人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

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2017/1/20
改稿終了。
今後も修正の可能性有り。


治療&入店

 十六夜に話を丸投げした蒼奇は水神の頭の前まで行くと話しかける。

 

「ねぇ、生きてるよね?」

『………』

「………………ん?あ、あれ?ま、まさか死んでる?……………………………さーて、どうやって処理しようかな?燃やそうかな?埋めようかな?いや、こんだけ大きいから食べごたえありそうだし蒲焼きにでも――――」

『生きておるわ!?だから燃やすやら埋めるやら蒲焼きなどと恐ろしいことをしようとするでないわッ!!』

「………チッ!」

『なぜに舌打ちッ!?』

 

 蒼奇の言葉に反応した水神が激しく反応し、その様子を見た蒼奇が舌打ちをする。

 

「まったく。生きてるならすぐに返事ぐらいしてほしいね。まぁいいけど。とりあえずこれ飲んで」

『………それは?』

「エリクサー」

『!!?』

「何も言わせないよ?」

 

 何か言われる前にしまさんに蛇神の口の中にエリクサーを転移させる。

 今現在、ある一人の人物によって彼の影の中には多くのエリクサーが溜まりに溜まっているのだ。その在庫処分の一環として気にしなくてもいい怪我にもエリクサーを使うという始末だ。

 それはともかくとして、エリクサーを飲んだ水神は見る見るうちに怪我が治っていき、目に見える傷はなくなってしまった。

 そのことを確認した蒼奇は改めて水神に話しかける。

 

「治ったよね?」

『………なぜ、我のようなものにエリクサーのような貴重なものを?』

「余ってたから」

『………は?』

「いやだから、大量に余ってるんだよ」

『………もう何も言わんぞ』

「えー、つまんな。もうちょっと根掘り葉掘り聞こうとしようぜー。張り合いねえのー」

 

 唇を尖らせながら黙ってしまった水神に文句を言う蒼奇。

 

「まっそれはともかくとして。とりあえず、ゲームの報酬プリーズ」

『………ああ、いいだろう』

 

 そういって水神が渡してきたのは樹の苗ののようなものだった。

 それを不思議そうに観察する蒼奇。

 

「これは?」

『〝水樹〟と呼ばれるギフトの苗だ。枯れない限り水を出し続けるものだ』

「おお~。零細コミュニティにはうれしい代物だね」

『………貴様は、あの者のコミュニティの状況を把握しているのか?』

「いや?でも予想はできてるし、別にいいよ。そうじゃなきゃ僕らを呼ぶような必要性がないかなって感じただけだし。でも、どんな状況でも僕は、黒ウサギのコミュニティに入る。面白そうだからね。それに僕の娯楽の障害になるものがいるんなら………徹底的に潰すだけだよ」

『………そうか』

「僕の仲間がねッ!!」

『人任せか!?貴様!?』

「まぁね~。それに僕は召喚魔術士だよ?自ら手を出さなくても僕の家族たちがやってくれるよ。それに君を殴った他にも召喚された子たちもいるし。その彼らには強くなってほしいんだ。でも分が悪いと思ったら手は出すつもりでいるよ。まあそういうことで、元気でね。今度はちゃんと試練でも挑戦でも受け()()に来るよ」

 

 人を育てるのって楽しいからね。そう最後に付け加え、〝水樹〟を影の中にしまってから水神から離れて十六夜と黒ウサギの元へと戻る。

 

「十六夜ー、話は終わったかい?」

「おう。ちょうどな」

「じゃあ、簡潔に聞かせて」

「零細コミュニティ、魔王は悪者、だから助けてほしい、そして黒ウサギはリア充」

「おけ把握」

「え?………え?………………え?」

 

 黒ウサギはぽんぽんと進む会話についていけていないのか戸惑った声を出している。

 

「あ、あの本当にいいんですか?詳しく聞かなくて………」

「え?黒ウサギが爆死するんでしょ?」

「しません!!なぜそこだけを拾うんですか!?それに今のでどうやって分かったのでございますかッ!?い、いえ、そうではなく!詳しく知っておいてほしいのですヨッ!?」

「別にいいよ。全部聞こえてたし」

「ではさっきの会話は何だったのですかッ!?」

「「ノリ」」

「ハァ………あっ!ということは蒼奇さんも黒ウサギのコミュニティに加入を!?」

「もちろーん。でも一つ聞きたい」

「は、はい!何でしょう?」

 

 蒼奇は一度言葉を切ると意を決して黒ウサギに尋ねる。

 

「………畑はあるかい?」

「………はい?」

「畑、農地、土壌、ファーム、もしくはその類や植物を育てられるだけの土と土地」

「は、はい。一応ありますけど………」

「うん、ならいいや。あ、そうだ。はいこれ。ゲームの報酬。黒ウサギに預けとくよ」

 

 そういってから影の中にしまっていた〝水樹〟を黒ウサギに手渡す。

 

「ええ!?こ、これって………!?」

「〝水樹〟の苗だって」

 

 それを聞き、改めて理解した黒ウサギはウッキャー♪と奇声を上げて喜んでいる。

 その姿を見ながら十六夜が蒼奇に尋ねてくる。

 

「それで、その影は一体なんだ?」

「僕は影を操ったり、潜ったりできる恩恵だよ。こんな風にね」

 

 蒼奇は影を触手のように伸ばしながら説明する。

 

「でも、大半はさっきみたいに物をしまうのに使ったり、影の中に召喚獣を呼び出すのに使ってるけど」

「へぇ、召喚士かなんかか?」

「その通り。正しくは召喚魔術士。魔術も使えるけど最近は滅多に使わないよ」

 

 そういいながらも、指先に火をともしたりと軽い魔術を使って見せる蒼奇。

 その様子を十六夜は興味深そうに観察していた。

 

「さて、とりあえず話は一段落したし目的を果たそうか、十六夜」

「おう、そうだな」

「ほら黒ウサギも。そろそろ落ち着いて」

 

 いまだにはしゃいでいる黒ウサギを落ち着かせて、当初の目的のとおりに〝世界の果て〟に向かう一行。

 以前来た時も世界の果てには来たことが無かった蒼奇はどんな光景が広がっているのかと心を躍らせながら向かう。

 

 

 

 

 ただ一つの懸念事項を残して―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――どうやってずっと空気だったネロとしまさんの機嫌を元に戻すかという問題が残っていたのだ。

 

 

 

 

 

 正直、十六夜と黒ウサギの会話はネロとしまさんの機嫌取りに必死で聞いてなかった蒼奇。

 そして二体との話し合いの結果、ネロはしばらくかまってあげることで満足し、しまさんは夜の話相手で妥協してくれた。

 そのことに一安心した蒼奇。

 しかし、機嫌取りに必死で〝世界の果て〟の景色に意識がほとんど向かずにあまり記憶に残っていない蒼奇であった。

 そして、目的の〝世界の果て〟を見た一行は飛鳥と耀の二人の下へと合流したのだが、

 

「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう心算つもりがあってのことです!」「聞いているのですか三人とも!!」

 

「「「「ムシャクシャしてやった。だが、反省も後悔もしていない!」」」」

「黙らっしゃい!!!せめて反省してください!!!そしてなぜ、蒼奇さんがそちら側にいるのですか!!?」

「ノリです。楽しいよ!」

「お馬鹿様!!!」

「でも、話を聞く限りだと彼女たちの行動もわかるよ」

「そ、それはそうですが………」

 

 蒼奇たちがいない間に飛鳥と耀、そして四人が所属することになる〝ノーネーム〟のリーダーであるジンの三人が〝フォレス・ガロ〟のリーダーであるガルド=ガスパーにゲームを仕掛けたのだ。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく喧嘩を売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

「そうそう。黒ウサギもそれくらいで許してあげなよ。君はその話を聞いて、喧嘩を売らずにいられるの?」

「うっ………で、ですが、このゲームで得られるのは自己満足だけなんですよ?」

 

 そう。確かにこのゲームはクリアしても自己満足しか得られない。だがそれは個人の話だ。〝フォレス・ガロ〟を潰せば、脅迫されて従っていたコミュニティに恩を売ることができる。

 しかし、蒼奇はそういう裏で動くことが苦手なので十六夜あたりにすべて任せる腹積もりらしいが。

 なんやかんやしてジンや飛鳥や耀の主張によって何とか黒ウサギが納得する。

 

「はぁ~………。仕方がない人達です。まぁいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんか蒼奇さんがいれば楽勝でしょう」

 

 黒ウサギは神格持ちを倒した十六夜や神格を持っているように思える蒼奇に期待してるようだが――――――

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねぇよ?」

「僕も参加しないよ」

「当たり前よ。貴方達なんて参加させないわ」

 

 ――――――その期待は蒼奇と十六夜と飛鳥の三人によって打ち砕かれる。

 

「だ、駄目ですよ!皆さんはコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

「そういうことじゃねぇよ。この喧嘩はコイツらが売った。そして奴らが買った。なのに俺達が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

「僕らが手を出したら喧嘩を売った彼女たちに失礼だよ」

「あら、分かっているじゃない」

「………ああもう、好きにしてください」

 

 すでに四人の扱いに慣れたのか、はたまた疲れただけなのかはわからないが諦めたような表情で返答する黒ウサギであった。

 

 

 

 

 

 とりあえず状況が落ち着き、ジンをコミュニティの拠点に帰すと黒ウサギに案内されるままにある場所に向かっていた。

 すると、その道中で蒼奇は耀に話しかけられた。

 

「………館野さん」

「どうかした?耀さん。それと蒼奇でいいよ」

「わかった。私もさんはつけなくてもいいよ。………それで、フードの中にいるのはなに?」

 

 そういわれ、一瞬何のことを言っているのか理解できなかった蒼奇だったが、すぐにフードの中にいるネロのことだと思いつく。

 そのことを理解した蒼奇は返答する。

 

「スライムだよ。ネロっていうんだけど………触ってみる?」

「いいの?」

「たぶん平気だよ。もし不安なら本人に聞いて」

 

 そういって、ネロを耀に渡す蒼奇。

 

「………っ!」

 

 ネロは彼女に大人しく触らせ、耀は触った瞬間、ネロの触感に驚いたのか小さく息を漏らす。その後は何も言わずにネロの触り心地に夢中のようだ。

 そして、さらに少し進んだところで飛鳥が声を上げる。

 

「桜の木………では無いわね。真夏になっても咲いているはずが無いものね」

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜がいてもおかしくはないだろ」

「………?今は秋だったと思うけど」

「ああ、やっぱりみんな違うんだ。ちなみに僕は冬」

 

 三人はそれぞれのかみ合わない話を聞いて首をかしげている。

 そんな中、十六夜は蒼奇の発言に疑問を持ち、問いかける。

 

「おい蒼奇。やっぱりってなんだ?」

「たぶんみんなはそれぞれ違う世界の違う時間軸から来てるんだよ。なんていったかな?たしか………立体交差並行世界論………だっけ?」

「はい。そうでございますよ。蒼奇さんのいうとおり皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。時間以外にも歴史や文化、生態系も所々違うはずです」

「へぇ………それでなんで蒼奇は知ってたんだ?」

「………恩恵の関係上と趣味と娯楽………かな?」

 

 そうこうして店についた一行。商店の旗には蒼い生地に互いが向かい合う二柱の女神像が記されている。

 ここが目的地のコミュニティ〝サウザンドアイズ〟の店舗のようだ。

 しかし、店の前に店員と思しき一人の女性がおり、店の暖簾を下ろしている光景が目に入ってきた。

 そのことを認識した黒ウサギは店に滑り込み、

 

「まっ」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 ………ストップの声すら許されなかった。入り込む隙もなく断られてしまった。

 

「なんて商売っ気の無い店なのかしら」

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

「出禁!?これだけで出禁とか御客様を舐めすぎでございますよ!?」

 

 かなり厳しい決まりがあるのか、それとも〝ノーネーム〟に対する嫌がらせなのか。

 そんな様子を面白そうに観察しながら見守る蒼奇。

 

「なるほど、〝箱庭の貴族〟であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

 女性店員がそのようなことを言う。それについて十六夜が返答した。

 

「俺達は〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」

「ほほう。ではどこの〝ノーネーム〟様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 そこで、蒼奇の表情が若干歪んだ。その理由は店内からここに近づいてくる気配を感じ取ったせいだろう。

 

「その………あの………私達に、旗印はありま」

「いぃぃぃやほぉぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」

「きゃあーーーー………………!」

 

 店内から飛んできた何かと共に黒ウサギは吹っ飛んでいった。そのまま道の脇にあった水路へと落ちる。

 

「………おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?ならオレも別バージョンで是非」

「あっ、じゃあ僕にも」

「ありません」

「なんなら有料でも」

「やりません」

「対価がエリクサーでもだめ?」

「………やりません」

 

 その光景に対して十六夜と蒼奇がどうにかドッキリサービスをしてほしいとお願いするが、断られてしまう。

 ………蒼奇にエリクサーを対価として提示された際に多少悩む素振りを見せたが………。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴方がこんな下層に!?」

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!やっぱりウサギは触り心地が違うのぅ!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

 一見、少女にしか見えない白夜叉と呼ばれた人物は黒ウサギの胸に顔をうずめながらセクハラを続ける。

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

 しかし、一度話を聞いてもらうためなのか純粋に離れてほしかっただけなのかはわからないが、黒ウサギが白夜叉を四人の方へと放り投げてきた。

 そして、勢いのままにくるくると縦回転しながら幼女が向かってくるのを十六夜が

 

「蒼奇、パス」

「ゴバァ!」

「は?」

 

 その言葉の通り十六夜が幼女を蒼奇の方に向かって、蹴る。

 蒼奇は特に慌てる様子もなく、普通に、

 

「せいっ」

 

 叩き落した。

 影を触手のように伸ばし、上から下へと振り下ろして彼女を叩き落とした。

 

「ゴペッ!」

「おいおい蒼奇、かわいそうだろ?」

「え?コイツを蹴ってよこしたお前がそれを言うの?」

「お、おんしら、飛んできた初対面の美少女にこんなことをするとは何様だ!」

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

「おいおい十六夜。もう少し優しい言葉をかけてあげなよ。あ、僕は蒼奇様だよ。仲良くしようねセクハラ幼女」

 

 ヤハハと笑う十六夜。

 薄く笑みを浮かべる蒼奇。

 周りが少々呆気にとられているうちに、耀から気持ちよかったのか、すっかりとろけていたネロを返してもらい、フードに突っ込む蒼奇。

 

「貴女はこの店の人?」

 

 この状況からいち早く復帰した飛鳥が思い出したかのように話しかける。

 

「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」

 

 何処までも冷静な声で女性店員が釘を刺す。

 こいつがオーナーかよ終わってんなこの店、と心の中で溜息を吐く蒼奇。

 そして、女性店員に目を向けて声をかける。

 

「これがオーナーかぁ………実力とか実績よりも性格で選んだほうがいいんじゃないの、店員さん?」

「………それは言わないでください」

「………あっ(察し)。………今度、胃薬持ってくるよ」

「………はい、ありがとうございます」

 

 やはり彼女も苦労しているようで、胃薬を渡すというだけで切実そうな声で礼を告げる女性店員。その様子を見てさらに溜息を吐きたくなる蒼奇であった。

 

「うう………まさか私まで濡れる事になるなんて」

「因果応報………かな」

 

 服を搾りながら歩いてくる黒ウサギ。耀の言う通りだと召喚された他の三人も同意するように頷いていた。

 

「まぁ、立ち話もなんじゃ、店内で話そうかの」

「よろしいのですか?〝ノーネーム〟は規則では」

「〝ノーネーム〟と分かっていながら名を尋ねた店員に対する侘びだ。いいから入れてやれ」

 

 店内には入れることに安堵する者たちと嫌そうな顔をする者が若干一名いる中、一行は入店した。

 

 

 

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