地獄学生と悪魔の学園   作:ミッツ

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 やっちまった・・・
 原作読み返して響きで決めたこの主人公の主人公の名前と、ぬ~べ~の主要登場人物の名前が完全に被っている事に気がつきました。
 なので今回から主人公の名前が変わります。
 これまでに登校している文も既に修正してあります。
 玉藻の人間の時の名前とかしらねえよ・・・


デート、頑張って下さい

 オカルト研究部に入部してからの3週間、俺たちの学園生活は驚くほど平穏に過ぎていった。

 懸念していたように、俺と風応丸はオカルト研究部に入部したことは上級生を中心に少なからず学園内の話題となったが、リアス先輩が手を打ってくれたのか、変な噂を流されることもなく必要以上に流れる事も無かった。

 そんなこんなで今日も今日とていつも通り風応丸と共に放課後になると部室に向かうだが、本日は俺が日直だったため風応丸には一足先に部室に行ってもらっていた。日直仕事を終え一人階段を降りていると、踊り場でここ最近見慣れた赤シャツを見つけた。

 

「あっ、イッセー先輩。」

 

「おう、優介。いまから部活か?」

 

 そう答えたのは俺が入学式の時にぶつかった先輩、兵藤一誠先輩だ。入学式の翌日、先輩は他の二人と共に俺たちの教室に来ると、周りに他の1年生がいるのにも拘らず、頭を下げてぶつかった事を謝ってくれた。更に俺が県外からの入学生だと知ると、学校や町を案内してくれると約束までしてくれた。

 この事からも分かる通り彼は非常に人が良く親しみやすい、名前の通り誠実な人間だ。だからなぜあの時大勢の女子から追っかけられてたのかが謎で、やはり妖怪の仕業か?などと思っていたんだけど…まあ、その謎はその日のうちに解けた。

 

「はい。そういう先輩は1人ですか?珍しいですね、覗きに行くのに松田先輩と元浜先輩がいないなんて。」

 

「おい!先輩に対してその認識はあんまりだろ!俺だって覗きやエロから離れる時はあるんだからな!」

 

「いや、校舎の案内と称して覗きスポットを連れ回した先輩が言っても説得力無いですよ。」

 

 信じて着いていった先輩は、覗きの常習犯かつ性欲の権化のような人達だった。

 そのせいで俺まで女子から追い回されたあげく、エロ三人衆の舎弟なんて噂が一部で流れてしまったのだ。

 幸いオカルト研究部に入部した話の方がインパクトが強く、あまり広まらなかったけど。

 

「今回は本当に違うんだって!ほら!この前ちょっと話したじゃんか。彼女が出来たって。今日はこれからデートなんだよ。」

 

「ああ、確か天野さんでしたっけ?」

 

 写真でしか見てないけど、控え目に言っても可愛い子だと言える。なんでも彼女の方から告白してきたそうだ。

 なんでこんな子が男子高校生の煩悩を煮詰めたような人を!?と思わないでもないがイッセー先輩も見た目は良いからなぁ。

 もし彼女がイッセー先輩の外見のみで一目惚れしたのだとしたら、内面を知って幻滅しないことを願いたい。

 

「頑張って下さいね先輩。せっかく出来た彼女なんですから、おっぱいばかり見てたら嫌われちゃいますよ。」

 

「ちょっと待て優介。確かに俺は女子のおっぱいが好きだ。だがだからといってそれだけで女の子を評価することなんてしないぞ。」

 

 そう言ってイッセー先輩は決め顔を作る。

 

「いいか、女の子にはおっぱい以外にも色々な魅力がある。顔、性格、色気、声、匂い、尻、太もも、うなじ、手首、腰、足首、二の腕…」

 

「ほとんど外見じゃないですか…」

 

「つまりだな、おっぱいというのは女の子を構成する一部分に過ぎないということだ。俺は女の子の一部分でおっぱいが一番好きというだけで、おっぱい以外の項目もしっかり見ているぞ。そして俺は大きいおっぱいだろうが、小さなおっぱいだろうが平等に愛せるつもりだ。そう!天はおっぱいの上におっぱいを作らず、おっぱいの下におっぱいは作らない!」 

 

「とりあえず先輩は慶○義塾の関係者の皆様に土下座したほうがいいと思います。」

 

 果たしてこの短い会話の中で何回おっぱいという単語が出てきたことか。

 なんだかんだで自身のおっぱい愛を高らかに宣言することになった先輩に、流石の俺も少し引いてしまう。

 

「先輩、先に言っておきますね。人生は長いんですから、いずれまたきっと先輩のことを好きだと言ってくれる人が現れますよ。だから天野さんのことは早く忘れましょう。」

 

「何で俺が振られたみたいな話をするんだよ!?縁起が悪いだろうが!」

 

「いや、今日の帰りには先輩の変態性を目の当たりにした天野さんから切り出されるんじゃないかって…」

 

「俺だって少しは自重位するわ!付き合いだしたばかりの彼女にエロ話振るなんて出来ねえよ!」

 

 そう叫んだ先輩だったが、俺に向き直るとほんの少し真剣な表情を作った。

 

「それに夕麻ちゃんは俺の彼女なんだ。こんな俺の事を好きって言ってくれた。絶対に傷つけたく無いし、出来ることなら俺といっしょに笑ってほしい。その為に俺は全力を尽くすさ。」

 

 …普段からその顔が出来たなら、いくらでも彼女が出来るんだろうけどなぁ。

 俺は心中でため息をつく。

 

「その言葉、嘘にならないようにして下さい。応援してます。」

 

「おう、ありがとな。お前も部活頑張れよ。」

 

「はい。」

 

「そんで出来れば明日、リアス先輩と姫島先輩のエロ写真を…」

 

「先輩!自重自重!」

 

「ははは、冗談だって。」

 

 そう軽口をたたき、イッセー先輩は正門から出て行った。

 俺は先輩の初デートが成功する事を祈りながら、その後姿を微笑ましい気持ちで眺めていた。

 それが、人間である兵藤一誠を見た最後の瞬間になるとも知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、現在の魔界は魔王は先代の血筋ではなく現在最強の4人の悪魔がそれぞれ魔王として君臨し、魔界を統治しているって事ですね。」

 

「ええ、そのとおりよ。そしてその下には72柱と呼ばれる悪魔の中でも名家の上級悪魔一族が連なるわ。でも72家中39家は先の大戦の影響で断絶したわ。」

 

「39家…半分以上か…」

 

 俺はリアス先輩から聞いた内容をノートに書き記す。俺の隣の椅子に座る風応丸も同様だ。

 俺たちは現在、オカルト研究部の部室でリアス先輩発案、講師による悪魔社会の講義を受けている。ついこの間まで悪魔について断片的な知識しか有してなかっただけに、この申し出は非常に有難かった。

 今のところ駒王町では目立った異変は起こっていないこともあり、先輩たちは悪魔家業の傍ら交代で俺と風応丸の教育を行っている。研修期間のようなものだ。

 今はリアス先輩が担当する時間であり、悪魔社会の現状について大変わかりやすく教えてもらっている。

 ただ一つ問題があるとすれば、先輩が雰囲気作りと称して着込んだ女性用スーツから止め処なく色気が溢れていることだ。

 超ミニのタイトスカートから伸びた健康的な太もも、布越しでもはっきりとわかる形のよい御尻のライン、そして上着のボタンをこれでもかと押し上げる胸部!

 それは紛れもなく、どスケベ女教師スタイルであった!

 直前にイッセー先輩と話したせいか、どうしてもそちらに目が行ってしまい気が散る。

 そうして男子高校生の劣情をもて余していると、リアス先輩から肩を叩かれ「集中しなきゃダメよ♥」と意味ありげな顔で言われた。猛烈に机に頭を打ち付けたくなった。

 そんな俺の様子に気づく素振りも見せず、風応丸が元気よく手を挙げた。

 

「リアス部長、現在の魔王は先代の魔王の血筋では無いと言うことについてなんですけど、それについて先代魔王の血筋の悪魔たちは何も言ってこないんですか?」

 

「いい質問ね。実のところ現代の魔王を決めるに当たり、大戦による魔界の衰退、そして先代4大魔王の死亡によって早急な新魔王の選定が求められたの。もはや、血筋に拘る事さえ出来ないほどにね。そこで選ばれたのが大戦で大きな功績を残した若手実力派の悪魔だったのだけど、先代魔王の血筋に当たる悪魔たちからは反発が出たわ。魔王の血筋を受け継いできた自分たちこそ魔界を統べるに相応しいとね。そこに保守派の悪魔たちが賛同し、旧魔王派と呼ばれる一派が生まれたの。」

 

 あ、ここまで来れば後のことは何となく想像がつく。後継者争いによって派閥ができれば後に起こる事などほぼほぼ決まっている。

 

「そして始まったのが血筋を重んじる保守的な旧魔王派と、実力主義で革新的な現魔王派による内部抗争よ。魔界ではこの内戦も一連の大戦に含める向きがあるわ。そして、この争いに勝ったのが…」

 

 リアス先輩がそう言いかけた所で部屋の一角の魔方陣が光りだした。悪魔を呼び出そうとする人間からの合図である。

 

「ごめんなさい、どうやら仕事が入ったみたい。中途半端になっちゃったけど、時間もいい頃合だし今日は此処までにしましょ。」

 

「分かりました。お疲れ様です。」

 

「ええ、お疲れ様。」

 

 そう言葉を交わすと、リアス先輩は魔力を使って制服姿に戻ると魔方陣の上に立ち、姿を消した。依頼主の元へ転移して行ったのだ。

 

「じゃあ、俺たちも家に帰るか。」

 

「待って下さい。帰る前にスーパーによってもいいでしょうか?。お米の量が少なくなっていましたし、夕食の食材も買っておきたいので。」

 

「ん?夕食くらい態々スーパーに行かなくても近くのコンビニで済ませりゃいいじゃないか。」

 

「今の時間ならスーパーのタイムセールに間に合うんです。それにお金と若様の健康の管理は社長から任されています。こういったところで手間を惜しんでは社長からの信頼を裏切ることになってしまいます。」

 

「だからってタイムセールって…お前ますます人間っぽくなってきたな。」

 

「妖怪の様な人間もいるんです。人間味のある妖怪がいても良いでしょう。」

 

 …まあ、体に影響が出ない範囲内で妖怪が人間社会になじむのは問題ないか。

 

 

 

 

 

 その後、学園を出た俺たちは学園から程近いスーパーに向かうと、目的の食材を無事手に入れることが出来た。

 

「とりあえず、必要なものはこれで良いか?」

 

「はい。帰ったらすぐに食事の準備を始めましょう。」

 

 そう話しながら俺たちは駒王町でもっとも賑やかな通りを歩いてくる。

 通りには仕事帰りのサラリーマン、下校中の学生、買い物中の主婦の姿が多く見受けられる。

 時刻は6時を過ぎようとしている。すでに日は沈みかかり、夕焼けが町をオレンジに染めていた。

 一見すればそれは美しい日常の一場面に過ぎないが、一方では昼と夜が交わる時刻、『逢魔が時』を示すものでもある。この時間帯は人ならざるもの達が最も活発になる時間の一つだ。

 

「そういえば、今頃イッセー先輩はデートしてる時間かな?」

 

「イッセー先輩というのは、あのよく分からない霊力のようなものを宿していた方ですよね?」

 

「そう。結局どういった物かいまだに分からないんだよな。もしかしたら悪魔側の物かもしれないから、今度部長に聞いてみようと…ッ!」

 

 その時、俺は左手に僅かながら魔力の反応を感じられた。そして…

 

「きゃああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

 

 突然俺たちの背後からけたたましい叫び声とともに、何かがぶつかる音が通りに響いた。

 慌てて後ろを振り向いた俺たちの目に飛び込んできたのは、ブレーキを掛ける事無く人を撥ねながら此方に突っ込んでくる大型トラックだった。

 

「なっ!?」

 

 反射的にその場を飛びのくと次の瞬間俺たちが立っていた場所をトラックが走り抜けていく。だがその先にあったのは、突然のことに足が竦み、身動きが取れなくなった若い女性の姿だった。

 

「!にげっ」

 

 グチャッ!

 

 俺が言葉を発するよりも早く、トラックは女性を巻き込みビルの壁に激突し漸く動きを止めた。後に残ったのはトラックに撥ねられ呻き声をあげる負傷者、あまりの出来事に呆然とするほかない群集。そして、物言わぬ躯となった犠牲者たちだった。

 

「おい!誰か救急車を呼べ!」

 

 誰かがそう叫んだのと同時に現場は阿鼻驚嘆の地獄絵図となっる。近くの負傷者を介抱する者、動くなくなった犠牲者の元で泣き叫ぶ者、その様子をカメラで取る者。

 そんな中、俺はふらふらと前面が押しつぶれたトラックに近づいていっていた。

 

「若様…」

 

 風応丸が声を掛けるが俺は相手にせずにさらにトラックに近づく。

 トラックと壁の間には既に血だまりが出来ており、その中心部では烏を想わせる漆黒の羽が、ただ静かに浮かんでいた

 


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