人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

51 / 68
問題児の帰還
会社&拉致


 ―――ディープブルーコーポレーション社屋・最上階社長室。

 

「…佐藤。これで今日やるべきもんは終わりか?」

「ああ、終わりだ。…にしても相変わらず早えな。三日分の書類を三時間で全部処理するか、普通?」

 

 社長室では現在、社長である碧生と社長秘書で次期社長の佐藤が書類整理のためにそこにいた。

 

「まあ、普通は無理だな。なあ、俺」

「ああ、そうだな。俺」

「こんなことができなきゃ無理だろ、俺」

「「「………ややこしいな、これ」」」

 

 三人の碧生が全く同じことを言う。

 そこには複数の碧生が存在し、それぞれが書類の整理をしていたようだ。もちろんこの現象は〝青鬼〟の〝個群奮闘〟によるものだ。

 それは碧生はここに転生する際にセリカからいくつか特典を与えられていたからだ。

 その一つに〝青鬼〟の〝不滅〟を除く恩恵がある。

 そして、他にも―――

 

「マスター。客が来ているわよ」

「…ペストか。客ってのは?」

 

 ―――一部の召喚獣たち()α()がついてきている。

 その一人であるペストだが、現在は碧生の会社にいる。

 

「彩鳥よ」

「…嫌な予感しかしねえ…。とりあえずペスト、指輪になってくれ」

 

 碧生がそうペストに命じると彼女はそれに素直に従った。

 

「これで魔術で隠蔽して、さらにその上から擬態して、っと。よし完璧!佐藤。他の俺は置いていくから後は頼んだ」

「ああ。わかった」

「お、お前…自ら犠牲に………?」

「なんていう勇者なんだ………。俺たちはお前を尊敬するぜ!」

「お、そうか?何なら変わってやるが、俺ら?」

「「遠慮するぜ、俺」」

「だと思った。じゃ、逝ってくる」

「「逝ってらっしゃい」」

 

 そういって社長室を出て、エレベーターに乗り一階へと向かう。

 

「それにしても、何度見ても驚くな」

『………?何が?』

「お前の成長だ。肉体的な」

『………それは、私自身が一番驚いているわ。まさか肉体が年を重ねるなんて……』

 

 ペストはこの世界に来て、肉体年齢が成長しているのだ。以前は十二歳だったが、今は十六歳ほどにまで成長している。髪も少し長くなり、背も伸び、体もより女性的なものへ変化していた。そのため服も会社に合ったもの、以前のような黒いワンピースではなく、パンツタイプの女性用スーツを身に纏っていた。

 

「とりあえず素直に喜んでおけよ。セリカも俺の修正した正史とは多少違いがあるとも言っていたし」

 

 そう。碧生が転生したこの世界は蒼奇のいた世界とは似て異なる世界、とのことらしい。まだ何が違うのかは碧生も調べ切れていないが、何かしらの誤差があるのだろうとは考えている。だが、館野蒼奇が存在し、正史を修正したのは間違いないと調査でわかっていた。

 

「さて、もうすぐだからしばらく黙ってろよ?」

『ええ。それぐらいわかってるわ。でも、私の声は他の人には聞こえないんでしょ?』

「まあ、そうだが………俺が驚く」

『……気を付けるわ』

 

 一階が近づいてきてペストに喋らないように釘を刺す。

 そしてエレベーターを降り、エントランスを通過して前に停められている車にまっすぐ向かう。

 

「こんにちは、彩鳥。用はなんだ?」

「…とりあえず、乗ってください。少々行くところがあるのでその道中で話します」

「………?それって俺が行く必要は…まあいいや」

 

 何か言いたそうにしながらも渋々従って車に乗り込む碧生。

 

「で、話h(カチャッ)…カチャ?」

 

 碧生が今した音を疑問に思い、音のした場所、自身の手首を見た。………正確には見ようとした。

 

「……手錠、外してくれません?俺は釈天と違って罪を犯していないはずなんだが?」

「釈天さんも犯罪はしていませんよ。犯罪は。それと諸事情で貴方は目的地に着くまでそのままですよ」

「はいはい。じゃあこれ返すよ」

「………はい?」

 

 碧生の手にはたった今つけたはずの手錠が外されて彩鳥の方へ放り投げられた。

 

「………プリトゥ、手伝ってください!」

「はい」

「うわなにをするやめr」

 

 

 

 

 

 彩鳥は移動中、焰へと連絡を取っている。

 

「経理報告書が云々、というような妄言が………まさか、まだ完成していないのですか!?」

『………げ、』

「げ、ってげってなんですか!?今回データではなく、手書きにしたいから待ってほしいと言い出したのは先輩ではないですか………!?」

『南無三』

「神に頼んでも経理は動きませんッ!」

「モガーッ!!?」

『ん?今なんか「気のせいです。それより先輩を信じた私が馬鹿でした………!!先輩は今、在宅なのですね?」え?いやまあ、そうだけど』

「わかりました。もうすぐそちらに着きますので、それから今後についてお話ししましょう。―――ああ、そうでした。最近購入したという贅沢品についても、話を聞こうと思っていたところですので!ご覚悟ください!」

 

 そういって電話を切る彩鳥。

 

「まったく先輩は!」

「もがもー!?(これをほどけー!?)」

「うるさいッ!!」

「………(´・ω・`)」

 

 その後すぐに車が停車し、着いたことを知らせるがすぐに発進した。

 

「プリトゥ!追いつけますね!?」

「はい」

「もごもごー(安全運転でー)」

「「………………………」」

 

 諦めた表情で運転手であるプリトゥに通じないと思いながらも注意する碧生。

 そんな彼を可哀そうな目で見る加害者二人。

 

「口だけでも解放して差し上げてはどうでしょうか」

「……そうですね。これはさすがにやりすぎでしたね…」

 

 彩鳥はそういって碧生の口に貼ってあったテープを剥がす。

 

「どうも」

「いえ……。すみません、逃がさないためにもこうするのが手っ取り早かったので……」

 

 そうして申し訳なさそうにする彩鳥。

 

「いや、申し訳なさそうにするなら最初からしないでほしいんだけど……」

「うっ………」

「………!見えました!」

 

 それにより速度をあげた車は釈天の運転する車を追い上げて、遮るように割り込んだ。

 

「………荒いよ、お前さん」

「申し訳ありません」

 

 危ない運転に文句を言う碧生。現に今のだけで三回ほど頭をぶつけている。

 

「………どうも、彩鳥お嬢様。まだ一時間たってないですよ」

「今完成していない経理報告書が一時間後に完成しているとは思えません。何かしらの理由があると推測されます。………話していただけますね?」

 

 ビチビチビチビチッ!!

 

「スミマセン、彩鳥お嬢様。こっそり経費で購入した孤児院の備品をまだ計上していません。具体的に言うと、今の大型テレビとか」

 

 ビッチンビッチンビッチンッ!!

 

「………それで?」

「全ては(ビッチン)お茶の間の安らぎを求めたこの身の(ビチビチ)不徳。年少組に笑顔を、と思って魔がさしただけのこと。(バチン)此処はお嬢様の(ビチビチビチッビチビチッ!)ああもうさっきからうっせえなあ!?何の音だよこれ!?」

「へーるぷ!へーるぷ!へーるぷみー!つかマジでさっさとほどけよ!!」

「「「………は?」」」

 

 焰、鈴華、釈天の三人は音の方を確認すると車の向こう側で何かが一生懸命跳ねていた。その様子は陸に打ち上げられた魚が飛び跳ねているかのようだった。

 それはよく見ると自分たちのもう一人の出資者のようにも見えたが、その体はいつもと違い、簀巻きにされていた。

 

「…ああ、忘れていました。プリトゥ。解いてあげてください」

「はい」

「遅い!ずっと待ってたからな!?これでも一応社長!俺社長!!仕事を終わらせたと思ったら拉致されるってなんだ!?しかも簀巻きで!!」

「碧生さんは面倒だと言って逃げると思ったので」

「事情さえ話せば逃げねえよ!?」

「「「「「え………?」」」」」

 

 その場にいた全員が疑問の声を上げた。

 

「喧嘩売ってんだな?そうなんだな?言い値で買ってやるからさ、みじん切り、輪切り、ミンチ。好きなの選べよお前ら」

「選択肢が全て選択死な件について!?」

「知るか。それとだれがうまいこと言えと言った、鈴華」

「お、落ち着いてください。私が悪かったです…。事情も説明せずに強引に連れてきてしまって、申し訳ありません」

「………………………んー、まあいいか。そんで?焰はなんて言おうとしてたんだ?」

「あっ」

「げっ」

 

 碧生によって話を戻された焰は焦った声を、彩鳥は思い出したといったかのような声をそれぞれあげた。

 そこからなんやかんやあって焰は彩鳥と鈴華の買い物に付き合うことになった。

 

「よし、じゃあ俺はかえr「何を言ってるんですか、碧生さんも来るんですよ」…はい」

『ふふっ、残念ね。逃げられなくて』

(笑ってんじゃねえよ、ペスト………)

 

 碧生も逃げようとしたがあえなく捕まえられてしまった。仕方なく助手席へと乗り込む。

 

「あ、それと碧生さんも泊まりますので」

「「えっ」」

「はっ?」

「え、でも部屋空いてないよ!?」

「そこら辺のソファでも構いませんよ。碧生さんはどこでも寝られるので」

「いや、まあ、ソファか椅子、それと毛布があれば最高だな。寝場所がコンクリやアスファルト、ましてや火山や氷山とかじゃないだけマシだ」

「「「「「………」」」」」

 

 それを聞いた五人が黙る。そんな中碧生に彩鳥が聞いた。

 

「……経験あるんですか?」

「あるぞ?親がキチってたからな。確か………五歳の頃か?初の北極でのサバイバルは。その後はエベレストの無装備登頂とかやらされたか。………我ながら、よく生きてるな」

 

 碧生の発言で車の中に微妙な空気が車の中に満ちた。




・深水碧生
 主人公。館野蒼奇のの転生体。十七歳。周りには普通の人と認識させている。今のところ釈天にすらバレていない。秘書の佐藤のことをよく「さとう」と呼んでは怒らせている。

・佐藤亮(さふじりょう)
 碧生の秘書で次期社長。二十五歳。彼が高校時代に勧誘されて碧生についてきた。恩恵は所持していないが、彼のいる会社自体がおかしな存在なので奇妙な現象には慣れている。

・ペスト
 蒼奇、もとい碧生と契約した召喚獣。蒼奇と一緒に死んで生活していたが、セリカによって共に転生させられた。今は体が成長して十六歳ほど。

・西郷焰
 碧生の出資している孤児院の年長者でまとめ役。十五歳。よく碧生にからかわれる。

・彩里鈴華
 碧生の出資している孤児院の年長者。十五歳。こちらもよく碧生にからかわれる。

・久藤彩鳥
 碧生の幼馴染な仮面の騎士。十四歳。碧生と手合わせしているが、一般人相手に全力でやるわけにはいかないために手を抜いているが、それでも手も足も出ないほどにボコボコにされている。そしてからかわれる。

・御門釈天
 焰たちの孤児院の管理人で帝釈天。基本駄目男。事件を起こして面倒くさいことに発展させる天才。

・プリトゥ
 釈天に迷惑しているという点で碧生と仲がいい。現在は彩鳥の運転手。

 とりあえず今回出てきた人の紹介を。
 佐藤君の下の名前は今後出てくることはほぼないですので覚えなくても大丈夫です!

 次の投稿も一週間以内、だと思います!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。