黒子のバスケ 日記   作:sil

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 ○月=日 スパイor忍者。どっちがお好き?

 

 

 本日、自分は約三週間後のIH予選一回戦で戦う相手、新協高校に偵察にやって来ました。なんかこういうのってドキドキするね。思わず文字も弾んでしまう

 変装も完ぺき、態々私服や帽子まで持って来てカメラの用意もバッチシ。事務所で許可を取って、体育館で練習しているであろうバスケ部の偵察へ!

 

 mission start!

 

 

 んー、ちょっと厄介かな。偵察をし終えてバスの中、向こうの情報を眺めた自分の感想だ

 大まかはそれほど脅威になる選手はいないのだけど、一人厄介な選手がいる

 

 パパ・ンバイ・シキ

 身長2メートル・一年生。ポジションC

 セネガル人の留学生

 特徴は長い手足

 

 間近で見てとにかく高い、というのが印象的だった。身長+長い手で、ただのジャンプシュートでもブロックするのが不可能な高さ。この学校は去年レベルで言えば中堅クラスだったけど、この留学生の加入によってレベルが変わっていた。オフェンスでもディフェンスでもその高さが脅威的、正直今の誠凛だと一回戦突破も危うい

 

 帰って相田監督に写真とデータを見せるとやっぱり渋い表情になった。まぁ、だからと言って黙っているこっちでもない。試合当日まで通常の1.5~2倍のメニューに加え、火神は対お父さん(パパ・ンバイ・シキ 黒子命名)のディフェンス特訓を、他のメンバーは黒子との連携の特訓をする事になった

 それに伴って、明日から練習時間延長や朝練等が組まれる事になり、マネージャーの仕事も増えました。

 という訳で、明日も朝が早いので今日はここまで

 

 

 

 

 

 ×月○日 早寝早起きは三文の得?いやいや、そんな事はなかったよ

 

 

 朝練の為、いつもよりかなり早く家を出るとまだ空がぼんやりと明るく、肌寒い風が頬を撫でた

 

 なーんてらしくない事を書きながら登校していると、道端に財布が落ちているのを見つけた。ん・・・?って感じになってしまった。しかもその財布を手に取ってみるとかなりズッシリとしていて分厚かった。まさかと思い、悪いとは思ったけど中身を確認してみると滅茶苦茶諭吉さんがいらっしゃいました。多分何十万くらい

 

 思わず思考停止してしまったけど、特に迷う事もなく道を引き返した

 

 

 

 

 

 p.s 悪い事していないのに交番に行くのって躊躇われるよね。あと、もう遅刻は絶対にしない。次はシバかれる

 

 

 

 

 

 ×月×日 お父さん、俺は・・・あんたを超える!

 

 

 IH予選一回戦。結果は見事誠凛高校が勝利しました!お父さんに結構苦しめられたけど、火神が特訓の以上の成果を出したお蔭でお父さんを押さえつけて見せた。さらには黒子の連携で最後は新協を引き離して白星を獲得

 

 だけどまだ始まったばかりのIH予選。トーナメント方式の為、一度の負けも許されない。今日の勝利に甘んじる事なく、頑張っていこうと皆意気込んでいた

 自分も改めて頑張ろうと気を引き締めた

 

 

 

 

 

 ×月□日 ホットミルクはどんな味?

 

 

 今日は昨日試合だったという事で練習は休みになった。体を休める事も大事だしね

 まぁ、そんな中でも自分はちょっと用事があるのだけど。相田監督に呼ばれて、彼女の自宅兼スポーツインストラクターである父親のスポーツジムにやって来た

 うん、そこまでは良いんだけど、何故かチャイムを鳴らして扉が開くと見知らぬ男性から銃を突きつけられた

 自分は何の思考もする事も出来ずに、そのまま意識を失ってしまった

 

 

 で、どれくらい経ったか知らないけど目を覚ますと自分は簡易ベットに寝かされていて、その近くでさっきの男性が正座しており、相田監督が修羅の如き形相でそれを見下ろしていた、仁王立ちで

 軽くパニックになった

 

 目が覚めた自分に気が付いて、物凄い心配してくれた。あんなに申し訳なさそうで優しい声をかけてくれた相田監督は初めて見たよ

 正座している男性も、床に頭をメリ込ませる勢いで土下座してきた。後頭部には相田監督の手が置かれていた気がするけど

 

 そんな二人をなんとか落ち着かせて、話を聞くと土下座していた男性は景虎さんといって、相田監督の父親だったらしい。で、気絶した後の流れも説明してもらった

 

 自分気絶

   ↓

 景虎さん唖然

   ↓

 騒ぎを聞きつけて相田監督参上

   ↓

 玄関先で倒れている自分と銃を持った景虎さんを見て修羅降臨

   ↓

 成・敗!

 

 という感じらしい。目に見えて景虎さんがボロボロだった訳だ。一体どんな事をされたんだろう、と怖い事を考えて震えていたら相田監督になにか勘違いされたようで、景虎さんが部屋の外に引きずられて行った。その数秒後、断末魔が聞こえてきた。滅茶苦茶怖かった

 

 長く短い断末魔が止み、慈愛に満ちた感じの優しい笑顔の相田監督が戻って来た時は、さっきのは幻聴?と思ったほどだ。というか精神衛生的にそっちの方が良いのでそう思う事にした。ボクハ ナニモ キイテマセン

 そして相田監督が気遣って淹れてくれたホットミルクは、何故かちょっと変な苦さだった。何で?

 

 まぁ、それからは相田監督にあんな事になってしまった自分の事情を簡単に話した。何気にこっちに来て初めて話したなー、と思ったら今度は相田監督にに土下座されそうになって本当に焦った

 

 で、結局その後は少し休ませてもらった後、最後まで謝られながら見送られて自宅に帰って来た

 

 今日はちょっと色々と疲れたのと妙にお腹が痛いのでもう寝ます

 

 

 

 

 

 ×月◆日 完全勝利!

 

 

 IH予選二回戦、誠凛は黒子を温存したまま実善高校に大差で勝利!これで二回戦突破だ

 あと、試合とは関係ないけど最近相田監督が自分を見る目や言葉が妙に優しい。やっぱりあの時のが原因? 黒子がその事に気が付いて何があったか聞かれたけど、何とか誤魔化した。出来ればあの事はあまり知られたくないし

 相田監督がアメちゃんをくれた。何故だ

 美味しかったけど

 

 

 

 

 

 ×月■日 おやっさん、おらぁ・・・また、やっちまったよ

 

 

 矢田さんの弟君の手術が無事成功したらしい。術後の経過も良好で、早ければ今年の夏までには退院出来るそうだ、本当に良かった

 あのパンのお蔭だと矢田さんに感謝されたけど、自分は何もしていない。きっと矢田さんの弟君を想う心が弟君を救ったんだと思う。その事を伝えたら顔を真っ赤にして早口に挨拶をして勢いよく教室を飛び出して行った

 

 残された自分は一人、天井を仰いだ

 

 また、やらかした・・・

 

 

 ×月#日 良かった

 

 また矢田さんと普通に話せるようになった。今度からは不用意な発言はしないように、細心の注意を払って行こう

 昼休憩、相田監督からどら焼きを貰った。まさか自分、餌付けされているんだろうか?あと妙にどれも美味しい

 

 

 ×月?日 順調だね

 

 

 IH予選三回戦、昨年ベスト16まで行った金賀高校。攻防共にバランスの取れた強豪校だったけど、それでもウチが上回り無事勝利。今日もベンチの黒子が出たそうにむずむずしていた

 そして今日はクッキーを貰った。やっぱり妙に美味しい。普通のじゃないんだろうか?

 

 

 ×月!日 お菓子は幸せの味

 

 

 IH予選四回戦。何故か相手選手が黒子と火神を見てずっと腰が引きっぱなしだった。そのお蔭なのか、結果は圧勝。これで四回戦突破

 午後は予選五回戦、こっちも最後まで逃げ切り勝利。これでいよいよ残すはあと2戦だ

 

 今日はラムネを貰った。もしや、この間の事を負い目に感じてくれるのかと聞いたらそうじゃないらしい

 疑問は消えなかったけど、なんか美味しいからもうどうでも良くなってきたかも

 

 

 それで終わればよかったのだけどね。いつかは、と思っていたけどとうとうやって来てしまった様だ

 取り敢えず、今日の日記はここまで

 

 

 

 

◇◆◇◆◇ ◇◆◇◆◇ ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 本日の全試合が終わり、各校の選手達が帰り支度をしている頃。一人の選手が人気の少ないこの場所で、ある人物を待っていた 

 

 静かに待つこと数分、遠目にその人物が少し小走りにやって来るのが見えた

 

「ごめん、待たせたみたいだね」

 

「いや、それ程ではないのだよ」

 

「そっか・・・」

 

 会話だけ見れば待ち合わせのカップルのようだが、二人の空気はそれとは真逆に近い。そのままお互い無言が続いた

 

 やがて、その沈黙は破られた。何か覚悟を決めた表情で待っていた人物――緑間が口を開いた

 

「なぜ・・・試合に出ていないのだよ、翡翠」

 

 その声音には疑問、困惑そして・・・憤りが込められていた。その問いかけに、呼び出された翡翠はやっぱりかという表情になる。しばし何かを考える仕草を見せた後、緑間のものより青みがかったその瞳を真っすぐに緑間に向けた 

 

「今、自分は選手じゃなくて、マネージャーだから」

 

 知っているとも。黄瀬との練習試合、予選一回戦でも見ていたのだから

 だが、俺が聞きたいのはそんな事ではないのだよ!

 

「わかった、わかったから睨まないで欲しい。ちゃんと話すからさ」

 

 嘆息する翡翠に、目線でさっさと話せと伝える。やがて、今度は先ほどよりも真剣な表情で翡翠はその口を開いた

 

 

――――――――――――

 

――――――――

 

―――――

 

―――

 

 

 

「―――じゃぁ、自分はそろそろ行くよ。次はお互い決勝で会えるといいね」 

 

 今の話は他のみんなには内緒で、と最後に付け加えて翡翠は去っていった。遠くなるその背中を、見えなくなるまで呆然と見続けていた緑間は、しばらく経って悲痛な面持ちで空を仰いだ

 

「なぜ、あいつがっ・・・それが運命だとでもいうのか。そんな馬鹿な事が、あってたまるか・・・!」

 

 緑間の言葉は、静かな空間に溶けていった

 

 

 

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