やはり、俺がもう一人の天災なのは間違ってる(凍結中、リメイク版を作成中)   作:形右

5 / 12
 それでは一人目のヒロインの出会い編終了です。
 
 次回以降も、さらなるヒロインたちを出していこうと思います。


※今回かなりオリジナル設定を入れているので、そのあたりはご了承お願いいたします。



癒す者《ヒーラー》

 

 

 

 

 何故こうなった……?

 

 

 

 

 

 現在この都市における【天災】、比企谷八幡は当初の目的の通りにファミレスにて少し遅くなってしまった昼食をとっていたーーー

 

 

 

 

 ―――――――先ほどの少女と二人で……。

 

 

 

 何故こうなったのかというと、話は数十分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

「お前が…超能力者(レベル5)?」

 

「そうだってさっきから言ってるでしょ!」

 

「えー……だってお前バカっぽいから」

 

「誰がバカだ!?」

 

 そう言ってプンプン、と擬音がつきそうな位に分かりやすく怒ってるこの少女は憤慨だ、と言わんばかりに此方へむくれた顔を向けてくる。

 

「心外だよ、これでもちゃんと序列の中に入ってるんだからね!」

 

「ああ、第八位だっけか……まぁお前が〝本当〟に超能力者(レベル5)だったら、の話だけどな?」

 

「まだ信じてないし……」

 

 目の前の少女はいまだにむくれているが……当たり前だろ、と口の中でつぶやく八幡。

 まぁ確かに、いきなり現れて力も何も見せてもらってないのに納得できるはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――超能力者(レベル5)――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園都市における最強の能力者たちの総称で……この都市(まち)に10人しかいないその系統の能力者たちの頂点。だが、その10人についてはあまり詳しいことは公にされていない。

 

 それは何故か?

 

 その理由は主に二つ。

 

 

 一つ目はその超能力者たちが人格がどこかしら歪んでいる、人格破綻者であるなどと呼ばれていることに起因している。

 そもそも、能力は能力者個人が、一人につき一つずつ持っている『自分だけの現実』(パーソナルリアリティ)によって生み出されるものだからである。ゆえに強力な『能力』(チカラ)を有するほどに、その人物の心がどこかしら欠落してしまうのだとか……。

 そんなわけで、比較的〝まとも〟であるという第三位、第五位、第七位、第八位、第十位の五人以外表に出てこない。

 いや、正確には表に〝出せない〟からこそ情報が少ない……と言われている。

 

 二つ目は《序列》が高いほど、この都市の『闇』の部分。所謂『裏側』というものに大きく関わっているということ。

 なんでも、第一位は『裏』でやばい実験をやっているというのを今朝方統括理事長サマ直々に教えていただいたばかりである。それに加え確か第二位と第四位は『闇』を事柄にどっぷりつかっていて『暗部』に組織を持っていてそこのリーダーをやっているとか。

 

 

 

 

 そんなわけで、ただでさえ情報の少ない超能力者。

 ましてや、いきなり目の前に出てきた自称超能力者をはいそうですか、と信じるにはまだ情報が足りない。

 決定的に不足している。

 

 しかし、目の前にいる少女はそれがご不満らしい。まだむくれたままにこちらをジトーッ、と見てくる。

 

「むぅ……じゃあどうしたら信じてくれるの?」

 

「そうだな……ホントに超能力者だっていうなら、何か能力を使って見せろって言いたいところだが…お前の自称している能力は対象者がいないとあまり意味がない。つまり、今この場で証明するのは無理だと思うのだが?」

 

「う~ん、確かにそうだね……。あ、でもそこにいる人たちの怪我を治せれば証明になるよね?あなたにボロボロにされちゃったから治してあげないと困るだろうし……」

 

「まぁ、確かにそうだな……」

 

 八幡は正直、この少女の提案にいまいち賛同しかねたい心境ではある。

 そもそも、なぜ証明にしてもわざわざ自分に被害を与えた人間を治そうとするのか理解しかねる。

 しかも、嫌々という感じでもない。ハチマンの目には本当に相手を思いやっているかのように見えている。

 

(何だってんだよ、本当に……)

 

 とはいえ、この少女の能力『治癒再生』(リバースヒール)が仮に本物であるのだとしたら、見てみる価値はあるだろう。

 八幡は気絶している不良の怪我を負った部位に手をかざしている少女の様子をしばし見守った。

 

 すると、光のようなものでけがをしてる部分が照らされているというのか、包み込まれているといえばいいのか……とにかくそうされている部位が治っていくではないか。

 

 そして、10分も経たない内にそこらへんに転がっていた不良連中はがいしょうのあとが完全に無くなっていた。

 

「ね~ね~?これで信じてくれた?」

 

「あ、ああ。能力が回復系だということは分かった……」

 

「何それ、まだ超能力者って信じてくれてないの?」

 

「俺はその力がレベルごとでどの程度の効力があるのか知らないんだよ、だからまだ信用はしない」

 

「まったくもぉ……ひねくれてるなぁ~じゃあどうすれば信用してくれるの?」

 

 しかし少女の方はだんだんとむくれているというより、素直じゃない子供にでも語り掛けてるような表情をしている。その様子がなんだかむず痒いというか恥ずかしい気がして、八幡はこう提案した。

 

「……そんなに証明したいっていうなら、原点回帰だ。最初に言ってたよな?俺が悲しそうだとか言う妄言をよ。だったら本当にそれが能力のおかげで分かったって言うなら……俺の作り出した『壁』を超えて俺の精神に干渉してみろよ。もしそれができるっていうなら、信じてやるさ」

 

「え、ホント!?嘘じゃないよね?」

 

「ああ、〝できれば〟だがな。そもそも〝できるわけない〟からな」

 

「そこまで言うならやってみせるよ!あたしだってこれでも超能力者なんだから!!」

 

 そう言って息巻く少女に対し八幡は精々出来るものならやってみろ、と余裕気に言い放つ。

 

「じゃあその『壁』ってやつだしてみせてよ」

 

「まぁ、見えてないだけであるんだけどな。普段は出力を抑えているだけだし……」

 

 そう言って視覚化できるほどに『防壁』を展開させる八幡。

 こうなればもはや誰もこれを超えるのは不可能。

 この『壁』で覆われた空間は八幡の為の『絶対領域』。危害を加えるものを物理的、精神的、虚・実を問わずにすべて防ぐもの。

 第一位の『反射』のように跳ね返すのではなく、むしろ言葉で表すならば『拒絶』に近いといえる。

 侵入者をはじき出し、領域を侵さんとする現象を消し飛ばす。

 これまでにこれを敗れたものなど一人もいない、そう……一人たりとも――――――

 

「うーん…あ、そっか。それじゃあ……ほい!」

 

 誰も……破ったことが……な…い………。

 

「まずは物理的な突破ね?次は……」

 

 そういい、八幡の胸のあたりに触れながら目を閉じる。すると光が手の先から出てきたかと思うと八幡の目の前に心が()《イメージ》として浮かび上がる。

 

(ほら、やっぱり……あなたすごく傷ついてるんだよ?あたしの力はまだすべての心の傷を治せるほど精度が高くないから、干渉できるのはこの辺りが限界。精神系の要素も含んだ能力って言っても、その性質の方だけって訳じゃないから、操ったり記憶を変えたりはできないんだよね)

 

 その言葉を聞き終わると同時に目の前に元いた場所が広がる。

 

「私は記憶をのぞいたりはできなんだけど、(ダメージ)とか重責(ストレス)みたいな部分が分かっちゃうから、内に秘めた心の状態みたいなのがなんとなく〝分かる〟の」

 

 八幡はその言葉を半分頭が回らないような状態で聞いていた。

 

 

 この(天災)に触れた?干渉……しただと?

 

 

 あり得ない、あり得るわけがない。『絶対領域』(パーソナルスペース)などと呼んだ者もいたくらいなのに……。

 

 その『絶対』が破られた?

 

 

 

 嘘だ……嘘だろ?嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

 

 

 否定したい、それなのに少女の手の感触は少年の胸のあたりで未だに留まっている。もう一度『防壁』を展開してみるがなぜか少女を引き離すことができない。

 どうすればいいのかもう分からない。攻撃でもすればいいのか?それとも『翼』で薙ぎ払うか?

 

 本当にそうしたいのなら動けばいいものを、八幡は動けない。なぜ動けないのか自分でも分からない……。

 しかし、そんな沈黙を打ち破るように目の前の少女が声をかけてくる。

 

「ね?干渉できるでしょ?」

 

 

 これで信じた?、とドヤ顔だと言わんばかりの笑みを浮かべ、さも得意そうに「ふふん♪」と擬音が聞こえるほどのに笑っている。そしてその表情をこちらに突きつけんばかりに向けてきやがる……。

 しかし八幡は、動揺した心と言葉を飲み込むと相手に動揺を感じさせないように努めつつ、こう聞いた。

 

「お前……何を、しやがったんだよ。あり得ないんだ…俺に、触れることも……ましてや心に干渉だと?あり得るわけがねぇんだ!」

 

 何をしたんだ!?と噛みつかんばかりに少女を問い詰める八幡に少女はちょっとびっくりしたように答える。

 

「えっと……あなたの『壁』、なんだか私の能力で『中和』できるみたいでね?それで中和するようにしてみたんだけど…詳しいことはよく分かんなくて……そもそもあの『壁』何でできてるの?あたしは偶々なんかこう、なんていうか心のストレスを中和するのに近い感じでできるなって思ったんだ。傷に引き寄せられるみたいに、無意識だったんだけど」

 

 そう告げる少女に驚愕した。

 それに……『中和』、だと?

 破るでも越えるでもなく『中和』だと?未だに自分でも分からないことが多いのに、〝引き寄せられるように〟だって?悪い冗談だ……。

 なんでこんなに都合よく〝現れる〟んだよ?と【運命】とか【宿命】ってやつは信じていないつもりだが、【天災】なんて称されている時点でこの世界の理不尽さなんて嫌ってほど知っている彼は苦虫を噛み潰したように苦い表情を浮かべた。

 しかし、少女の方はその前の目的である《証明》の方を解決してほしい様で、聞いてくる。

 

「それで、信じてくれた?あたしが超能力者だってこと……」

 

「……」

 

「ねぇってば?」

 

 ここで認めるのは癪だ、非常に癪だ……だが、それでも確かに突破されたことは事実。

 認めざるを得ない……。

 

「……わかったよ、信じる。確かにここまでできるなら、レベル5何だろうな…」

 

「うん!ありがとう、信じてくれて!!」

 

 そういって信じてもらえたことがよっぽど嬉しいのか…やったー、と小躍りでも始めそうなほどの勢いで喜ぶ少女。

 

「はぁ~やっと信じてもらえたよぉ……」

 

「……(本当に、変な奴だ)」

 

 そんなことを考えながら目の前にいる少女を眺めていたのだが、彼女は唐突にこんなことを言ってきた。

 

「あ、そうだ!そういえば助けてもらったお礼とかしなくちゃ!」

 

「は?いらねぇよ、んなもん……」

 

 少々意気消沈していた八幡だが、これまた予想外なことを言われて反射的に言葉が出てくる。

 

「そもそも、別に助けたわけじゃねぇし……」

 

「えぇと、あそうだ!お昼まだだよね?一緒に食べようよ!」

 

「おい、人の話を……きk」

 

「ええと、さっきのお店でいいよね?入ってすぐあんな感じだったから、まだあたしたち二人とも何にも食べてないし」

 

「だから話を……」

 

「よぉーし!じゃあレッツゴー!!」

 

「だから、話を聞け!あと引っ張るんじゃねぇ!!」

 

 しかし、すでに少女は店に戻ることの方に意識が向いてしまっていて、八幡の言葉など聞いてやしない。

 そんままずるずると引っ張られ、先ほど入りそこなったファミレスに連れていかれてしまい、確かに昼食をとっていないことを思い出して流されるまま注文してしまったところで冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

(ホントに、なんでこうなってんだよ……)

 

 ぶつくさと小声で毒つきながら運ばれてきた料理を食べ進める。

 そんな八幡の様子を見て少女の方が顔を覗き込みどうしたの~?などと聞いてきやがった。

 このアマ……ぶっ飛ばしてやろうか?などとも思ったが、店内で暴れて(警備員)《アンチスキル》にでも来られたら面倒だし、妹を一人にするわけにも、妹に被害を及ぼすわけにもいかないのでせめてもの反撃として嫌味たっぷりに返事を返した。

 

「そりゃいきなり店に引きずられて来られたら気分も悪くなんだろうが。それとも何か?お前はこの状況が楽しいってのかよ?」

 

「え?楽しくないの?」

 

「お前頭沸いてんのか!?大体名前も何も知らない同士がいきなり並んで飯食ってる時点でおかしいだろうが!?」

 

「あ、そうだった、自己紹介してなかったね!」

 

「そっちかよ!そこじゃねぇだろうが!?」

 

 どこかずれている少女の発言に、『普通』の学生ってやつはこうなのか?と一般常識を見直す必要があるかもな、とそんなことを考えてしまっているあたり自分もそろそろ頭沸いてるな。と自嘲気味に思い始め、笑うしかないと思い始めた八幡はもうあきらめ気味だった。

 しかし、向こうさんは自己紹介の方で頭がいっぱいらしくこちらを向いて名乗り始める。

 

「えっとね、あたしの名前は由比ヶ浜結衣。高校一年生だよ。あなたの名前は?」

 

「……」

 

「ねぇ、名前教えて?」

 

しつけぇなぁ……。とそろそろウザったくなってきたのでこのまま領収書もって金払って帰ろうかとも思い始めたが、ねぇねぇとあんまりしつこいので仕方なく名乗った。

 

「……比企谷八幡、高一だ。これで満足か?」 

 

「ひきがやはちまんくんかぁ~。じゃあヒッキーなんてどぉ?」

 

「はぁ?何だそりゃ?」

 

「あだ名だよ、あだ名~結構よくない?親しみやすい気がするし」

 

「お前にとっての親しみやすいは蔑称を指すのか?じゃあなに、お前はバカとかアホとか牛とか言われて嬉しいわけ?」

 

「牛ってなんだし!そんなに太ってないもん!」

 

(別にウエストを見ていったわけではないのだがな……)

 

 どこを見て連想したかはあえて告げないでおこう。

 

「う~んじゃあね……八幡くんだから、はーくんとか?」

 

「……まぁ、引きこもり呼ばわりされるよりかはマシだな」

 

まぁ確かに通常時授業免除で普段フリーだから?ニートって言われてもしかたないけど?俺の場合能力も金もあるロイヤルなニートなわけですし?問題ないはず……だよね?

 

「よーし!じゃあはーくんだね!」

 

 そして向こうはそんなこと気にしておらず、つけたあだ名を何度か口に出している始末。

 

(こいつホントに高校生かよ……小学生みてぇなことしてんぞ?)

 

 なんだかもう警戒するのが馬鹿らしくなってきたので、目の前の料理を片付けてさっさと帰る方が楽だと思ったのだが……どうもにもそれを許してもらえるほど世界はけれに甘くなかったようだ。

 

「ねぇ、はーくん。ケータイ教えて?」

 

「はぁ?なんでだよ?」

 

「え?また会いたいから……それがどうかしたの?」

 

「……はぁ?なんでだよ、別にもう会う必要ないだろ?」

 

「えぇ~いいじゃん。また一緒にあそぼーよぉ」

 

「ぜってぇーやだ」

 

「ケチぃ~」

 

 ブーイングしてくるのがうざかったので―――勝手に登録っしたきゃしやがれ!、とケータイを投げつけるように押し付けた。

 

「ほわっ、ってあたしが打つんだ……すごいね初対面の人間にケータイ渡せるのって」

 

「見られて困るものなんてそもそも入ってないし、仮にあっても俺が同行できない相手なんてお前くらいしかいねぇっての……大体、俺にとっては初対面の人間にあそこまでなれなれしくできるお前の方がすげぇと思うよ。すごすぎて呆れるほどにな」

 

「かんじわるいなぁ~」

 

「ほっとけ……」

 

 こいつはいったいどんなキャラを俺に期待してんだよ。いやそれよりも、なんでコイツはこんなに俺にかまうわけ?いったい何だってんだよ?

 

「お前、なんでそんなに俺にかまうわけ?」

 

「え?」

 

 こ、この野郎……。何言ってるんだろ?みたいな表情で首かしげていやがる。それはむしろこっちのセリフだろうが!?

 あまりにも邪気のないその表情に八幡はもうタジタジである。

 

「さっきも言ったけどよ、普通仮に怖くなくてもこんなにかかわろうとはしねぇだろうが?どう考えてもおかしいだろ、いきなりであった奴に昼飯に誘ったり名前に電話番号果てはまた遊びたいとか……何?俺に恨みでもあるの?そっち系の組織の依頼でも受けてんの?」

 

 だったとしたらお生憎様だ。この世界なんてアッという間に壊せるのに……誰かに頼らなければ世界が回らないだけで、その気になればなんだってやれる。誰かに依頼されてるにしてもそんなことで一時的に懐が満たされたところで力のインフレの果てには滅亡しかない。

 

 

 結果は変わらないのだ。だから世界なんてもんはほっとくに限る。流れを乱せてもその先にあるものがマイナスならただのイタチごっこに過ぎない。やってもやらなくても変わらない。らちが明かないとはまさにこのことだ。

 

 しかし、どうやら目の前にいる彼女はその考えがお気に召さなかったようだ。

 

「そんなわけないでしょ!大体それならもともとこんな風にかかわるわけないよ!!」

 

「だったら何か?俺の過去が暗いからって同情でもしてんのかよ?だったらいい迷惑だ―――――そんなのはやめろよ、面白くも嬉しくもなんともねぇ……はっきり言って不愉快だ」

 

 八幡のその言葉には様々な意味が込められている。その感情は、怒りか、呆れか、諦めか……はたまた悲しみか――――――

 

 

 

 

 

 

 ――――――しかし

 

 

 

「違うよ……」

 

「あん?」

 

「絶対に、そんなんじゃない……」

 

 悲しそうな表情を浮かべて、彼女はそう言い切った。

 

「じゃあ、なんだっていうんだよ……」

 

「なんていうのかな……すごく感謝してるから、だったりして?」

 

「感謝?さっきの不良のか?だったら――――」

 

「それもあるけど……。本当はね?――――もう一つ、あるの……」

 

「もう一つ……だと?」

 

 もう一つ……?何のことなのか八幡は分からない。そもそもであったことがないのに、まるで〝前に会ったことがあるかのように〟告げるその少女に疑問しか浮かばない。

 

「そう、もう一つあるの」

 

「そのもう一つってのは何なんだ?俺はお前とこれまでにあったことはないはずだ」

 

「うん、確かにあったことはないけど…あたしは覚えてるよ?『あの日』を」

 

「『あの日』…?何のことだ?」

 

「昔、研究施設に入れられていたことがあってね?あたしの力を応用しようとする動きがあって、酷いことに会ってた時があったの……」

 

 コイツは、何を……言ってるのだ?――――――

 

 

 疑問符が八幡の頭の中を駆け巡る……。何を言ってるのか分からない。なんのことを指してるのだ?そんなこと自分に何が関係している……?

 

 

 

 

 ――――――いや、違う。

 

 

 

 確かに、何か……何かが引っかかる。何を、知ってる気がする。

 

 何だろうか、何だ?何を知ってる気がするというんだ?いったい何が………?

 

 

 そうして疑問にまみれている八幡の頭の中の霧を晴らす一言が、目の前の少女から告げられる。

 

 

 

「その時あたしのいた研究所は――――――」

 

 

 

 ―――――――――『〝超〟特例能力者多重調整技術研究所』

 

 

 

 

 な、に……?そんな声を絞り出した瞬間、八幡の中の時が止まった。

 

 

 

 

 知っている。知っているのだ、その名前を……。

 

 確かにそこにはいたことが〝ある〟。八幡がこの街にやって来たからこそ、作られた研究施設。

 『原石』系の珍しい、あるいは法則をとらえきれない能力者を解析するために作られた研究所。そこでは、八幡の研究が基本だったが……そこには八幡だけではなくほかにも少々規格外というか特殊な能力をついでに研究していたとかで『未元物質』(ダークマター)だの『念動砲弾』(アタッククラッシュ)だのそういう能力者たちの少しの間入れられてたとか……。

 

 

 そしてここで思い出した。どこで第八位の能力者の能力名や能力の詳細を聞いたのか……。

 それを思い出した。そうだ……〝あそこ〟でだった。そもそも研究所にいた間の情報量の方が断然多い八幡にとって、この都市(まち)の詳細を聞いたのは〝あそこ〟にいたときだけだったのだが。

 

「あそこで結構ひどい目にあってた時、ある日急に研究所がなくなって自由になれたの。あたしの能力はもしもを考え出したらキリがないから…。あの頃も、『不老不死』とか『肉体老化防止』とかそういう方向に応用させようとした人たちに、人体実験されてたから…」

 

 なるほど……。確かに目の前の『コイツ』の能力は応用次第では〝夢物語〟(永久の生命)〝実現できる〟(現実にする)可能性がある。だからあの研究所の研究者たち(連中)も欲しがっただろう。

 

「そんなわけで、あたしは『超特力研』」(あそこ)がなくなったおかげでだいぶ自由になれたの。だから、その『自由』をくれた人を探してたの」

 

「……で、それが…俺って訳、なのか……?」

 

「そう、だから――――本当はね?ずっと探してたの…」

 

 

 ――――――ずっと、お礼が…言いたかったから………。

 

 

 そう告げられた八幡は、このような状況の時にどう反応すればいいのか分からなかった。

 大体、アレは助けたんじゃない。アレは、あの時研究者たちが言った一言が我慢の範囲を越えて理性が飛んだだけ……。あの状況だってただ無自覚に『破壊』していただけ。実際、あの後意識が戻ったときに見たのは完全に壊れ果てた施設の残骸の後と、思い出したくもない赤く染まった肉塊の山だった。

 しかし、少女は礼を告げてくる。本当に感謝しているという感情を示してこちらへとそれを向けてくる。

 

「だから、ありがとう。『自由』をくれて」

 

「……俺は別に助けたんじゃない。あの時、偶々あったごたごたにキレただけだ」

 

 だから否定する。

 

 偶然、だから。助けたわけではないから、お礼など別に求めていないとそう告げる。

 

 しかし、目の前の少女はそれでも感謝する。

 

「それでも、あたしは嬉しかった……。だって偶然でもあたしは、救われちゃったんだもん。だからね?――――」

 

 そういってくる目の前のそいつは、本当に嬉しそうで……もう何を……なんとを言えばいいのか、それが今の八幡には…どうしても分からなかった。

 

 

 

 ―――――――本当に、ありがとう。

 

 

「何でだよ…どうしてそんな風に感謝なんてできるんだよ!?おかしいだろ!?あの時確かにテメェは解放されたかもしれねぇけどな、俺はあの時理性も何も関係なく、ただ研究所を破壊して、研究者どもを皆殺しにしたんだぞ!?それを知っていて、それでいて……そうして感謝なんてできるんだよ!?」

 

 八幡は何故か、考えるまでもなく言葉を吐き出していた。何というか、勝手に漏れ出すような初めて感じた感覚。

 しかし、それでも止められない。そうしてだろうか……どこか苦しいのに、なにかが解放されるような感覚まで覚えている。

 分からない、理解できない。

 こんな〝もの〟など感じたこともない。

 

「普通『恐ろしい』だろ!?『恐怖』するだろ!?あんな化け物みたいな力で、誰も寄せ付けない力で……!そんな『化け物』見てぇな奴なんて、恐れないはずがねぇだろうが!!」

 

「確かに、そうかもね。ただ自分の為に、自己満足の為に『暴力』を振るっているなら…ね?」

 

「……?」

 

「だってあたし、『あの時』見たもん……」

 

「はっ…?」

 

「あの時、いきなり建物が壊れて光の翼みたいなのが見えたと思ったら嵐みたいに建物が壊れていったけど……妹っぽい子を抱えて苦しそうにしてたの」

 

「何かを守りたくて、苦しみから引き離したくて…それで戦ったのが分かったよ?」

 

「……、」

 

「だから、あたしはあなたが優しいこと、ちゃんと知ってる。だから怖くなんてないんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――そのあとのことは、よく覚えていない。

 

 結局、あの後は逃げるように自宅に帰ったのを、部屋に行き着いてから気づいた。

 

 ただ覚えているのは、悪意のないあの笑みだけ……。

 

 

 そんな中、ぼんやりと思ったのはことは……。

 

 

 

 初めて『他人』と感じた者は、とっても騒がしくて強引で、人の話を聞きやしない変な奴だったけれども。何故か少しだけ……温かいような気がしたことだけが胸の奥に残っていた―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――初めて他人のぬくもりというものに触れた少年は、何か失いつつあったものを胸の内に再び仕舞った。

 

 こうして、彼の一つ目の出会いが終わりを告げ、物語は幕を上げるべく、キャスト(彼ら彼女らの)の運命という名のシナリオを結んでいく。

 

 

 

 

 

 




 一人目のヒロインさんの出会い編終了でございます。

 ガハマさんの呼び方を変えたのは、ヒッキー呼びに対する八幡の反応をドライな感じにしたかったことと、依然拝見した方の八結の幼馴染小説での幼少時の結衣のはーくん呼びがなんか可愛かったのでこうしてみました。

 でも、時々ヒッキーって呼ばせたいと思います。
 この作品の八幡ぶっちゃけ原作のアクセラさんよりニート感でてる気がするので……

 今回は、長いうえに稚拙な展開ばかりでしたが次回以降も読んでいただければ幸いでございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。