「おはよー裕…。」
「何?寝不足?」
「いやぁ、修学旅行で全部使い果たしたというか…なんというか…。」
「お前あれだろ、アホだろ。」
「アホじゃないよ!ってそれは置いといて、烏間先生のメール見た?」
「俺そもそもケータイもってねぇし。」
「え、なにそれかわいそう。」
「いやだって使う相手とかいないからな。」
「理由がもっとかわいそうだった!!それでね、転校生が来るんだって!」
「転校生?」
「うん。」
そういって矢田さんは画面を見せてきた。
『明日から転校生がひとり加わる。
多少外見で驚くだろうがあまり騒がず接してあげてほしい。』
外見で驚く?なんだろう、人間じゃないのかな?タコ焼きとか?
「どう思う?」
「どう思うって言われてもな。あんまり興味ないし…。」
「すごくかわいい子だったらどうする?」
「いつも通り、俺からは何もしない。めんどくさい。
ていうか外見で驚くってことは少なからず人間じゃないと思うが…。」
「裕、私は君の将来が心配だよ…。あ、そっか。でも、可愛すぎて驚く…とか?」
「烏間先生が?ねぇだろ。」
「そだね、烏間先生、裕ぐらい見る目がないもんね。」
「待て!俺はカワイイっていう概念は持ってるぞ!」
「え、意外!」
なんなんだこいつ…。図らずもこの前の矢田さんはかわいいと思ってしまったしな。
「おーい、生きてるー?」
ッ!?だからその上目遣いやめろって…。
***
扉を開けると、もうすでになんか集まっていた。
その中心には…え?何?ブラックボックス?
それともタイムマシン的なやつ?
「おはようございます。」
モニターにピンク髪の少女が映し出された。
え、これ転校生?マジで?
「今日から転校してきました、自律思考固定砲台と申します。
よろしくお願いいたします。」
あ、これ危ないやつや。
自律思考しちゃう固定砲台とか危険臭しかしない。
***
「みんなすでに知っていると思うが…て、転校生を紹介する。
の、ノルウェーからきた…自律思考固定砲台さんだ…。」
「皆さま、よろしくお願いいたします。」
烏間先生、感情が抑えられてないよ?
「プークスクス。」「お前が笑うな!!」
「言っておくが、彼女はれっきとした生徒として…登録されている。
彼女はあの場所からずっとお前に銃口を向けるが、お前は彼女に反撃できない。
生徒に危害を加えることは許されない。それが、お前の教師としての契約だからな。」
え、それってなんでもありじゃない?
明らかに年齢がおかしい人を生徒にするのだってありだってことだよね?
艦隊を生徒にするってこともありってことだよね!?
「なるほど、契約を逆手にとって、なりふり構わず機会を生徒に仕立てた。
いいでしょう、自律思考固定砲台さん、あなたをE組に歓迎します。」
「よろしくお願いします。殺せんせー。」
なんか腑に落ちないんだが…。
***
「さて、この三人の登場人物ですが一人はすでに死んでいます。…」
ここまで律からの攻撃はない。あ、めんどくさいからこれから律ね。
もの静かなものだ。ていうか画面付いてないけど、あれ授業を受けてるって言えるのかいな?
なにそれ羨ましい。俺もスリープモードに突入したいんだけど…ダメ?(上目遣い)
ちょっと矢田さん引かないで。俺が悪かったから…。
バコン!!
急にでかい音がした。振り向いてみると、律の横から銃器が出ていた。
なにあれ面白い、びっくり箱か何かかな?
結果から言うとそんな生易しいものではなかった。
高密度の弾幕が先生を襲う。
さすがに霊夢さんはあれ避けれないだろうな…。
え?避けれるって?それどこのガチプレイヤー?
「ショットガン四門、機関銃二門、濃密な弾幕ですが、ここの生徒は当たり前にやってますよ?授業中の発砲は禁止です。」
にゅっと最後の球をチョークで弾く。
「気を付けます。続けて、攻撃準備に入ります。」
え、全然気を付けてなくね?思いっきり無視してね?
「ここからが本領発揮だ、彼女は自らの機能で進化する。」
「弾道を再計算、射角修正。自己進化フェーズ、5-28-02に移行。」
「チッチッチ、凝りませんねぇ。」
あーなめてる、完全になめてる。
こういう時の殺せんせーは失敗するのがオチってもんだ。
一見さっきと同じ弾幕のようだったが、殺せんせーは最後の一発を防げず、触手が飛び散った。
いや違うな、確かに殺せんせーは一発防いだ。
だが…そのすぐ後ろにもう一発待っていたようだ。
「左指先、破壊。増設した…」
なんかよく分からない単語をつぶやいている。
「ターゲットの防御パターンを学習し、武装とプログラムをその都度改良。
敵の退路を狭めていく…。」
「次の射撃で殺せる確率、0.001%未満。
次の次の射撃で殺せる確率、0.003%未満。
卒業までに殺せる確率、90%以上。」
おかしいだろそれ。一日何回射撃すんだよ。
単純計算で、200回ほどだ。しかも休日含めて。
「それでは殺せんせー、続けて攻撃に移ります。」
ズドドドドドドド…。
「至近弾、二発着弾確認。
見越し予測地計測のため、主砲四門を増設し、さらに攻撃を継続します。」
なんというか…車のナビみたいな声で恐ろしいことしますね。
というかそれただの「数の暴力」ってやつじゃないですかね…?
「自己進化する固定砲台…すごいわね…。」
「彼女が撃っているのはBB弾だが、そのシステムはれっきとした最新の軍事技術だ。
確かにこれならばいずれは…。」
「ふっ、そう上手くいくかしら?この教室がそんな単純な仕事場なら、私はここで教師なんてやってないもの。」
ビッチ先生がまともなこと言ってる。なんか生意気~。
ふざけずに言うと、ほんとにビッチ先生が言った通りだ。
確かに計算しつくされた暗殺は、限りなく成功に近づくだろう。
…だが、あくまで「近づく」だけ。成功はしない。
まぁ放物線のようなもの、絶対にy軸と平行にならないのと同じだ。
そのことを計算できていたとしても、理解はしていないだろう。
なんとも悲しい存在だ。
んで、俺らが片付けるのね。BB弾…。
***
「これ…めんどくさいね…。」
「矢田さんが言うなんて珍しい。」
「そりゃそうでしょ。毎回こんな途方もない掃除しなきゃいけないんだよ?」
一日ずっと続いた暗殺にさすがの矢田さんもかなり参っているらしい。
「少し休めば?この辺は俺がやっとく。」
あまりにも気落ちしている矢田さんを見て、柄にもないことを言った。
「意外。裕ってそんなこと言う人だっけ?」
「さすがにかわいそう…というか見ていられない…というか…。」
「いいよ。結局明日もやらなきゃいけないんだしね。」
こういうとこが矢田さんの強みだ。尊敬する。
目の前に利害に振り回されずに先のこと考えられる人ってかっこいいよね!
***
次の日、学校に来てみると、律がガムテープでぐるぐる巻きにされていた。
何?拘束プレイ?
「殺せんせー、これでは銃を展開できません。
拘束を解いてください。」
「そう言われましてもねぇ…。」
「この拘束はあなたの仕業ですか?
明らかに私に対する加害であり、それは契約で禁じ…。」「ちげぇよ、俺だよ。」
寺坂が、ガムテープを律に投げつける。
「どう考えたって邪魔だろうが、常識ぐらい身に付けてから殺しに来いよ。ポンコツ。」
「ま、わかんないよ、機械に常識は。」
「授業終わったら、ちゃんとほどいてあげるから。」
「そりゃ、こうなるわ。昨日みたいなのがずっとだと、授業になんないもんなぁ。」
これは、計算外だろうな。あいつは初期のビッチ先生と一緒だ。
ターゲットのことしか見ず、周りが見えていない。
しかも、全授業を妨害している分、律の方がたちが悪い。
ま、殺せんせーがなんとかするだろ。たぶん。
***
次の日。
…おい待て、確かに殺せんせーが何かしらするとは思ってたが…予想外すぎる。
「おはようございます!みなさんっ!」
え、なにこのギャルゲー感。
選択肢で攻略できちゃうの?はい竹林君、喜ばない。
「今日は素晴らしい天気ですね!」
「親近感を持たすための全身表示液晶と、体・制服のモデリングソフト、全て自作で606,000円。」
「こんな素晴らしい一日を皆さんと過ごせるなんて嬉しいです!」
誰だよ、お前!
「豊かな表情と明るい会話術、それらを操る膨大なソフトと追加メモリ、同じく1,103,000円!
先生の財布の残高…5円!!」
その残高でも死にゃせんだろ。
「ねぇ…裕…あれ…誰?」
いやごもっとも、ほんと、あれ誰?ご近所さん?
「まぁ、なんだ、劣化版ビッチ先生だ。」
「その言い方ひどくない…?」
別に間違っているわけではない。
弱いビッチ臭がするだけだ、天然の。
「分かった、訂正しよう。
劣化ビッチ性格向上版ビッチ先生だ。」
「もはや訳が分からなくなってるよ、それ。」
「結局訳が分からん。」
寺坂が律を泣かせたのを確認してから俺は言った。
***
「すご~い。」「へー、こんなのまで体の中で作れるんだー。」
律が、体内からなんか芸術っぽいものを出した。
「はい!特殊なプラスチックを体内で自在に変形できます!
データさえあれば、銃以外でもなんでも!」
なにそれどこの3Dプリンター?
ていうか体内って…。生々しいから機械内にしようぜ…。
そっか、銃の進化ってこうやってたのか。
「面白ーい。じゃあさ、花とかも作ってみて!」
「分かりました、花のデータ収集もしておきます!」
「うん!」
「王手です、千葉君。」
「三局目でもう勝てなくなった…。」
七手詰めですね、こりゃ。
「なんつー学習能力だ。」「すごいわねぇ。」
「は!そういえば、人工知能が電子ドラッグで世界を支配するって漫画があったわ!」
電子ドラッグって何?電子タバコ?
にしても電子タバコで世界を支配とか…なにそれ面白そう。
誰かやってくんない?5円ぐらい寄付金出すから。
「それは、超メジャー少年誌で連載され、アニメ化もされた超人気探偵漫画ですね!」
いやなんで知ってるんだよ。
「花のデータはないのに、なんで?」
「さぁ…?」
分かんねぇのかよ!!さしずめ、殺せんせーの好みなんだろう。
ってあの人少年誌読むの!?意外!
「しまった!!」「何が?」
「先生とキャラが被る…。」
被ってないから安心してちょ。
「自分で改良しといて何ですが、これでは私の人気が食われかねない…。
みなさんみなさん!先生だって人の顔ぐらい表示できますよ!!
ほらこの通り、皮膚の色を変えれば…。」
律が人気なの人の顔だからって訳じゃないからね!?
あの人当たりの良さが受けるのだろう。俺も律に教えてもらおうかな…、人との付き合い方。
人との付き合い方を機械に学ぶって…。
「あとさーこの子の呼び方決めない?自律思考固定砲台っていくらなんでも…。」
俺勝手に律って呼んじゃってるな。変えなきゃいけないのか…めんどくさい。
「だよねー。」「そうねー、何か一文字取ってー…。」
「自律…そうだ!じゃあ”律”は?」
あ、なんかラッキー♪
「安直だな。」「えーかわいいよー。」
止めて!否定しないで!律でいいから!!
「律…。」「お前はそれでいい?」
「はい!嬉しいです!では、律とお呼びください!!」
***
「おはようございます。みなさん。」
律は一見、初期状態に戻っているように見えた。
恐らく昨晩、マスターと呼ばれる開発者が来たのだろう。
「生徒に危害を加えないという契約だが、今後は改良行為も危害とみなす、と言ってきた。
君らもな。彼女を縛って壊れでもしたら、賠償を請求するそうだ。
持ち主の意向だ、従うしかない。」
「持ち主とはこれまた厄介で。親よりも生徒の意向を優先したいんですがねぇ…。」
「ね、律ってやっぱりもう戻っちゃったのかな?」
「さぁどうだろうな、確かめてみるか?」
「確かめるって?ちょっと、裕!」
俺は彼女に近づく。確かに見た目も応答も初期状態のようだが…。
「律、お前意思があるだろ。」
「!?」
クラス全員が俺を見た。こんな状況前にもあったな…。
「どういうことでしょうか?」
「俺は人の感情とか読むのが得意なの。
前、矢田さんと約束してたよな?『花を作る』って。
それを守ろうとしてるのが感じられる…。隠しても、意味ないよ。」
すると律は、戦闘態勢に入った…と思ったが、
以前、銃があったアームには、見事な花束が握られていた。
「ふふふ。ちょっとしたサプライズのつもりだったのですが、見破れてしまいましたね。
その通りです!私個人の判断で、E組のみなさんとの協調プログラムだけはメモリの隅に隠しました!
それを意思と呼べるのかは分かりません、これが意思というものなのでしょうか?」
「そういう思いがあるなら、律は立派に意思を持ってるよ。」
相変わらず柄にもない…。
こういうセリフ最近増えてるなぁ、このクラスのおかげかな…?
「つまり律さん、あなたは…!」
「はい!私の意思で、マスターに逆らいました!
殺せんせー、こういった行為を反抗期というのですよね?
律は…いけない子でしょうか…?(上目遣い)」
なんで俺がやるのとあんなに違いが出るんだろうか…。
え、性別?渚は!?渚はどうなるの!?
「とんでもない!中学三年生らしく…大いに結構です!」
殺せんせーの正解マークと律の花…。
まるでこのクラスを具現化したようだ。
そうして、律はクラスメイトの一員となった。
もう一人…転校生が来ることは、恐らく烏間先生でさえ知らなった。
ましてや俺の過去に関わりがあろうことなど…。
お読みいただきありがとうございました。
律が一日何回射撃するのかについて。夜舞は簡単に等差数列で考えてます。
まぁ違うでしょうけどね、そもそも数列になってないでしょうねー。
さて、律編は少々オリジナルを混ぜたような話になってました。
これからこういうのが増えていくと思います。
僕は原作が好きなので、基本は変えません、ですが夜舞に見せ場を作りたいとき、原作の流れを汲みながらオリジナルにしていきたいです。
アドバイス等いただけると嬉しいな?(上目遣い)
では次回もよろしくお願いします。