黒子のバスケ 日記   作:sil

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 今回は日記形式ではありません



矢田桃花の日記、ではありません。ちょっと前話の裏話

 ど、どうしよう。変な人達に絡まれちゃったよ

 うぅ~、早く帰ろうと思って、いつもと違う道を選ぶんじゃなかった

 誰かに助けを求めようにも、他に人影もないし・・・

 

「ねぇねぇ、いいじゃんかー。俺達と一緒に遊ぼうよぉ、絶対楽しいからさぁ」

 

「へへっ、それにイイ事も教えてあげるよ」

 

「・・・っ」

 

 ジロジロと私の身体を嘗め回す様に見て来る2人組

 今までにない程の嫌悪感が私を襲う

 すぐにでもこの場を逃げ出したいのに、恐怖で体が竦んでしまって動けない

 体の震えが止まらない

 

「あーあー、震えちゃってるじゃんかぁ。お前の顔が怖いからだぜぇ?」

 

「馬鹿言え、テメェだって変わんねぇだろうが。でもよ、震えてる姿もそそるだろ?」

 

「あっ、それは分かるわぁ。特にこんな可愛い子はイロイロ撫でまわしたくなるしぃ」

 

 そう言ってまるで見せつけるようにゆっくりと手を伸ばしてくる

 

 

 誰か・・・誰か・・・!

 

 

 ぎゅっと目を瞑り、真っ先に私の脳裏に浮かんだのは、いつもこっそり見ている彼の横顔

 

 

 きっかけは本当に偶然

 

『どうしたの?』

 

 とても頼りになって

 

『じゃぁ、その役自分に任せてくれないかな?』

 

 優しくて

 

『本当に、よかったね』

 

 堂々としていて

 

『自分の目標は、日本一になる誠凛バスケ部の支えの一つになる事です』

 

 不思議で

 

『あはは、実はこの子が頭から離れてくれなくって・・・』

 

 意外な面も持っていて

 

『一体どうしたのだよ・・・なんてね』

 

 

 

 ――あぁ、そうだったんだ。今になってはっきりとわかったよ

 

 私は、あなたの事が――

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだよ」

 

 

「え・・・?」

 

 すぐ傍で聞こえた声に目を開ければ、誰かの後ろ姿が見えた

 その背中からは、頼もしさと安心感が感じられる

 

 それよりもこの声、街頭に照らされるその髪の色は・・・

 

「この人に触れさせるわけにはいかない」

 

「ひすい、君・・・?」

 

 呆然と名前を呟く。その声には色んな感情が込められていた

 

 震えは、止まっていた。でも、さっきから心臓が煩い。顔も、凄く熱い

 

「あぁ?んだよテメェ、俺達はその子に用があんだからよぉ、邪魔すんじゃねぇよぉ」

 

「それとも何か?正義の味方気取りってやつか?んな酔狂な馬鹿もほんとにいんだな」

 

「それを言うなら君達はその正義の味方にあっさりやられる小悪党ってところかな?随分とお似合いだね」

 

「「あ”ぁ”?」」

 

 怒気の籠った声をあげる2人に、一歩も引く姿勢を見せない翡翠君

 そんな彼は少しだけ振り向いて肩越しにいつもの優しい微笑みを私に向けてきた

 

「怖かったら、目を瞑っていて。すぐに終わらせるから」

 

 それからは本当にあっという間だった。翡翠君からは一切攻撃の手を加えていないのに、受け流され受け止められた2人組の方がボロボロになっていって、最後は逸らされた拳同士がお互いに当たって気絶していた

 

 最後まで見届けていた私だったけど、安心したら急に足の力が抜けて座り込んじゃった

 は、初めて腰が抜けちゃったみたい・・・ど、どうしよう

 

 そんな私を心配した翡翠君にその事を話すと、怪我とかがなかった事にほっと安堵してくれた

 

 その顔を見た私はまた動悸が激しくなって、胸の奥が暖かくなって・・・

 

 

 数分後には全身熱くなった。私の膝裏と背中に腕が回されて横抱きに抱えられているこの状況

 私達なら誰もが一度は夢見るお姫様抱っこです

 

 誰が?

ー私が

 誰に? 

ー翡翠君に

 どうなって?

ー腰が抜けて私が動けないから

 どんな気持ち?

ーすごく、いいです。そしてすごい恥ずかしいです

 

 嬉し恥ずかしの極限状態の私はどうにかなっちゃいそう

 

「あわわわわわ・・・!」

 

「あ、あそこが矢田さんの家で合ってるのかな?」

 

 家?反射的に向いてみれば見慣れた我が家が。うん、私の家です

 家には誰がいる?

 弟は病院

 お母さんは多分帰ってる

 お父さんも同じく

 

 このまま帰れば?

 当然この状況を見られる訳で・・・

 

「・・・きゅぅ」

 

「矢田さん?矢田さん!?」『ほぁらぁ・・・』

 

――――――

 

―――

 

 

 

 目が覚めたら自分の部屋のベットだった。まだ外は暗い。ちょっとのどが渇いてリビングに降りてきたら・・・

 

「いいじゃないいいじゃない!あんな美少年で好青年の子に危ないところを救われて、お姫様抱っこで自宅まで送ってもらうなんて最高じゃない!ホントご馳走様よ!でも、もう一杯!」

 

「ぬぉぉぉぉぉ!ウチの桃花は、桃花はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 何故かお母さんがキャーキャーはしゃいでて、お父さんが血涙流しながら苦悶の叫び声をあげてた

 すっごいカオス

 

 あっ、明日の授業はなんだったかなー?

 

 詰め寄られて色んな質問を投げかけてくる2人からちょっと現実逃避

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「『そこまでだよ』」

 

「『この人に触れさせるわけにはいかない』」

 

「『怖かったら、目を瞑っていて。すぐに終わらせるから』・・・って言ったの?」

 

「う、うん」

 

『『『『キャァァァァァァ!!』』』』

 

 話を聞いていた女子全員が黄色い声を上げる。ウチのクラスの子以外も何名か集まっているおかげで、軽くソニックブームでも起きそうな程

 これがうっかり口を滑らせちゃった結果だから、自業自得なのかなぁ

 

「カッコいいぃぃぃぃぃぃ~!」

 

「うわぁ、生で聞きたかったなぁ!」

 

「私も言われてみたいです!」

 

「私はそれが自分だった事を想像するだけで・・・はぅっ!?」

 

「メーディーック!急患一名ー!」

 

「でもでも!ほんとにそれくらい羨ましいよ!」

 

「災難だったけど、それ以上に幸運だったね桃花」

 

「う、うん。本当に翡翠君がいてくれてよかったよ」

 

 本当に、本当によかった・・・ってあれ?そういえば私ちゃんと翡翠君にお礼、言ってない・・・?

 

「それで!その後どうなったの矢田さん!」

 

「え?えっと、私腰が抜けちゃって、翡翠君がお姫様抱っこで家まで・・・あっ」

 

『『『『『・・・キ、キャァァァァァァァァァ!!』』』』』

 

 さっきよりも大きな声。耳を塞いでもこの破壊力なんて・・・!あっ、窓に罅が・・・

 

「あの翡翠様の・・・!」

 

「ゆ、夢のお姫様抱っこですって・・・!」

 

「なんて裏山・・・!」

 

「「「・・・ぷはぁ!?」」」

 

「め、メーディーック、メディ・・・ぷはっ!」

 

「「「体長ぉぉぉぉ!?」」」

 

 ・・・うん、なんてカオスなんだろう

 

 話はあっという間に全校にまで伝わっていった。噂ってホントに足が速い

 その話の中心人物の翡翠君はというと、結局カルピンを追いかけて行ってから帰ってこなかった

 今日はお昼で学校も終わりだったんだけど、チャイムが鳴った途端両脇を抱えられてマジ・バーガーへ連行されちゃった

 そこでさらに詳しく事細かに何があったかを喋らせられて、気が付けばもう夕方

 そして翡翠君ファンクラブなるものが結成されて、それに私も入れられる事になっちゃったんだけど・・・ほんとナンデ?

 

 

 色々(クラスメイトが)暴走していた翌日

 いきなり翡翠君に謝られた時はどうしようかと思ったけど、ちゃんとお礼を伝えられてよかった

 でも親に話を~って言われたときは勘違いしちゃったよ。あんな事があった後だから・・・その、ね

 私だけじゃなかったし、仕方がないよね、うん

 それにしてもお父さんにはちょっとお話ししなきゃいけないみたい

 今日は早帰りだったからたっぷり時間もあるし。メールでお母さんにも協力してもらおっと

 

 

 それと、あの時にはっきりと自分の本気の気持ちにも気付いた

 あの日からその事を思うと胸がトクトクと弾んで、温かくて心地いい

 というか今までの事を振り返ったら、そうなっちゃうのは仕方がないと思うな

 私以外にもいるかもしれないけど、だからって絶対引かないよ。そう決めたから

 

 まだもう一つが叶ってないからまだだけど、その時には・・・

 

「? どうかしたの矢田さん?」

 

「う、ううん!なんでもないよ!」

 

 ・・・この気持ちをあなたに伝えるね

 

 

 

 私、矢田桃花は翡翠真央君(あなた)の事が好きです

 

 

『ほぁらぁ~』

 

 ・・・カルピンちゃん、その笑みはもしかして気づいてる?

 

『むふぅー』

 

「ど、どうしたのカルピン?急に胸なんか張って。あと矢田さんも大丈夫?顔がなんだか赤いよ・・・?」

 

 ・・・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

○誠凛が旅館を去った後

 

 

「・・・・・」

 

「なぁに、ぼうっとしてんだよ真ちゃん」

 

「・・・なんでもないのだよ高尾」

 

「ふぅん・・・んじゃぁさ、さっきのはなに?」

 

「・・・見ていたのか」

 

「ちょっとなー。んでどうなのよ?」

 

「ふん、別に大した意味は無いのだよ」

 

「またまたー、そんな事言っちゃってさぁ。いつも以上に糞真面目な表情してたから、てっきり告白でもするのかと思っちゃったじゃん」

 

「煩いのだよっ」

 

「『待っているのだよ(`・ω・´)キリ』ってさ。ぷはっ!魔王かってーの!」

 

「黙るのだよ!それにそんな効果音は付けていないのだよ!」

 

「あっ、携帯で撮ったのあるけど見る?お、そうだ、大坪さん達にも見せよっと!」

 

「たぁぁぁぁかぁぁぁぁおぉぉぉぉ!!」

 

 

 ◇◆◇

 

 

○桐皇・海常戦後。帰り道にて

 

 

 ・・・え、えーと、これはどうゆう状況なのかしら?

 

『すみませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 私達の目の前で土下座している見た目ヤンキー、されど服装は至って普通の男子、総勢4~50名程

 

「あ、あのぉ、頭を上げてください」

 

「いえ!まさか兄貴の御学友とは知らず、不敬な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした!」

 

『申し訳ありませんでした!!』

 

 兄貴?誰それ美味しいの?にしてもなんか体育会系並の統率感ね

 

 日向君達に視線を送っても首を横に振っている。というか引け腰じゃない。しっかりしなさいよ男子

 

「あー、えっと君達の言う兄貴って言うのはここにいるこいつの事で間違いないのかな?人違いとかじゃなくて?」

 

 そう言って鉄平が指を指すのは火神君に担がれている翡翠君だった。かなり疲れが溜まっていたみたいで、あんな状態でも起きる気配はない。随分無理をさせちゃったみたいだし、申し訳ないわね

 って、今はそれよりもこっちよね

 

「ウッス!間違えるはずもありません!そのお方こそが兄貴ッス!」

 

 聞けば、彼等はこの辺りにいる不良達で、ナンパや悪さをしていた所を翡翠君に成敗されたらしい

 翡翠君、あなた一体何をやっているのかしら?

 

「皆、それぞれの事情で少し道を外れた者達ばかりです」

 

「そんな俺達みたいなゴロツキは腫物扱いで見て見ぬ振りをされ、止める者もいなくなっていきました」

 

「けど、そんな俺達に真正面からぶつかって来てくださった兄貴によって心を改めていただきました」

 

「この御恩は一生忘れません」

 

『ウッス!』

 

 ・・・翡翠君、あなた不良を更生させちゃってるわよ。彼等の目、まるで青少年のそれよ。物凄い輝いてるわ

 一体いつそんな事をやったのよ。マネージャーの仕事も人一倍やっていたのにさらにアルバイトもしていたみたいだし

 

 結局、駅まで荷物と翡翠君を運んでもらって、盛大に見送りをされたわ

 なんか最後にどっと疲れちゃった。でもこの合宿で一番の功労者は翡翠君よね。今もカルピンを抱いて気持ちよさそうに眠ってるし

 

「すぅ・・・すぅ・・・」『コロコロ・・・』

 

「・・・・・」カシャ

 

 ・・・こ、これは頼まれたやつだから。決してつい撮っちゃったとかじゃないわよ

 ファンクラブを作られちゃうくらいの翡翠君が悪いのよ!うん!

 

 

 

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