人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

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ラストエンブリオ導入話です!
タイトルの「???」に入る言葉は後書きに書いてます。一応三文字。
それでは本編どうぞ!


プロローグ~人外の介入~
人外の???の人生


 ―――とある屋上。ゴールデンウィークに突入する少し前で多くの人は仕事に追われている雨が降る正午過ぎに、傘を差した一人の少年とも呼べる年代の男がいた。髪は首の中程まであり、前髪で目が隠れていて髪の隙間から辛うじて見える程度だ。

 

「………あー死にたい……」

 

 少年はなぜか自殺願望を口にしながら屋上にある柵の前で空を見上げる。

 少年の名前は深水(ふかみ) 碧生(あおい)

 その正体は、とある事情で人間に転生()()()()()館野蒼奇だ。その事情というのもセリカが関係しているのだが。

 

 

 

 

 

 それは、とある昼下がり。神や神話生物の住まう空間に男性と少女の姿があった。セリカによってこの世界に連れてこられた蒼奇と彼に隷属しているペストだ。

 そしてもう一人。その場にいる者がいた。それは蒼奇をこの世界にぶち込んだ張本人?である『世界の管理者』ことセリカだ。

 

「…はー、この紅茶、おいしいねー」

「そうだろうそうだろう。出口はあちらです」

「ナチュラルに帰そうとしないでくれる?」

 

 紅茶を飲んでいるセリカに対して出口を指さして帰れと言ってみせる蒼奇。

 

「だって、お前が来るとろくなことねえもん。いや来なくてもろくなことねえけど」

「酷いね!?そんな毎回毎回問題起こしてないよ!」

「でもそれなりの頻度で起こしてるよな?具体的には一日おきぐらいに」

「…はい」

 

 ジト目でいわれてなにも返せなくなるセリカ。

 

「それで、一応聞くが何の用だ?」

「それはね―――」

 

 そういってセリカはまた紅茶を一口飲む。

 そして、

 

「「…えっ?」」

 

 蒼奇とペストの足元の床が消えた。まるで落とし穴のようにぽっかりと穴が空いた。

 

「ってなにこれ!?ギフト使えねえし!!?」

「ちょっ!?どうにかしなさいよ!?」

「無理無理無理!?今の僕は超無力です!?」

「じゃあ初のちゃんとした人生楽しんでねえー!!」

「「いつか殺す!!」」

 

 二人はなすすべもなく落ちていく。セリカに対しての恨み口をはいて。

 

 

 

 

 

 ―――とある病院。

 

「オギャアアアアァァァァ!!(くたばれクソロリイイィィ!!)」

「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」

 

 生まれたと同時に自身を落としたロリに恨みを吐いて早十五年が経った。

 そんな彼の両親は大企業の社長だったが、それも彼が八つの時に亡くなっている。

 そんな風に彼が黄昏ていると、彼の後ろから碧生と同じぐらいの年齢の少女が姿を見せた。

 

「…()()。こんなところでサボってないで仕事をしてください。それに学校はどうしたんですか」

「…ありゃー、見つかっちゃった?随分と仕事熱心だねー天衣(あい)ちゃん」

「ちゃん付で呼ばないでください。いえ、呼んでも構いませんが、その場合は仕事をしてください」

 

 社長と呼ばれた碧生から天衣ちゃんと呼ばれた少女は表情を変えずに彼へと返答を返す。

 

「えっとー、彼は?彼。次期社長の」

「佐藤さんですか?今分担してあなたを探していたところですよ。私が一番最初に見つけたというだけで」

「ありゃりゃ、逃げ場がないね」

「…飛び降りないでくださいよ?」

 

 少女が碧生を睨む。当然だろう。彼には前科が山ほどある。()()()()という。この男は何度も自ら命を絶っているが、その度に()()()()生還している。

 毒を服用しても、高所から飛び降りようとも、身体を刺されても、必ず生還している。

 そんな人物だからこそ、この場所から飛び降りないように少女は釘を刺したのだ。

 

「いや、さすがに本社から飛び降りて問題起こすほど馬鹿じゃないよ」

「それなら、かまいませんが…」

「あ、そうだ。一つ聞いていい?」

「………なんでしょう?」

 

 少女は身構えた。

 なぜなら、この男がこういう聞き方をするときは大抵ろくでもない目に会っているからだ。

 

「どれくらい俺のことを探してたの?俺ってば朝からずーっとここにいたからさー。そんな騒ぎ知らないんだよねー」

「…」

 

 少女は答えなかった。それは自身の返答は彼を喜ばせてしまうものだと経験的に理解しているからだ。

 

「えっ?まさか俺がいないと気が付いてずっと探してたの?わーご苦労様だねー」

「……」

「いやー本当お疲れさまー。でも俺ずっとここにいたんだよね。ワーワーと騒いでる君らの頭上に」

「………」

「気付かなかったんだねー。あ、もしかして雨が降ってるから外にはいないとでも思った?」

「…………」

 

 少女はまだ口を開かない。だが、少しだけ体が震えているようにも見える。

 

「…ねえ、どんな気持ち?ねえねえ、今どんな気持ち?」

「……うわあああぁぁぁん!!」

 

 少年からの煽りに耐え切れなくなった少女は目に涙を浮かべ始め、最後には泣き始めてその場を走り去っていってしまった。

 

「…マジでメンタル弱すぎ。なあ、お前もそう思わないか。佐藤」

 

 少年が出入り口の方に声をかけると一人の二十代半ばほどの男性が姿を見せる。

 

「そうだな。だが、アンタがいじめすぎるのも問題じゃないのか?」

 

 男性、佐藤は姿を現すなり、彼の意見に同意する一方、批判する。

 その言葉を聞いた碧生は口を尖らせ、反論した。

 

「俺のは天衣ちゃんのメンタルを鍛えるためですー。この程度耐えきれないのはさすがにダメだとね、俺も思うんですよ、はい!」

「あーはいはい。お前の言い分はわかったよ。だが、あれでもまだ会社にも入っていない見習いだ。大目に見てやれよ。それにあいつ、お前のこと慕ってんだぞ」

「へいへい…。まったく、可愛いし優秀だからこそ、教育は早めがいいというのに。それで、今日の予定は?」

「おう。今日は外に行くようなもんは入ってない。デスクワークが大半だ。だが…」

「…えっ、なに?そこで切んないでよ、怖いから」

 

 碧生はお茶らけた感じで続きを促す。

 

「…爺さんが亡くなったらしい」

「………」

 

 その言葉を聞いた碧生は表情を暗くする。亡くなった男性には彼が両親を亡くした際に多少面倒を見てくれた上、大変気にかけてくれた人物だった。

 彼が家族に近い感情を抱いていた人が亡くなった。

 

「…葬儀はいつだ?」

「ゴールデンウィーク中にやるらしい。お前にもぜひ出席してほしいと」

「その日の予定は?」

「さっき全部空けてきた」

「悪いな。先方の方には「もうこっちから謝罪した。学校の方にも連絡は遅れたが今日は欠席とも伝えた」…ワーオ、超優秀」

 

 佐藤の手際の良さに驚く碧生。

 

「だから俺を社長秘書にした上に次期社長に決めたんだろ?」

「は?なわけねえじゃん」

「………は?」

「確かにお前は優秀だ。だがお前以上に優秀なやつなんざ山ほどいる。しかし、俺はお前を選んだ。その理由は、お前に()()がなかったからだ。お前ほど欲のない人間なんざ世界を探しても滅多にいねえ。だからこそ確実な信頼関係を築ける。そう判断したからだ」

「…………な、何か照れるな…」

「うわっキモッ」

「………すみません。一発殴ってもよろしいでしょうか社長殿?」

「百年後ならいいよ。さーて仕事仕事♪」

 

 そういって佐藤の横を通り過ぎようとするが、

 

「オラァッ!」

 

 佐藤が殴りかかってくるも、

 

「ヒョイっと」

 

 いとも簡単に避けられて素通りされてしまった。そして佐藤の拳は壁を思いっきり殴った。

 

「うぐああぁぁ…!!?」

「じゃあ、またあとでなーさ・と・う・くん♪」

「お、俺は、さふじだ…さとうじゃ、ねえぇ……!!」

 

 痛みに悶える佐藤を放置してさっさと自身の執務室へと向かった。

 そんなこんなで館野蒼奇は現在、名前は深水碧生と変わり、大企業の社長をやって大成功を収めている。

 

 

 

 

 

 そして葬式当日。碧生は喪服に身を包み出席し、男性の家族へあいさつした。

 

「…この度は大変お悔やみ申し上げます」

「…ああ、碧生君か。大きくなったね」

「はい。最近顔を見せることがかなわず、申し訳ありません」

「そんな言葉遣いしなくても、普通でいいよ。昔みたいにさ。誰も咎めないから」

「…それなら、そうさせてもらうよ。おじさん」

 

 男性の長男にそういわれて、言葉と表情を崩す。

 

「やっぱり、年齢のせい?」

「…そうだね」

「……失礼かもしれないけど、最後は苦しんでなかった?」

 

 少し心配そうな表情で問う。

 

「…いや、そんなことはなかったよ。とても、安らかに亡くなったよ」

「…そっか。ありがとう。それでは、またあとで」

「あっ、待ってくれ」

「はい?」

「君宛に遺書が、あるんだ」

「…俺に?」

「ああ」

 

 男性はそう言って立ち上がり近くに置いてあった鞄から一枚の封筒を出して渡してくる。

 

「中身は?」

「流石に見てないよ。父にも釘を刺されてたから」

「…じゃあ後で、一人の時に読ませてもらいます」

「ああ。そうしてくれ」

「それでは、あとで」

 

 碧生は封筒を懐にしまい、遺族のもとを一度立ち去る。そして、葬儀場の人気のない休憩スペースで遺書を開いた。

 

『碧生君。君は長い話は嫌いだろうから先に用件だけ書いておくよ。それで用件というのが、実は君に私が出資していた孤児院の出資を引き継いでもらえないかというものだ。ここに住所を記しておく。そして、その孤児院の名は―――』

 

 用件だけは先に書いておいてそれ以降は思い出話というか世間話というかなんとも感慨深い懐かしいものばかりだった。今まで会って話せなかった分を今ここで埋めようとするほどに書いてあった。

 

「それにしても、カナリアファミリーホーム、ねえ…」

 

 その名前を口に出して、少し考える。

 

「はてさて、偶然か必然か。はたまた俺に介入するなり好きにしろとでもセリカは言いたいのか…。いやアイツの場合は絶対巻き込まれろって言ってるな」

 

 碧生、元人外はそんなことをこぼした。

 

「まあ、乗ってやるさ。こんな人生なら穏やかに会社経営するよりはハチャメチャで殺伐としてた方がいい」

 

 それから少しして葬儀が始まり、火事場までは同行せずに軽く遺族に挨拶して葬儀場を後にした。

 

「―――というわけで佐藤、用事ができた」

『…いや、というわけって端折られてもわからないんだが?』

「なにッ!?画面上ならこれでどうにかなるんじゃないのか!?」

『画面上ってなんだよ?』

「いや、悪い。なんでもない。ただの戯言だ」

 

 多少メタい発言をしたが、すぐに訂正した。

 

「まあ、遺書をもらってな。それの関係だと言っておく」

『…わかった。遅くなんなよ』

「あいよ。お母さん」

『誰がお母さ(プッ』

 

 これ以上何か言われる前に電話を切る。

 

「さて、向かうか」

 

 遺書を確認して歩き始める。

 

「あ、こっちじゃねえ。逆だ」

 

 が、すぐに180度体を反転させた。

 

 

 

 

 

 ―――カナリアファミリーホーム・正面玄関。

 結局その後も道に迷い電車に間に合わなかったためにタクシーを使って近くまでやってきた。

 

「…ここ、だよな?」

 

 傘を差しながら建物を見上げる。

 

「…うん。すげー不安。でもまあ、尻込みしてても仕方ねえし、入るか」

 

 意を決して、ドアを開けて中へと入った。

 すると彼の眼には、ドタバタと慌ただしくしてる多くの少年少女の姿が目に入った。

 

「すまない。そこな少年」

「えっ?…アンタ誰だ?」

「ああ、出資の話で少し。ここの責任者と話がしたいんだが」

「…は?出資?」

「そうだ。それで、いるのか?」

「あ、ああ!ついてきてください」

 

 出資についてと聞くと少年はきょとんとしたが、碧生が声をかけるとすぐに責任者のもとへ案内してくれた。道中、動き回っていた子供たちを一旦追い払っていたが。

 

「あ、あの人です」

「そうか。ありがとう」

 

 案内された応接間には一人の男性と碧生が見知った少女がいた。

 

「あん?焰、そいつは誰だ?」

「げっ…な、何であなたが…?」

「あれ?彩鳥?…あちゃー、じゃあ先を越されちゃったか。…まあ、関係ないが。つか『げっ』ってなんだ、『げっ』って」

 

 まずったなーといって頭をかく碧生。しかしすぐに名刺を取り出し、男性、釈天に差し出した。

 

「改めて、ディープブルーコーポレーション現社長の深水碧生だ。ここにはある人の遺志を継いできた」

「ディープブルーの社長だ?なんでそんな大物がここに?」

「言っただろ。ある人の遺志だと。とりあえずこれが契約書だ。んでこっちが遺書。遺書の方は確認したいならしてくれ」

「ちょっと待って!私の方が先に―――」

「興味ない」

「「なっ…!?」」

 

 碧生が発した一言により焰と彩鳥は唖然とした。

 

 

「お前らがどういう話をして、どういう契約をしたかなんて、俺は微塵も興味はない。俺は、遺書に書かれてあったことを実行するだけだ。たとえその契約で彩鳥んとこの会社がかなりの利益を生み出すとしても関係ない。俺はそれに関与するつもりは一切ない。ただ金を出す。たとえそれを生活費や維持費、娯楽、教育費とかに使われたとしたってどうでもいい。心底どうでもいい。俺は俺の自己満足と俺が受けた恩を返すためだけにここに出資すると決めたんだ。…さて、長々と喋ったが、ここまで聞いて言いたいことはあるか、そこの二人」

 

 

「「…」」

「…本当に金を出すだけなんだな?」

「ああ。別に永久駆動ナノマシンなんていう代物、他者の技術を横取りするなんていう下衆なことはしない」

「…ッ!?…わかっていて、彼ならできるとわかっていてなお、興味がないんですか!?」

「ああ。…いや、彼が作った完成品は見てみたいと感じるが、所詮その程度だ。この行為は俺の自己満足だ。俺を知ってるならわかるだろ、彩鳥」

「……………ハァ。そうでしたね。貴方はそういう人でした。一度決めたら曲げずに、我を通す。なんでも自らの手で作り上げなければ意味がないと考えるんでしたね」

「そのとーり!よくわかってんじゃん♪」

 

 彩鳥の言葉に嬉しそうに笑う碧生。

 

「…ほら、書いたぞ」

「どうもー♪」

「あっおい!?御門のオッサン!?」

「いいんだよ。契約書には不自然な点はない。それどころか探すのが難しいレベルだ。なんなら見るか?」

「あ、ああ!」

 

 焰は釈天に促され、契約書を見る。それと後ろから覗くように彩鳥も見る。

 

「「…は?」」

 

 が、すぐに自身の目を疑った。

 契約書にはたった一文、

 

 

―――ディープブルーコーポレーションはカナリアファミリーホームが望んだ額の出資を可能な限り行う。―――

 

 

 とだけ書かれていたのだから。

 

「え?こんだけ?」

「だって、元から出資すんのは決めてたし、言っちゃえば様式美だからな、これ」

 

 そして悪戯が成功した子供のようにケラケラと笑った。

 

「んじゃまあ、これからよろしく焰君」

「ああ碧生さん」

「年下だからってさん付けなんざしなくていいさ。普通に呼んでくれ普通に」

「え、あ、ああ。わかった」

「よろしい♪んじゃ、今回はこれでお暇させてもらうかな?」

「ああ。じゃあな」

「おう。…っと、忘れてた。これ、連絡先。渡しておくよ。何かあったら連絡くれ」

 

 そういって碧生は紙を取り出して連絡先を書き込み焰に手渡す。

 

「それと彩鳥。次の練習、覚えておけよ?」

「ウッ…。さっきの事なら根に持たないでくださいよ…」

「………クハハッ!冗談だ!そのかわいい顔を困らせたいだけだ!」

「なっ…!?」

 

 羞恥と怒りで顔を赤く染める彩鳥。それを見て満足したのか、さっさと玄関から消えていく碧生。

 

「…なあ、彩鳥お嬢様は碧生とどんな関係なんだ?今の感じだと知り合いなんだろ?」

「…そう、ですね。幼馴染、という言葉が一番いいのかもしれませんね。小さいころから交流があったので」

「へえ」

「ちなみに、あの人なら永久駆動ナノマシンを作れるとも考えてました」

「は…?え、じゃあなんで俺に?」

「決まってますよ。さっきと同じで『興味ない』んです。彼は自由すぎるので…。それに『もし作るなら完成されたものを超えなきゃ気が済まない』とも」

「…あれ?ああ見えてかなりすごい奴?」

「まず十五歳で大企業のCEOってこと自体すごいんですよ。そのうえ彼の行動は突飛すぎて他の誰も予想できないので他企業がついていけてませんし。それに彼がCEOになったのは両親が亡くなってすぐなので…八歳の頃から経営して未だに企業が成長し続けているんですよ」

「うわ、マジかよ…」

 

 彩鳥は呆れた表情で答える。

 

「何者だよ、あの人…?」

「さあ?本人に聞いたらどうです?案外答えてくれるかもしれませんよ」

「やめとく」

 

 結局、碧生についてはわからず仕舞いで終わった。

 やはりこの世界でも元人外は人外なのかもしれない。




とりあえず導入話!
タイトルの「???」は「初めて」が入ります。
前世は「人外生」だったということで初めてのちゃんとした人生です。
というわけでやれるとこまで頑張ってみようと思っています!読んでくださっている読者の皆さん、これからもよろしくお願いします!
次も一週間以内に投稿できるように頑張ります!
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