黒子のバスケ 日記 作:sil
×月&日 俺達の戦いは・・・まだこれからだ!
日付は変わらず、同日のまま。だって今日はまだ、これから試合が残っているんだから。それもとっびっきりのが
IH予選、決勝。相手は東京三大王者、秀徳高校
つまり、王者との二連戦。しかも今年は随分と厄介な選手が入ったね。さっきの試合も序盤少しだけ出ていたけど、やっぱり綺麗なシュートだった
というか今日は狸の信楽焼きなんだね、普通にベンチに置いててビックリしたよ。あれ、結構邪魔になりそうだよねー
にしてもさっき隣のコートでの試合中、ベンチに下がってから時折こっちになんか鋭い視線を送って来てたけど・・・あれ、凄い怖かったよ。他の皆に気が付かれなかったのは良かったけどね。特に黒子に気が付かれないかひやひやした
控室で栄養補給やマッサージを受けている皆も、疲労の色は隠せない。この時間でどこまで回復出来るか。というか火神に至っては寝てるし。流石にどうかと思ったけど、結局はそのままにしておく事になった。さっきの試合で本人も思う事があったみたいだしね。その分まで、次の試合では存分に活躍してほしい
・・・というかドリンク作りに水道まで行ったんだけど、そこにいた同じくマネージャーっぽい人達に一斉に避けられてひそひそ話をされた
泣かずにちゃんと帰って来れた自分を褒めてあげたい。相田監督のくれる美味しいお菓子が救いだった。僕の心はボロボロだー(文字が濡れて歪んでいる
時間になった。予選決勝といえども会場はほぼ満席。けど、皆萎縮する事もなくいい感じに集中出来ていて気合も十分そう。特に火神はさっきよりもいい感じに見えた
な・の・に!何で緑間は態々こっちに宣戦布告をするんだよ!やるのは自分じゃないっていうのにさ!お蔭で変な空気になったし、ホント空気読んでよ!
変な空気から始まった本日最後の試合、スタートは誠凛ボールから速攻で一本を取りに行くつもりだったけど、流石は王者。守りも早い
各上に対してゆっくりしていたんじゃ流れを持っていかれるので早速強襲を狙い、海常との練習試合で最後に見せた黒子・火神のアリウープで先取点を取った、と思ったら素早く反応した緑間にブロックされた
だけど誠凛も負けていなかった。そして向こうの攻撃も防いでお互いに譲らない状態が続く事約4分、秀徳の速攻からの隙を突かれ、緑間の3Pシュートが放たれた。高く孤を描いたボールは寸分の狂いもなくリングへ吸い込まれる
先制点を決めた事で均衡が崩れ、流れは秀徳だと思われた時、黒子が動いた
スローインの為にボールを持ってゴール下のエンドラインから出た直後、回転させながら体のバネ全部を使い、コートの端から端までぶった切る様な長距離パス。それを緑間が撃った高弾道3Pシュートの長い滞空時間の間に、敵陣ゴール下までいた火神が受け取りダンクを決めた
会場や敵、さらには味方までもが驚愕したそのワンプレーのお蔭で、まだ流れは分からないままだ
当然ベンチにいた自分もかなり驚いた。あんなパスは見た事なかったし。それをこの場面で使うタイミング、判断力、一発で決める度胸。流石としか言いようがない
それからは黒子の長距離パスからのカウンターを警戒してなのか、緑間がシュートを打てる場面でパスを出していた。まさかの緑間封じになっていたね。だけど、緑間の顔面真横を通すのは危ないです。あれ絶対緑間も怖かったと思うし。まさかそれも狙った?黒子ってそんなSだったっけ?
いい感じかなと思ったけど、ここで厄介な問題が起こった。お互いに点を取る中、こっちの攻撃の場面でフリーの日向先輩への黒子のパスがカットされたのだ。それも、ミスによるものではなくてしっかりと捉えられてので、だ
それを成したのはその直前に黒子のマークに付いた1年PG高尾。彼は伊月先輩のイーグルアイよりも視野が広い鷹の目(ホークアイ)を持っていた。黒子が自身に向けられる視線を他に逸らすミスディレクションも、コート全体を見ている高尾には通用しない
チャンスかと思ったら逆にピンチに瀕してしまった
堪らず第1Q残り3分でタイムアウトを取ったけど、対策は浮かばない。というか今までそういう相手に直面した事も無かったしね。黒子も表情は変わらないけど困った感じに見える。まぁ、だからと言ってこのままの黒子な訳はないだろうけどね
結局このままで行く事になり再開された試合だけど、王者との2連戦の為に二年生は大分息が上がって来た様子だ。でも、だからと言って弱気になっている人はいなかった。寧ろ日向先輩なんかはクラッチタイムに入っちゃったし
というか、相田監督から聞いた日向先輩のシュート精度の特訓内容、練習でシュート外したら大切にしている戦国フィギュアをへし折るって・・・中々えげつないです。そのせいで日向先輩の性格歪んだみたいだし
驚愕、愕然。第1Q終了後インターバルの誠凛ベンチはそんな空気に包まれていた。第1Q終わり間際に火神が一人アリウープという荒業で3点差に詰めてこれからって所で、ほぼ自軍のゴールから緑間の3pシュート
本当にまさかまさかだよ。黒子の話ではセンターラインまでは打ててたらしいけど、あれを見たのは初めて。つまり、この短い期間でやり遂げたという事になる
昔から3pに並々ならぬ意志と努力を積み重ねてたけど、伸びるベクトルが凄まじいね。前に遠くから打てる方が良いって言っていたけど、だからってシュート範囲を全コートまでにするなんて・・・凄いけど、緑間の事を知ってる身としては何とも言い難い。たまに妙に子供っぽい考えとか、その辺は変わってないみたいだ
まぁ、だからと言って笑っていられる状況ではないんだけど
とにかく、何とかして緑間を止めなければいけないところだ。多分だけど、第2Qは緑間主体で来そうな感じがするし。これ以上、王者相手に点差を離され過ぎれば、追いつくのが困難になる
第2Qが終わり、ハーフタイムの控室は誰も言葉を発する事もない重い空気だった。現在の点差は27対45
黒子は高尾に封じられ、緑間は止められない状況でも誠凛はギリギリの所で闘志を切らさずにいる。だけど、それもギリギリの所でだ。寧ろ強豪校ではない、若いこのチームがここまで保っている事が出来ている所が凄いくらいだ
そんな重い空気も、黒子のとんでも発言のお蔭で解れた。流石に隕石はどうかと思うよ
ただ、火神がいつもと少し違う感じがしたけど、大丈夫かな
第3Qは黒子と交代で小金井先輩が入ってスタート。追う形の誠凛、今日は小金井先輩の調子は良いみたいでシュートもちゃんと決まってる。これはちょっと失礼だったね
そしてその後ついに突破口が見えた。緑間の高弾道3Pがリングに触れて危なげない形で入った。それは緑間がミスをしたからじゃない、というかそれはありえないね。やってのけたのは火神、シュートの際掠るかどうかのほんの僅か、指先がボールに触れたのだ
ただの3Pでも僅かなズレは命取り。まして、緑間の様に超長距離となればそれは致命的
その兆しは海常との練習試合で最後のアリウープで見せ、バスケに置いて最も大きな武器の一つ、跳躍力。火神は日本人離れしたバネを持っていた
火神のそのプレーを見て、相田監督は緑間を止める為に火神・小金井のダブルチームを止め、秀徳三年の東京屈指の大型センターである大坪に2人付け、緑間は火神に任せる形に変えた
直後、火神はついに緑間の3Pを叩き落とし、完全にブロックしてのけた
勢いに乗った火神はその後もディフェンス・オフェンスとそのスーパージャンプで点を重ね、第3Q残り1分弱とうとう一桁差に追いついた
だけどここで火神がジャンプの多用でガス欠。しかも火神だけじゃなくて先輩達もだ
その後は、まぁ、間違った考えの火神を黒子が殴って目を覚まさせて、気合入れ直しだ!って感じかな。物凄い簡略化したけど
あと、生意気な事を言った火神君は、試合が終わった後日向先輩に〆られる事が決まりましたードンドコドーン
そして泣いても笑っても最後の10分が始まった。小金井先輩と交代で入った黒子には相変わらずピッタリとかべったりって言う感じに高尾のマークが付いている。黒子すっきーやね
・・・と思ったらその高尾のマークを簡単に外していた。どうやら作戦が成功したみたいだ。自分に意識を集中させる逆のミスディレクションで高尾のホーク・アイの視野を狭めて外す。さっきベンチでいつもの調子で話してたけど改めて考えると凄いね
さらには高尾の手から逃れる為に出した黒子のもう一つのパス、ボールを殴りつけて加速させるイグナイト・パスっていう技なんだけど・・・なにあれコワい。奇跡の世代しか取れないパスみたいだけど、あんなの取りたくない。絶対手痛いし、下手したらどっかにぶつかりそう。痛いのは嫌です
黒子の連携が復活し、点を重ね第4Q残り約3分、点差は2点。ここで秀徳がタイムアウトを取った
2回しか飛べそうにない火神のジャンプを緑間の最初のシュートと攻撃で使い切り、相手にまだあのジャンプがあると思わせる事で緑間のシュートを躊躇わせる騙し騙しのプレーを続けていたけど、それもとうとうバレたっぽいね
だけどそれはチャンスとなった。火神の限界が知られたという事は緑間にパスが集まるという事。パスコースが分かっている事は絶好のスティールの的だ。しかし、緑間以外の選手のディフェンスも強い。静かだけど今まで以上に熾烈な戦いはお互いに点が入らずに残り1分を迎えた
が、一瞬の隙を突いて緑間の3Pが決まった。これで点差は5、残り時間30秒。負けじと日向先輩も3Pを決め再び2点差。スティールのスティールでボールが外に出て残り15秒。誠凛最後の攻撃のチャンスだ
ここで3Pを最優先に封じに大坪が日向先輩のマークに付いた。だけど誠凛には3Pしか道は無い
火神のスクリーンで大坪を躱した日向先輩は、3Pラインから遥かに離れたセンターライン付近で伊月先輩からボールを受け取った。そしてシュート
多くの視線が放物線の軌道を追い、リングを潜るボールを捉えた
誠凛82:81秀徳
残り数秒でついに逆転。チームの皆と会場の観客達が誠凛の勝利を確信し、興奮や弛緩する空気が流れ始める中で・・・異を唱える者がいた
まだ試合は終わっていない
ボールが緑間の手に渡った。そう、まだ試合終了のブザーは鳴らされていない
誰もが不意を突かれ、火神ももう飛ぶことが出来ない。緑間のシュートモーションがやけにゆっくりと、まるで現実を思い知らされる様に感じられた
だが諦めなかった
火神は限界を超えてブロックに跳んだ。誰もが驚いた。その後に起きた事も含めて
緑間のシュートフェイク。火神が飛ぶことを信じ、残り数秒しかないこの場面でのフェイクなど、誰もが予想をしていなかった事だろう
たった一人を除いて
火神が飛ぶ事を信じ、それを信じた緑間がボールを下げる事まで信じ切った黒子が、ボールを叩き落とした
そして鳴り響く試合終了のブザー。今度こそ勝敗は決したのだ
誠凛は、秀徳に勝利した
「・・・・・・」
試合後、ドリンクボトルを洗いに水場まで来た自分は、今日の日記を見返して一言
「これ、日記じゃない」