第四話 死を振り撒くモノ
二体目の黒騎士、彼は右手に斧槍を握っており、先ほどの大剣持ちの彼とはまた違った間合いに気を付け無ければいけない、と思ったのだけど……。
「なーにをあっさりと倒してるんですか、旅人さん……」
「慣れてるからな」
「慣れてるって、あなた……」
取り敢えず気になる発言でしたが、それは置いておいて。
彼は二体目の黒騎士から斧槍を手に入れた後、懐から赤い玉みたいなものを取り出しました。
「なんです? それ?」
「お前が知らなくて良い代物だよ」
「……で? その私が知らなくていい物を使って何する気ですか?」
「この一帯を支配してやがるデーモンの居場所を割り出す」
「はい?」
何を言っているのか意味が分からなかったけど、直ぐに異変は起こりました。
彼の手の中の赤い玉、それの真ん中が開き、中から充血した瞳が現れて周りを見渡し始める、さっきの黒騎士から手に入れた割れた瞳とは違った不気味さ、敵意の篭った視線。
背筋に氷を詰め込まれた様な錯覚を覚えましたが、幸いにもその赤い瞳は私の事は眼中に無かったようで、私とは別の方角を睨み付けて動かなくなりました。
「…………向こうか」
「確かそっちには古い教会くらいしか無かったはずです、都心から離れてましたし、過疎化が進んで住人も殆ど居なかったと思います」
10年ほど前に何かの事件が起こり、それを契機に人が居なくなって行ったと言う話もあり、色々と曰く付きの土地です。 不思議な事に当時の資料を覗いて見ても、不自然なほどに詳しい事は記載されておらず、その村全域が立ち入り禁止。たった一つだけ当時の住人から貰った証言が残されているだけだったと記憶しています。
『屍人が目を覚ます、助けてくれ』
そんな話を旅人さんに話したのですが、無反応でした。
「ところで、その瞳はなんなのですか?」
「……知らなくて良いっつってんだろうが」
「いやいや、そう言われたら知りたくなるのが人のサガ、誰にも言いませんからささどーぞ教えて下さい」
私は前を歩く旅人さんの背中に飛び乗り、顎を肩に乗せながら彼に瞳の使い道を聞く。
ここ最近の付き合いで発覚した事だけど、彼は案外優しい上にこうやってしつこく付きまとえば根負けして色々と答えてくれる、絶対面倒だとか思われてると思うけどね。
「めんどくせぇな…………、アレはズレた他の世界に侵入するもんだよ」
「アレっ? あっさりと教えてくれるとは意外です」
「分かってて言ってやがるだろ、それ」
「それでそれで? その瞳で侵入でもする気だったのですか? そもそも侵入ってなに?」
「…………今回の事件はだな」
「へっ?」
「おまえに渡したあの瞳、アレは『死の瞳』つって元は他の世界に呪いを振りまいて霊体を呼び込む為に使うもんだ」
「死の瞳……、それでその霊体?を呼び込んで何をするんですか?」
「殺す」
「ぶ、物騒ですね……」
「呼び込んだ霊体を殺してそいつらの目から新しい死の瞳を補充する。 で、霊体を殺すと同時に呪いが世界中に更に拡散する、これを延々に続けて世界全部を呪うのが『眷属』の仕事だ」
「けん……ぞく?」
「まあ今はもう関係の無い話だし、それに今回の事件は眷属の仕業って訳じゃねぇけどな。 いや、やってる事は似たようなもんだから眷属の仕業っちゃあ眷属の仕業か? 純粋な眷属じゃねぇけど」
「じゃあ一体誰の仕業なんですか?」
「言ったろ、俺たちの不始末だってな」
「前もそれ言ってましたけど、結局なんなんですかそれ」
「……………」
背中に乗ったまま聞いてみましたが、それ以上は一切答えてくれませんでした。
そのまま暫く歩いていると目的地に到着した様で、背中から振り落されました。 まったく……この人はレディの扱いがなって無いです。
廃村となった場所、屍人が目を覚ますと言う訴えと共に封鎖された村、心なしか空気が淀んでいるような……。村全体を黒い靄が覆い、何かが腐った様な腐敗臭が漂っていますし、ただ事では無いのは分かります。
「死の瞳を落とすっつーことは眷属モドキだろうと思ってオーブ使ってみたが、使えるなこれ」
「あの、私村の外待機で良いっすか? 明らかホラーですよねこの村」
「別に構わねぇよ、死にたいならな」
良く見ると土の下から骸骨さんがぞろぞろと起き上がって居ます、手には竹槍とか薪割り様の斧とか色んなもの持ってます、いやー夏にはまだ早いですよ?(震え声)
「何故にこげな事に?」
「瘴気に当てられたんだろうよ、こいつらは俺の手持ちじゃ倒せねぇ。 銀騎士の槍とか神聖武器がありゃ話が別なんだがな」
「んな無茶苦茶な……どーするんです?」
「強行突破しかねーか? お前確か魔導師だろ、俺抱えて空くらい飛べねぇの?」
「無茶振りやめて下さいよ!! 成人男性一人抱えて飛べる訳ないでしょう!! それに弓持ってる骸骨さんも居ますから!! ふらふら飛んでるうちに撃ち落されるのがオチですから!!」
「だろーな、へっぽこに其処まで期待してねぇよ」
「ならなんで言ったんですか!!」
「偵察、行ってこい」
「はっ?」
「オーブと指輪をてめぇに渡すからそれ持って元凶ん所の真上まで行け、囮は俺がやる」
「そ、その後は?」
「何でもいい、音と光のあるもんで場所教えろ」
「うぅ……遺書書いとけば良かったです」
手渡された気味の悪いオーブと身体が透ける指輪&身体から発する音が消える指輪を装備しながら、私は泣く泣く空を飛ぶ事になりました。
世界のズレが修正されてますので、死の瞳やオーブは効果が変質してます。
特にオーブは唯の方位磁石的な物になってます、別名眷属探知機。