やはり、俺がもう一人の天災なのは間違ってる(凍結中、リメイク版を作成中) 作:形右
それではどうぞ。
ある日、とあるマンションの一室にて――――
もう朝だというのに、いまだに布団の中で眠りこけている少年がいた。
彼の名は比企谷八幡。この街の
彼もこの学生の街に住んでいることからもわかるように学生なのだが、彼の在籍している《長点上機学園》という高校はこの学園都市において能力開発のナンバーワンと歌われるほどの名門校だが…能力開発に重点を置いているせいか、所属している能力者も変わり者が多い。
かくいうこの少年もそんな『特殊』な例のうちの一人なわけではあるのだが…。
ともかくだ。そんな名門に通っているこの少年がなんでこんなズボラ丸出しで生活しているのかというと、その理由は先ほども述べた通っている学校の校風に関係してくる。
そもそもこの《長点上機学園》という学校は能力、ぶっちゃけると
そんなわけで強ければ別に普段は何してようが研究さえさせてくれれば構わない、というなんとも言えない学校なのだ。
八幡がこの学校を選んだ理由はこの辺りにある。本当は適当に選ぶつもりだったのだが、通常授業免除で特別クラスとやらのためにクラスメイトもいないらしくとても自由……とのことなので楽でいいかとそこを選ぶに至ったのだ。
しかし、彼はそれの通り勝手に過ごしている。だが、その勝手もそう長くは続かないだろう。
何故かというと、この家にともに住んでいる彼の妹がそろそろ飛び込んでくるだろうからである。
***
「お兄ちゃーん!!」
ドガッ、となんとも痛そうな音を立て兄にダイブする妹。
兄の方もそのフライングボディアタックをまともに喰らい、その衝撃にたまらずグフッ、と言う呻き声を上げながら起き上がる。
「……妹よ、もう少しまともに起こしてくれ。ていうかそもそも俺起きる必要ないよね?」
「またそーゆーこと言う…いくら能力が強くて奨学金が高くたってちゃんとした生活は送らないとだめだよ~?」
妹こと比企谷小町は兄を諭すような調子で言い返してくるのだが、その顔はいたずらに成功した悪戯っ子そのもので心底嬉しそうな笑顔を浮かべている。
そんな妹の様子に兄の方はため息を吐き、しぶしぶ布団から出る。正直これ以上言っても意味ないことをこれまでの経験+兄としての第六感で判断した八幡は面倒だ、とぼやきながらもリビングに足を運ぶ。
リビングにはすでに朝食が用意されていたので八幡はテーブルに座ると手を合わせていただきます、と言うと食べ始める。
「どう、美味しい?」
「ああ、うまい。いつもありがとな」
「気にしないで~お兄ちゃんと一緒がいいんだもん。あ、今の小町的にポイント高い♪」
その一言がなければな…、と口の中でつぶやきながら朝食を食べ進める。そして食べ終わると、八幡はごちそうさま、と言うと席を立ちソファに座るとテレビをつけて眺め出す。
「はぁ……お兄ちゃんいいよねぇ、通常授業免除だもんね」
「ああ、楽で助かってる――――まぁ、俺は『異質』だからそうなってるだけだけどな」
「……特殊なのは小町も一緒だよ?」
小町は困ったような笑みを浮かべながら問いかけるように聞いてくる。彼女もまた強力な能力を有していて、この
「だったら、俺はその中でも異質なんだろうさ……。まぁ、会ったことのない他の
「そうかなぁ……あ、でも小町は第三位と第五位には会ったことあるよ?同じ学校だし」
「へー……」
第三位と第五位ねぇ…、八幡は記憶の中にあるこのレベル5の能力を思い出してみる。
確か第三位の方が
とはいえ、そんなこと自分には関係ないかと一人納得しテレビの方に視線を戻すと、学校へ向かう妹に行ってらっしゃいを告げ静まり返った部屋の中でなんとも言えない気分になっていた。
しかしそんな静寂を打ち破るように、彼の携帯が着信を告げる。そこに表示されている相手の名は――――――
この名で登録されているのは彼が苦手としている相手の一人、正直関わりたいとは思わないが……とはいえ相手が相手なだけにそれ相応の〝敬意〟というやつは示すべきだろうからこそ、八幡は通話ボタンを押した―――――
「……もしもし」
(やあ、『奇術師君』)
「何の用だってんだ?統括理事長さんよ」
そう、この相手はこの学園都市の支配者……【アレイスター=クロウリー】。この都市を作った男である。
(そう卑下にしなくてもいいだろう?それにしても、ほかの学生たちがもうすぐ夏季休暇だといって浮かれているが……君の場合はいつもと大して変わらんな?)
「……ああ、俺には『普通』の基準は適用されないんだよ。どうせ『異質』だからなほかの一般民衆と一緒にするなよな……」
(ふむ、まあいい。そんなことよりも、本日君に連絡したわけだが………)
そういって話の本題に入ろうとするアレイスターに八幡の表情は曇りを増していく。
「……」
(率直に問う、君は興味はあるかい?【無敵】…いやもっと【絶対的な存在】に)
「はっ、何を言い出すかと思えば……答えは――――――お断りだ」
(そうか、しかし第一位がすでに動き出している。と言ったらどうかね?)
そう告げたアレイスターの声には何の抑揚も感情も存在していないように聞こえるが、八幡にはこうして話しかけている時点で面白がっているように聞こえてくる。
「……お前の
(……君がそう思いたいなら、それでもかまわないがね)
「実際その通りだろうが?」
(まぁいい、また話をするだろうからな。おそらくは『裏』で)
「……ちっ」
(ではまた、今度はおそらく……深く暗い『闇』の中で)
そう言い残すと通話は終了され、プープーという音だけが聞こえてくる。
「くそっ……!」
八幡は悔し気にいらだちを吐き出し、もう二度と誰かの引いた
しかし、一方その頃『窓のないビル』では……。
(もう一人の【天災】比企谷八幡――――もっとも異質な能力者、彼は私の……いや、違うな。何者からも縛られまいとしているようだが―――――)
アレイスターはさかさまに培養器のようなものの中で、普段薄笑いを崩さないその顔を口角を少しばかり上げると、この場にいない【天災】に向けてこうつぶやいた……。
「――――君の〝運命〟とやらは既に動き出しているようだがね?」
この男の告げた言葉は、確かに物語が〝動き出した〟ことを物語っていた。
そして、この都市最大の【天災】の闘いの幕が今、『表』と『裏』で引き上げられたのだった―――――
***
第七学区の市街地にて
比企谷八幡はあの電話の後、何かを振り払いたいような衝動に駆られて外へと出た。
何かむず痒いような、その何かが何なのか分からないまま街中を歩いていた。
(……外に出たはいいが、結局なんも変わらねぇな)
行く当てを求めているというわけでもないが、何一つ変わらないその他大勢が景色と同化して流れていく……。ただ、それだけ。
ひどく、詰まらない。
そんな虚無感に当てられ、暇をつぶせるものを探し、彷徨うだけ。本を読んでも、ゲームをしても何起こりはしない。
モヤモヤと心にかかった霞は晴れることはなく、心に居座ったままだ。
そして時刻は昼時に変わり、待ちゆく人々もそこらの飲食店へと消えていく。生物である以上は栄養を取り入れなければならない、それは『特殊』な彼であっても同じこと。
別に誰もいない部屋に帰って作るのも面倒なので手近なファミレスへと足を運ぶ――――
――――そんな些細なことから、少年の物語は少しづつ動き出していくのだが、そのことを、少年は起こる瞬間まで気づくことはなかった……。
次回からヒロインの一人を出そうと思います。
ですが完全に一人に絞り切るのも面白くないので、他にヒロインは出ると思うのでそのあたりはご理解のほどをお願いいたします。