英雄記 世界を統一した王国英雄 リュカイ・サイディード 作:木酉原三歩
リュカイ・サイディード。彼は、王国の兵士である。
年は若いが、周りの兵士達よりも強く、勇敢で、小隊を指揮する騎士団の1人。
ある時、王命がリュカイ達兵士に告げられた。そこは王宮の集会場と呼ばれる場所であり、王座を正面に、そこから見下ろすと格騎士団の将士が綺麗に列を作り、王の声を聞いていた。
「北の隣国同士が決起し、同盟を組んで我が国に来るという報が参った。時が過ぎれば、間違いなく我が国は滅んでしまう。だが、そうされる前に行動を起こす。
1年の内にここを統一するのだ。」
国を治める国王、シュタイン・ベネット。周辺各国の争いの中で、着実に勢力を伸ばしており、シュタインの代にて統一がされるかと思われた。
しかし、他国は決して降伏をすることはなく、小国同士が互いの勢力を掛け合わせ、対抗しようと動き出そうとしていた。
近隣国は小国ばかり。リュカイの国が一挙に兵を挙げれば、1つの国を落とすことは容易い。
だが、今回は違っていた。如何に自国が大きくとも、近隣国が結集などすれば互角以上に力をつけられる。
その前に、周りの国を掌握しなければならなかった。だが、1年という月日だけでは実現できることなど極めて難しいことだ。王より下された命令には誰しもが声を挙げて受けることが当たり前だった。
この危機にはさすがの将士達は声をまだ挙げずに、左右にいる同士を眺めるものも出始めた。
そんな時、1人の青年が声を挙げた。
上級職数千の兵を集めた大広場で、彼1人が声を挙げたのだ。
「王よ。私は誓う。
北の4国すべてを、我が軍隊にて制圧して見せます。」
リュカイはそう宣言した。その勇気ある行動に、皆は無言のまま、時が止まったように静けさが広場を覆った。
「リュカイよ。そなた程手腕に優れていようが、をそなたの部隊だけで相手をするには無謀すぎるぞ。できるのか。」
ただ1人、王だけが応えた。否定も肯定もしなかった。ただ、もう一度答を聞くべく質問をした。
「もしもこの策が敗れるときは、私の命もそこまで。
しかし、生きて帰ることを誓うと共に、達成することをまた誓います!」
ゆるぎない決意。王はその言葉に少し驚く。深刻だった王の顔が少しばかり笑みを浮かべた。
「リュカイよ、決して死ぬな。そして、帰還を待っているぞ。」
王は笑みを浮かべ、勇士たるその姿を導く。
「第11騎士団リュカイ将軍よ!王命である!
北の4国を制圧し、我が王国の旗を立てよ!」
リュカイは右の手のひらを空へと掲げ、表を王へと向けた。
「王の命と共に!」
そして拳を作り、表を自分へと返し、胸の前へと腕を振り下ろす。
「我が命ここにあり!」
「また、皆に命ずる!その他の勢力は私自らが指揮する!必ずや、勝利を収めよ!」
リュカイ以外の兵士達皆、その王の言葉と共に右手のひらを同じく掲げた。
「王の命と共に!我が命ここにあり!」
この時より、リュカイの名が大きく歴史に記されていく。
王は席を立ち、連れ添う白服の僧侶とともにその場を去った。
周りの将士たちも広場から徐々に解散を始め、リュカイもまた小隊の元へと戻っていった。
「リュカイ将軍。」
リュカイの姿を見に一礼したのは、1人の兵士。その兵士の声に続き、武装をした兵士達が一斉に一礼をする。
リュカイがやってきたのは、騎士団の兵舎のひとつである。ここがリュカイ率いる騎士団の兵舎のひとつであり、ここの兵舎にいる兵士数はおよそ300人ほど。
「兵士長。訓練は順調か?」
「はい。前の戦より日も経ち、兵士達の士気も大分高まり始めております。」
「そうか。だが、また数日もすれば戦争がある。大変だと思うが、それまでの間引き続き頼む。」
「かしこまりました。」
兵士長と呼ばれた男は、再び一礼をし、周りの兵士達と訓練を再開した。リュカイはその場を後にし、次の兵舎へと向かった。
訓練をする兵士には声を掛け、自身も訓練の相手を引き受け、兵士達の士気を高める。
その他に7つの陣営を周り、気づけば日が山間へと沈んでいった。
無数のかがり火が灯され、暗闇の大地に王都が輝いて見える。
将士をはじめ、兵士達は城下の家々に帰っていく。リュカイは、最後の兵舎での訓練に参加をしていた。
「よし、今日はここまでだ。」
「はい。
今日の訓練はここまで!集合!」
兵士長の号令と共に、紐で吊るした鐘が鳴らされた。3度打ち鳴らされた後、木剣と棒等を持った兵士はそれらを持ったまま、鐘の傍にある木の台へと並んで待機する。少しして、鐘の傍にいたリュカイは台へと登る。台から眺めると、横に10列、縦に30人が乱れることなく整列している。
「皆、今日の訓練もご苦労であった。既に伝わっているだろうが、10日後には遠征だ。周辺国の決起が起こる前に、我らの部隊でそれを断たなければならない。各自それまでに装備を整えておけ。」
リュカイの声は、柵で覆われた陣営に響き渡るほど大きな声で伝わった。後方の兵士数名が頷く姿も見える。
「また、此度は今までと違い、敵地を領土とした後にそこを拠点とするため、長期遠征となる。皆に苦労を掛けるが、共に戦ってくれ!」
「はっ!!」
リュカイが発した「戦ってくれ!!」の声に合図する兵士達。伸ばしていた背筋を更に伸ばす。
その姿を見渡した後、リュカイは台から降り、陣営を後にした。
リュカイが帰宅したのは、城下でも上級職であり王の信頼を得た者だけしか住むことを許されない区画の住居。その場所は外に出て広場を歩けば、城内の王宮殿の扉に行ける。因みにこの王宮殿まで辿り着くには、3つの区画にある城門をくぐらなければならない。リュカイは家の扉を手前に開き、中へと入る。
玄関に入ると廊下は明るく照らされており、その先には広々とした部屋がある。そこに、1人の髪の長い人間がいた。部屋へと入ってきたリュカイに気づき、振り返る。
「おかえりなさいませ、リュカイ様。」
明るく挨拶をしてきたのは、女性だった。栗色の長い髪を白いリボンで束ねている。綺麗な蒼い瞳で、立っている姿は大人っぽさを感じさせるが、笑顔には幼さが残り、背も同年代の女性と比べると低い。だが、年齢はリュカイよりも下であり、まだ酒も飲んだことがなく、やはり子どものような印象が目立ってしまう。
彼女は料理の支度をしており、後ろの台所では釜が炊かれている。
「マヤ、久しぶりの遠征が決まった。」
「どちらまでいかれるのですか?」
「北だ。そして、しばらく国には帰らないと思う。」
リュカイは身に着けていた手甲と肩当を外し、突起がいくつもある木製の家具に掛ける。その横には鎧を掛けておくスタンドがあり、そこに銀色の甲冑がある。
「わかりました。でも、北はこれからの時期寒くなるかと。よろしければ、暖かいお洋服をご用意させていただけませんでしょうか。」
マヤと呼ばれた女性はリュカイにそう願い出た。
「10日後に行くのだぞ。大変だろうから、大丈夫だ。」
「いいえ、リュカイ様のためであればすぐにでもご準備できます。」
「あまり無理をするなよ。」
「勿論でございます。では、お食事の準備ができるまでもう少々お待ちください。」
笑顔で喜んだかと思えば、張り切った様子で再び台所で支度を始めるカヤ。リュカイは部屋の中央にあるテーブルから椅子を引き出し、そこに座った。
彼女の名前はマヤ・クレマース。生まれは城の3つ目の区画にある城下町の生まれであり、洋服屋の跡継ぎとして育ったそうだ。
そこにリュカイ達騎士団だけが住むことが許される第1区画での使用人を採用する試験が開催された。支給される金額は高額であり、親孝行をしたいという思いで試験を受けた。
そして幾度も落選した女性達を他所に、なんと若干16歳の時に合格した。初めは第1画の使用人達が暮らす2階建ての大きな住居にいた。その時にリュカイと出会い、以後はリュカイの家の身の回りをお世話する使用人となった。