―――青鬼、三億―――
蒼奇の口から出された数字は単純計算で五人が先ほど相手していた蒼奇の三千倍だった。
そして、言葉が発せられた後は一瞬だった。
五人は気づいたときには空を見上げて、地面に寝転んでいた。いつ攻撃を受け、いつ気絶したか。そして起きてなお、どこを攻撃されたかわからないほど不自然に痛みが存在しない。それほど加減されたうえで、一瞬だったのだと、五人は悟った。
「・・・なに、今の?」
「お前らの次の目標」
「・・・え?」
「アレを超えれるように頑張れ、ってことだ」
あまりに衝撃過ぎて、思考が停止するミカ。
「・・・師匠」
「どうした山田?」
山田が横になったまま蒼奇に質問する。
「最後ですが〝下剋上〟が上手く作用しなかったんですが・・・」
「ああ、あのギフトはあまりに力の差があるとそんな感じで機能しなくなる。いい経験になっただろ?」
「・・・そう、ですか。ありがとうございます」
「だが、俺に一撃与えたのは誇っていいぞ。敵にしろ弟子にしろ、青鬼一万体と同化した状態の俺に有効打を与えた奴は片手で数えられるぐらいだ。だが精進しろよ?✟黒炎の竜騎士✟君?」
「下の名前で呼ばないでください!!」
蒼奇が山田を弄りながら賞賛の言葉を贈る。今度はジョンとミリアに向き直る。
「ジョン。タイムボムには度肝を抜かれた。あんな代物の製造に成功しているとは思ってもみなかった。おそらくだがミリアとの共同開発だろう?」
「・・・ああ」
「・・・そう」
「そうか。・・・扱いには気を付けろよ?頼むから」
蒼奇はそれだけ言って最後の一人、玲那に話しかける。
「玲那。最後の一撃は良かったぞ。全てのギフトを自身が制御できるギリギリの範囲まで出し切った一撃だった」
「・・・う、ん。疲れ、た」
「・・・ハハハッ!お疲れさま。少し休んでろ」
そして蒼奇は改めて全員に向き直って、話しかける。
「正直、一万体の領域で一撃を与えられるようになるのは、もう少し先だと思っていた。素直にお前らの成長を嬉しく思うよ」
「・・・月並みですね、師匠」
「仕方ないだろ?マジでそう思ってるんだからよ」
最後の最後で山田に茶々を入れられて、みんなで笑う。
その笑い声は六人しかいない無限に広がる荒野によく響き渡っていた。
それから六人は蒼奇が創り出した世界から出て、今後のことを話していた。
「・・・それでお前ら、本当にコミュニティを作るのか?」
「作るよ!最初は先生の弟子だけで結成して色々活躍する!」
「・・・期待しないで待っているよ」
「何よ!その目はー!!」
ミカの穴だらけの計画に投げやりに返答する蒼奇。
「お前らも同意の上ってことでいいんだな?」
「「「「はい/うむ/うん/(コク)」」」」
四人が肯定の意思を蒼奇へと示す。
「それなら何も口出しも手伝いもしないが・・・がんばれよ」
「今に見てろー!絶対見返してやるー!!皆行くよ!!」
ミカは声を上げると〝アンダーウッド〟から離れる方向に走っていく。彼女に追随して他の四人も消えていく。
「・・・さて、ゲームは終わっちゃっただろうし・・・あ、蛟劉の気配から生気を感じる。うーん?・・・よし!気になるから見に行こう!」
そう決めた蒼奇はとりあえず白夜叉の気配を感知してそこに転移する。
「・・・やあ、白夜叉。・・・なんだか嬉しそうだね?」
「む?ああ、おんしか・・・。いやの、若者の出立をの」
「ああ、なるほどね。僕も先ほど感じたよ」
「そうか・・・。さて、蛟劉。さっさと入って来んか」
「あちゃー、ばれてました?」
ワザとらしい声で窓から入室する蛟劉。
「・・・なんで僕の知り合いには普通に入室する人が少ないんだろう?」
「知らんな。蒼奇の言う通り、普通にドアからでは駄目だったのか?」
「きっとグリーがいたから入り辛かったんだよ。それぐらい察してあげなよ」
「まあ、そんなところや。それで?君は何の用なん?」
「ああ、これをサラに渡しておいて欲しいんだけど」
そして蒼奇は一本の角を取り出す。
「・・・なんやこれ?とんでもない代物というのはわかるんやけど・・・?」
「最強の龍種、僕がそう考える三体の角をある方法で一つにしたものだよ」
「んな・・・!?」
「一体は炎を司り、一体は雷を司り、一体は風を司ってる。サラには完全に相性の良いもののはずだよ」
「・・・よいのか?このような貴重なものをやっても?」
白夜叉は角を持って蒼奇に尋ねる。
「いいよ別に。僕は使わないし。それに僕はこれからやることがあって少しの間、〝ノーネーム〟を離れるし。そのことも伝えといて欲しいし」
「何じゃと・・・?」
「私情で動かなきゃいけなくなってね。みんなを巻き込みたくないからね。頼むよ」
「・・・そんなに危険なことなのかの?」
白夜叉の言葉を聞いた蒼奇は薄く笑って、答えた。
「僕と同じクローンの情報収集と可能ならばその始末だよ」
次話は諸事情で遅れるかもしれません。