人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

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恐怖&処理

 蒼奇が起こされる少し前。耀と飛鳥はギフトゲーム〝造物主達の決闘〟でウィラ=ザ=イグニファトゥスと闘っていた。

 しかし、その途中で自体が急変した。突如、観客席から轟と雷鳴が鳴り響いたのだ。それは黒ウサギが放った〝疑似叙事詩・梵釈槍〟だった。だが、槍に穿たれた少年―――正しくは穿たれてはいないのだが―――は槍の柄を掴み、爽やかな笑みをした後に鎧を召喚した黒ウサギを殴り飛ばす。それに怒声を上げて少年に攻撃を仕掛ける耀と飛鳥。だが二人ではその少年に攻撃が届くことはなかった。二人の力では到底敵う相手ではない、とそう感じていたとき、突然少年が吹き飛んだ。

 

「ぐっ・・・!?」

「・・・っ!?一体、何が起きたの・・・!?」

 

 そのことに少年と耀と飛鳥はなぜそんなことが起きたのか、そして誰がやったのかを疑問に思うよりも早く、そこにいた全員が恐怖に包まれた。

 

『・・・・・・』

 

 そんな感情を抱かせている人物は彼女達と少年の真ん中ほどで静かに佇んでいた。その姿は黒いモヤのようななにかに包まれていてはっきりとは確認できなかった。それでもその姿を認識した全員は直感的に理解した。いや、理解させられた。そこへ轟音を聞いて駆けつけた十六夜が到着した。だがそんな十六夜もその姿を認識した途端に恐怖を感じ、嫌な汗が流れる。

 

「・・・おい、御チビ。アレはなんだ?敵か?」

「わ、わかりません・・・!ですが、あの人が現れる前に二人を傷つけていた相手が攻撃を受けたかのように見えました・・・」

 

 十六夜は本能が警鐘を鳴らすほど危険な存在を相手にしなければいけないのかと

 

『・・・このような状況にしたのは、貴様であってるか?〝原典〟候補者君?』

「ッ!!・・・そうだ。俺がやった」

 

 少年、殿下は『恐怖』からの問いに素直に答えた。

 その答えに対し、『恐怖』は頷き続けて話した。

 

『他の奴らも隠れてないで出てきたらどうだ?そのほうが手間を省ける』

 

 『恐怖』がそう声をかけると〝ウロボロス〟の連盟旗が靡かせて実力者たちが現れた。

 しかし、そんな実力者たちでも『恐怖』からすれば有象無象でしかなかった。

 

『・・・これで全員か』

「・・・殿下、この状況は危険です・・・」

『ここは退いたほうがいい。もっとも、そのようなことを許してくれる相手とは思えんが・・・』

「ハッ!まったくだ!なんでテメエみてえな〝恐怖の象徴〟とまで呼ばれた奴がいやがるんだか!」

『愚問だな。そこのガキが俺の琴線に触れることをした。ただそれだけだ。それにしてもまだそれだけ話せるのか。ならばもう少し上げても』

 

 そういって『恐怖』は〝ウロボロス〟の全員を睨みつける。そのうえさらに怒気と殺気が膨れ上がってその場に居た全員に圧し掛かる。

 

「チッ!どうするんだ?あんなバケモノ相手に勝てる気はしねぇぜ?」

『そんな貴様らに朗報だ。・・・取引しないか?』

「・・・なに?」

『貴様ら魔王連盟のお仲間を含めて、全員を生かして帰してやる』

「ッ!?」

 

 それは偶然にも先ほど殿下が言ったものと同じ内容だった。しかも言った人物はそれを確実にその逆、全員を帰らせず、ここで殺すことができるほどの圧倒的存在だった。

 

『だから・・・この都市から全員引き連れてさっさと消え失せろこの雑魚共がッッッッッ!!!!!!』

 

 その言葉と同時に先ほど力を増した圧力がさらに重くなった。

 これ以上ここに留まるのは危険だと判断した殿下は他のメンバーに告げる。

 

「退くぞ」

「えっ?でも」

「これ以上アレを怒らせないほうがいい。さもないと全員死ぬぞ」

「わ、わかった」

 

 そして殿下は瓦礫の上からわざとらしく周囲に聞こえるように告げた。

 

「二人とも、今日は楽しかったぞ!例の保留にしていた話―――魔王連盟に加入することを、よくよく考えてくれ!」

 

 その直後、『恐怖』から風が吹き起こり始めるがもう既に魔王連盟の影は一つもなかった。

 

『チッ・・・クソッたれっ・・・』

 

 『恐怖』は殿下の去り際の行動を許してしまったことに罵声をこぼす。

 そしてそこへ憲兵隊が到着し、恐怖で全身を震えさせながらだが、『恐怖』を取り囲む。

 

「う、動くな・・・!」

『・・・はあ。さすがにわからないよな』

 

 そこで『恐怖』は元の姿、館野蒼奇へと戻る。

 

「なっ!?蒼奇さん!?」

「拘束するならしてよ。実際闘技場に被害を出しちゃってるしね」

「い、いえ!魔王連盟を追い払っていただいたのですからそれぐらいはかまいません!!」

「えっ?なにこの手のひら返し。逆に清々しいんだけど。とりあえず被害状況の確認をして。負傷者は僕の教え子たちのコミュニティがどうにかしてくれるから見つけ次第連絡を。建物のほうもその子たちに任せるといいよ」

『は、はっ!』

 

 蒼奇の指示を聞くとすぐに観客席の方々へと散っていく憲兵隊。

 

「ミカ。山田。ジョン。ミリア。来てるんでしょ?」

『はい』

 

 蒼奇の問いかけに即座に反応して姿を現す四人。

 

「で?なにしてたの?」

「師匠の殺気で気絶した人たちを避難させてました」

「・・・うん。ごめん。それとありがとう。とりあえず憲兵たちの手伝いをして。でもミリアは先に耀と黒ウサギの治療を」

『はい』

 

 四人も蒼奇の指示を聞いて行動を起こす。

 

「・・・おい、蒼奇」

「蒼奇さん・・・」

「マスター・・・」

「ん?やあ三人とも!元気だったかい?里桜はいないのかな?」

『ここにいます!』

 

 蒼奇の下に十六夜、ジン、ペスト、腕輪状態の里桜の四人が歩み寄ってきた。

 

「今まで何してたんだ?それにさっきの姿はなんだ?そして―――」

「ストップ。落ち着いてからちゃんと話すよ。今は、黒ウサギを運んであげないと」

「・・・ああ。そうだな」

 

 少し不満そうな顔をしながらも同意する十六夜。

 そしてそこへさらに飛鳥と治療を受け終えた耀が寄ってくる。

 

「蒼奇君。さっきの姿は―――」

「蒼奇。さっきのって―――」

「待てい。あとでちゃんと話す。今は事後処理を優先させてくれ」

「・・・わかったわ」

「・・・わかった」

 

 十六夜と同じように不満そうな顔をしながらも二人も了解してくれた。

 

「それに大変なのはこれからだよ。奴さんも攻勢に乗り出し始めたみたいだし」

「そうだな・・・」

「うん。じゃあ僕も街の被害の確認をし始めるからまた後でね」

 

 そういって蒼奇は手を上げてひらひらと振る。それを見た六人は蒼奇に異様なことが起きているのが確認できた。

 

「おい蒼奇。その手にあるひびはなんだ?」

 

 十六夜たちは蒼奇の掌に大きな『ひび』を見つける。それは陶器にできるようなひび割れができていた。

 

「ん?・・・あ、やべっ。バレた」

「で?何なんだ?」

 

 問い詰める十六夜と答えを気にする五人。それを見た蒼奇は観念して話し始める。

 

「・・・んー・・・寿命かな?僕の場合は『死』じゃなくて『崩壊』とか『消滅』だけどね」

「・・・お前が?死ぬ?〝不滅〟なのにか?」

「そうだね。僕は生物的には〝不滅〟だよ。それでも体に限界がある。この身体は造られたもので正確には『生物』じゃないんだよ」

「・・・じゃあ、なに?」

「・・・入れ物、かな。別にゴーレムや機械と思ってくれてもいいよ」

「・・・で?どうなるんだ?」

「えっ?もちろん近いうちに死ぬよ」

「・・・どうにもならないのかしら?」

「ならない。言ったでしょ?寿命だって。延命処置だって今までも、そして今も散々やってる。そのうえで限界が来たんだから、諦めるしかないよ。まあ、それでもまだしばらくは平気だよ」

 

 蒼奇は終始笑いながら話す。話を聞いた里桜を除く五人は驚きで声を失う。

 

「・・・里桜は、知っていたの?」

 

 ジンは震える声で尋ねる。

 

「・・・はい。いずれ来るということは私達教え子は全員知ってます」

「うん。全員に話してるからね。それでも長生きしたほうだよ。僕自身ここまで持つとは思わなかったし。・・・だから、君らには頑張ってもらわないと困るんだ。もしも僕に何かあって死んだら、君らを助けてあげられなくなる。早く僕の手から離れていってよ?そうじゃないと僕は心配で死にきれないよ」

「「「なら死ぬな」」」

「絶対に死ぬから言ってるのに・・・。まあ今は黒ウサギたちを移動させようよ。詳しく聞きたいなら後で話してあげるからさ」

 

 ・・・そして蒼奇の話は区切られた。それでも、彼は終始笑顔を絶やさず話を終えた。いつものように楽しそうな笑みを。

 

 




次も一週間以内の予定。
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