リリカル放浪記   作:ACS

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第五話 一つ目の歪み

 

 

空を漂うプレシア、彼女は今霧の指輪と静かに眠る竜印の指輪を付けている為、下で徘徊している屍人達に気付かれる事なく偵察を行えていた。

 

彼女の視点では特に怪しげな場所は見えていない、むしろ敵の気を引く為に真下で大立ち回りをしている放浪者の方が気になってしまう。

 

彼の強さは彼女が見てきた者の中で最強だ、敵の斬撃を紙一重で回避し、的確に斬撃を当てていく。

 

今振り回している斧槍も二、三度振るだけで自分の物にしてしまい、豪快かつ繊細な戦い方をして見せている。

 

 

屍人の群れの中に飛び込み周囲を一閃、彼らは片腕で振るわれたにも関わらず土煙りを巻き上げる程の豪剣に次々と吹き飛ばされて行く。

 

そんな中、街灯すら無い暗闇の中に紛れて弓を引く屍人が居る、1m先すら危うい闇夜からの奇襲、サーチャーを使用しているプレシアはその存在に気が付いたがその頃には既に矢は放たれていた。

 

腐り切った身体から放たれたとは思えない速度で放たれた一矢は放浪者の心臓に向けて一直線に突き進む、プレシアはこの時彼の死を予想していたが、当の放浪者はそれを半身逸らすだけで回避、その逸らした際の回転を利用してソウルからシミターを取り出して弓兵に投げつける。

 

アストラのアンドレイの手によって15回強化されたその曲剣は正に宝具と呼ばれても差し支えの無い逸品、容易く屍人の身体を両断、屍人を斬り裂いたシミターの塚にはワイヤーが結ばれており、ソレを手繰り寄せて放浪者は得物を回収する。

 

とはいえ彼らは無限に起き上がる、既に死んでいる彼らに死の概念は無いのだ。

 

 

圧倒的強さに魅せられたプレシアは、自分の様な未熟者に心配される様な実力をしていない事を理解し、自分の役割を果たす事に決め、サーチャーの操作に集中して行く。

 

 

(……………!! 見つけた!!)

 

 

この屍人に支配された村の中で一人だけ居た正常な状態のヒト、身体から黒い靄を漂わせて教会が存在したであろう廃墟に佇む騎士。

 

尖った兜と黒革を張り付けた鎧、盾を持たずに大剣とフックの様な小さな短剣を構えている騎士、彼の周りには大量の黒騎士が横たわっており、握った大剣には血が付着している。

 

何故それが元凶なのか、それは黒騎士の中から取り出された死の瞳が彼の中に入って行き、纏っている黒い靄が濃くなっていったからだ。

 

 

(コレは早いとこ旅人さんを呼ばなきゃヤバげですねぇ、と言う事でお願いしまーす)

 

(念話つーのは便利だな)

 

 

プレシアは放浪者に現在地と見たものを告げる。管理局員としては民間人に丸投げするのはどうかとも思ったが、黒騎士の鎧が山積みになってる所に態々行く気はなかった。

 

それと多分放浪者なら勝てるだろうと言う根拠の無い確信があった。

 

 

連絡を受けた放浪者はそれまで相手をしていた屍人の合間をすり抜け、一直線にその騎士が居る場所に走って行く。

 

ソウルの業によって魂から強化されている彼の身体は腐った肉の塊を容易く振り切って廃墟へと到達する。

 

 

黒革の騎士と対峙する放浪者、流石に相手にした数が多かったのか、彼の顔には多少の疲労感が見えたものの口の中に緑化草を放り込み、スタミナの回復力を底上げする。

 

黒革の騎士は剣を握った右手を前に突き出し、その上に十字になる様に短剣を握った左手を乗せ、独特な一礼をして見せた。

 

 

しかし、放浪者はその様な事には構わずに飛び膝蹴りを放ち、黒革の騎士の顔面にその膝を突き立てる。 弾かれた騎士の頭、その首を狙い放浪者の握るシミターが一閃される。

 

騎士は弾かれた上体を起こす事はせず、左手に握った短剣で放浪者の放った一閃を受け止めると、そのままバク転し、放浪者との距離を離す。

 

そして飛び膝蹴りを放った後に着地した放浪者に向け、地面の上を滑るように斬りかかる。

 

着地狩りを予想していた放浪者は地面に斧槍を突き立て、落下を止め、柄の部分を支点にしながら首を圧し折る気で回し蹴りを放ち、カウンターを狙う。

 

放たれる痛烈な蹴り、必殺の威力を持ったそれは残念ながら空を切った。

 

何故ならば、滑るように迫って来ていた騎士が左の短剣を床に突き刺し急静止を掛け、その反動を利用して斬撃の軌道を変えたのだ。

 

それによって打点がズレ、逆に彼の脚が斬り裂かれてしまう、切断されなかったのは放浪者の天賦の才による回避行動によるものと、奇襲奇策には慣れ親しんでいると言う経験によるものだ。

 

続け様に放たれるであろう斬撃を予見した放浪者はそのまま腕の力だけで中に跳ね上がり、足の傷口を治療する為に人間性を砕きながらコンポジットボウを取り出し、落下しながら3連射する。

 

此処で彼がエスト瓶を使用しなかったのは、飲む動作と視界を塞ぐ瓶が隙を生む事を嫌った為である、見たところ飛び道具は持っていないように見えるが、彼の前には斧槍が突き刺さって居るのだ、何処ぞの誰かの様に得物を投げ付けられてはたまったものでは無い。

 

落下中に放った3連射は主にそれを警戒し、斧槍の元から引き剥がす為の物、当てる気はさらさら無いがしかし単なる矢では切り払われて終わる。

 

其処で彼は火炎壺を引っ掛けた状態で矢を放っている、着弾と同時に壺が炸裂、爆煙を上げながら黒革の騎士に蹈鞴を踏ませる。

 

その姿に放浪者は相手の強靭は低く、装備も見た目よりも薄い物だと判断、着地と同時に踏み込みシミターを右手に握り直して一閃、右の大剣で受け止めさせた後に素早く騎士の脚を払って転倒させる。

 

倒れ込んだ騎士はその状態から左の短剣を突き刺し、腕の力だけで回転斬りを放とうとしたが、それを見越した放浪者によって関節をナイフで射抜かれてしまい実行出来ない。

 

そのまま放浪者は左手を突き出し、呪術を使って騎士を消し飛ばすつもりであったが、騎士の右足に下腹部を蹴り飛ばされてしまい、トドメを入れ損なった。

 

 

だが、次の瞬間騎士の身体に異変が起こる。

 

全身を駆け巡る激痛、腕に力が入らず、呼吸もままならない、ナイフを見れば血液に混じり糞団子が傷口に入っている、予めナイフに塗ってあったのだろう、それによる猛毒が彼を蝕み、立ち上がろうとした身体を再び地面に打ち付ける事になる。

 

 

Auf Wiedersehen(あばよ、くたばっちまいな)!!」

 

 

騎士が最後に見たものは、混沌の炎を宿した大火球を投擲する放浪者の姿、その炎が彼を焼き尽くすのは必然であり避ける事も逸らすことも出来ぬと悟った彼は潔く敗北を受け入れるのであった。





ダクソⅢからファラン先生登場、墓王の呪いによって一時的に時空が歪んでいるので、不死隊の一人が眷属として召喚されました。

これからもこんな感じで他のソウルシリーズのボスやNPCが出現します。
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