人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

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頭痛&風呂

「あー………なんとか治せたけど、それでもまだ頭いてぇ………。酷使し過ぎたかなぁ………」

 

 頭を押さえながら大樹の中を歩く碧生。

 彼はつい先ほど破裂した脳の血管の修復が完了したのだ。だがそれでも未だに痛みが消えずにその体はふらついている。

 そこへ住人の避難誘導を終えたペストが合流する。

 

「お疲れ様。マスター」

「ペストもお疲れー………。指輪に戻っといてー………」

 

 彼女は指輪の状態に戻って碧生の中指に嵌まる。

 

「いやーお疲れ様だぜ。青鬼の旦那」

「んあー?あーポロロかー………。まあバレてるよなー」

「おう。それにしてもいつ戻ってきたんだ?それに死んだと聞いていたが」

「死んだよ。完璧にな。だが、こっちだってまさか転生させられるとは思っちゃいねえよ」

「………なんか事情がありそうだな」

「おうよ。詳しくは聞かないでくれ。思い出したくもねぇ。それでわざわざ労いに来たわけじゃねえだろ。どこに行こうとしてたんだ?」

「ちょっと西郷焰に話を聞きにな。青鬼もついてくるか?」

「それならお願いするよ。それと深水碧生だから、今はそっちで呼んでくれ」

「そりゃ失礼した。んじゃこっちだ。病室のどれかにいるはずだからな。あ、それと」

 

 ポロロは前に向けていた体をこちらに向けて、

 

「アンタのおかげで多くの住人が助かった。ありがとう」

 

 あれ?それって最初に言うことじゃね?という言葉は空気を読んで飲み込む碧生。

 それだけ告げて再び先導するポロロ。碧生は頭を押さえながらもそれに追従する。

 いくつかの病室を回り声をかけた。そして病室の一室に入って声を上げる。

 

「失礼。この中に西郷焰はいるか?」

「…?此処にいるぞ」

 

 焰が顔を出す。ポロロは即座に真剣な顔で彼を見た。

 

「そうか。ならすぐに来てくれ。今回のゲームについて話を聞きたい」

「分かった。彩鳥は鈴華を見ていてくれ。もう安定しているから、目を覚ましたら汗でも流してこい。お前も濡れたままじゃ不味いだろ?碧生も頼んだ」

「は、はい」

「了解。目を覚ますまでは一緒にいよう」

 

 そして、焰はポロロについていき、病室を出ていった。

 

「「………」」

 

 そして、二人になった碧生と彩鳥―――周りには他にも怪我人や鈴華もいるが―――はしばらく見つめあう。

 

「館野蒼奇、なんですよね?」

「正しくは前世は、だな。ペスト、出て来い」

「はーい」

 

 そういってペストを出す。

 

「貴方も私と同じように転生していたんですね」

「お前とは全く違う方法と理由でだがな。仮面の騎士」

「………そ、それはやめてください。さすがに恥ずかしいので………。で、ですがなぜ貴方がペストと?彼女はジン=ラッセルと一緒にいるのでは?」

「「………………ん?」」

 

 碧生とペストが首をかしげ、顔を見合わせる。

 

「いや。俺とペストはずっと………んー、ああ、いや。そういうことか」

「ちょっとマスター。どういうことよ?」

「これがズレだろうよ」

「………ああ、そういうこと」

「ちょっと?二人で納得していないで説明を—――」

 

 彩鳥がそこまで言いかけて病室にポロロが慌てて駆け込んでくる。

 

「おい!青、じゃない!深水碧生!ちょっと来い!」

「……ということで、詳しくはペストから聞いてくれ」

「さっさとしろ!」

 

 そういって碧生が説明をペストに丸投げして病室を駆け足で出ていく。そこにはポロロと焰がいた。

 

「どうしたんだよ、ポロロに焰」

「女王が焰と共にご指名だ。すぐに身支度を整えろ」

「………ああ。なるほど。ならまずは風呂か?」

「案内する!」

「場所を教えろ。跳ぶから」

「……ああ、わかった。浴場は貴賓室の近くだ」

 

 それを聞いた瞬間に三人は大浴場の前にいた。

 

「………は?」

「ほら。呆けてねえでさっさと動け。時間は少ないぞ」

 

 突然目の前の景色が変わったことに驚く焰。いや、以前から似た感覚は知っていた。鈴華の物体転移でだ。

 しかし、転移を碧生が行ったことに驚いたのだ。

 だが、それも二人に急かされて考える暇はなかった。

 

 

 

 

 

 ―――〝アンダーウッド〟葉翠の間・大浴場。

目を覚ました鈴華は、脇腹の傷が綺麗に治っていたことを知って驚きを隠せずにいた。

 

「うっそ………絶対に死んだと思ってたよ、私。恩恵って凄いんだね!」

「え、ええ………ですが鈴華。本当になんともないのですか?」

「いやあ、本当に元気元気!ちょっと血が足りないかと思ったけど、それもすぐ治っちゃった!」

 

 不安そうに問いかける彩鳥に対し、両腕を振って健康を誇示する鈴華。

 

「そう。それならよかったわ」

 

 そこでようやく声をかけるペスト。彼女の存在に気づいた鈴華はまた驚く。

 彩鳥はペストのことをどう説明しようかと迷いながらも説明しようとする。

 

「あっ、彼女は、その―――」

「えっ、あれ?あなたは碧生の秘書の………何でここにいるの?」

 

 言葉に詰まりながらも説明しようとしたが、途中で言葉を発した鈴華によって遮られた。

 そして、その彼女の言葉に驚きを隠せないようだった。

 

「………知っているのですか、鈴華」

「えっ。う、うん。碧生と一緒にいるのをたまに見かけるぐらいだけど………」

「そうね。そんな時もあったかしら。まあ、その話はお風呂にでも浸かりながらゆっくりしましょう。さっきの避難誘導で汗をかいてしまって気持ち悪いのよ」

 

 そう促され三人は大樹の大浴場へと足を運んだ。

 大樹を刳り貫き作られたつなぎ目の存在しない大浴場。

 そんな不思議な大浴場に向かっていた彩里鈴華と久藤彩鳥とペスト、そして黒ウサギと案内人のシャロロ=ガンダックは、示し合わせたように脱衣場で鉢合わせした。

 

「おお!黒ウサと………ネコミミさん?」

「にゃはは、シャロロ=ガンダックっすよ異邦人さん。さっきはミノタウロスに立ち向かってくれてありがとうございました。私らだけじゃどうにもならなかったところです」

 

 ネコミミを伏せて頭も下げるシャロロ。そしてすぐに上げたかと思うとペストの方に視線を向ける

 

「………それと、そっちの方もありがとうございました」

「………私は、当然のことをしたまでよ。それにマスターからの命令もあったことだしね。それでも街に多大な被害を出してしまったし………」

「いえいえ、住民を助けていただいただけでも十分っすよ!あなた方のおかげで負傷者こそ多くいましたが奇跡的に死者はいませんでしたし!」

「………そういってもらえるとこっちも報われるわ、シャロロ」

 

 必死にお礼を言う彼女に表情を柔らかくするペスト。

 その後、服を脱ぎながら談笑に花を咲かせる。

 途中、彩鳥がシャロロに襲われる事態が発生したが、大浴場を楽しんでいた。

 

「あの………ペストさん、でございますよね?」

 

 五人が湯殿に浸かっていると黒ウサギがペストへと話しかける。

 

「ええ、そうよ。体は少し成長しているけれど、私はまぎれもなくペストよ」

「そ、そうですよね………。ですがなぜここに?ペストさんはジン坊ちゃんと一緒にいるのでは?」

「………そうね。………どういえばいいのかしら………」

 

 ペストは少し目を閉じて考え始める。しかしそうしていたのはごく短い時間で、すぐに目を開き話し始めた。

 

「まず結論から言うと、現在箱庭にはペストが二人いるはずよ」

「「「えっ?」」」

 

 それを聞いた三人が素っ頓狂な声を上げる。鈴華はペストのことを知らないので、あまり話を飲み込めていない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!それって一体———」

「それをこれから説明するのよ。質問なら終わった後にしてほしいわ。こっちもどう話せばいいのかわからないのだから………」

 

 困惑している四人に対して、困ったような表情で答えるペスト。

 そういわれた四人は一先ずは疑問を飲み込み、彼女の言葉に耳を傾け始めた。

 

「………少しややこしい言い回しになるかもしれないけれど、そこらへんは勘弁してほしいわ。さっき現在箱庭には二人、ペストと呼ばれる存在がいるといったわね。そして今、ジンが従えているペストがある意味では本物なのでしょうね」

「「「「………?」」」」

 

 四人の頭に疑問符が浮かぶが先ほどの前置きがあってか質問するものはだれ一人いなかった。

 

「いま此処に居る私は、館野蒼奇の()()()()()()()()()()()ペストよ。もちろん人格や記憶も完璧に再現されているわ」

「「………っ!?」」

「………」

「………?」

 

 館野蒼奇を知っているシャロロと黒ウサギの二人は驚き、息をのむ。彩鳥は納得がいったという風に目を閉じていた。だが、一方でかの人外、館野蒼奇という存在を知らない鈴華は首をかしげていた。

 ペストは、たった今そのように話を()()()()()。その方が納得させられると思ったからだ。

 なにせあの規格外な人外だ。それならばやりかねないし不可能ではないはずだ、と知っている人なら大抵の者は納得してしまうだろう。

 ならば、そういうことにしてしまおうと考えて他者にもそう信じてもらうことにした。

 

「ただ、こういう風に体が成長したりと差異はあるけれどね。………さて、一先ずはここで話を切りましょうか。質問はあるかしら?」

「………蒼奇さんは生きているのでございますか?」

 

 黒ウサギが震える声で尋ねてきた。

 

「いえ、死んだわ。一度は完璧にね」

「………」

「でも、あなたもそろそろ察しがついているんでしょう、黒ウサギ?」

「………やっぱり、碧生さんが蒼奇さんなんでございますか?ですがあの人は黒ウサギとは会ったことがないと―――」

「あら、事実よ?」

「えっ?」

「私だってあなたみたいなロリウサギは知らないもの。私が知っているのはスタイルの良い黒ウサギであって、そんなに色々なところが小さいロリウサギではないもの」

「屁理屈でございますよッ!?ていうかロリウサギって何でございますかッ!?」

「でも、マスターもおそらく同じ思考よ?頭の中ではきっとそう呼んでいると思うわ」

 

 ギャーギャーとうるさくペストに詰め寄る黒ウサギ。詰め寄られながらもクスクスと笑いながら受け流しているペスト。そんな二人を面白そうに傍から眺める三人がそこにはいた。

 その後五人は大浴場をゆっくりと満喫したのだった。

 ただ一人、騒いでいた黒ウサギは逆上せかけたところを救い上げられていたが。




・深水碧生
 頭の中身がパンクした。迎撃終了直後は顔が血だらけだったが、鬱陶しくてすぐに魔術で水を生み出して洗い流した。前世が館野蒼奇であることをカミングアウト。ついでに女王からお呼ばれした。

・ペスト
 住人の避難を手伝い奇跡的に死者数を0人にした功労者。若干マスターである碧生に似はじめてきた。そのうえポーカーフェイスや嘘はお手の物。質が悪い。バレへんバレへん。

・ポロロ
 偉くて賢い猫人。信頼できる人物。

・西郷焰
 女王からのお呼び出しを受けた人。

・久藤彩鳥
 仮面の騎士。生まれ変わって前世の恥ずかしさを知った人。これからはそれをネタに揶揄わられるでしょうね!

・彩里鈴華
 大怪我をしたけどどうにかなった人。結構やばかったみたいだけどよくわからない。

・シャロロ=ガンダック
 猫妻。碧生とペストに超感謝。それよりも果たして夫は一体誰なんでしょうねぇ?

・黒ウサギ
 ロリになったことをネタに揶揄わられるウサ耳ロリ。そして逆上せかける。仕方ないよね!変化しすぎなんだからッ!


 次話は一週間以内に。
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