やはり、俺がもう一人の天災なのは間違ってる(凍結中、リメイク版を作成中) 作:形右
遅くなりましたが続き投稿です。
「ふざけるな!!このクソ野郎!!」
そいつの拳は俺の左の頬を正確にとらえ、俺を殴りつけていた。しかし、俺は唐突な衝撃で地面に倒れることはなかった。
なぜなら、先ほどの神裂とかいうのとの戦いでボロボロになってしまったらしい右手で俺の胸倉をこいつががっちりとつかんでいたからだ。
いったい何が起こった!?驚愕を露にする俺に対して、逆にその過剰とも言える反応に向こうはかえって戸惑ってさえいるようだ。
俺の周りに展開されているはずの防御壁はこの男、上条当麻によってあっさりと突破されてしまった。
確かに以前、突破されたことはある。あるが、あの時と感じが違うのだ。
そう……、これはまるで……自分の力をすべて根こそぎ削り取られた……もっとシンプルにすべてを奪われたかのような……そんな感覚だ。
実際、今俺の力は
―――――――俺の力は失われていた。
しかし、
「なんで、そんなことが……言えるんだよ。お前には
涙を流しながら、俺に向かってそう叫ぶそいつは本気でそんなお人好しなんて言葉じゃおよびがつかないほどの、聞いていて吐き気がするほどの正論をそいつは言ってのける。
本気で、心の底から、誰かを思い、そのたった一人の諸王所を今この瞬間ものしかかっている
力が足りないから、救えない。自分の目の前に現れた奴らは今自分が最も欲しているものを持っているのに、誰も抗おうとしない。あっさりと諦め、受け入れ、切り捨てようとする。
無理を言ってるのもわかってる。これが八つ当たりだってのもわかっている。
でも……、それでも。心の中に浮かび上がるこの怒りと、
「どうにかできる可能性だってまだあるだろ?なのになんで誰も救おうとか、思わないんだ?もしも……。目の前で苦しんでる人がいたら、自分の手が届く範囲にいるなら、手を差し伸べてやればいいじゃねぇか!それができるほどにお前たちは強いんだから!俺なんかじゃ、絶対にできないことだって出来ちまう手を持ってるんだから!!」
そう吐き捨てる少年に、八幡は二つの感情を抱いた。
一つ目は、知りも知らない誰かのために本気になれるやつで、悪意に真っ向から立ち向かおうとしているすごい奴なのだということ。
二つ目は、その正義の味方面した、吐き気のする博愛主義に対する苛立ちだ。
「……一緒にするな」
「何?」
「一緒にするんじゃねぇよ。誰もがテメェと同じように知りもしない誰かのために全力を注ぐわけじゃないだろ。なんで、見ず知らずの他人が、そいつら事情で勝手に苦しんでるのを見たからって助ける必要がある?それが正論でも、正義でも、それを俺たちが必ずしなくちゃいけないわけがどこにある。手が届こうが届きまいが、なんで誰でも彼でも救わなくちゃいけない。路地裏で、通りがかりに不良を一掃するこみたいに『手を貸した』だけならまだしも、なんで、全て解決してやらなくちゃならない。いいか、何度でもいうぞ。どこにそんなことをする理由がある?」
その言葉に上条当麻は、自分の言葉で答える。
「理由か……?そんなもん、決まってるだろ。差し伸べられる手があって、そこに悲しいことを抱え込んじまっている奴がいるからだろうが。独りぼっちになって、理不尽な目に合うのは……辛すぎるだろ。悪いことをしていたわけでもなく存在しているだけで、厄扱いなんてされることだってあるんだ。
「……、」
こんな言葉、なんでもないはずだ。ただの戯言だ。
でもなぜだろうか、コイツが言っていたこと。
―――――――脳裏に浮かぶあの日々。存在することが辛かった。いつも、いつも、実験動物でしかなかった。人体実験モドキは日常茶飯事。繰り返される虚無の日々。そこから抜け出した、自分を自分として認識してくれる
コイツにもそういうことがあったのか、どうなのか。それを知る由もないが……。
何かしらの『闇』を抱えていることだけは分かった。
この二人はどこか似ている。
ただ、違うのは――――――――光をつかむために他人を信じ切ることにしたか、光を得るために他人を疑い続けることにしたかどうか。
ただ……、それだけだ。
「……お前みたいなやつがすべてじゃないだろ」
「そう、だけど……。でも、それでも!温かいものを知っちまったら、俺はもう、あの苦しみを他人が感じていることが見過ごせない。それに、お前だって……。そういうのを与えてくれる奴がいるんじゃねぇのかよ?」
確かに知っている。知っているのだ。人一倍冷たい所にいたのだから……。
苦しさも、同時に感じた虚無感も、抜け出せたときの喜びを。
「……。」
どうするべきなのだろうか?
切り捨てるのが普通だ。
でも何だろうか?この、根本を揺さぶられるような感覚は?
「知ってるなら……。もう一回、信じてみろよ簡単な事だろ」
「信じて、どうする。裏切られたら、そこまでだろ」
「なら――――――もう一回信じるだけだ」
何を言ってるんだコイツ、狂ってるんじゃねぇのか?信じて、裏切られたら……また信じる?
あり得ない。そうとしか思えない。
「それにさ、俺思うんだ。誰かを疑い続けて、裏切り続けた人間よりもさ……信じ続けて馬鹿を見ちまった人間の方が―――――――」
そいつは何の迷いもなくこういった。
―――――――なんかいいだろ?、と……。
***
八幡は告げられた言葉の意味を考え続けていた。
本来なら、このまま、立ち去ればいいのに。それですべて終了。完全デリートで済むのに。
なのに、動けない。
体が動かない。理屈ではなく、本能が動きを抑えているような状態になる――――――なんてこと…この学園都市に住んでいるものなら大体の人間が鼻で笑い飛ばしそうなものを今……八幡は現在進行形でその身に感じていた。
(帰ればいい。立ち去ればいい。それで終わりなんだろ?いつも通りだろうが?なのに、なんで動かないんだろうか……。動けないわけじゃない。でも、この場を立ち去ることを拒んでるようなそんな感じだ)
自分の体が、八幡の意識とは別の意志を持ったかのようにせき止めているような感覚を感じる。
どうしてなのか?
どうすればいいのか?
――――――――――――――――どうしたいのか?
それが、分からない。なぜこんなにこんな出会って数時間も経っていない他人の言葉にこんなに振り回される?疑似体験による既視感だとでもいうのか?
何が何だか、どうしたいのか。とにかく思考がぐちゃぐちゃで、何度も何度も、同じことを考えては分からないという結論に至る。
現実では数分にも満たないだろうが、思考の世界で、長い時間を過ごした八幡は、自分が結局どうしたいのか、その答えが未だに出ない。
そもそも、いきなりすぎるのだ。
『魔術』だの『魔術師』だの『力』だの、再び破られた『絶対』だの『信頼』だの『温かさ』だの『どうしたいのか』と『その答え』だの。
一度に起こりすぎなのだ。
纏められない。把握しきれない。
答えを出せない。
何するべきか、というか……そもそも自分が、どうしたいのかがもわからなくなった。
そんな迷いの中にいる八幡に向けて当麻はこう口にした。
「確かに、いつでも都合のいいヒーローではいられないんだろうけどさ……。それでもいつでも自分の全力を使って誰かの苦しい顔を笑顔に変えられてさ、それでありがとうとかって言ってもらえると、すごくうれしいんだ。だからだと思うんだ、誰かのために動くってのはさ」
「……、」
そうか、と口には出ないが……。出る前に消えてしまったようなその言葉は、八幡の意識に目の前にいる少年の存在が刻まれたような感じがして―――――――――――少しだけ、目の前にいる上条当麻。由比ヶ浜と出会ったときにも感じた『他人』というやつの印象がどんどん変化していく。
今まで感じていた『他人』のイメージが消えて、別のイメージが心の中に入ってくる。
そして――――――――――
――――――――――――少しだけ。本当に少しだけ、見てみたいと思った。
この
その果てが、
どうにも最近出会う『お節介な連中』が見せてくるもの、新たな『他人』のイメージというやつを、確かめてみたくなった。
だから、こちらも少し、感情浮き出しでぶつかってみることにした。
これから八幡は上条当麻(ヒーロー)の行く末を見てみようと感情をむき出しにして、そいつがいかにして信念を貫くかを見極めていくことになります。