熱があるからまさかと思って病院行ったらA型ですねって言われましたよ………。
皆さんも病気に、特にこの時期はインフルも流行ってますから気を付けてください。
それでは本編です。
のどがつらいよぉ………。
焰と女王が談話している最中、碧生はネロを膝に乗せたまま本の中の召喚獣たちを確認していく。
そして、彼の予想通りアステリオス以外にも何体もの召喚獣が契約が切れて解放されているのを確認した。
そのことを理解すると頭を抱える。深水碧生の、もとい館野蒼奇が契約していた召喚獣たちはいずれも強力無比で厄介なギフトや強力な生物特性を持っているものばかりだからだ。
その理由は蒼奇が任されていた世界は他に類を見ないほどにブッ壊れていたからだろう。あの世界はすべてから見放されて荒れに荒れていた。それこそ
本来あるべき時期に殺されるはずがない英雄が殺される。
倒されるべき怪物が殺されるべき英雄に殺されないほどに強力になっている。
本来ならばそこで行われるはずの
殺される因果になっていない英雄にその場では死なないような恩恵が与えられる。
強力になりすぎた怪物を倒す英雄に打倒できるだけの恩恵が与えられる。
そのように行われるはずの修正が彼の任された世界では起きなかった。
だが、だからこそ彼が、館野蒼奇が修正力として必要だった。
そんな狂った世界に。
抑止力として。
修正力として。
剥奪者として。
協力者として。
彼が本来渡されるべき恩恵として、過剰な恩恵を受けたものを打倒するものとして動くことでその世界の歴史を正していた。
その結果、多くの危険な怪物たちが彼の召喚獣として使役された。
だが、いま。
その多くの怪物たちの一部が解放されてしまっている。
「てなわけで帰ってもいいか?」
「突然何を言い出すのかしらね、この馬鹿は?」
急に焰と女王の話に乱入してきては、帰りたいと馬鹿げたことを言い出す碧生。
その理由は単純に解放されている召喚獣を確認すると常人ならば冷や汗を通り越して失神レベルに危険な生物たちが解き放たれており、碧生ですら「あれ?これってヤバくね?」と考えてしまうほどのものだった。
「いや、正直俺がこの場に必要かどうかを考えたら『あれ、これいる意味なくね?』って思っちゃってな」
「あら?私が久しぶりにあなたとお茶をしたいと思っただけじゃダメなのかしら?」
「ダメじゃない。だが、今この場に俺がいるのは不適当だろう。それならお前と焰の二人っきりにした方がよろしいかと」
「………ハァ。じゃあ、話に参加しなくてもいいからここに居なさい。一応あなたにも話があるのだから………」
それなら仕方ないと再び契約書本を開き読み始める碧生。
その様子を見て溜め息を吐きながらも焰に向き直る女王。
「ハァ………。それでどこまで話したんだったかしら?」
「病害や飢餓の治療薬を作った人物は、世界を救うと同等の功績を得るんじゃないかってところだが………」
「ああ、そうだったわね。それに関しては肯定するわ。でも誤解しないで。これは本物の伝説じゃない。伝承が近代化しているだけ。過去の物を最新の霊格で表現してるの。問題の根幹はそこじゃないわ」
彼女の言葉に首を傾げ、疑問符を浮かべる焰。
「伝承の近代化?どういうこと?」
「………その説明をする前に他の客が来たわ」
スッと女王は指で横一文字に空を切る。すると焰の携帯電話から着信音が鳴り始めた。
ピピピ、と簡素な音を鳴らす携帯電話を手に取る。
そんな様子を碧生は特に何もせずに黙って観察していた。
焰は怪訝そうにしながらも律儀に電話に出る。
その電話の声は感覚の鋭い碧生は簡単に聞き取ることができた。
『………よう。久しぶりだな、焰』
―――葛飾区、柴又帝釈天・本堂。
十六夜たち三人は迅速かつ無音で境内に忍び込んだ。
三人は、だ。
残る一人、三神天衣はというとさすがに忍び込むのは、と倫理観が邪魔したので車で留守番をしていた。
その車の中に碧生は転移してきた。
「わっ………ッ!?」
突然自分の横に現れた碧生に驚き、小さく悲鳴を上げる天衣。
碧生はすぐにそれに気づき、謝る。
「あっ、ごめん。気配が分かれてたからどうしたのかと思ってな。留守番か?」
「は、はい………」
「三人は中に………忍び込んだのか」
車窓から外を見えた警備員の姿と感じた気配から正面から堂々と入ったわけではないとすぐに察した。それと同時に彼女が残った訳も。
「それじゃあ、俺も行くとするか。天衣はここで留守番な」
「はい………わかりました………」
申し訳なさそうな声で小さく答える。
気にするなと優しい声で言うと本堂の中へ、三人の気配がする場所へ転移した。
「っと。………どんな状況?」
碧生がそこで見たのは釈天が携帯を片手に持ってどこかに連絡している姿が一番最初に目についた。
「女王に連絡中ってところだ」
「おっと、そういうことなら俺は車で待たせてもらおう」
そういってすぐに踵を返そうとする。
だがしかし、
「まあ待てよ」
あおいは にげられなかった!
十六夜に肩を砕けそうなほど強く掴まれて引き止められてしまう。
「いやー、女王のそばにも俺がいるからさ、さすがにまずいんだわ。女王にバレた際の体裁とか面倒ごととか色々と。話があるなら箱庭にいる方の俺に聞いてくれや」
「………ほう。ということは女王のそばに焰もいるんだな」
「………だから、俺は君のような勘のいいガキは嫌いなんだよ」
「ネタをぶっこんで来てんじゃねえよ。てかその返しをするってことはいるんだな?」
「………本人に聞いてくれ」
それだけ言って今度こそ姿が掻き消える。
「チッ、あの野郎逃げやがったな………」
「おい、十六夜。女王に繋がったが「焰もいるんだろ?わかってるからさっさとよこせ」………あ、ああ」
十六夜は釈天から引っ手繰るように携帯電話を奪い取ると耳に当て何時の調子で挨拶した。
ブツン。
そんな音が焰の持つ携帯電話から聞こえた。
「………おい。なんで切ってんだよ」
「いや、ちょっと反射的に………」
「………」
碧生から何とも言えない目で見られ、バツが悪そうに視線を逸らしている。彼の膝の上にいるネロからも似たような視線を向けられているような気がしてさらにバツが悪くなる焰。
そうしていると再び焰の携帯電話が鳴り響いた。
焰は複雑な表情を浮かべながらも電話に出る。
「………久しぶり、イザ兄」
そう応答し始めて、雑談をする。本当に気にすることのないようなどうでもいい話を。
やれ彩鳥に人生買収されるとか。
やれ御門釈天とかいう穀潰しがどうとか。
やれ十六夜の異世界探索が羨ましいとか。
………おそらくだが彼の憤りは最後の一つに集約されているのだろう。
そして、二人の雑談がようやく一段落したところで女王が声をかける。
「焰。十六夜。主題に入るから、全員の声が入るようにして」
「ん?ああ、分かった」
焰が携帯電話を操作してハンズフリーにする。
女王は少し不思議そうにする。彼女はこのような文明の利器には疎いのだろう。小首を傾げてから十六夜に問いかける。
「………十六夜。聞こえる?」
『ああ、聞こえるぜ女王。三日ぶりだな。コッチは異世界でも感度良好だ』
「そう。よかった。今から事の始まりを話すから、よく聞いてね」
抑揚のない声で淡々と告げる。
そして、彼女は姿勢を変えて足を組む。
「先ず、二人の、いえ三人の誤解を解くわね。今回の一件は、そもそも箱庭は無関係だったのよ」
「どういうことだ?」
「………ちょっと待て。クイーン。それは、つまり………」
女王の言葉に十六夜と焰の二人は問い返す。だが碧生は理解したのか、信じられないといった表情をしている。
「そう。碧生。あなたの考えている通りだと思うわ」
「………碧生。結局、どういうことなんだ?」
「………悪い。俺も正直、飲み込めきれてない。クソッ。俺の世界以外でこんな馬鹿げたことが起きるなんて冗談もほどほどにしてほしい」
碧生は大きく息を吐いて、説明を始める。
「………今回、箱庭は関わってない。ということは、だ。この事象は元から起こる予定、いや必然的なものだったということだ。病害、飢饉、そして謎の赤道を越える台風。これら全部が確定したものだったんだよ」
『………は、』
「はあ!!?」
十六夜は唖然とし、焰は意味が分からず素っ頓狂な声を上げた。
碧生はそれを見聞きし、当然の反応だと心の中で溜息をつきながら考えていた。
「いや、でも、有りえないだろ!」
「そう。ありえない。だが、そんな言葉を使う事象は度々人間によって覆されてきた。今の文明だって昔から見れば絶対にあり得ないと声を荒げる人が大勢いるだろうな。そんな文明を作り上げるに至った発明と技術は人の手によって作り上げられてきたっていうのに。今回もそういうことだろうよ」
『………おい。それってつまり、今回の台風は完全に人為的な物だと言ってるのか?』
「さてな。だが、不可能じゃない。そうだろ。焰。お前はもう、考え付いてるはずだ」
それだけ言って立ち上がり、出口へと向かう。
「って、おい!?どこに行くんだよ!?」
「一人になれる場所。これ以上此処にいると笑っちまいそうだ」
「……………………………は?」
碧生のその物言いに唖然とする焰。そして慌てて声を荒げて問い詰める。
「こんな事態になってんのに楽しんでんのかお前!?馬鹿かッ!?」
「馬鹿で上等。これほど愉快なことはねえだろ。だってよぉ、過去に止まった歯車が再び動き出そうとしてるんだぜ?最高に面白い展開じゃねぇかよ」
「あ、碧生………?何を、言って………?」
「………ハァ………つーまーりー俺が言いたいのは、溜めに溜めた他人の計画を完膚なきまでに、壊して、潰して、覆して、悔しそうに歪む黒幕の表情を偉そうに上から見下して、嘲笑って、侮蔑して、盛大に馬鹿にしてやりたい。そのために会社に連絡を入れて対策を増やして強化する。その間に疑問は消化しておけ。それでもわからなかったならちゃんと教えてやる」
そういって再び出口へ向かい始める。
ドアノブに手をかけたとき、思い出したように声を出す。
「あ、それとクイーン」
「………?何かしら?」
首だけを女王に向けて話しかける。
「昔と同じように、俺はお前を止めるようなことはしない。好きにしろ」
「………そう。わかった」
それだけ言って今度こそ部屋から出ていく碧生。そのまましばらく歩き続ける。
そして、道に人が見え始めたとき。
「………顔が笑ってるわよ。何かいいことでもあったの?」
「………ペストか。ほら、ネロをやるよ」
碧生はペストに見るとすぐにネロを渡す。ネロも特に嫌がる様子もなくペストの腕の中に納まった。
「それといいことはあったよ。最高に面白そうなものが、ね。笑いが抑えられないほどのものだ。楽しみでしょうがないよ」
碧生の顔はペストが今まで見たことがないほどに緩んでいて、歪んでいた。碧生自身もこれほどまでに気分が高揚しているのは何百、何千年ぶりだろうと思い出そうと記憶を漁るほどだった。
その顔には愉快、快感、歓喜などの感情が入り乱れていた。
しかし、何故か彼の顔を見た者は、不思議と得体の知れない、それこそ〝魔王〟と直面した時のような身の毛のよだつ恐怖や不気味な寒気を感じていた………。
・深水碧生
狂った世界の管理人。〝契約書本〟を見て焦り始めた。でも、正直被害がなければ放置でもいっかなとか考えてる自由人。
・ネロ
碧生の膝の上にずっといた。
・クイーン・ハロウィン
お茶をしたい(本音)、話がある(建前)な人。
・西郷焰
十六夜からの電話を反射的に切った。でも、きっと彼は悪くない。
・三神天衣
車で留守番。さすがに不法侵入は彼女の良心が咎めた。
・逆廻十六夜
勘がいい。
・御門釈天
電話係。以上。
・プリトゥ
喋ってないけど傍にいた。
・ペスト
最後に出てきたのは特に意味はない。しいて言えばネロを渡すだけ為に出してみた。
というわけで『ラストエンブリオ』一巻はこれで終わり、次話から二巻の内容に入っていきます。
次話も一週間前後を目安に体調と相談しながら頑張ります。
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