「・・・それで、作戦には参加しなくてよかったのかしら?」
「それはペストも同じでしょ」
「いいのよ、私は。ここでマスターを守る役目なんだから」
「・・・あっそ」
蒼奇の病室として宛がわられた部屋に二人はいた。蒼奇はベッドに上体を起こした状態で。ペストはベッドの横にある椅子に腰かけて。
「・・・ん?」
「・・・?どうかした?」
「いや、なんでもない(ジンを守れ、ねぇ・・・。『世界』も面倒なことを・・・)」
『世界』から正史を乱さないための命令が出される。そんなことは知らないペストは蒼奇の挙動を不思議に思ったが、すぐに自分の作業に戻った。
「・・・はい、斑梨剥けたわよ」
「あっ、ありがとう」
蒼奇は差し出された斑梨を口にしながらどう対処するかを考え始める。
「ちなみに隠し味にペスト菌を振りかけたわ」
「ブホッ!?」
その一言を聞いた蒼奇は口の中のものを盛大に噴き出した。
「ゲホッ!エホッ!えっ!?ちょ、おまッ!?」
「冗談よ。二割ほど」
「残り八割は何だ。何があるんだよ」
「なによ。ただの冗談よ、冗談」
「いや、今の僕にはマジで耐性ないから死活問題なんだけど・・・」
「あら?そうなの」
「そのいいこと聞いたみたいな顔をやめろ。僕、マスター。君、召喚獣。主従関係。OK?」
「・・・?そうね」
「いや、当たり前でしょ?みたいな顔をされても・・・。今のやり取りにその関係にあるはずの主従の意がなかった気がするんだけど?」
「気のせいよ」
「いや、で」
「気のせいよ」
「だから」
「気のせいよ」
「・・・」
「気のせいよ」
「まだ何も言ってないですけどぉ!?」
「気のせいよ」
「・・・ハイ、ソウデスネ」
これ以上は無駄だと判断した蒼奇は黙々と斑梨を食べる。そしてジンの方へと自身の一人を送り感覚共有を行いながら対処しようと結論を出した。
「あ、それは本当にペスト菌をかけたわ」
「ブハッ!?」
「本当よ」
「そこは冗談って言ってほしかったなぁ!!?それに今日はなんか辛辣じゃないかい!?」
「エリクサー用意してるから平気よ。それと辛辣なのは気のせいよ」
自身が呼び出したはずの召喚獣にからかわれながらも。
場所は変わり煌焰の都・近隣の樹海。そこに青鬼である蒼奇、〝個群奮闘〟により無限にいる一人を派遣させていた。
「・・・あれ?見知った顔がいる」
「・・・ッ!?お、お前ッ!?」
「やあやあ!いじめられっ子の遊興屋君じゃ~ん!元気~?」
「お前の顔を見るまではな!!」
「いやだなぁ。一緒に酒やら紅茶やら毒やらを飲んだ仲じゃないか」
「お前に悪戯されてた記憶しかないんだがなぁ!?」
「そだっけ?」
「少なくとも俺はそうだ!!」
突然乱入してきた蒼奇と遊興屋のやり取りに呆然とするその他一同。
「・・・青き魔王」
「なんだい、殿下君」
「お前、このクソとはどういう関係だ?」
「話すほどでもないくらいクソみたいな関係だよ!」
「・・・そうか」
「おい、お前ら人のことをクソクソ連呼してんじゃねぇよ」
そんな遊興屋の言葉を無視してガシッ!と強く握手を交わす二人。
「お前とは仲良くできそうだ」
「同感だね。そうだ!友好の証ついでにあのクソに悪戯した時の動画が山ほどあるんだけどいるかい?」
「マジかよくれ!!」
「ちょっと待て!?んなもんいつ録画してやがった!?」
「やだなぁ~。毎回撮ってたに決まってるじゃないか!と、いうわけでこれに全部入ってるから」
「よこせクソガキ!!」
「誰がやるか!!」
蒼奇がビデオカメラを殿下に渡すと子供みたいに追いかけあう殿下と遊興屋。だが、二人の実力を考えればとても恐ろしい光景だろう。
「クソッ・・・。で、テメェは何の用だ?ただ俺をからかいに来たわけじゃねえだろ」
「あ、七割ぐらいはそれが目的」
「・・・やっぱお前嫌いだわ」
「うん。知ってるし僕もそうなるようにしてたからね」
「さっさと三割話せ。お前が口開くたびに俺が貶される」
「うん。君に警告しに来たんだよ」
「警告だぁ?」
蒼奇に言葉を聞いて怪訝な顔をする遊興屋。
「そこのジン君と守護者に手を出したら、さすがに僕のおもty、玩具でも容赦しないよ」
「今の言い直す必要あったか!?」
「あったあった。超あった。天気予報で雨が降るを槍が降るって言い間違えたくらいの違いがあったから」
「絶対ぇなかっただろ!?」
「うん。ぶっちゃけなかった。想定通りのツッコミありがとう」
「殺す!今殺す!!すぐ殺す!!!」
「ハイハイ、お疲れお疲れ。それとも、いいのかなぁ?君の恥ずかしい動画を箱庭全土に放映しちゃうよ?」
「ぐっ・・・」
「いいなそれ!すぐにやろうぜ!!」
「クソガキ黙れ!!」
「それで?わかったのかい?」
「・・・ああ。いいぜ」
「えっ!?マジで放映していいの!?そうと決まれば殿下君、すぐに準備だ!!」
「ああ!!」
「そっちじゃねぇよ!?そこのガキに手を出さねぇ方だ!!」
「「ちっ・・・!」」
「『ちっ』、じゃねええええぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!」
「ああはいはい。わかったよ。僕の用事はこれで終わりだから帰らせてもらうよ」
「さっさと消えろ!」
「じゃあ殿下君。機会があったらこのクソについていろいろ話してあげるよ。それじゃあ、ばいびー」
「死ね!!もう来んな!!」
遊興屋をとことんからかってその場から消える蒼奇。そのやり取りをただただ呆然と見ていたリンとジン、里桜の三人。
「せ、先生があそこまで翻弄されるなんて・・・何者なの・・・?」
「え、えっと、元・魔王の〝ノーネーム〟の人です・・・箱庭でも古参だと自分で言ってた、はずです・・・」
「そ、そうなんだ・・・」
そんな感想をこぼす二人がいた。
「クソ・・・。とんだ邪魔が入ったな。まあ、だが俺はそこの奴の安全を保障せざるを得なくなったわけだ。・・・それで?やるのか?」
「・・・ああ、やってやるよ。すごい報酬ももらったしな。この分くらいはあいつに恩を返す。そして〝人類最終試練〟・・・〝アジ=ダカーハ〟は俺が倒す」
殿下はそう言い放った。
蒼奇からもらったビデオカメラの動画をじっくり鑑賞しながら。
「ほう・・・飲み物に悪戯か。紅茶に大量の塩や唐辛子、クエン酸。挙句には水銀まで。酒にはアルコールを強くしたりする薬を入れて酔いつぶれたら顔に落書きか・・・。やはりアイツとは仲良くなれそうだ」
「おいクソガキ。それをよこせ。すぐに壊す」
「だが断る」
「オーケーオーケー。テメェがそういうなら戦争だクソガきぃッ!?」
突如遊興屋の頭に金盥が降ってきて直撃した。
「クソッ!一体何だってんだ!?」
遊興屋は自身に当たったたらいを見る。するとたらいには張り紙がしてあり、
『ちなみにそこにいる誰かに間接的に直接的に関係なしに手を出そうとしたら今みたいにたらいが降ってきます!だから手を出さないでね?それと、まんまと引っ掛かってくれたね!僕は嬉しくて嬉しくて笑いと涙が止まらないよ!。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ』
「・・・ふざっけんなああぁぁぁ!!このクソ鬼がああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」
樹海に一人の男の叫びが木霊した。
「フッ、フフッ」
「・・・突然笑いだして気持ち悪いのだけれど?」
「・・・ねえ。僕って、
「そうだけれど?」
「あ、いや、うん。わかってるならいいけど・・・。まあ笑いだしたのは、少しある人物をからかってきたからだよ」
「・・・ああ、分体だったかしら。それで遠くの方に指示を出して話し合ってきたのね」
「うん。・・・それと、ちょっと言わせてもらってもいいかな?」
「・・・?何かしら?」
「そろそろその手に握っているエリクサーをよこせ!もうかなり辛いんだよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・忘れてたわ」
「いいから早く頂戴!?」
蒼奇がエリクサーを奪おうとしてペストがそれを阻止する。二人はそんなやり取りをしばらく続けていた。
そしてゲーム攻略の作戦が予期せず始まり、一人の少年の一撃により終幕するまで静かに見ていた。
次も明日。