暗殺教室verβ   作:サクソウ

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暗殺者の時間

あー、いい天気だ。

フェイバリットプレイスで寝転がる。

今日は暗殺日和だなぁ…。

 

ふと、崖の下の方を覗くとなにやら得体の知れない男がいた。

これは…尾行の時間だ!

 

***

 

おい、あの人廊下になんか仕掛けたぞ?

ビッチ先生が、職員室から出てきた。

 

危ないっ!!

尾行中というのを忘れて叫びそうになったが、バレてしまっては元も子もない。

というかあの人がガチの暗殺者だったら、俺が殺される…。

え?違うよね?

 

ビッチ先生が首にワイヤーを掛けられている。というかすげぇな先生、ワイヤートラップ対策とか知ってるんだ…。そらそうか。

 

「~~~~~。~~~~~~…~~~。」

 

え、何その言語、わかんない。だれか!翻訳こんにゃく!!

 

「~、~~…。」

 

苦しそうにビッチ先生が言った。プロフェッサー?

つまり…ビッチ先生の先生すか?

 

「~~~~~?~~~~~~?」

 

あ、烏間先生。あの男に何か質問してるようだけど、先にビッチ先生助けてあげて!

 

「~~~~…。~~~~~~。」

 

男は二言ほど答えるとワイヤーを切った。

 

「Hey!Who are you?

Do you even understand what I’m saying?」

 

あ、やっと分かる言語になった。

 

「これは失礼。日本語で大丈夫だ。」

 

なんだよ!それ!どや顔で言うな!

もう…こいつら頭おかしい…。

 

「別に怪しいものではない。

イリーナ・イエラビッチをこの国に斡旋したもの…と言えばお分かりだろうか?」

 

はい、素直に名前言った方が簡単だと思います!

ていうか十分怪しいからね。

たいてい怪しい人って「怪しいものではない」って言うんだよね。何なの、あの法則。

 

「例の殺せんせーは今どこに?」

 

「上海まで杏仁豆腐を食いに行った。30分前に出たからもうじき戻るだろう。」

 

「聞いてた通りの怪物のようだ…。

来てよかった、答えが出た。」

 

 

「今日限りで撤収しろ、イリーナ。この仕事はお前じゃ無理だ。」

 

 

は?撤収?つまり…英語の先生がいなくなるってことか?

見過ごせねぇな、そりゃ…。

 

「ちょっと待てよ、おっさん。」

 

「夜舞か!?いつからそこに…。」

 

「ほぅ、君がイリーナの生徒か…。上手く隠れていたものだ。」

 

「止めなさい!夜舞!瞬殺されるわよ!!」

 

「…少なくとも今は大丈夫だから。この人に殺意はない。」

 

(こいつ…相手の考えを…?)

 

対面したときから、「意図読みモード」だ…ふっ、我ながらダサいな…。

相手の考えが分からないと、こっちだって怖くてやってられるかっての!

 

「それで、あなたがイリーナ先生を連れて帰りたいってのは分かった。

でもそれって、俺らから先生奪うってことだよね?

俺らが納得できる理由を用意してもらいたい。

それにどうすんの?この先生以上の授業できる人、たぶん他にいないと思うが…。」

 

「ふっ、面白い。私を誰だと思っているんだ?」

 

「いや知らんよ…。初めて見た。」

 

殺気はない。

 

「とことん面白い生徒だな。君のような暗殺者は久々だ。

しかし、イリーナを連れて帰るかは私が決めることだ。

イリーナは正体を隠した暗殺なら比類ない。

だが、一度素性が割れてしまえば、一山いくらでもいる殺し屋だ。

相性の良し悪しは誰にでもある。

こここそが、イリーナにとってLとRじゃないのかね?」

 

どんだけ「こ」を続けるんだよという言葉は気合で飲み込んだ。

 

「確かに…そうかもしれない…。

でも、さっき言っただろ?『俺ら』って。E組全員を納得させないと。

今のじゃ俺ですら納得してないんだ、他のやつらが納得するとは到底思ないな。

イリーナ先生は、大事なE組の一員だから…。」

 

「夜舞…。」

 

「半分は正しく、半分は違いますねぇ。」

 

うわ、何?びっくりした。

ていうかマジか…半分間違ってたか…。

 

「いえ、夜舞君の話ではありません。」

 

「何しに来た、ウルトラクイズ。」

 

「ひどい呼び方ですねぇ…。いい加減殺せんせーと呼んで下さい。」

 

「お前が…。」

 

「確かに…彼女は暗殺者としては、おそるるに足りません、クソです。」「誰がクソだ!!」

 

「ですが、彼女という暗殺者こそこのクラスに適任です。

殺し比べてみれば、分かりますよ?どちらが優れた暗殺者か。

 

二人の勝負です!

 

ルールは簡単、烏間先生を先に殺した方が勝ち!」

 

「おい待て、なんで俺が犠牲者にされるんだ!」

 

ごもっともです。

 

「私じゃ、だーれも殺せないじゃないですかぁ。

期間は明日一日。」

 

「なるほど、要するに模擬暗殺か。いいだろう。」

 

そう言うと、男は去っていった。

 

「ふん、勝手にしろ。」

 

烏間先生もどこかへ行った。

さて、これ以上いたら、俺の場違い感が半端ないのでそろっと帰りましょ…。

 

「夜舞君、待ちなさい。」

 

んーやっぱりバレてたかー。

 

「君はほんとに尾行が上手くなってきました。

ですが!相手を選びなさい。今回は大丈夫でしたが、何があるか分かりません。

真の尾行ができるまで先生で練習してください。」

 

「分かりました、そうします…。」

 

「それと…先ほどの言葉、悪くなかったですよ。

君もずいぶんと変わったようだ。良い成長です!」

 

「そういえば、さっきは余計なお節介してくれたわね!」

 

「待ってください。俺は悪くない、あいつが悪い。」

 

「ったく…。あんたのせいで私の評価が下がったらどうすんのよ…?」

 

「ていうかもう評価ダダ下がりじゃありませんでした?」「黙らっしゃい!!」

 

「…ありがと…。」

 

「いきなりですね…。」

 

「正直、あんたが認めてくれてるとは思わなかったわ…。そのお礼よ…。

それよりっ!あんたも烏間も絶対私が殺してやるわ!」

 

あんたって言われたから俺かと思っちゃったよ。

謎の怒りを残したままビッチ先生は去っていった。

え、なにこれ、そして誰もいなくなったとか言う流れなの?

 

「そして…誰もいなくなった…。」

 

お前が言うんかい!!

 

***

 

「…という訳だ、今日一日迷惑な話だが、君らの授業に影響は与えない。

普段通り過ごしてくれ。」

 

「烏間先生ぇ♡お疲れさま~、のどか湧いたでしょ?はい!冷たい飲み物♡」

 

あ、あれだな、ビッチモードだな…。

 

「ほらっ、ぐっといって!ぐっと!おいしいわよぉ。」

 

「大方、筋弛緩剤だ、動けなくしてナイフを当てる。

言っておくが、そもそも受け取る間合いまで近寄らせないぞ。」

 

「ま、待って。じゃあここに置くから…うひゃあ!!いったーい!!おぶって烏間!!おぶってーー!!」「いやだ。やってられるか。」

 

ちょっと待って烏間先生、授業に影響出てる!めっちゃ出てる!

 

「ビッチ先生。」「さすがにそれじゃ、俺らだって騙せねーよ。」

 

「仕方ないでしょ!顔見知りに色仕掛けとかどうやったって不自然になるわ!!

キャバ嬢だって客が偶然父親だったらぎこちなくなるでしょ!?それと一緒よ!」

 

いや知らんがな。それより烏間先生を連れ戻してくださいな。

 

***

 

「ねぇーえ、いいでしょう?♡烏間ぁ…。」

 

ん?また色仕掛けやってるの?

…どうやら違うみたいだ。

 

「私はどうしてもここに残りたいの♡分かるでしょう?ちょっと当たってくれれば済む話よ♡」

 

珍しくビッチ先生に色気があると思った。純粋な色気が。

 

「見返りは…い・い・こ・と♡あなたが受けたことない極上のサービスよ♡」

 

「いいだろう、やれよ。どこにでも当てればいい。」

 

「嬉しいわ♡」

 

まだビッチ先生が色気を解かない。ここまではビッチ先生の作戦通りなのだろう。

 

 

 

「ロヴロさん、イリーナ先生の授業を聞いていましたよね?

苦手な発音からまず克服していくのが彼女の流儀。

外国語を覚えるのは挑戦と克服の繰り返し。

10国語を克服した彼女は、未経験だった教師の仕事すら、臆せず挑んで克服しました。

そんな挑戦と克服のエキスパートが、ここにきてから何もしてないと思いますか?」

 

殺せんせーが謎の男に問う。

そしておもむろにバッグの中身を見せた。

 

「これは…!!」

 

 

 

「じゃ、そっち行くわね♡」

 

トラップ?

ワイヤーを服の中に仕込み、烏間先生の体勢をくずして、ビッチ先生は烏間先生の上をとった。

なんかややこしいな、つまり上に乗ったってことだよ。

 

 

 

「彼女は私を殺すのに必要な技術を自分なりに考え、外国語と同じように挑戦と克服をしているのです。

あなたならこのバックを見るだけで、彼女の見えない努力が見えるでしょう。」

 

バッグの中にはさっきのトラップをいかに練習したかを表す、土にまみれたワイヤーが入っていた。

 

 

 

「もらった!!」

 

ビッチ先生がナイフを振り下ろし、ヤったかのように見えたが…。

さすが烏間先生と言うべきか、間一髪でナイフを防いだ。

不味いな…力比べでビッチ先生が勝てる見込みは万に一つもない。

 

「危なかった…。」

 

「烏間…、ヤりたいの…ダメ…?」

 

「ヤらせろとすがりつく暗殺者がいるか!!

諦めが悪い!!」

 

数秒の攻防の後…。

 

「はぁ…もういい。諦めが悪いやつに今日一日も付き合えるか。」

 

烏間先生が手を放し、暗殺は…成功した。

 

 

 

「苦手なものでも、一途に挑んで克服していく彼女の姿…。

生徒がそれを見て、挑戦を学べば、一人一人の暗殺者としてのレベルの向上につながります。

だから、私を殺すならば彼女はここに必要なのです。」

 

***

 

「先生…。」

 

あ、今は日本語なのね。なんで最初は外国語だったのかしら?

 

「出来の悪い弟子だ…。

先生でもやっていた方がまだましだ。

…必ずヤれよ、イリーナ。」

 

「もちろんです!先生!!」

 

ビッチ先生は発狂していた。うん、この表現が一番適切だ。

残れてよかったな、ビッチ先生。

 

***

 

午後の英語の授業は体育に変更された。

…こういうことかよ、授業に支障はきたさないって。

 

「今日はペアの訓練だ。早急に組んでもらいたい。」

 

今まではビッチ…ボッチ暗殺の訓練だった。

俺は特に成績が良かったわけではない、まぁナイフ術がクラス3位だったかな?

しかし、ペア暗殺とか…もっと不安…。

 

「じゃあ裕、組もっか。」

 

「これ勝手に組んでいいのか?」

 

「先生、組み方はどうしますかー?」

 

「好きに組んでくれ、出席番号で組むにしろ君らは変わらん。」

 

今寺坂グループ三人がいないのか…。

ま、矢田さんならやりやすいし、寧ろありがたい。

 

「んじゃ、まぁ、よろしく。」

 

「うん!」

 

「組み終わったら俺のとこに来い。一対二で相手にナイフを当てる訓練だ。

それじゃまず君らから行くか。」

 

えー、一番近くにいたからって…。

完全にとばっちりじゃね?

 

「は、はぁ。それじゃ…。」

 

仕方ない…か。本気でいこう。

 

(夜舞は昨日見た通り、相手の考えが分かる…気を付けないとな…。)

 

あーバレてますねー。完全にバレてますねー。

しかも、これは体力の消耗が激しい。早急にけりをつけないとな…。

 

「よろしくお願いします、烏間先生!」

 

矢田さん元気な。俺は少なくとも足手まといにならないよう全力を尽くすか。

 

数秒の膠着状態の後、矢田さんが動いた。

 

(矢田は、岡野ほど俊敏ではない。そして夜舞は、赤羽ほど頭の回転は速くない…が。)

 

なめられてるな…。

烏間先生は次の考えを出すのをあえて遅くして、俺が読み取って反応するときには、もう動いている。

 

「危なっ!!」

 

さすがだ…。だが、別に俺は考えを読み取るだけじゃないよ?

 

「ッ!?」

 

(危なかった…。なんだ?俺が考えるより前に…。)

 

俺がこの前殺せんせーと対面したときに使った手だ。

0.1秒後の相手の動きを予測する。

そして前と決定的に違うのが、矢田さんがいることだ。

 

「ていっ!!」

 

俺が今考えを読んでいるのは烏間先生…あなたじゃない…。

 

(こいつ…矢田を!!)

 

そうだ、矢田さんは別に俺に対し何かしら対策を打っている訳ではない。

つまり読み放題だ。

矢田さんが動き、俺がそれに合わせ烏間先生の退路を塞いでいく…。

チェックメイトだ。人間では躱せまい。

 

トンッ…。

 

矢田さんのナイフと俺のナイフがほぼ同時に烏間先生に当たった。

 

「まじか…。」「す、すげぇ…。」

 

「…互いを信じているゆえの大胆な展開か…。

…いいチームワークだ。」

 

「やったね!裕!」「おう!」

 

ハイタッチを交わした。

 

 

個人の能力は俺も矢田さんも大したものじゃない。

相性ってのは、意外なほど力を発揮する。

今更思い出す…人との繋がりを。

俺は初めて、自分が変わったと実感した。

 




お読みいただきありがとうございました。

自分の中では一番面白くない話です…。
原因は簡単で、夜舞を突っ込みにくいからです!
ちょっと無理やり突っ込んでみたんですが…ダメだこりゃ。
没にすれば良かったかなぁと思いつつ、矢田夜舞ペアの話を入れたかったので、投稿することにしました。
次回はとうとうシロ編です。オリジナル路線を行かせていただきます。

では次回もよろしくお願いします。
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