人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

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治療&再来

 思いもよらない人物の登場により呆気にとられた西郷焰だが、それは一瞬のことだった。

 ミノタウロスとの間に飛び込んできた逆廻十六夜に、彼は怒声をぶつけた。

 

「お―――遅いッ!!!今まで何してやがったイザ兄ッ!!?」

「ハッ、三年ぶりの第一声がそれか!お前こそ何してるこんな場所で!!?」

「見りゃわかるだろッ!牛畜生に襲われてんだよッ!あと再会は五年ぶりだ、間違えるな馬鹿野郎!」

「あの、お二人さん?こっちは結構切羽詰まってるんで気の抜けるようなことを言わないでくれません?」

 

 碧生の相手している怪物も十六夜の登場で少し動きを止めたが、すぐに攻撃を再開した。

 それを危なげなくあしらう。

 

「オ、ラァッ!!」

 

 剣戟の隙を縫って足の腱を斬って吹き飛ばす碧生。

 そして、血を流しすぎたせいか眩暈がして膝をつく。

 

「俺がこの牛の相手をする!お前らはすぐに逃げろ!」

「逃げるけど、二人の応急処置が先だ!碧生はともかく彩鳥の容体が危ない!」

「おい、俺はともかくってどういうことだよ」

 

 焰の随分な物言いに突っ込む碧生だが、無視される。

 あん?と怪訝そうな声を上げて首だけ振り返る。

 

「………なるほど。聞こえたか、鈴華!」

「あいさ!」

 

 どこからともなく彩里鈴華の声が響く。

 それと同時に、その場から三人の姿が消える。

 

 そして、代わりに一人の姿が現れる。

 

「ん?…置いてかれたのか、お前?」

 

 その姿を見た十六夜が声をかける。

 現れた人物はたった今、鈴華によって連れられて行ったはずの一人、深水碧生だった。

 十六夜の問いかけに対して碧生はミノタウロスから視線を外さずに答えた。

 

「いや、俺は別の俺だ。とりあえず焰たちが消えたから、全力でアイツの相手をしようと思っただけだ」

「……おい、その言い回しは……お前まさか」

「その話はあとだ。今はこいつらを優先する。そっちは任せたぞ、十六夜」

 

 そういって自身が相手していた人に近い方のミノタウロスへと跳びかかっていった。

 

 

 

 

 

 西郷焰と久藤彩鳥、深水碧生は第三学部研究所の部屋の中心に来ていた。

 意識が朦朧としている彩鳥だが、先ほどの現象に驚嘆の声を上げた。

 

「空間移動………!まさか、これを鈴華が………?」

「無理に喋んな。傷が悪化するぞ」

「彩ちゃん、大丈夫!?」

「おい、お前も俺の心配はなしか?」

「って、碧生は彩ちゃんよりも酷いじゃん!?」

 

 彩里鈴華が三人の前に突然姿を現した。

 

「俺は平気だからとりあえず彩鳥を処置してくれ。俺よりも先に怪我をして、血を流しすぎている」

「ああ、わかってる!鈴華!針と消毒液、あと室長の机の下にある箱を取ってくれ!」

「了解!針と消毒液はコレ!?」

 

 碧生が彩鳥の治療を優先してやってほしいと二人に頼む。そこから彼は窓から離れて思考の海に潜る。

 

(焰を襲ったあれは、金牛宮だった。じゃあ、もう片方は?金牛宮は一体だけだ。これがセリカの言っていた正史との違い?向こうは『俺』が相手してるからこっちへは来れないだろうが、一体あいつは何だ?それにこっちにどうして星獣が、そのうえ関係なさそうな似た化け物まで箱庭から飛び出してこんなとこに?けど、片方は見覚えがあり過ぎるから多分俺の予想通りだろう。だが、なぜ―――)

 

 そのようにしばらく目を閉じて考えていると焰の声が聞こえた。

 

「………い。…おい!寝るなよ!?」

「…寝てねえよ。考え事してただけだ。そんで、彩鳥は?」

「一先ず大丈夫だ。次はお前だ。治療するからこっちに―――」

「アホ。こっちに来んのはお前らだ」

 

 そういって三人を引き寄せて自身の後ろに移動させる。

 直後、落雷が研究所の窓を貫いた。

 その光景を目の当たりにして驚いている焰。

 

「わ、悪い。助かった」

「別にいい。それと俺の治療はしなくていい。どうせ死ぬことはないし。それにもう治った」

「は………?」

「俺は自分の体質で寿命以外じゃ死なないんだよ。つか、あれはマズイな」

 

 服は赤く染まり破けているが傷らしきものは見えなくなっている碧生の視線の先には生き物のように蠢き、牛の形をした積乱雲を見つめていた。

 

「………なんてこった。あれじゃ本当に〝天の牡牛〟じゃねえか………!!!なんかねえのか、碧生!!」

「あったら呆然と見つめてないで行動してるさ。今も必死に考えてはいるがな」

「ですよねッ!」

 

 何か手はないかと二人して必死に考える。

 

「………先輩。手紙は届いていませんか?」

「は?」

 

 突然、彩鳥が声を上げた。

 

「手紙です。こんな時の………最後の脱出装置として貴方に届いているはずです………!」

「何でもいいから早くして。マジで怖い」

「黙れ」

「アッハイ」

 

 茶々を入れる碧生にきつい言葉で釘を刺す彩鳥。

 

「絶対に………絶対に届いているはずです。先輩は招かれるだけの功績を与っている。女王ならば、先輩がこんな異例で死ぬようなことを、許すはずがない。最終手段として、招待状を出しているはず………!!!」

「焰。心当たりは?」

「って言われても、」

「招待状だろ?手紙でもなんでも内容が分かればいいんじゃね?それがたとえ封書でもメール、レシートの裏でもでも何でもいい。記憶を探ってくれ。それによって助かる可能性があるっていうんだからな」

「………メール?」

 

 心当たりがあるのかその単語を口にする焰。

 そして、すぐに携帯を取り出して弄り始める。

 焰はようやく見つけたのか携帯を連打している。すると四人を包み込むような極光が周囲を満たした。

 

 

 

 

 

 ―――急転直下、四人の視界は急激に変化した。

 周囲は太陽の光によって明るくなり、大気が頬を擦っていく。当然だろう。ここは、上空4000m地点から自由落下しているのだから。

 そんな中、碧生はこの現象、そして光景を懐かしんでいた。

 

「(あー、懐かしい)」

『ええ、そうね』

「(………………)」

『………なによ』

「(すまん。お前のことすっかり忘れてたわ)」

『………』

「(今度なんか奢るから許して)」

 

 

 




・深水碧生
 本作主人公。十六夜にはバレたけどもうそろそろバラシてもいっかな?って思ってる適当な人。ちなみに現在は四人いる。

・西郷焰
 原作主人公。彩鳥の治療をした。なんでそんな治療ができるのかは知らない。科学者だからしょうがないね!

・逆廻十六夜
 『問題児』の方の主人公。かっこよくて強い人。規格外。

・久藤彩鳥
 怪我をして治療されてた方。女王からの手紙を焰に教えた。

・彩里鈴華
 空間移動で三人を移動させた子。治療に関しては道具を引き寄せて活躍した。羨ましい恩恵の持ち主。

・ペスト
 今までずっと空気だった人。マスターである碧生にすら忘れられる始末。


次回の投稿は少し遅れるかもしれません。
具体的には10月3日以降になると思われます。
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