人外召喚士が異世界から来るそうですよ?   作:猫屋敷の召使い

66 / 68
 今日から三日、連続投稿!
 なぜ三日か?それでとりあえず二巻が終わるから!
 では本編どうぞ!


上陸&注意

 クレタ島は台風二十四号の直撃を受けたため、一般人は立ち入り禁止となり、半ば無人となっていた。復旧作業を行っているそうだが、それは真実を隠すための方便だろう。

 いや、一部は事実なのかもしれない。実際に、碧生のところの社員が復旧という名目で調査に来ていた。もちろんその人員たちは一般人では決してない。それにクレタ島の調査は非公表なだけで政府公認の正式な調査隊だ。だが、彼らも調査という調査もしていない。すでに原因もわかっていて、対処法もあるのだ。では何のために彼らがいるのかといえば、人を近づけないためだ。

 ただ、一応は復旧という名目である以上、最低限と言っても過言ではない程度の整備はされていた。折れた木を脇によけてあったり、食材などは腐るものは回収してあったりと人が過ごしやすいようにはしてあった。

 ()人は通りやすいように整備された道を歩いていく。足りない一人の天衣だ。彼女は服装的に適さなかったので船に待機してもらっているようだ。だが、碧生はそれでもいいと言って、本人も納得していた。彼女には彼女なりの役割があるようだ。

 

「出入り禁止の病魔の島ってことか。予想通り、クレタ島はウイルスだらけになってるみたいだな。碧生の会社の人間しかいない」

「どういうことだ?」

「以前、ミノタウロスと戦ったという話はもうしただろ?その時は迷宮と一体化した怪物で知性がない雰囲気だったんだけど、再会したときは僅かだが知性があるように見えた。―――それで気がついたのさ。もしかしたら何かの理由で、ミノタウロスが人間に戻りかけているんじゃないかってな」

 

 ボロボロの道をひたすら進んでいく四人。

 釈天は何故か虫に集られながら、詳しい理由を問う。

 

「なるほど。それがどうしてクレタ島のパンデミックに繋がる?」

「ミノタウロスの伝承の読み解き方を変えてみた結果、かな。ミノタウロスが後天的怪物である場合、その後天性には何か理由があるだ」

「へえ。後天的にねえ。俺のミノタウロスは先天性だったが、アイツは後天性だったのか」

 

 碧生は感心したような声を出しながら寄ってくる虫を釈天の方へとバレないように魔術で誘導する。

 碧生の前世、蒼奇が管理していた世界のアステリオスはどれも先天性で、その内の一体が英雄テセウスによって倒されそうもなくなり、仕方なく回収した存在であった。

 プリトゥは群がる虫に「そんなところに入ってはダメだぞ」と語りかけて諫め、納得したように頷く。

 

「そうか。そういえば聞いたことがあるな。ケルト神群の魔王バロールなどがその代表例になるのだろうか?」

「黒死病で他民族を支配したって奴か。あれも病魔による後天的な神性だな」

 

 まだ整備ができていなかったのか通行の邪魔をしている折れた樹を蹴り飛ばした十六夜は、こんなこともあろうかと用意していた虫よけスプレーを軽くだけ噴射し、釈天に投げて寄越す。

 碧生のせいもあり、大量の虫に集られていた釈天はその施しに感謝しつつ、虫よけスプレーを大量に噴射して言葉を続ける。

 

「あーつまりあれか?病原である二頭の怪牛が召喚されたのは、この地に関係があると考えているわけだな?」

「ああ。もしくはイラク南部とも考えたが、碧生が既に手を回していたみたいだ。箱庭の神様が外界に干渉するには、何かしらの自身と縁がある場所を使わないと駄目なんだろ?候補としてはその二つが有力だったが、そこの人外のおかげで手間が省けた、なッ!」

 

 二本目と三本目の樹を蹴り飛ばす。

 彼なりに気を遣って道の脇に蹴り除けているのだが、聊か衝撃が強すぎたらしい。嵐の中で細々と巣を守っていた蜂たちは怒り狂い、一斉に釈天へ襲い掛かった。

 慌ててヤシの葉で応戦し始めようとした釈天を碧生が抑え、魔術によって蜂たちを鎮静化させて帰るように促した。そんな碧生をありえないといった目で見る三人。

 

「………なんだよ?」

「い、いや………珍しいと思っただけだ」

「単純にこれから戦闘になる可能性が高いからお前には頑張ってもらわないといけないと思ってな。それに勝手に生物殺されて生態系に影響与えられても困るんだよ」

「………戦闘だ?」

 

 十六夜が怪訝な顔して碧生に問う。

 

「ああ。ここに出てくる前に天衣の千里眼でクノッソス宮殿を見てもらったんだが、お前の相棒さんがケガさせられてたからな」

「………へえ?」

 

 十六夜の顔には少しの苛立ちが窺えた。それに気づいた碧生が言葉をつなげる。

 

「別にすぐに命に関わるほどの物でもねえし、一日もありゃあ俺の会社で完治可能なレベルだ。心配するようなことはねえよ。それよりほら見えてきたぞ」

 

 そういった直後に、地中海の空に旋風が巻き起こった。巨大な鳥の影が地上に映し出されて高速で過ぎ去る。

 プリトゥは敵かと身構えたが、十六夜と釈天と碧生の三人は違った。

 十六夜は心配そうに見つめ、釈天は驚いたように天を仰ぎ、碧生は懐かしそうに目を少し細めている。徐々に近づいてきた巨大な影を迎えた釈天は納得がいった様に声を上げた。

 

「お前は………何時かのグリフォンか!いやはや、随分と懐かしいな!」

『お久しぶりです、釈天殿。ご健勝で何より』

 

 旋風を巻き起こして下降してきたのは、彼らの知己でもある、鷲の上半身と獅子の下半身を持つ幻獣〝鷲獅子〟だった。大気を踏みしめるように奔るという鷲獅子は階段を下るかのように足を前後させて舞い降り、恭しく頭を垂れる。

 そこに碧生がゆったりとした歩調で近づき、話しかける。

 

「はいはい。そんなことよりもさっさと怪我を見せやがれ、グリー」

『むっ?そちらは蒼奇殿か?生きておられたか』

 

 グリーは匂いで分かったのか気配で分かったのかは定かではないが碧生のことが蒼奇だとわかったようだった。

 そんな言葉に苦笑交じりで転生してから何度目かわからない説明をする。

 

「お生憎、一度死んで転生させられたよ。それより怪我はどんな感じだ?」

 

 碧生は近づき、後ろ足を覗く。見てみるに骨が砕けているようだった。

 

「こりゃ酷いな。それに残留してる気配………相当厄介な相手みたいだな」

『はい。箱庭の出入り口と思われる場所を玉座の間にて確認したのですが………その先で思わぬ敵と遭遇し、今に至ります。お気を付けください。かなりの手練れ揃いでした』

「だろうな。十六夜、釈天。お前らも気を付けろ。特に釈天、お前は誰を相手にしても勝てる見込みはねえから時間稼ぎに徹しろ。そうすりゃ、俺か黒ウサギあたりが駆けつけられるだろ」

「………そんなにか?」

「ああ。十六夜ですら危ねえかもな」

 

 碧生はグリーの患部に応急手当を施しつつ笑いながら言う。

 

「それなら私もついていった方がいいか?」

 

 プリトゥが言う。それを碧生は手で制す。

 

「死ぬことはないだろうし、向こうには俺もいる。それにこっちで何かが起こらないとも限らない。だから箱庭には十六夜と釈天の二人で行ってくれ」

「わかった」

「それじゃあ、お前らが行ったら、グリーを俺の会社に転移させて治療させる。それでいいな?」

「ああ。頼んだ」

『すまない。恩に着る』

「昔のよしみだ。気にするな」

 

 改めて頭を垂れるグリー。それを険しい顔で見ていた十六夜は大股でグリーに近づき、短く告げる。

 

「………悪い、グリー。飛行機なんかに頼らず、もう少し早く来るべきだった」

『馬鹿を言うな。独断で先走った私の判断だ。お前に非はないだろう?』

「だけどお前のおかげで奇襲は免れ、力量も測れた。それだけで十分な戦果だ。———安心して寝てな。万倍返しで殴り飛ばしてきてやる」

 

 ヤハハと十六夜が笑うと、グリーもニヤリと笑って返した。

 重傷を負ってもこのように笑える男に過剰な心配は不要だ。今はただ、この受けた傷の借りを返すことだけを考えるべきだろう。

 

「じゃあ、ここでプリトゥとはお別れだな。碧生とは向こうで会えるかもしれないが。悪いけどこいつは任せた。女王にクレーム付けたらすぐに迎えに来る」

「そうしてくれ。………二人とも油断するなよ」

 

 プリトゥと碧生に見送られて十六夜と釈天の二人はクノッソス宮殿の奥にある玉座の間に足を向ける。

 

「さて、それじゃ転移するぞ」

『すまない。それについてなのだが、ここで治療できないだろうか?ここでアイツの帰りを待ちたいのだ』

「………はあ。まあいいか。少し待て。こっちに回復系の恩恵を所持してるやつが来てたはずだからそいつを呼び出す」

 

 そういって懐からスマホを取り出し電話を掛けると、二・三言葉を交わして電話をしまう。

 

「五分で来れるそうだ」

『感謝する』

「別にいいって言ってるだろうに………」

「………さっき、二人ですら厳しいかもしれないと言っていたが相手は一体誰なんだ?」

 

 そこにプリトゥが質問する。

 

「気配が間違ってなければ、一人は牛魔王だな」

「………なに?間違いないのか?」

「ああ。これはほぼ確実。アイツには会ったこともあるし気配も覚えてるしな。ただ自信がないのはもう一人の方だ」

「………それは?」

「釈天の親族。まあ気配の感じから多分一親等、多分息子だろう」

「………ッ!アルジュナが!?」

「おそらく。ソイツには会ったことはないが、釈天と気配が似ていたからな。こっちもほぼ確定だ」

『………二人は大丈夫なのか?』

「まあ、問題ねえさ。少なくとも十六夜の方は死ぬことはないと断言できる。釈天も時間稼ぎに徹しなくても傷だらけ程度で済むんじゃないか?」

『………そうか』

 

 そこに一人の女性の声が響く。どうやら碧生が先ほど連絡をした回復系の恩恵所持者だろう。

 

「社長!お待たせしました!」

「かまわない。それよりこいつの治療を」

「はい!」

 

 女性は元気よく返事をすると、グリーの後ろ足に近寄り施術を始める。

 

『………驚かないのだな』

 

 その女性の反応を見ていたグリーが呟く。突然自身のような幻獣を見ても一歩も引かずに、それどころかすぐに行動に移れるところに逆に驚かされたのだろう。

 そんなグリーの呟きが聞こえたのか、女性が笑いながら言葉を返した。

 

「あはは。あなたのような幻獣程度で驚いていたら社長の下でなんて働けませんよ」

『「………………………………」』

「二人してそんな目をしてどうした?」

 

 グリーとプリトゥは一体会社で何をして、何をさせているんだと睨むが、碧生は動じた様子もなく飄々とした態度であった。




・深水碧生(館野蒼奇)
 今回は釈天にちょっと優しい人外主人公。ただし今回だけ。

・逆廻十六夜
 原作より蹴る木の本数が少なかった。ディープブルーコーポレーションの作業のおかげ。

・御門釈天(帝釈天)
 蜂と戦わずに済んだ神様。ただしそれ以外に碧生から押し付けられた虫がいる。

・プリトゥ(プリトゥヴィ=マータ)
 虫になりt、ゲフンゲフン。
 原作通り居残り。

・グリー
 幻獣グリフォン。そのうえ十六夜の相棒。足を負傷し、現在治療中。

・桐生翠(きりゅう みどり)
 ディープブルー社の女性社員。
 復興作業という名目でクレタ島に来ていたディープブルーコーポレーション(ディープブルー社)の女性社員。
 天然の治療系の恩恵の持ち主。ケガや病気すらも治療できるせいでいいように使われていたところを碧生にスカウト(保護)され、現在は彼の会社で働いている。
 所属部門は医療部門。今回は被災地の復興ということで作業員の衛生管理チームの一員としてクレタ島へきていた。


 次回は明日!年末だからね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。