暗い獣道を歩き、小屋へ帰っていた。あれだけ暗かった森はだんだんと明るくなっていった。呪いを作り出していた蛍の親玉を倒したからだ。だが俺たちの気持ちは晴れなかった。
ふと顔を上げると小屋についていた。時刻は16時。小屋の前にはいつかのバスが停まっている。ちょうど小屋からバスの運転手が出てきた。
「あ、みなさん。迎えに来ましたよ~」
俺たちはその平然とした声に唖然とした。
「あ、あの……小屋の中に何かありませんでしたか?]
俺は恐る恐る聞く。
「?みなさんの私物以外何もありませんでしたよ?」
運転手はキョトンとした。
俺たちは顔を見合わせ、小屋に入って行った。中はきれいに整理され、彩の死体などどこにもなかった。
「みなさんどうかなさいましたか?」
運転手は戸惑いながら言った。
「……いいえ。何でも……ありません」
俺はそう言うので精一杯だった。
小屋に残った私物を整理し、バスに乗り込んだ。窓を眺めて今までのことを思い出していた。海斗からもらったバッチを思い出し、取り出す。しばらく眺めていた俺はいつの間にか、眠りについていた。
次に起きたときはキャンプ場受付の前だった。元希に起こされたのだ。
「起きろ~疲れてるのはわかるけど、帰るまでが遠足だぞ~」
ご機嫌だった。
「遠足じゃないし、キャンプだし」
真紀が呆れたように言う。
その口調に違和感を感じる。
「なんだ?寝ぼけてるのか?」
こちらをニヤニヤしながら見る元希。
ああ、そうか夢だったのか。それにしても妙にリアルな夢だったな。
俺は立ち上がろうとして、チャリンとバッチが落ちる。
「改、お前こんなの大切にしてるのかよ」
元希がそのバッチを拾って俺に言う。
俺は困惑と恐怖に身が震えた。そのバッチがあるってことは夢ではない。
「……元希、今までのこと憶えてないのか?」
「いままで?楽しいキャンプだったじゃんか。みんなでサバイバルごっことかしてさ」
続けて真紀も口を開く。
「そうそう、木の上に隠れてる元希に栗を投げつけたときは面白かったな~」
俺はさらに困惑する。この状況こそが夢なのではないのかと。ほっぺたを抓ってみた。痛い。
「あの~そろそろ降りていただけませんか~」
元希からバッチを受け取り、俺たちは急いでバスから降りた。
電車の中でも俺は青ざめていた。
「本当にどうしたの改。具合悪いの?」
真紀がそう問いかけてきた。
俺は大丈夫と言うと、純に向き直る。
「純、お前は憶えているか?」
純もきょとんとしていた。
「え?何を?」
憶えているのは俺だけか。あれは夢だったなんてことはない。このバッチがそれを証明している。
俺は考えるのをやめ、帰るまでいつものテンションで振る舞っていた。
19時、初日に集まった駅に着いた。
「じゃね!改、玲奈、純!」
「じゃなー!」
手を振りながら帰る真紀と元希を見送る。
「俺たちも帰るか!」
純と玲奈とは途中で別れることになる。それまで俺たちは他愛もない話をしながら帰った。
途中で純と別れ、玲奈と二人になる。
「ねぇ、改」
「ん?」
「あなたは、憶えているのね」
俺は足を止め、玲奈の方を見る。
「お前は、憶えているのか」
玲奈はうなずく。
「どうやら呪いが解けてないのね。わたしたちは」
「どういうことだ?」
「彼らはXプロテクスの擬人体よ」
俺は困惑していた。
「どういう、ことなんだよ」
「3日目の夜、わたしが起きていたのは、彼らの言動に少々疑問を持ったからなの。彼らは何故あの森に閉じ込められたと瞬時に分かったのか。それで彼らの部屋を調べてみることにした。少し覗いてみると、彼らはいなかった。その代わりにファイヤフライがいたわ」
言っている意味が分からなかった。
「わたしはそれに驚いて声を出してしまったの。呪われたとしたらその時ね」
「つまりどういうことだ?」
「彼らは私たちを仲間に引き入れようと企んでいたということね。ファイヤフライは彼らを倒すために小屋に来た。だけど、ファイヤフライは彼らを止めることはできなかった。ガラスには蛍が触れられない結界のようなものを張っていたのね」
「それじゃあ、海斗さんたちが俺たちの本当の敵で、ファイヤフライは俺たちを助けようとしてたってことか?」
玲奈はうなずく。
「ほぅ。そこまでわかっていたか。真っ先にこちら側に引き込んだ方がイイかと思ったが、あれ以来動きを見せなかったからな。油断してたぜ」
俺たちの後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。
「かい……と……さん」
死んだはずの海斗。そしていままでに死んだはずの4人と博士。
「奴らを殺してくれて感謝するぞ。奴らは俺たちにとって害虫だったんだ。我々を捕食した彼らは知能を持ってしまってな、一番の敵が俺たちだと知ってしまった。それで狙われてたんだ」
「それで呪いをかけてわたしたちを閉じ込めた。そして体を消滅させまいとわたしたちの体の中で再び人の形を取り戻してた。人間でないと乗り移れなかったのね」
「その通り。もし俺たちが奴らに殺されると、そのまま奴らに取り込まれ、奴らの体の一部となる。そうならないように誰かに乗り移る必要があったんだ」
俺は話についていけないでいた。
「君たちはこちら側になってもらう。我々の仲間にね。そしてこの世界全体を我々のものとする」
「海斗さん。あなたたちの企み、そして俺たちにしたこと。あの森についてすべて教えてください。俺には全く理解できません」
俺は海斗をまっすぐに見つめ、そういった。
「よかろう。どうせ仲間になるお前たちに教えても何の実害もないしな」
海斗は語り始めた。
冬休み~クリボッチ~Firefly1122です。
最終回と思った?残念、次かその次になるかも。今年中にこの小説を終わらせねば……ホラーとしては全然かと思いますが、頑張って面白く書きます。最後まで見て行ってくださるとうれしいです。
最後に閲覧ありがとうございました。次回も見てくださる方は気長にお待ちください。