やはり、俺がもう一人の天災なのは間違ってる(凍結中、リメイク版を作成中) 作:形右
鬱憤を晴らすべく街中へ来たものの、大して目的も無いため何をするでもなくブラブラするだけの八幡は何か興味を惹かれるものが無いかと辺りを見ていたが……結果として何もなかった。
だからそんなわけでいろいろと回っては見たもののたいして面白くもなかったが、昼時になれば昼食くらいはとるしかない。
誰もいない部屋に帰って作るのも億劫なので近場のファミレスに入ったのだが……。
店に入ろうとすると、何やら入り口で何やらたむろっている連中がいた。
見たところ女の子をナンパでもしているのだろうか?
まぁなんとも分かりやすい……いかにもナンパ中の不良ですと言わんばかりだ。
この都市で言うところの、所謂『スキルアウト』というやつだか……。
正直色々と疑問に思うところはある。
例えば何でこんなとこで通行の邪魔してるのかとか、何で真昼間からナンパなんてやってるのかとか。
あと何より思ったのが、自分と同じくらいの少女がなんでこの時間にファミレスにいるのか、とか。あ、ほとんど言いたい文句だったね。てへぺろ♪…うん、キモいな。
「あぁ?何見てんだよ!?」
店に入れずに突っ立って文句を頭に浮かべていた八幡を見て、そちらをジロジロ見ている様に思ったのか、不良の一人が此方に意識を向けて来た。
普段ならばこんな連中に関わるのすら面倒なのでスルーするか別に、と一言告げて素通りでもする所だが……生憎と先程の立ち読みやゲーム程度でモヤモヤとした感情は消えておらず、苛立ちとなって八幡の虫の居所が悪くしてしまう。その所為か八幡は何時より好戦的になってしまっていた。
「別に……見てた訳じゃねぇよ。ただ、真昼間からナンパなんてやってる馬鹿が溢れて通行の邪魔だと思ってただけだ」
「んだとコラァ!?」
別に大して相手に怒りを覚えられる程の台詞では無いとは思うが、馬鹿にされてるのは明らかな分単純な売り言葉に買い言葉が地の不良たちはこの喧嘩を買ってくれた様だ。
内心鬱憤を晴らす相手が出来て歓喜しそうな八幡だが……此処で目立つのはあまり得策では無い。大方向こうの連中は人目のつかない所へ誘導を図ろうとするだろうから、取り敢えずそれに乗ればいいと八幡は思い、相手の出方を待った。
「いい度胸だ、ちょっとツラ貸せや」
その言葉を口火としてヒヒヒッ、という下衆な笑い声と共に八幡と少女が連行される。
少女というギャラリーが介入するのは好ましくは無いが…別にヒーローの真似事をするつもりは皆無なので、別にいいだろう。
―――――どうせ、『異質』からは皆が目を背けるのだ。すぐに恐怖して逃げ出すにきまっている。何故なら、今から始まるのはヒロインを助けるヒーローのギリギリの戦いでも、男気溢れる様な奮闘でも、ましてや敗北などでは無い。
そして、路地裏。人目に付かない死角の場所。
「へへっ、ヒーロー気取りはどうなるか教えてやるよ」
「女の前でカッコつけたのが命取りだったなぁ?」
「もうだんまりか、怖くてぶるってんのかぁ?」
そうやってニタニタと笑い声と共にウザったい言葉をかけてくる相手に、嘗て出会った研究者たちの顔がダブる。
ああ、分かった気がする……。何故今日こんな茶番に首を突っ込んだのか、その理由が。
(ああ成る程、あの薄ら笑いを消しとばしたかったのか……俺)
「そんじゃまぁ……覚悟してもらおうかぁ?」
「そーそー、死ぬ気で耐えてくれよぉ?すぐに終わったらつまんねぇからーーよ!!」
そう言って八幡に向けられた拳は八幡には届かず、何が起こったか分からないうちにボロボロになっていた―――――
「うぎゃアァアアア!?!?」
「な、何しやがったコイツ!?」
「の、能力者か!?」
「せーかい。じゃあ……そんな訳で―――――」
――――――精々楽しませてくれよ?
そう告げられた瞬間、不良たちは自分たちが捕食される獲物の側だと理解した。
それはあまりにも遅すぎる理解だった。
出荷寸前の家畜が『自由』を知る位に遅かった。
「あんだけ大口を叩けるぐらいだ……死ぬ気で耐える見本になれる位には耐えて見せろよ―――――なぁ?」
その笑った顔に恐怖したが、それと同時に逃げる気を失ってしまうほどに目の前の光景が信じられなかった。
何せ『光の翼』を展開させ此方を狙っている捕食者がいるのだから……。
もうできることなど、精々死なないことを祈るくらいでオカルトとは縁の無いこの都市で神にすがるなど愚の骨頂でしか無いと痛感させる様に、《恐怖》とそれに見合った《衝撃》が彼らを襲い、意識を刈り取ったのだった。
***
静まり返った路地裏で比企谷八幡は目の前に転がっている不良たちを見てつまらない、と吐き捨てた。
結局のところ、不良どもは早々にノックダウンしてしまい八幡も特に殺す気もなかったので特に追い打ちをかける気にもなれなかった。
(つまんねぇな……まだ足りねぇってのに)
ぼんやりとそんなことを考えながら、八幡はそこら辺に転がっている不良たちを見て、こんなことしても特に何も得られないのにな……と何度再確認したか分からない事実を噛み締めた。
とどのつまり、八幡に抗える者――対等に闘える存在などはそう易々と見つかる訳でも無く、この心のモヤモヤは永遠に続いていき、決して晴れることなど無いのだろうとそう結論付けその場から立ち去ろうとした――――――――その時だった。
「あ、あの……」
背後から誰かが声をかけてきたのは……。
***
不良どもを伸して暫くぼんやりしていた八幡に対して、声をかけてる存在がその場にいた。
「あ、あの…その……」
先程の不良どもと一緒に、というか元々の原因的な要素だった少女だった。
というか逃げてなかったのかよ……。
第一印象――――何だコイツ?
(先程の
八幡の頭のなかは疑問符で溢れていたが、少女の方はというと此方に御構い無しに何かに八幡に告げようとしている様に見える。
「えっと……その…た、助けてくれて……有難う!」
「はっ?」
助けた?有難う?……ああ、確かにそう見えなくも無いのだろうか、確かにこの少女に危害を加えてはいないし、ファミレスで絡まれてたことから成り行きとはいえ助けた様に見えなくもないかもしれない――――
――――だが、別に助けたわけではない。偶然入ろうとした店の入り口を塞いでいた馬鹿どもが勝手に火のなかに飛び込んできただけ、ただそれだけのこと。で、その馬鹿どもの矛先が〝偶然〟コイツから
そんな訳で、八幡はこの少女を追い払う様に言葉を投げかける。
「別に、助けようと思ってたわけじゃねぇ…偶々あそこの店に入ろうと思ったら、偶々入り口を塞いでた馬鹿どもに公共マナーを教えてやっただけだ」
「公共マナーって……さっきまで相手をボコボコにしてたくせにそんなことゆーの?」
「ほっとけ…てか何で話しかけてくんだよ。あんな能力見せられたら普通逃げるだろうが」
「そうかな、あたしはそんな風には思わなかったけどな〜……?」
「はっ?」
思わず間の抜けた声が出でしまったが……。本当に何なんだ?『異質』と言わしめられて恐怖の様な負の感情を呼び寄せるこの力を見て、そんな風には思わない…だと?
「どしたの?そんな固まっちゃって?」
「…怖くねぇのかよ?『アレ』を目の当たりにして」
「全然、寧ろキレーだったし!」
益々変な奴。というか綺麗だと?なに言ってやがるんだコイツは……。
世界一科学の進んだ都市の研究者たちがお手上げになり、挑む者を全てなぎ払い《拒絶》するこの力を見て…怖くない、挙げ句の果てにはー―――――綺麗…だと?
(何だってんだよ…)
全くもって理解できない。目の前の少女の言動の一つ一つが、全くもって理解できない。
いつだって、大切な“家族”である妹以外からこんな『負』以外の感情など…向けられたことがない。
だからだろうか、比企谷八幡という存在をこんな風に邪気のない目で眺めてくる別の存在。
所謂『他人』のカテゴリーを【天災】と呼ばれるこの少年は、初めて認識した気がした。
これまで出会って来た者たちは他人とさえ呼べない。はっきり言ってただの風景の一部の様に見えていた。
ただ存在を自分たちの『道具』・『素材』位にしか思っていない、そんな存在だった。
だが、今この瞬間―――初めて普通の『他人』というものに出会ってしまった様な気がした。
どう反応すればいいのか……そんなものわかるわけもない。
そんなものを、『他人』から向けられたことがないのだから。
だから少年は、遠ざける。怖がられるから遠ざけるのではない。
怖いのだ、他人が……周囲を取り囲むこの世界が。
なまじ力があるだけに、恐ろしいのだ。
《信頼》というやつを向けて、それが壊されてしまうのが怖いから。
だから、拒絶する。自己を周りから遠ざけ、関わりなどを欲しない様にする為に。
「……綺麗って、なんだよ。こんな恐ろしいチカラなんて普通誰も受け入れない、『異質』か『道具』止まりだっての」
「……なんか、そういう風に考えてるみたいにしてるけど――――それはなんか……違うよね?」
「……何?」
何が違うというのだ。
「だって――――――――」
この目の前の少女は何を言いたいのだ?
「――――――――なんだか悲しそうだもん」
「な、に……?」
悲しそう?誰が?俺が?何を馬鹿なことを……。何が悲しいっていうんだ、何がそう思わせるっていうんだ?
妹以外誰一人……いや、何一つとして受け入れられることのなかったこの世界に今更期待でもしてるとでもいうのか?
―――――ふざけるな―――――
「誰が悲しそうだっていうんだよ」
「あなたが」
「そうしてそんなことわかるんだよ?」
「うーん、説明は難しいんだけどね?あたしも一応能力者だから……かな?」
「能力者……?」
うん、と目の前にいる少女は頷いた。
高位能力者なら先ほどの不良くらい追い払えそうなものだが……単に戦闘向きでないということか?
おまけに人が悲しそうだとか決めつけている。仮に精神系の能力者なのだとしても八幡の作りだしている『防壁』は『絶対領域』のようなもの。精神系の勧誘できる隙間などありはしない。
では、一体―――――――目の前のこの少女は何なのか?
気になってしまったのか、はたまた言われたことを撤回させたくて反論の余地を探すためだったのか、あるいは両方だろうか?
ともかく、魔が差したように八幡は目の前にいる少女に怒鳴るように問いかけていた。
「能力者って何のだよ。俺の力に介入して俺の心の内が読めるってのか?そんな能力なんて、この都市にあるハズねぇだろうが!!」
しかし、少女は特に怒鳴られて怒りもせず怯えもせず、普通に問いかけに応じていた。
「私の能力は
「確か、その能力は……」
ただし、これはそういった高位能力者の話だ。そもそも数が少ないとか言われているのにいきなり目の前にいるコイツが、その希少の中のさらに希少な能力者だというのか?
(……あり得ないだろ)
八幡はそう思った。だってそうだろう?スタンド使いとスタンド使いが引き合うように、都合よく強い能力者同士が引かれ合うだなんてそんなこと……素性の割れてる第三位と第五位なら常盤台に行けば会えることは会える。だが、特に素性の割れてないうえに希少だと騒がれている上位互換の能力を持った高能力者がそれより知られてない自分の目の前に来るなんてあり得るか?
答えは否だ。
「あり得ないだろうが。そんな希少価値のある能力を持ってるやつで俺に干渉できるくらいの力を持ってるなんて、あるはずがなねぇ」
「むぅ、信じてくれないの?」
「当たり前だ。俺の力に干渉できるとすれば、〝最低〟でも
「うん、そうだよ?」
「そうだよな、やっとハッタリだって認めt……はっ?」
「だ~か~ら~!あたしがその超能力者だってば!!」
八幡は、目の前の少女が口から出てきた言葉が……しばらくの間うまく理解できずにフリーズしていた。
(一応)ヒロイン登場でした……が、名前の発表を次回に持ち越してしまいすみませんでした。
そしてこのヒロインは、八幡に対する対抗策という感じにしたくて出しました。
さていったい誰なのか……勘のいい皆さんにはバレバレな気もしますが、今後も頑張りますのでよろしくお願いします。
*この小説にはプロローグなどにもあったように、レベル5は《10人》いますので今後の展開をお楽しみに――――