だろうが」
「そんなのは知らないね。元よりルールもクソもないものだろうに」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
少しの間、二人に沈黙が訪れる。
そして、
「・・・ヤハハハハハハハッ!!!」
「・・・くはははははははっ!!!」
・・・・・・声では笑い合っている二人だが、実際は視線などで牽制しあい二人の間に火花が散っていた。
つ、次も一応一週間以内を目安に頑張ります・・・。